急な発熱や激しい腹痛で動けなくなったとき、あるいは持病の管理で通院が難しくなったとき、自宅に医師が来てくれる医療サービスは心強い存在です。
しかし、「往診」と「訪問診療」という言葉が混同して使われているため、いざという時にどちらを選べばよいのか迷う方が後を絶ちません。
この二つは、利用する目的、費用、医師との関わり方において明確に異なる医療サービスです。
この違いを正しく理解していないと、本当に必要な医療が受けられなかったり、想定外の費用が発生したりするリスクがあります。
この記事では、突発的な体調不良に対応する「往診」と、計画的な医学管理を行う「訪問診療」の決定的な違いを徹底的に解説し、患者様やご家族が現在の状況に合わせて適切な選択ができるようサポートします。
基本の違い:往診と訪問診療の明確な定義
往診と訪問診療の最大の違いは、医療を提供するタイミングが「突発的」か「計画的」かという点にあります。
往診は患者様の要請に基づいてその都度行われる一時的な対応であるのに対し、訪問診療は事前に策定した計画に基づいて定期的に行われる継続的な医療管理です。
この根本的な違いを理解することで、自身の状況に適したサービスを選ぶことができます。
往診は突発的な体調不良に対応する医療
往診とは、通院が困難な患者様の家へ医師が赴き、診療を行う行為の中でも、あくまで「臨時的」に行われるものを指します。
例えば、普段は元気な方が急に高熱を出した場合や、持病の状態が急激に悪化した際に、患者様やご家族の求めに応じて医師が訪問します。
基本的には「困ったときだけ呼ぶ」というスタイルであり、救急車を呼ぶほどではないものの、病院まで行く体力がないといったケースで非常に役立ちます。
診療が終了し、症状が改善すれば、その時点での医療提供は完了となります。継続的な関係性を前提としないため、一回完結型の医療サービスという側面が強いのが特徴です。
訪問診療は計画的で継続的な医学管理
訪問診療は、通院が困難な患者様に対して、医師が計画的に自宅を訪問し、診療を行う医療サービスです。
病状が安定している場合でも、月に2回程度など決まったスケジュールで訪問し、診察、検査、薬の処方、療養上の相談などを行います。
これは、病気の治療だけでなく、自宅での生活を支えることを目的としています。
予期せぬ体調変化を未然に防ぐための予防的な側面も持ち合わせており、24時間365日体制でサポートする仕組みが整っていることが一般的です。
医師は患者様の普段の状態を熟知しているため、小さな変化にも気づきやすく、長期的な視点での健康管理が可能になります。
訪問診療と往診の比較
両者の基本的な性質の違いを整理しましたので、まずはここでおおまかな区別をつけてください。
| 比較項目 | 往診(往診専門など) | 訪問診療(在宅医療) |
|---|---|---|
| 訪問のきっかけ | 患者・家族からの緊急要請 | 事前の診療計画 |
| 訪問の頻度 | 不定期(必要な時のみ) | 定期的(月2回など) |
| 医療の目的 | 急性症状の緩和・処置 | 長期的な医学管理・生活支援 |
在宅医療における両者の位置づけ
在宅医療という大きな枠組みの中で、往診と訪問診療は車の両輪のような関係にあります。訪問診療を受けている患者様であっても、急変時には「往診」という形で医師が駆けつけます。
つまり、在宅医療のベースとなるのが訪問診療であり、その緊急対応オプションとして往診が存在するという構造です。
一方で、近年増えている「往診専門クリニック」は、普段の訪問診療契約を結ばずに、往診機能のみを切り出して提供しています。
これは地域の救急医療を補完する役割を果たしていますが、継続的な健康管理を主目的とする在宅療養支援診療所とは役割が異なることを認識しておく必要があります。
対象患者の違い:どんな人がどちらを選ぶべきか
ご自身の状況や、介護されているご家族の状態によって、選ぶべきサービスは明確に分かれます。
継続的なケアが必要な慢性疾患の方には訪問診療が適しており、普段は元気だが一時的な病気で動けない方には往診が適しています。
具体的な患者像と照らし合わせることで、どちらのサービスを選択すべきかの基準が明確になります。
往診を選ぶべき具体的なシチュエーション
往診を利用すべきなのは、基本的に「普段は通院できているが、今は動けない」という状況です。
