胃ろうの皮膚トラブル・肉芽・液漏れへの対応|訪問診療医による処置とスキンケア

胃ろうを管理する中で頻繁に起こる皮膚の赤み、痛みを伴う肉芽の形成、衣服を汚してしまう液漏れは、介護する家族にとって大きな精神的負担となります。
しかし、これらの問題は原因を正しく把握し、日々の適切なスキンケアやカテーテルの調整を行うと大幅に改善します。
この記事では、訪問診療医が実践している医学的な処置方法や、家庭でできる具体的なケアの手順を詳しく解説します。
なぜ液漏れが止まらないのか?カテーテルの劣化と腹圧の関係
胃ろうからの液漏れは、カテーテルのサイズ不適合や劣化、そして患者さんの腹部の状態変化が複雑に絡み合って発生します。
カテーテルの劣化やサイズ不適合による隙間の発生
カテーテルは経年劣化や体型の変化によって、本来の機能を果たせなくなることがあります。
胃ろうカテーテルには、胃の内部で固定するためのバンパーやバルーンが付いていますが、長期間使用しているとこれらの固定部分が劣化し、胃壁への密着度が下がります。
また、体重の増減によって腹壁の厚みが変わると、カテーテルのシャフト長(長さ)が合わなくなります。シャフトが長すぎると、胃壁と固定板の間に遊びが生じ、その隙間から胃内容物が漏れ出してしまいます。
カテーテルが体に対して垂直に保たれていない場合も、瘻孔が変形して隙間ができやすくなります。特に高齢者では皮膚の弾力が低下しているため、わずかなサイズの不適合でも大きな隙間につながりやすい傾向があります。
定期的な交換時期を守っていても、体型の変化に合わせたサイズ選びができていないと液漏れは止まりません。訪問診療医による計測を受け、常に現在の体型に適したサイズを使用することが大切です。
胃の動きや腹圧の上昇による逆流のリスク
液漏れは単に穴が開いているから漏れるというだけでなく、胃の中から外に向かう強い圧力がかかるために発生します。特に注意が必要なのが「腹圧」です。
便秘でガスがたまっていたり、排便時に強くいきんだりすると、腹腔内の圧力が急上昇し、胃を圧迫します。
また、咳き込みが激しい場合や、体に合わない窮屈な姿勢をとっている場合も、持続的に腹圧がかかり続け、液漏れを誘発します。
主な液漏れの原因となる要素
| 原因の分類 | 具体的な状態 | 影響 |
|---|---|---|
| カテーテル要因 | シャフト長が長すぎる、または固定水(バルーンの水)が抜けている状態 | 胃壁と腹壁の密着が悪くなり、隙間から胃液が漏出します。 |
| 瘻孔(穴)の要因 | 瘻孔が拡大している、または感染により組織が脆くなっている状態 | カテーテルに対して穴が大きくなりすぎ、密閉性が失われます。 |
| 身体的要因 | 便秘や腹部膨満による腹圧の上昇 | 胃の内圧が高まり、物理的に胃内容物が押し出されます。 |
胃の蠕動(ぜんどう)運動が低下している場合もリスクとなります。注入した栄養剤がいつまでも胃内に留まっていると、次回の注入時になっても胃が張った状態が続き、容量オーバーとなって逆流しやすくなります。
逆に、胃が過剰に収縮する場合も、内容物を押し出そうとする力が働き、瘻孔からの漏れにつながります。消化管の動きを整える取り組みは、液漏れ対策の基礎となります。
栄養剤の注入速度や量が適切かどうかの確認
栄養剤を一気に注入すると胃が急激に引き伸ばされ、内圧が跳ね上がります。これは液漏れの直接的な原因となるだけでなく、嘔吐や下痢を引き起こす要因ともなります。
注入速度が速すぎないか、1回あたりの注入量が患者さんの消化能力を超えていないかを再確認する必要があります。ポンプを使わずに自然滴下で行っている場合、クレンメの操作一つで速度が変わるため注意が必要です。
また、栄養剤の温度が低すぎると胃が刺激されて収縮し、漏れやすくなる場合もあります。注入中は上体を30度から45度程度起こし、胃の出口(幽門)へ内容物が流れやすい姿勢を保つことも重要です。
皮膚の赤みやただれを防ぐために家庭で実践できる毎日のスキンケア
