動脈硬化の原因を詳しく解説 – 高血圧・糖尿病・脂質異常症との関係

動脈硬化の原因を詳しく解説 - 高血圧・糖尿病・脂質異常症との関係

「動脈硬化」という言葉を耳にしたことはありますか。多くの方がご存知かもしれませんが、その本当の恐ろしさや、なぜ起こるのかについて詳しく理解している方は少ないかもしれません。

動脈硬化は、自覚症状がないまま静かに進行し、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こすことから「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれています。

この記事では、動脈硬化がなぜ起こるのか、その主な原因である高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病とどのように深く関わっているのかを、一つひとつ丁寧に解説します。

目次

はじめに:サイレントキラー「動脈硬化」の基礎知識

私たちの体の中では、気づかないうちに静かに変化が起きていることがあります。その代表的なものが動脈硬化です。

ここでは、動脈硬化とは一体どのような状態で、なぜ自覚症状がないままに深刻な病気へとつながってしまうのか、その基本的な知識について解説します。

健康な毎日を送るために、まずは敵を知ることから始めましょう。

そもそも動脈硬化とは?血管が硬くなる仕組み

私たちの全身に酸素や栄養を運ぶ血管は、しなやかで弾力のあるパイプのようなものです。しかし、さまざまな原因によって、この血管が硬くなったり、内側が狭くなったりすることがあります。

これが「動脈硬化」です。

動脈硬化にはいくつかの種類がありますが、最も多く見られるのが「アテローム(粥状)硬化」です。

これは、血液中の余分なコレステロールなどが血管の内壁(内膜)に侵入し、おかゆのようなドロドロとした塊(プラーク)を作ることで進行します。

このプラークが大きくなると、血液の通り道が狭くなり、血流が悪くなります。さらに、プラークにカルシウムが沈着すると、血管は弾力性を失い、もろく硬い状態になってしまいます。

血管の健康状態の変化

状態血管の特徴血流への影響
健康な血管しなやかで弾力がある。内壁は滑らか。スムーズに血液が流れる。
初期の動脈硬化内壁にコレステロールがたまり始める。血流に大きな変化はまだない。
進行した動脈硬化プラークが大きくなり、血管内が狭くなる。血流が滞りやすくなる。

自覚症状がないまま進行する病気の恐ろしさ

動脈硬化の最も厄介な点は、かなり進行するまで自覚症状がほとんど現れないことです。血管が半分以上狭くならないと、血流の滞りによる症状(例えば、胸の痛みや足のしびれなど)は出てきません。

そのため、健康診断で異常を指摘されても、特に症状がないからと放置してしまうケースが少なくありません。しかし、その間にも血管の状態は着実に悪化していきます。

症状が現れたときには、すでに病状が深刻な段階に進んでいることが多く、これが「サイレントキラー」と呼ばれる理由です。

なぜ心筋梗塞や脳梗塞といった深刻な疾患につながるのか?

動脈硬化が進行してできたプラークは、非常に不安定で壊れやすい性質を持っています。

何らかのきっかけでこのプラークが破れると、その傷を修復しようと血液の成分である血小板が集まり、血の塊(血栓)ができます。

この血栓が血管を完全に塞いでしまうと、その先の組織に血液が届かなくなり、組織が壊死してしまいます。

この現象が心臓の血管(冠動脈)で起これば「心筋梗塞」、脳の血管で起これば「脳梗塞」となります。

これらはどちらも命に関わる重大な病気であり、一命をとりとめても体に麻痺などの後遺症が残ることがあります。動脈硬化の管理が重要なのは、こうした深刻な事態を防ぐためなのです。

動脈硬化が引き起こす主な疾患

起こる場所主な疾患名代表的な症状
心臓の血管(冠動脈)狭心症、心筋梗塞胸の痛み・圧迫感、息切れ
脳の血管脳梗塞、脳出血ろれつが回らない、手足の麻痺
足の血管(末梢動脈)閉塞性動脈硬化症歩行時の足の痛み、冷感

動脈硬化を加速させる三大要因 – 高血圧・糖尿病・脂質異常症

動脈硬化は誰にでも起こりうる血管の老化現象ですが、その進行速度を著しく早めてしまう危険因子が存在します。中でも特に重要なのが「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」という3つの生活習慣病です。