例えば、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症にかかり、高熱や嘔吐で外出が困難な場合が典型的です。
また、ぎっくり腰や骨折などで一時的に歩行が不可能になった場合も対象となります。これらは時間が経過すれば回復し、再び自力で通院できるようになることが見込まれます。
定期的な医師の管理は不要だが、今この瞬間の苦痛を取り除いてほしいというニーズに応えるのが往診です。
かかりつけ医が休診である夜間や休日に体調を崩した場合にも、往診専門のサービスが選択肢に入ります。
往診利用が想定される主な症状
以下のような症状があり、かつ病院へ行く手段がない場合に往診の利用を検討してください。
- 38度以上の高熱があり動けない
- 激しい下痢や嘔吐が続いている
- 突然のめまいや立ちくらみがある
こうした症状は急を要しますが、救急車を呼ぶべきか迷うグレーゾーンの際に、往診医の判断を仰ぐことは非常に有効です。
訪問診療が適している患者の特徴
訪問診療を選択すべきなのは、加齢や病気、障害によって「通院そのものが困難かつ、継続的な医療が必要」な方です。
具体的には、寝たきりの高齢者、末期がんの患者様、難病指定を受けている方、重度の認知症の方などが該当します。
また、退院直後で自宅での生活に不安がある場合や、最期を自宅で迎えたいと希望される場合も訪問診療の対象です。
こうしたケースでは、単に病気を治すだけでなく、床ずれの処置、栄養管理、酸素吸入の管理など、生活に密着した医療ケアが恒常的に必要となります。
家族の通院介助の負担を減らしたいという理由も、訪問診療を導入する正当な動機となり得ます。
通院困難な状況の定義と判断基準
医療保険で在宅医療(往診や訪問診療)が認められる前提条件として「通院が困難であること」が必要です。この判断は、単に「行くのが面倒」という理由では認められません。
医学的な見地から、独力での通院が不可能、または通院によって病状が悪化するリスクが高いと医師が判断する必要があります。
しかし、完全に寝たきりでなければならないわけではありません。家族の介助や介護タクシーを使わなければ通院できない場合や、認知症により一人での外出が危険な場合も「通院困難」に含まれます。
往診専門クリニックを呼ぶ際も、なぜ救急外来に行けないのかという理由は重要になります。
患者タイプ別の適正サービス
患者様の置かれている状況と、推奨されるサービスの対応表を確認しましょう。
| 患者様の状態・状況 | 推奨サービス | 理由 |
|---|---|---|
| 慢性疾患で通院が大変 | 訪問診療 | 定期的な管理で悪化を防ぐため |
| 急な発熱(若年層など) | 往診専門 | 一時的な処置で完治が見込めるため |
| 自宅での看取りを希望 | 訪問診療 | 24時間体制での緩和ケアが必要なため |
緊急時の対応力:急変時に頼れるのはどちらか
緊急事態において、往診専門クリニックと在宅療養支援診療所(訪問診療を行うクリニック)では、その対応スピードと「できること」の範囲が異なります。
往診専門は広域をカバーし機動力が高い一方、初診であるリスクを持ちます。在宅診療医は患者背景を熟知していますが、移動に時間がかかることもあります。
スピードを優先するなら往診専門、情報の正確さと継続性を優先するなら在宅療養支援診療所というように、緊急時の対応力の質には明確な特性差があります。
往診専門クリニックの夜間休日の機動力
近年都市部を中心に増えている往診専門クリニックは、夜間や休日の対応に特化している点が強みです。
多くの医療機関が閉まっている時間帯に、医師が自宅まで来てくれることは大きな安心感につながります。
彼らはGPSなどで医師の配置を管理し、最短で到着できる医師を派遣するシステムを構築していることが多く、依頼から到着までのスピードが比較的速い傾向にあります。
しかし、担当する医師は当番制であることが多く、毎回違う医師が来る可能性があります。そのため、アレルギー情報や既往歴などの情報は、その場で正確に伝える必要があります。
在宅療養支援診療所の24時間体制
訪問診療契約を結んでいる患者様に対しては、在宅療養支援診療所が24時間365日の連絡体制を敷いています。
急変時には、まず専用のホットラインに電話をし、いつもの医師や看護師の指示を仰ぎます。必要と判断されれば、主治医または連携している医師が緊急往診を行います。