胃ろう周囲の皮膚トラブルを防ぐには、胃液による化学的な刺激と、摩擦による物理的な刺激の両方を取り除くことが必要です。洗浄と保湿の基本を守るだけで、皮膚の状態は大きく改善します。
漏れた胃液や消化酵素が皮膚に与えるダメージ
胃ろう周囲の皮膚が赤くただれる最大の原因は、胃液や消化液の付着です。胃液には強力な酸とタンパク質分解酵素が含まれており、これらが皮膚に触れると、皮膚の表面を溶かすような化学熱傷(ケミカルバーン)を引き起こします。
単なる水濡れとは異なり、長時間付着することで皮膚のバリア機能が破壊され、深部まで炎症が広がります。一度ただれてしまった皮膚は浸出液を出し、それがまた新たな刺激となって炎症を悪化させる悪循環に陥ります。
そのため、漏れた液体を「吸い取る」だけでなく、皮膚に直接触れさせないための「撥水性の保護」が重要になります。
ワセリンや酸化亜鉛軟膏などを厚めに塗布し、皮膚の上に人工的なバリアを作ることが、胃液による化学的刺激を防ぐ最も有効な手段です。
こすりすぎない優しい洗浄と保湿剤の正しい選び方
清潔を保とうとするあまり、ガーゼやティッシュでゴシゴシと強くこすって洗うのは避けるべきです。摩擦は弱った皮膚にとって大きな負担となり、微細な傷を作ってしまいます。
洗浄の際は石鹸をよく泡立て、泡のクッションで包み込むように優しく洗います。その後、石鹸成分が残らないように微温湯で十分に洗い流すことが大切です。洗浄後は、こすらずにタオルを押し当てるようにして水分を拭き取ります。
乾燥対策として保湿剤を使用しますが、浸軟(ふやけ)を防ぐため、水分の多いローションタイプよりも、被膜形成力のあるクリームや軟膏タイプを選びます。
特に浸出液が多い場合は、水分を吸収するパウダーや、保護作用の強い亜鉛華軟膏などを使い分ける必要があります。
オムツやパッドの当て方が皮膚トラブルを招く可能性
液漏れを吸収するために使用するYガーゼやこより(ティッシュ等で作った詰め物)が、逆に皮膚トラブルの原因となるときがあります。
ガーゼが浸出液や漏れた栄養剤を吸って湿ったまま長時間皮膚に触れていると、皮膚がふやけてバリア機能が低下します。
また、こよりを瘻孔の隙間に強く詰め込みすぎると、圧迫によって血流が悪くなり、潰瘍や肉芽形成の原因になります。漏れを受け止めるためのパッドやオムツのギャザーが、胃ろう部分を圧迫していないかも確認が必要です。
通気性の悪い環境は真菌(カビ)の繁殖に適しており、カンジダ皮膚炎などを併発するリスクを高めます。吸水性の高い専用のドレッシング材を使用するか、汚れたらこまめに交換し、常に皮膚をサラサラの状態に保つ工夫が必要です。
皮膚の状態に応じたケア用品の選び方
| 皮膚の状態 | 推奨されるケア用品 | ケアのポイント |
|---|---|---|
| 正常・軽度の赤み | 白色ワセリン、撥水性クリーム | 予防的に使用します。薄く広く塗り、水分や刺激物を弾く膜を作ります。 |
| びらん・ただれ | 亜鉛華軟膏、ハイドロコロイド被覆材 | 浸出液を吸収しつつ保護します。軟膏は厚めに塗り、ガーゼに付着しないよう工夫します。 |
| 真菌感染の疑い | 抗真菌薬(医師の処方が必要) | 通常の湿疹用薬では悪化します。周囲に薄皮がむける等の特徴があれば医師に相談します。 |
瘻孔の周りにできる痛い肉芽の正体と自宅で可能な処置方法
肉芽はカテーテルによる持続的な刺激によって発生する過剰な組織です。痛みを伴い出血しやすい不良肉芽に対しては、ステロイド軟膏の塗布や、医療機関での焼灼処置が効果的です。
盛り上がった赤い肉芽ができるメカニズムと痛み
肉芽は、物理的な刺激が繰り返し加わって発生します。カテーテルが常に同じ方向に引っ張られていたり、ストッパーの締め付けがきつすぎて皮膚を圧迫していたりすると、その刺激に対する防御反応として毛細血管の豊富な組織が増殖します。
良性の肉芽であれば傷を治す働きをしますが、赤黒く盛り上がり、少し触れただけで出血するような不良肉芽は治療が必要です。肉芽自体に神経が通っているため、洗浄時や衣服が擦れるたびに痛みを感じる場合があります。