これらはそれぞれが独立して動脈硬化のリスクを高めるだけでなく、互いに影響し合うことで、さらに血管への負担を増大させます。

ここでは、これら三大要因がどのようにして血管を傷つけていくのかを詳しく見ていきましょう。

高血圧:血管の壁に常に高い圧力がかかり続ける影響

血圧とは、血液が血管の壁を押す力のことです。高血圧の状態が続くと、血管は常に内側から強い圧力で張り詰められた状態になります。

この強い圧力が血管の内壁を傷つけ、その弾力性を少しずつ奪っていきます。傷ついた血管の壁は、修復過程で厚く硬くなり、動脈硬化が進行します。

また、内壁にできた小さな傷は、血液中のコレステロールなどが侵入する足がかりとなり、アテローム硬化をさらに促進させる原因にもなります。

高血圧は、血管に物理的なダメージを与え続ける、動脈硬化の大きな引き金です。

血圧の分類(成人の場合)

分類収縮期血圧(上の血圧)拡張期血圧(下の血圧)
正常血圧120 mmHg未満かつ 80 mmHg未満
高血圧140 mmHg以上または 90 mmHg以上

脂質異常症:血液中の余分な脂質(コレステロール等)が血管に及ぼす害

脂質異常症は、血液中の脂質、特にLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が多すぎる、あるいはHDL(善玉)コレステロールが少なすぎる状態を指します。

中でも、動脈硬化の直接的な材料となるのがLDLコレステロールです。

血液中にLDLコレステロールが増えすぎると、高血圧などによって傷ついた血管の内壁から内部に侵入し、酸化されてドロドロの塊になります。

これがプラークの中核となり、アテローム硬化を引き起こします。一方、HDLコレステロールは、血管壁にたまった余分なコレステロールを回収する働きがあるため、「善玉」と呼ばれています。

このHDLコレステロールが少ないことも、動脈硬化のリスクを高めます。

脂質異常症の診断基準

脂質の種類基準値状態
LDLコレステロール140mg/dL以上高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール40mg/dL未満低HDLコレステロール血症
中性脂肪(トリグリセリド)150mg/dL以上高トリグリセリド血症

糖尿病:高血糖が血管の内側を傷つけ、もろくする仕組み

糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が高い状態が続く病気です。高血糖の状態は、血管の内壁を覆っている内皮細胞にダメージを与えます。

血液中の過剰な糖は、血管の壁を構成するタンパク質と結びつき、「糖化」という現象を引き起こします。

この糖化によってAGEs(終末糖化産物)という老化物質が作られ、血管のしなやかさが失われ、もろくなってしまいます。

さらに、糖尿病は脂質異常症を合併しやすく、酸化ストレスを高めることで、LDLコレステロールが血管壁に侵入しやすくなるなど、複合的に動脈硬化を悪化させます。

これら3つの生活習慣病が「三大リスク」と呼ばれる理由

高血圧、脂質異常症、糖尿病は、それぞれが動脈硬化の強力な危険因子です。しかし、本当に恐ろしいのは、これらの危険因子を複数持ち合わせることです。

例えば、高血圧で傷ついた血管に、脂質異常症によって増えたLDLコレステロールが侵入し、糖尿病による高血糖がその酸化を促進する、というように、互いに悪影響を及ぼし合い、相乗効果で動脈硬化を急速に進行させます。

これらの危険因子は、一つでも持っていると他の二つも合併しやすい傾向があります。

そのため、これら3つの疾患は「死の四重奏」の一角をなす「三大リスク」と呼ばれ、包括的な管理が重要になるのです。

負の連鎖を断ち切る – 疾患の相互作用とメタボリックシンドローム

動脈硬化の三大リスクである高血圧、脂質異常症、糖尿病は、それぞれが独立した病気でありながら、水面下で密接に連携し、互いの病状を悪化させるという厄介な性質を持っています。

さらに、これらの根底に「肥満」、特に内臓脂肪の蓄積が関わっている場合、その危険性は飛躍的に高まります。

ここでは、これらの疾患がどのようにして負の連鎖を生み出すのか、そしてメタボリックシンドロームの考え方について解説します。

高血圧と糖尿病の危険な関係性と悪循環

糖尿病と高血圧は、非常に合併しやすい組み合わせです。糖尿病による高血糖は、腎臓の細い血管にダメージを与え、腎機能の低下を招きます。

腎臓は体内の水分や塩分のバランスを調整し、血圧をコントロールする重要な臓器です。その機能が低下すると、体内に余分な水分や塩分がたまり、血圧が上昇します。

一方、高血圧は腎臓の血管にさらに負担をかけ、腎機能の悪化を加速させます。このように、糖尿病と高血圧は互いを悪化させる悪循環に陥りやすく、動脈硬化のリスクを著しく高めてしまいます。