この最大のメリットは、医師が患者様の普段の状態や「延命治療を希望するかどうか」といった価値観まで把握している点です。
到着までの時間は往診専門クリニックに劣る場合もありますが、処置の的確さや、その後の入院調整のスムーズさは、普段からの関係性がある分、非常に高くなります。
緊急時対応の質の違い
スピードと情報の深さという観点で、両者の緊急対応の違いを整理します。
| 項目 | 往診専門クリニック | 訪問診療(契約中) |
|---|---|---|
| 医師の予備知識 | ほぼ無し(初診扱い) | 詳細に把握(カルテあり) |
| 対応する医師 | 当番医(毎回異なる) | 主治医または連携医 |
| 入院調整の可否 | 提携先があれば可能 | スムーズに連携可能 |
救急搬送が必要な場合の判断プロセス
自宅に医師を呼んだ結果、在宅での処置では対応しきれないと判断されることもあります。その場合、救急搬送の手配を行うことになりますが、ここでも違いが出ます。
往診専門医の場合、その場で救急車を呼び、救急隊に申し送りをして役割を終えることが一般的です。
一方、訪問診療の主治医であれば、地域の連携病院へ直接連絡を入れ、「どのような状態で、どのような処置が必要か」を専門的な言葉で伝え、受け入れ要請を行うことができます。
そうすることで、たらい回しを防ぎ、適切な治療へスムーズに移行できる可能性が高まります。医師が救急車に同乗するかどうかはケースバイケースですが、情報連携の質には大きな差が生まれます。
医師との関係性:継続的なケアか一時的な処置か
医師と患者の関係性は、治療の効果や患者様の精神的な安定に大きく影響します。訪問診療は「線」の関わりであり、人生の伴走者となります。
往診はあくまで一時的な処置に留まる一方、訪問診療は医師と患者が深い信頼関係を築くことで、治療効果や精神的な安定に寄与します。
初対面の医師による診察の特徴
往診専門のサービスを利用する場合、基本的には初対面の医師が診察にあたります。
限られた時間の中で、症状を聞き出し、診察し、処置を行う必要があるため、やり取りは非常に事務的かつ効率重視になる傾向があります。
医師にとってはその場での症状緩和が最優先事項であり、患者様の生活背景や性格まで深く理解することは困難です。
これは決して悪いことではなく、緊急時のトラブルシューティングとしては正しい姿勢です。しかし、慢性的な悩みを相談したり、長期的な治療方針を決めたりする相手としては適していません。
主治医として人生に寄り添う診療
訪問診療を行う医師は、通院できない患者様の「かかりつけ医」としての機能を果たします。
定期的に顔を合わせることで、医師は患者様の性格、家族構成、趣味、大切にしている価値観などを少しずつ理解していきます。
この信頼関係があるからこそ、病状が悪化した際や、最期の時間をどう過ごしたいかというデリケートな話題についても、納得いくまで話し合うことができます。
「先生が来る日が楽しみ」と患者様が感じるような、精神的な支えとなることも訪問診療医の重要な役割の一つです。
継続的な関係がもたらすメリット
医師と顔なじみであることには、医療面以外でも多くの利点があります。
- 細かな体調変化に気づいてもらえる
- 介護に関する愚痴や悩みも相談できる
- 薬の調整を生活リズムに合わせてくれる
特に認知症の患者様の場合、知らない医師が来ると興奮してしまうことがありますが、馴染みの医師であれば穏やかに診察を受けられることが多いです。
家族を含めた精神的なサポート体制
在宅医療の現場において、医師がケアするのは患者様本人だけではありません。患者様を支えるご家族の不安や疲労にも目を向けます。
「介護で夜眠れない」「食事を食べてくれない」といった家族の悩みに耳を傾け、医学的なアドバイスをしたり、レスパイトケア(介護者の休息)のための入院を提案したりします。
往診専門の医師は、その場限りの関わりのため、こうした家族全体のケアまで踏み込むことは構造上難しいです。
訪問診療医は、患者様とご家族が共倒れしないよう、チーム全体を見守るコーディネーターのような役割も担っているのです。
費用や契約形態の違い:都度払いと月額管理
お金の問題は切実です。往診と訪問診療では、費用の発生する仕組みや請求のタイミングが全く異なります。
往診は「使った分だけ」ですが、訪問診療は「基本料+実績」という構造になります。
費用の発生する仕組みや請求のタイミングの違いを理解し、後になって「思ったより高かった」と後悔しないよう備えることが重要です。
