訪問診療の費用について

訪問診療を検討するにあたって、医師が出向いて診察するということから、費用の面は気になることでしょう。 実際にはどのように料金が算定され、請求されるかを理解することが大切です。

本記事では、訪問診療にかかる費用の基本構造から追加費用などを網羅的に解説していきますので、ご自身やご家族の状況に合った情報をぜひ参考にしてみてください。

まずは保険診療の原則から

外来診療や訪問診療にかかわらず保険診療は適用可能です。 以下に年齢別の負担割合を記載します。自治体の子ども医療助成等は別制度となっています。

年齢負担割合
6歳未満2割
6~69歳3割
70~74歳2割
75歳以上原則1割/一定以上の所得は2割/現役並みは3割

以下のシミュレーションでは代表的な例として75歳以上の1割負担の患者様をモデルケースとしてみます。2割負担、3割負担の方は下記の費用を参考にご自身の費用を参考にしてください。

訪問診療にかかる費用の基本構造を知る

在宅における費用の算定方法

訪問診療においては月に2回の定期訪問を基本としており、その際にかかる項目と費用は以下の通りです。

在宅時医学総合管理料

24時間対応し、必要な時に電話対応や緊急往診をするための管理料となります。 この管理料は非常に複雑な体系になっており、医療機関の施設基準によっても上下します。

部外者にはどの医療機関がどの施設基準であるかわからないため、一例として当院を参考にしたいと思います。

施設基準とは主に常勤医師の人数(連携先の人数を加える)と病床の有無(連携先に病床がある場合も病床有りと判定)によって規定されます。

当院は常勤医師が3名以上かつ病床なしの「機能強化型在支診」ですので、管理料としては4085点となります。

月に1回の訪問診療の場合の管理料は2505点となります。

定期往診費用

定期往診費用は1回あたり888点ですので、2回訪問すると1776点となります。

安定している患者様の場合は月に1回の訪問でも問題ないこともありますし、がん末期などの重症患者さんに対してはより頻回な定期往診を計画することがあります。その際はより多くの費用がかかります。

居宅療養管理指導料

月に1回で299単位で月に2回までしか算定は可能ではないため、最大で598単位となります。何度定期往診してもこれ以上は増えません。

ご夫婦で訪問診療をしている場合などは若干の変化がありますので、その際は医療機関にお問い合わせください。

月に1回の居宅療養管理指導料は単純に1回分と計算されるので299単位となります。

その他の費用

  • 検査や薬代や訪問服薬指導の費用は別途請求されます。
  • 交通費 – 医療機関によって違います。また、同じ医療機関でも拠点からの距離によって変動する場合がありますので、医療機関にご確認ください。
  • 料金収納時 – 銀行引き落とし、振り込み、クレジットカード決済などが考えられますが、どのような収納方法に対応しているか、収納の費用がかかるのかなどを各医療機関に問い合わせると良いでしょう。
  • 上記2点に関しては保険は効かず、実費であるという点には注意が必要ですが、多くの場合は多額が請求されることはないと考えられます

結局いくらかかるの?

その他の費用を除くと、月に2回の訪問診療をしている場合は、在宅時医学総合管理料(4085点)+定期往診料(1776点)+居宅療養管理指導料(598単位)を合計すると6459となり、往診や電話再診などがない場合の1割負担の患者様に対しては月額6459円の請求となります。

月に1回の訪問診療になると、在宅時医学総合管理料(2505点)+定期往診料(888点)+居宅療養管理指導料(299単位)を合計すると3692となり、月額3692円の請求となります。

老人ホーム入居者における費用の算定方法

ここでは便宜的に「老人ホーム=施設」とします。

施設入居者においては上記の通りの医療機関の施設基準に加えて、その医療機関が老人ホームにて何人の患者様を診察しているかによって細かく変動するため、さらに複雑怪奇な診療報酬体系になっています。