脂質異常症と糖尿病の合併が血管に与える複合的ダメージ

糖尿病を患っている方は、脂質異常症も合併しやすいことが知られています。

特に、インスリンの働きが悪くなる(インスリン抵抗性)と、肝臓での中性脂肪の合成が促進され、HDL(善玉)コレステロールが減少しやすくなります。

さらに、糖尿病の状態ではLDL(悪玉)コレステロールが「小型化」し、「酸化」されやすいという特徴があります。

この小型で酸化されたLDLコレステロールは、通常のLDLコレステロールよりも血管の壁に侵入しやすく、より強力に動脈硬化を促進する「超悪玉コレステロール」とも呼ばれています。

この複合的なダメージが、血管の老化を早める大きな原因となります。

肥満が加わることで加速する動脈硬化とメタボリックシンドローム

動脈硬化の負の連鎖の根源に、内臓脂肪型肥満が潜んでいることが少なくありません。

お腹周りに蓄積する内臓脂肪は、単なるエネルギーの貯蔵庫ではなく、さまざまな生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌する内分泌器官としての役割を持っています。

内臓脂肪が過剰に蓄積すると、血圧や血糖値を上げたり、脂質代謝に異常をきたしたりする悪玉物質の分泌が増え、動脈硬化を抑制する善玉物質の分泌が減少します。

この状態が、高血圧、高血糖、脂質異常を引き起こす土壌となり、動脈硬化を急速に進行させるのです。

要注意!メタボリックシンドロームの診断基準とリスクの考え方

内臓脂肪型肥満を必須項目とし、高血圧、高血糖、脂質異常のうち2つ以上を合併した状態を「メタボリックシンドローム」と呼びます。

これは、個々の異常は軽度であっても、複数が重なることで動脈硬化のリスクが急激に高まるという考え方に基づいています。

診断基準を満たす場合、心筋梗塞や脳梗塞を発症する危険性が非常に高い状態にあると考え、早期からの積極的な生活習慣の改善が求められます。

メタボリックシンドロームの診断基準(日本)

項目基準
必須項目内臓脂肪蓄積(ウエスト周囲径)男性 ≥ 85cm, 女性 ≥ 90cm
選択項目
(上記に加え2項目以上)
高血圧収縮期血圧 ≥ 130mmHg または 拡張期血圧 ≥ 85mmHg
高血糖空腹時血糖値 ≥ 110mg/dL
脂質異常中性脂肪 ≥ 150mg/dL または HDLコレステロール < 40mg/dL

三大要因以外のリスク – 見逃せない動脈硬化の原因

動脈硬化の進行には、高血圧、脂質異常症、糖尿病が大きく関わっていますが、危険因子はそれだけではありません。

日々の生活習慣や他の病気、あるいは年齢のように避けることが難しい要因も、血管の健康に影響を与えます。

ここでは、三大要因以外で見逃すことのできない動脈硬化のリスクについて解説し、それらとどう向き合っていくべきかを考えます。

喫煙:血管機能と酸素供給を悪化させる直接的な影響

喫煙は「百害あって一利なし」と言われますが、血管にとってはまさにその通りです。タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させて血圧を上昇させ、心臓に負担をかけます。

また、一酸化炭素は血液中の酸素を運ぶヘモグロビンと結びつき、全身の細胞を酸素不足の状態にします。これらの作用は、血管の内皮細胞を直接傷つけ、機能不全に陥らせます。

さらに、喫煙はHDL(善玉)コレステロールを減少させ、LDL(悪玉)コレステロールの酸化を促進するため、アテローム硬化を強力に進行させます。

禁煙は、動脈硬化の予防と治療において、最も効果的な生活習慣改善の一つです。

  • 血管の収縮と血圧上昇
  • 全身の酸素不足
  • 血管内皮細胞への直接的なダメージ
  • 脂質代謝への悪影響

慢性腎臓病(CKD):心臓と腎臓の密接な関係(心腎連関)