また、盛り上がった肉芽がカテーテルと皮膚の密着を妨げ、隙間を作ることで液漏れを悪化させるという悪循環も生じます。早期に適切な処置を行うことが、痛みの緩和とトラブル解消につながります。
ステロイド軟膏の使用と硝酸銀による焼灼処置の効果
肉芽の治療として一般的に行われるのが、ステロイド含有軟膏の塗布です。ステロイドには強い抗炎症作用と血管収縮作用があり、肉芽の増殖を抑えて小さくする効果があります。
訪問診療医から処方された強めのランクのステロイド軟膏(リンデロンやデルモベートなど)を、肉芽の部分にのみピンポイントで塗布します。
薬物療法で改善しない場合や、肉芽が大きく液漏れの原因になっている場合は、硝酸銀(しょうさんぎん)を用いた焼灼(しょうしゃく)処置を行います。
これは硝酸銀の棒で肉芽の表面を化学的に焼いて壊死させ、平らにする処置です。処置自体は数分で終わりますが、周囲の正常な皮膚を傷つけないよう慎重に行う必要があります。
焼灼後は黒い痂皮(かさぶた)ができ、数日で剥がれ落ちて肉芽が縮小します。
肉芽に対する主な処置方法
| 処置の種類 | 内容と目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| 圧迫の解除 | カテーテルの固定を緩め、物理的刺激を取り除く | まずは原因除去が最優先です。ティッシュ等での詰めすぎも中止します。 |
| ステロイド外用 | 強いステロイド軟膏を盛り上がった部分に塗布する | 正常な皮膚に付くと皮膚が薄くなるため、綿棒等で患部のみに塗ります。 |
| 硝酸銀焼灼 | 硝酸銀を用いて化学的に肉芽を焼いて小さくする | 医師による処置が必要です。処置後は黒く変色しますが心配いりません。 |
カテーテルの圧迫が肉芽形成に与える影響
肉芽治療において最も重要なのは「原因の除去」です。いくら薬を塗ったり焼いたりしても、カテーテルによる圧迫が続いている限り、肉芽は何度でも再発します。
外部ストッパーが皮膚に食い込んでいないか、カテーテルが常に重力で下方向に引っ張られていないかを確認します。
チューブ型のカテーテルを使用している場合、チューブの重みや、つなぎ目の硬い部分が常に同じ場所に当たっていることが原因になるケースもあります。
固定位置を適宜ずらしたり、腹帯やテープを使ってチューブの重みを分散させたりする工夫が有効です。遊び(隙間)がなさすぎる場合も圧迫の原因となるため、カテーテルのシャフト長を見直すのも根本治療につながります。
トラブルが減らない時はカテーテルの種類や固定方法を見直す
体型や生活スタイルに合わないカテーテルを使い続けることは、トラブルの温床となります。バンパー型やバルーン型、ボタン式やチューブ式など、それぞれの特徴を理解し、適切なものに変更することを検討してください。
バンパー型とバルーン型のメリットとデメリット
胃内での固定方法には、風船を水で膨らませて固定する「バルーン型」と、キノコのような形状のストッパーで固定する「バンパー型」があります。
バルーン型は交換時の痛みが少なく、水の量を調整することで固定の強さを微調整できるため、管理しやすいのが特徴です。しかし、バルーンが破裂するリスクがあり、定期的な蒸留水の入れ替えが必要です。
一方、バンパー型は丈夫で抜けにくく、長期間の使用に耐えますが、交換時に痛みを伴う場合があります。
液漏れに関しては、バルーン型の方が胃壁への密着度を調整しやすいため有利な場合がありますが、バンパー型の方が固定力が強いため、活動量の多い方には向いている場合があります。
トラブルの種類によって、どちらの型が適しているかを医師と相談します。
ボタン式とチューブ式の選択基準と生活への影響
体外に出る部分の形状には、平らな「ボタン式」と、長い管がついている「チューブ式」があります。ボタン式は邪魔にならず、自己抜去(自分で抜いてしまうこと)のリスクが低いというメリットがあります。