施設入居時等医学総合管理料

個人宅における在宅時医学総合管理料の施設版がこの管理料です。人数によって違う複雑な報酬体系になっているので、下記の表をご参照ください。

定期往診費用

定期往診の費用も施設に対しては安く設定されており、定期往診1回で213点となっています。これは人数によって変化しません。

居宅療養管理指導料

この費用は人数によってわずかに変化します。定期往診と違って、月に最大で2回しか算定できないという点においては在宅と同様の建付けになっています。

例えば当院が老人ホームに月に2回の訪問診療をする際に同一施設での訪問診療対象者の人数に応じて、管理料、往診料、居宅療養管理の費用は以下の通りです。

スクロールできます
単一建物診療患者数*施設総管 点訪問診療(Ⅰ) 213×2医療合計(点)→負担居宅療養管理指導料(単位/2回)月合計
1人2,8854263,311299×2=5983,909
2–9人1,5354261,961287×2=5742,535
10–19人1,0854261,511260×2=5202,031
20–49人9704261,396260×2=5201,916
50人以上8254261,251260×2=5201,771

「単一建物診療患者数」= その建物で当月に施設総管等を算定する患者数の合計。区分により施設総管の点数が変動します。厚生労働省のページ

月に1度、施設に訪問診療をしている方の費用は下記のように変化します。

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単一建物診療患者数*施設総管 点訪問診療(Ⅰ) 213医療合計(点)→負担居宅療養管理指導料(単位/2回)月合計
1人1,7852131,998299×1=5982,297
2–9人9752131,188287×1=5741,475
10–19人705213918260×1=5201,178
20–49人615213828260×1=5201,088
50人以上525213738260×1=520998

極めて複雑かつ面妖な診療報酬体系です。実際に訪問診療を行っている医師たちも正確に把握できていないことが多いのではないでしょうか。

「その他の費用」に関しては在宅の場合と全く同じ請求になっています。このあたりもそれぞれの医療機関においてルールが違ってきていると思いますので、ご確認ください。

重症例の訪問診療の費用について

重症例においても個人宅と老人ホームに診察するときでは診療報酬の変動がありますので、以下に解説します。

個人宅に重症例で訪問診療を行うケース

「重症例」というのは国で決めている「特定の疾患」と「特定の状態」の事を指します。

逆に言うと、どんなに重症に見えたり、治療の手間がかかったりしても「特定の疾患」もしくは「特定の状態」に当てはまらない限りは重症と見なされません。

  • 特定の疾患とは、末期悪性腫瘍、特殊なリウマチ関連疾患、神経難病、頸髄損傷などが該当します。詳しくは厚生労働省のページをご参照ください。
  • 特定の状態とは、真皮を超える褥瘡、在宅酸素、中心静脈栄養、在宅人工呼吸器、気管切開などの状態を指します。上記リンク先に正確な情報が掲載されていますが、正直言って読んでもよくわからないと思いますので、各医療機関にお問い合わせいただくほうがわかりやすいでしょう。当院受診をご検討の際はお電話でもお問い合わせフォームからでも構いませんので、遠慮なくお尋ねください。

重症例では在宅時医学総合管理料が月に2回の診療で4,985点となります。

訪問診療料や居宅療養管理指導料は重症例でも変化はありません。よって合計は7,357となりますが、ここで注意してほしいのは、上記疾患の場合は、月に2回の定期診療では管理しきれないケースが多いことが想定されます。

また臨時往診なども増える可能性が高く、月額あたりの負担が想定よりも高くなる可能性があります。よって、これらの疾患の場合は月に1回の訪問診療のケースを考える必要はないでしょう。

老人ホームに重症例で訪問診療を行うケース

通常の老人ホームでは重症例を受けないことが多いのですが、最近はサービス付き高齢者の同一敷地内に訪問看護ステーションを配置するパターンも多くなっています。

通称「ホスピス型住宅」などと呼ばれることもあります。

例によって、施設での診療患者数によって費用が変わるという摩訶不思議な報酬体系となっており、以下の表に示すとおりです。重症例であっても定期往診料と居宅療養管理指導料は変わりません。

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単一建物診療患者数施設総管(重症・月2回以上)点訪問診療(Ⅰ)213×2医療自己負担居宅療養管理指導料(単位/2回)月合計
1人3,5854264,011299×2=5984,609
2–9人2,9554263,381287×2=5743,955
10–19人2,6254263,051260×2=5203,571
20–49人2,2054262,631260×2=5203,151
50人以上1,9354262,361260×2=5202,881