往診における診療費の発生タイミング
往診を利用した場合の費用は、基本的に一般の外来受診と同じく「出来高払い」です。初診料(または再診料)、往診料、検査料、投薬料、処置料などが合算され、利用した回数分だけ請求されます。
特筆すべきは「往診料」や「交通費」が加算されるため、自分で病院へ行くよりも割高になる点です。
また、夜間や休日に呼んだ場合は、時間外加算や休日加算、深夜加算が上乗せされるため、1回の診療でも自己負担額が数千円から1万円を超える(保険適用後)ことも珍しくありません。
支払いはその場での現金払いや、後日クレジットカード決済、振込などで精算します。
訪問診療の定額的な医学管理料
訪問診療の費用構造はより複雑です。毎回行われる診察料や往診料に加えて、「在宅時医学総合管理料」という月単位の定額管理料が発生します。
これは、24時間体制の維持や計画的な医学管理に対する費用です。したがって、月に2回の訪問診療だけでも、それなりの金額(1割負担で数千円〜1万数千円程度)が毎月固定でかかります。
ただし、在宅医療には「高額療養費制度」が適用されるため、月ごとの自己負担上限額を超えた分は払い戻されます。多くの在宅クリニックでは、1ヶ月分をまとめて翌月に請求する形をとっています。
契約時に確認が必要な書類
訪問診療を開始するには、事前の契約手続きにおいて以下の書類が必要になります。
- 健康保険証および介護保険証
- 現在の処方内容がわかるお薬手帳
- 前医からの診療情報提供書(紹介状)
往診専門の場合は、これら全てが揃っていなくても、保険証さえあれば診察可能なケースが多いですが、継続管理には正確な情報が必要です。
契約手続きと事前の準備期間
往診専門クリニックは、電話やWebフォームからの申し込みで即日対応が可能であり、事前の契約書取り交わしなどは簡易的、あるいは事後に行われることが多いです。
一方、訪問診療を始めるには、原則として事前の面談(インテーク面談)が必要です。
相談員や看護師が自宅を訪問し、病状や生活状況、家族の希望を確認した上で、契約書にサインをし、初回訪問の日程を決めます。
そのため、問い合わせから実際の診療開始までには数日から1週間程度の準備期間が必要になります。
「今日からすぐに定期訪問してほしい」という要望には応えられないこともあるため、退院が決まった段階など、早めの相談が重要です。
費用構造のイメージ比較
費用の発生の仕方を大まかに比較します。
| 費用項目 | 往診専門 | 訪問診療 |
|---|---|---|
| 基本構造 | 使った回数 × 単価 | 月額管理料 + 訪問回数 × 単価 |
| 交通費 | 実費請求が多い | 含める場合と別途の場合あり |
| 支払い時期 | 都度または後日 | 月締め翌月払い |
連携体制の違い:ケアマネジャーや訪問看護との関わり
在宅医療は医師一人で完結するものではありません。訪問看護師、ケアマネジャー、薬剤師、ヘルパーなど、多くの職種が連携して患者様の生活を支えます。
この「チーム医療」において、往診医と訪問診療医では関わり方が大きく異なります。
地域連携の視点から見ると、単発的な往診は情報の共有が限定的ですが、訪問診療は多職種と密に連携し、生活全体を支えるチーム医療の要となります。
単発的な治療における情報の共有範囲
往診専門の医師が介入する場合、その情報は限定的になりがちです。
診療後に、かかりつけ医やケアマネジャーに対して診療情報提供書を作成することもありますが、基本的には「どのような処置をしたか」という事後報告に留まります。
リアルタイムでの密な連携は難しく、ケアマネジャーが往診の事実を後から知るということも少なくありません。
往診医はあくまでスポットでの参加者であり、長期的なケアプラン(介護計画)の作成や修正に深く関与することは稀です。
情報が分断されやすいため、患者様側から積極的に「往診に来てもらった」と関係各所に伝える努力が必要です。
多職種連携によるチーム医療の構築
訪問診療医は、在宅ケアチームのリーダー的な役割を果たします。医師の指示書に基づいて訪問看護師がケアを行い、医師の意見を参考にケアマネジャーが介護プランを作成します。
患者様の状態に変化があれば、ICTツール(医療介護連携専用のチャットアプリなど)を使って関係者全員がリアルタイムで情報を共有し、対応策を協議します。