また、皮膚への接地面積が広いため安定しますが、接続の手間がかかります。チューブ式は栄養剤の接続が簡単ですが、チューブがブラブラするため邪魔になりやすく、何かに引っ掛けて抜けてしまうリスクがあります。
チューブの重みで常に一方向に力がかかり、瘻孔が広がって液漏れの原因になるときがあります。
リハビリ等で動くことが多い方はボタン式、接続の手間を減らしたい場合はチューブ式など、生活背景に合わせて選びます。
外部ストッパーの締め付け具合を調整する重要性
カテーテルの外部ストッパーは、きつく締めすぎれば圧迫による血流障害や肉芽を招き、緩すぎればカテーテルが動いて瘻孔を刺激し、液漏れを引き起こします。
適切な締め付け具合は、「ストッパーと皮膚の間にコイン1枚、またはガーゼ1枚が入る程度の隙間」がある状態と言われています。体位によってお腹の膨らみ方は変わるため、座った時と寝た時の両方で圧迫具合を確認するのが理想です。
特に栄養剤注入中はお腹が張るため、注入時は少し余裕を持たせ、終了後に適切な位置に戻すといった微調整も、トラブル防止には有効です。
カテーテルの種類とその特徴比較
| タイプ | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ボタン型 | 目立たず動作の邪魔にならない。逆流防止弁があり漏れにくい。 | 栄養注入のたびに接続チューブを繋ぐ手間がある。 |
| チューブ型 | 接続が容易。介護者の手技的負担が少ない。 | チューブが邪魔になりやすく、引っ張りによる事故抜去のリスクがある。 |
| バルーン型 | 交換が容易で痛みが少ない。注水量で微調整が可能。 | バルーン破裂により自然に抜けてしまう可能性がある。 |
栄養剤にとろみをつける工夫と半固形化栄養材を導入するメリット
液体状の栄養剤は逆流しやすいため、物理的に性状を変えることが液漏れ防止に役立ちます。とろみ付けや半固形化栄養材の導入は、漏れを防ぐだけでなく、注入時間の短縮など多くのメリットをもたらします。
液体栄養剤にとろみをつけて逆流を防ぐ
最も手軽な方法は、現在使用している液体栄養剤に市販の「とろみ調整食品」を加えて粘度をつけることです。胃内での流動性が低下し、胃食道逆流や瘻孔からの液漏れを防ぐ効果が期待できます。
専用のハンドミキサー等で攪拌する必要がありますが、特別な器具を購入することなく始められます。
ただし、粘度が高すぎると細いチューブを通過しにくくなり、注入に強い圧力がかかってしまいます。
適切なとろみの加減を見つけるまでは試行錯誤が必要ですが、成功すれば液漏れだけでなく、下痢の改善にもつながる場合があります。
半固形化栄養材が胃食道逆流を減少させる理由
「半固形化栄養材」は、最初からゼリー状やプリン状になっている栄養剤です。これを使用すると、胃の中で栄養剤が塊として留まるため、食道への逆流や瘻孔からの漏れが劇的に減少します。
生理的にも通常の食事に近い形状であるため、胃の貯留機能が正常に働きやすくなります。また、固形物は重力に従って胃底部に留まる性質があるため、液体のように安易に漏れ出てくることが少なくなります。
特に寝たきりの方で、姿勢を変えるたびに漏れてしまうようなケースでは、半固形化の導入が高い効果を発揮します。
半固形化栄養材導入のメリット
- 物理的な性状により、瘻孔からの液漏れが大幅に減少します。
- 胃内での滞留性が良いため、嘔吐や胃食道逆流のリスクが低下します。
- 短時間での注入が可能となり、長時間の座位保持が不要になります。
- 固形物が腸を刺激すると自然な排便が促され、下痢や便秘が改善するケースがあります。
注入時間の短縮が介護負担の軽減につながる
半固形化栄養材のもう一つの大きなメリットは、注入時間を大幅に短縮できる点です。液体の場合は1〜2時間かけて滴下する必要がありますが、半固形化栄養材はシリンジを使って5〜15分程度で注入します(短時間摂取法)。
これにより、患者さんが長時間同じ姿勢で拘束される苦痛から解放され、介護者にとっても見守りの時間が減り、自由な時間が増えます。