心臓と腎臓は、互いに密接に連携して体内の循環を維持しているため、一方が悪くなるともう一方も悪影響を受ける「心腎連関」という関係にあります。

慢性腎臓病(CKD)によって腎機能が低下すると、体内に老廃物や余分な水分がたまりやすくなり、高血圧や貧血、ミネラルバランスの異常などが起こります。

これらの状態はすべて、動脈硬化、特に血管の石灰化を強く促進します。逆に、心臓の機能が低下すると腎臓への血流が減り、腎機能が悪化するという悪循環も生じます。

CKDの管理は、心血管疾患の予防という観点からも非常に重要です。

CKDの重症度分類の目安

ステージGFR区分(eGFR)腎機能の状態
G190以上正常または高値
G260~89正常または軽度低下
G3a45~59軽度~中等度低下
G3b30~44中等度~高度低下
G415~29高度低下
G515未満末期腎不全

加齢、遺伝、ストレスなど避けられない要因との付き合い方

動脈硬化の進行には、自分ではコントロールが難しい要因も関わっています。 加齢は、誰にでも起こる最大の危険因子です。年齢とともに血管は自然と弾力性を失い、硬くなっていきます。

 遺伝的要因も無視できません。ご家族に若くして心筋梗塞や脳梗塞を発症した方がいる場合は、体質的に動脈硬化が進行しやすい可能性があります。

また、精神的なストレスも、交感神経を緊張させて血圧を上昇させたり、ホルモンバランスを乱したりすることで、血管に悪影響を及ぼすことがわかっています。

これらの避けられない要因があるからこそ、高血圧や糖尿病、喫煙といった自分でコントロール可能な他のリスク因子を一つでも減らし、管理していくことが、健康な血管を長く保つための鍵となります。

訪問診療だからできる包括的リスク管理と予防アプローチ

動脈硬化の管理は、一度きりの治療で終わるものではなく、生涯にわたる継続的な取り組みが必要です。

特に、通院が困難な方やご自宅での療養を中心とされている方にとって、生活の場で医療を受けられる訪問診療は、きめ細やかなリスク管理と予防を実現するための大きな支えとなります。

ここでは、訪問診療がどのように動脈硬化の包括的な管理に貢献できるのか、その具体的なアプローチを紹介します。

ご自宅での定期的な血圧測定とモニタリングの重要性

血圧は常に一定ではなく、時間帯や体調、精神状態によって変動します。医療機関で測定する血圧は、緊張などから普段より高くなる「白衣高血圧」の可能性もあります。

訪問診療では、医師や看護師がご自宅というリラックスした環境で血圧を測定することで、より普段に近い状態の血圧を把握できます。

また、ご本人やご家族に家庭での血圧測定をお願いし、その記録を定期的に確認することで、一日の中での血圧の変動パターンや薬の効果を正確に評価し、治療方針の調整に役立てることができます。

血液検査による脂質・血糖値の継続的な評価と管理

動脈硬化の管理には、LDLコレステロール値や血糖値(HbA1cなど)を目標範囲内にコントロールすることが重要です。

訪問診療では、ご自宅で定期的に採血を行い、これらの数値を継続的にモニタリングします。検査結果に基づいて、薬の量が適切か、食事療法や運動療法の効果が出ているかなどを評価します。

数値の変化をご本人やご家族と共有し、治療への意欲を高めながら、二人三脚で目標達成を目指します。

患者さん一人ひとりに合わせた薬物治療の最適化

動脈硬化のリスク管理に使われる薬は、血圧を下げる薬、コレステロールを下げる薬、血糖値を下げる薬、血液をサラサラにする薬など多岐にわたります。

訪問診療では、定期的な診察や検査結果に加え、ご本人の体調の変化や生活状況、他の病気との兼ね合い、副作用の有無などを総合的に判断し、薬の種類や量をきめ細かく調整します。

飲み忘れがないか、薬の管理で困っていることはないかなど、生活の場で直接確認できることも、適切な薬物治療を続ける上で大きな利点です。

動脈硬化予防のための食事のポイント

ポイント具体的な内容目的
減塩漬物や汁物を控える、香辛料を利用する血圧の上昇を抑える
脂質の質を考える肉の脂身を避け、青魚や植物油を摂る悪玉コレステロールを減らす
食物繊維を多く摂る野菜、きのこ、海藻類を積極的に食べるコレステロールの吸収を抑える