こちらも在宅の時と同様に月に1度の定期往診というパターンは考える必要がなく、むしろより頻回な定期診察や臨時往診を想定しておいたほうが良いでしょう。

各種往診における診療報酬について

一言で「往診」と言っても何種類かあります。「定期往診」に関しては十分に解説して来ましたので、それ以外の往診について当院の診療報酬体系で以下に解説していきます。

また各種往診に関しては個人宅と老人ホームとの差はありません。

  • 往診料(基本)720点 計画外に患者や家族から要請→医師が必要と判断し速やかに赴く場合に算定されます。あくまで「患者や家族からの要請」なので、施設からの要請のときはグレーですが、家族が老人ホームに対して全面的に委託している場合は認められると判断しています。当院では原則として施設に対して、ご家族の了承を得ているか確認しています。問題は成年後見人がついている場合ですが、夜間等に連絡が取れないときは人道的見地に立って判断しています。
  • 加算(機能強化型在支診・病床なし)
    • 緊急往診加算750点  “標榜時間内に診療中”に緊急要請が来た時だけです。簡単に言うと、緊急往診をしたことでほかの患者さんの日程をずらすときのみ適用となる訳です。
    • 夜間・休日往診加算1,500点 夜間=18:00–22:00 6:00-8:00、休日=日祝+12/29–31・1/2–3。標榜時間に含まれる時間帯は不可となっていますが、この時間を標榜時間に含んでいる医療機関は少数でしょう。感覚的に不思議ではありますが、早朝も夜間の加算がつきます。 当院では祝日も標榜時間ですので、休日往診加算は付けていません。
    • 深夜往診加算2,500点 22:00–6:00となっていますが、標榜時間に含まれる場合は不可です。さすがにこの時間を標榜時間にしている医療機関は見たことがありません。
  • 滞在が1時間超:以降30分ごと100点加算(患家診療時間加算)
  • 距離・費用:16km超や海路は特例扱いで、交通費は患家負担とするパターンが一般的です。

1割負担の場合の目安(加算の組み合わせ別)

ケース内訳患者負担(円)
通常往診(加算なし)720720
緊急往診(昼・診療中)720 + 7501,470
夜間往診(18–22時/6–8時)720 + 1,5002,220
深夜往診(22–6時)720 + 2,5003,220
休日往診720 + 1,5002,220
深夜+長時間90分720 + 2,500 + 1003,320

夜間・休日・深夜はいずれか1つ(二重取り不可)。時間加算は1時間超から30分ごとに+100円ずつ上乗せとなっています。

医療費の上限

大前提として、訪問診療における医療費は「外来診療」と同様の扱いです。同月内の自己負担(在医総管+訪問診療料+検査+薬剤料など)を合算して判定します。

少し複雑な話になってしまいますが、条件が揃ったときには訪問看護を医療保険を用いて入れることが可能になり、その際は医療費に合算されます。

少し脇道にそれますが、上記の「ホスピス型住宅」というのは「訪問看護を医療に組み込むことで収益化する」ビジネスとなっています。

通常の訪問看護は「介護保険」でカバーされますので、医療費には関係ありません。このあたりも難解な部分ですので、医療機関にお問い合わせいただくのが確実です。

高齢者の高額療養費制度による月額上限額(~2026年7月)

70歳未満の場合(3割負担)

  • 〜約370万円:60,600
  • 年収約370〜770万円:88,200+(医療費−294,000)×1%
  • 年収約770〜1,160万円:188,400+(医療費−628,000)×1%
  • 住民税非課税36,300

70歳以上の場合

  • 一般・1割20,000円(年間上限 160,000円
  • 一般・2割28,000円(年間上限 224,000円
  • 住民税非課税13,000円所得一定以下の非課税8,000円(据え置き)厚生労働省

限度額適用認定証を事前に取得した場合は、医療機関への支払いは自己負担上限額までとなり、経済的には余裕が持てます。

その他の医療費上限額

患者さんの年齢に関係なく、指定難病医療費助成制度、自立支援医療などがあり、それぞれに必要な診断基準や医療機関からの申請などが必要になることもあります。

不明な場合は医療機関にお尋ねください。もちろん当院受診の患者さんやそのご家族からのご相談も歓迎いたします。