ただし、急速注入は胃への負担も考慮する必要があるため、導入にあたっては必ず医師の指導を受けてください。
命に関わる感染症のサインを見逃さないための観察ポイント
胃ろう周囲の感染症は、早期発見が重症化を防ぐ鍵となります。日々の観察で悪臭や排膿、発熱などの異常に気づいたら、すぐに医療機関に連絡しましょう。
瘻孔周囲の悪臭や排膿は細菌感染のサイン
健康な胃ろう周囲からは、不快な臭いはしません。もし、腐ったような臭いや酸っぱい臭いが強くなってきた場合は、細菌が繁殖している可能性があります。
また、クリーム色や緑色のドロっとした膿(うみ)が出ている場合は、明らかに感染を起こしています。透明や薄い黄色のサラサラした浸出液であれば問題ないことが多いですが、混濁した液には注意が必要です。
発赤(赤み)も重要なサインですが、単なるただれと感染による蜂窩織炎(ほうかしきえん)を見分ける必要があります。
感染による赤みは、境界が不明瞭で熱を持っており、範囲が急速に広がっていく特徴があります。触ると硬くなっている場合も、深部での感染を疑います。
発熱や強い痛みが伴う場合の緊急性と対応
局所の症状だけでなく38度以上の発熱や悪寒を伴う場合は、感染が全身に波及している危険性があります。また、患者さんが胃ろう部分を触られるのを極端に嫌がったり、痛みを訴えたりする場合も要注意です。
特に意思表示が難しい高齢者では、不機嫌や食欲不振が痛みのサインである場合もあります。このような全身症状が見られたときは、様子を見ずに速やかに訪問診療医や看護師に連絡を取る必要があります。
抗生物質の内服や点滴による治療が必要となるケースが多く、早期の対応が回復を早めます。
誤嚥性肺炎と胃ろうトラブルの関連性
胃ろうからの逆流は、皮膚トラブルだけでなく誤嚥性肺炎の原因にもなります。逆流した栄養剤が食道を上がって気管に入り込むことで肺炎を引き起こす「胃食道逆流による誤嚥」です。
液漏れが多いということは、胃内圧が高く逆流しやすい環境にあることを意味します。咳や痰が増えた、微熱が続くといった症状がある場合は、液漏れ対策と同時に誤嚥対策も講じる必要があります。
上体をしっかり起こして注入する、食後すぐには横にならないといった基本を守りつつ、必要であれば栄養剤の形状変更を検討します。
感染症を疑うべき危険なサイン
| 観察項目 | 危険な兆候 | 緊急度 |
|---|---|---|
| 臭い | 腐敗臭、強い悪臭 | 高(細菌繁殖の可能性大) |
| 分泌物 | 膿(緑色やクリーム色)、混濁した液 | 高(感染による排膿) |
| 見た目 | 広範囲に広がる赤み、熱感、腫れ | 中〜高(蜂窩織炎の疑い) |
| 全身症状 | 発熱、悪寒、ぐったりしている | 高(全身感染の恐れあり) |
訪問診療医と連携して行う専門的な処置とトラブルシューティング
在宅での胃ろう管理において、訪問診療医は心強いパートナーです。定期的なカテーテル交換や専門的な処置、適切な薬の処方を通じて、家庭だけでは解決できない問題をサポートします。
定期的なカテーテル交換の頻度と訪問時の処置
カテーテルは消耗品であり、定期的な交換が必要です。バンパー型なら4〜6ヶ月に1回、バルーン型なら1〜2ヶ月に1回が交換の目安です。
訪問診療医は、この交換のタイミングで瘻孔の状態を詳細に観察し、肉芽の有無や皮膚の状態を確認します。
交換時は瘻孔内部の長さを専用の器具で計測し、現在の体型に合ったサイズのカテーテルを選択します。また、バルーンの水量を調整したり、肉芽の焼灼処置を行ったりと、その場で必要な医療処置を完結さられます。
通院の負担なく、自宅のベッド上で専門的な処置が受けられることは、訪問診療の大きなメリットです。
訪問診療医に依頼・相談できること
- カテーテルの定期交換および緊急時の再挿入処置。
- 肉芽に対する硝酸銀焼灼処置や、適切なステロイド軟膏の処方。
- 感染症の診断と、抗生物質等の薬物療法。