管理栄養士と連携した、無理のない食事療法のサポート

食事療法は動脈硬化管理の基本ですが、厳しい食事制限は長続きしません。訪問診療では、必要に応じて管理栄養士と連携し、専門的な栄養指導をご自宅で受けることができます。

管理栄養士は、ご本人の病状や食の好み、調理能力、ご家族の協力体制などを考慮した上で、美味しく、かつ無理なく続けられる具体的な献立や調理の工夫を提案します。

これにより、食生活の改善がより現実的なものになります。

ご家族・介護者と連携した生活習慣改善の包括的支援

ご自宅での療養生活において、ご家族や介護者の協力は非常に重要です。訪問診療のスタッフは、ご本人だけでなく、生活を支える方々とも積極的に関わります。

病状や治療方針について分かりやすく説明し、食事の準備や服薬管理、体調変化の観察ポイントなど、具体的な支援方法について一緒に考えます。

ご家族の不安や悩みに耳を傾け、介護の負担を軽減することも大切な役割です。医療者とご家族がチームとして連携することで、より効果的に生活習慣の改善を支えることができます。

動脈硬化の原因に関するよくある質問

ここまで動脈硬化の原因やリスクについて解説してきましたが、まだ疑問に思う点もあるかもしれません。

ここでは、患者さんやご家族からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

一度進んでしまった動脈硬化は元に戻りますか?

残念ながら、完全に元の健康な血管に戻すことは困難です。

しかし、原因となっている高血圧や脂質異常症、糖尿病などをしっかりと管理し、禁煙などの生活習慣を改善することで、動脈硬化の進行を遅らせたり、プラークを安定させて心筋梗塞や脳梗塞のリスクを減らしたりすることは十分に可能です。

治療の目的は、血管年齢を少しでも若く保ち、危険な合併症を防ぐことにあります。

食事や運動だけで動脈硬化は改善できますか?

食事療法や運動療法は、動脈硬化の予防・治療の基本であり、非常に重要です。軽度の場合は、生活習慣の改善だけで数値が目標範囲まで改善することもあります。

しかし、遺伝的な要因が強い場合や、すでに動脈硬化がある程度進行している場合は、生活習慣の改善だけでは不十分なことも少なくありません。

その場合は、お薬の力を借りて血圧やコレステロール、血糖値を適切にコントロールし、血管への負担を減らすことが必要です。

動脈硬化リスクのセルフチェック

チェック項目
血圧が高めだと指摘されたことがある□ はい
血糖値やHbA1cが高いと言われたことがある□ はい
コレステロールや中性脂肪が高い□ はい
家族(親や兄弟)に心筋梗塞や脳梗塞になった人がいる□ はい
タバコを吸っている□ はい
肥満気味である(特に、お腹周りが気になる)□ はい
運動不足だと感じている□ はい
※上記に当てはまる項目が多いほど、動脈硬化のリスクが高いと考えられます。
若い人でも動脈硬化になりますか?

動脈硬化は加齢とともに進行しますが、決して高齢者だけの病気ではありません。食生活の欧米化や運動不足などにより、若い世代でも脂質異常症や糖尿病予備群の方が増えています。

特に、家族性高コレステロール血症など、遺伝的に脂質代謝に異常がある場合は、10代や20代から動脈硬化が急速に進行することもあります。

年齢に関わらず、健康診断などで異常を指摘された場合は、早めに対策を始めることが大切です。

ストレスは本当に関係ありますか?

はい、大いに関係があります。精神的なストレスが続くと、体を緊張状態にする交感神経が活発になり、血圧が上昇し、心拍数も増加します。

また、ストレスに対抗するために分泌されるホルモンの中には、血糖値を上昇させる作用を持つものもあります。

さらに、ストレスから過食に走ったり、喫煙や飲酒の量が増えたりと、生活習慣の乱れにつながることも少なくありません。

これらの要因が複合的に作用し、動脈硬化を促進させると考えられています。上手なストレス解消法を見つけることも、血管の健康を守る上で重要です。

  • 十分な睡眠
  • 趣味の時間を楽しむ
  • 適度な運動
  • 信頼できる人との対話
今回の内容が皆様のお役に立ちますように。
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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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