例えば、「最近食欲が落ちている」というヘルパーの気づきに対し、医師が薬を調整し、管理栄養士が食事形態を提案するといった連携が日常的に行われます。
この強固なネットワークこそが、重度な疾患を抱えながらも自宅で生活できる基盤となります。
連携の深さと情報共有の方法
多職種との関わりの違いを表にまとめました。
| 連携先 | 往診専門医の関わり | 訪問診療医の関わり |
|---|---|---|
| 訪問看護師 | その場限りの指示出し | 訪問看護指示書による継続的な指示 |
| ケアマネジャー | 事後報告が主 | サービス担当者会議への参加・助言 |
| 薬局 | 院外処方箋の発行 | 訪問薬剤師との協働・残薬管理 |
ケアプランに組み込む際の注意点
介護保険サービスを利用する場合、ケアプラン(居宅サービス計画書)の作成が必要です。訪問診療は、このケアプランの中に「居宅療養管理指導」などの名目で正式に位置づけられます。
医師が定期的に訪問し、介護サービス事業者に対して医学的な観点から助言や指導を行うことで、介護サービスの質が向上します。
一方、突発的な往診はケアプランにはあらかじめ組み込まれません。
もちろん医療保険での対応となるため介護保険の枠(単位数)には影響しませんが、頻繁な往診が必要な状態であれば、ケアプランそのものの見直しや、訪問診療への切り替えを検討するサインと捉えるべきです。
よくある質問
最後に、往診と訪問診療の違いについて、患者様やご家族から寄せられることの多い疑問に回答します。曖昧な点を解消し、納得のいく選択にお役立てください。
- 訪問診療を契約していても別の往診専門医を呼んでも良いですか?
-
基本的には、まず契約している訪問診療のクリニックへ連絡を入れるのがルールです。訪問診療医は24時間対応の体制を整えているため、急変時も対応する義務と責任があります。
しかし、どうしても連絡がつかない場合や、物理的に主治医が到着するまでに時間がかかりすぎると判断された場合に、主治医の指示の下で、または緊急避難的に往診専門医を利用することは可能です。
ただし、無断で他院の往診を利用すると情報の分断が起きたり、医療費が重複して請求できないなどの保険上の問題が発生したりする可能性があるため注意が必要です。
- 今は元気ですが将来のために訪問診療を契約できますか?
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現在のところ通院が可能で、医学的に在宅医療の必要性がない場合は、訪問診療の契約を結ぶことはできません。訪問診療はあくまで「通院困難な方」を対象とした制度だからです。
ただし、将来的に通院が難しくなった場合に備えて、地域にどのような在宅療養支援診療所があるかを調べたり、相談窓口に問い合わせておいたりすることは非常に有意義です。
また、かかりつけ医に「通院できなくなったら往診してくれるか」を確認しておくのも良いでしょう。
- 往診専門クリニックで薬はどこまで処方してもらえますか?
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往診専門クリニックでは、基本的にその場の症状を緩和するための数日分の薬(急性疾患治療薬)が処方されます。
抗生物質、解熱鎮痛剤、整腸剤などが一般的です。
高血圧や糖尿病などの慢性疾患の薬を長期間分処方することは、検査データなどの裏付けがない初診の状態ではリスクがあるため、行われないことが多いです。
慢性疾患の薬が切れそうな場合は、やはり普段のかかりつけ医に相談するか、訪問診療への切り替えを検討する必要があります。
- 訪問診療のお試し利用はできますか?
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制度上「お試し」という枠組みはありませんが、一度契約して訪問診療を受け、合わないと感じれば契約を解除し、外来通院に戻ったり他院へ変更したりすることは自由です。
ただし、初回訪問までには面談や準備が必要であり、一度きりの利用を前提とした契約は医療機関側も受け入れが難しい場合があります。
まずは相談員との面談で、どのような医療を受けたいのか、不安な点は何かを率直に話し合い、信頼できそうかを見極めることが大切です。
今回の内容が皆様のお役に立ちますように。
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