- 栄養剤の種類の見直しや、半固形化栄養材導入の指導・提案。
自宅で処方可能な軟膏や保護材の種類と使い方
皮膚トラブルに対して、訪問診療医は医療用医薬品を処方できます。市販の軟膏よりも効果の高いステロイド剤や、感染症治療のための抗真菌薬・抗生物質入り軟膏など、症状に合わせた適切な薬が手に入ります。
また、液漏れを吸収するための医療用ドレッシング材や、皮膚保護剤などの提案も行います。これらの使い方は、同行する訪問看護師から具体的な指導を受けられます。
薬の塗り方やガーゼの当て方一つで、治癒のスピードは大きく変わります。
トラブルが続く場合の精密検査や病院紹介の判断
在宅での処置で改善しない難治性のトラブルや、瘻孔の位置異常、埋没症候群(バンパーが胃壁に埋まってしまう状態)などが疑われる場合は、より高度な設備のある病院での検査が必要になります。
訪問診療医はこうした「病院で診るべき状態」を的確に判断し、連携病院への紹介状を作成します。造影検査や内視鏡検査が必要な場合でも、普段の状態を知っている訪問診療医からの情報提供があれば、病院での診療もスムーズに進みます。
よくある質問
- 胃ろうの周りの皮膚が赤くただれて痛がる場合の応急処置はどうすればよいですか?
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まずは患部を微温湯と石鹸で優しく洗浄し、清潔に保つことが最優先です。こすらずに水分を拭き取った後、ワセリンや亜鉛華軟膏を厚めに塗って、漏れ出る胃液から皮膚を保護してください。
痛みが強い場合やただれが酷いときは自己判断で市販薬を使わず、速やかに訪問診療医に連絡し、適切な軟膏を処方してもらいましょう。
- 胃ろうのカテーテルから栄養剤が漏れてくる原因と止める方法はありますか?
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主な原因として、カテーテルの劣化、サイズ不適合、または便秘などによる腹圧上昇が考えられます。まずはカテーテルが引っ張られていないか確認し、姿勢を整えて腹圧を逃がしてください。
ティッシュ等を詰め込みすぎると穴が広がるため逆効果です。漏れが続く場合は、カテーテルのサイズ変更や栄養剤の半固形化が有効な解決策となるため、医師に相談してください。
- 胃ろうの穴の横にできた赤いできもの(肉芽)は自然に治りますか?
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小さな肉芽であれば、カテーテルの圧迫を取り除くなどの原因除去で自然に縮小することもありますが、多くの場合は処置が必要です。
出血や痛みを伴う不良肉芽は、ステロイド軟膏の塗布や硝酸銀による焼灼処置を行わないと治りにくい傾向にあります。放置すると液漏れの原因にもなるため、早めに医師の診察を受けてください。
- 訪問診療医に胃ろうの交換をお願いする頻度はどのくらいが目安ですか?
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使用しているカテーテルの種類によって異なります。
一般的に、バルーン型(風船で固定するタイプ)は1ヶ月から2ヶ月に1回、バンパー型(キノコ状のストッパーで固定するタイプ)は4ヶ月から6ヶ月に1回の交換が推奨されています。
カテーテルの汚れや劣化具合によっては早めの交換が必要になる場合もあるため、定期訪問に併せて医師が判断します。
- 入浴時に胃ろう部分をどのように洗えば感染を防げますか?
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入浴は皮膚を清潔に保つ絶好の機会です。胃ろう部分をビニールで覆う必要はなく、お湯に浸かっても問題ありません。
石鹸をよく泡立て、指の腹を使ってカテーテルの根元やストッパーの下を優しく洗ってください。重要なのは、石鹸成分が残らないよう十分に洗い流すことと、入浴後すぐに水分を拭き取り乾燥させることです。
