在宅療養を始めるにあたり、多くの方が不安を抱くのが「転倒」と「骨折」です。自宅にいても思わぬ場所でつまずいたり、夜間のトイレ移動でバランスを崩したりするなど、日常生活の中には転倒リスクが数多く存在します。
医療機関への往診や訪問看護を検討する段階で、どのような対策と知識が必要なのかを理解することはとても大切です。
この記事では、骨粗しょう症や慢性疾患との関連、室内環境の整備、そして転倒・骨折が起こった場合の対処法までを具体的に解説します。
家族と一緒に安心して在宅療養を続けるためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
在宅療養における転倒と骨折のリスク理解
在宅での療養生活を考えるときに、最初に確認しておきたいのが転倒と骨折に関するリスクです。
入院中と違って医療スタッフが常に隣にいるわけではなく、家族の目が届きにくい夜間やプライベート空間で事故が起こりやすいという特徴があります。
歩行能力や筋力に不安を感じる方だけでなく、普段は元気な方にも思わぬ形で転倒のリスクが潜んでいます。
骨折をきっかけに生活の質が下がり、寝たきり状態へ移行してしまうケースもあるため、早い段階で具体的な対策を立てることが重要です。
加齢や疾患がもたらす体力低下
年齢を重ねるほど、筋力や持久力、柔軟性が落ちやすくなります。さらに、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を抱えていると、筋力の低下が加速する場合があります。
たとえば、高齢者になると「廊下を歩いている途中にふとバランスを崩した」「立ち上がるときに膝が痛む」「階段の昇降が怖い」などの悩みを抱えやすくなる傾向があります。
こうした日常動作に支障が出始めたときには、単に年齢のせいと決めつけず、適切な医療者へ相談するなどして原因を明確化し、必要な対応を取ることが大切です。
筋力を維持するうえで意識しておきたいポイントは以下のとおりです。
- 食事のたんぱく質量を十分に確保する
- 無理のない範囲で定期的に身体を動かす
- 疲れやすさや息切れが増えたら早めに診察を受ける
血圧や血糖値を安定させるための薬を飲んでいる場合は、調整が合っているか定期的に主治医と相談し、体力の落ち方を観察してください。
体力低下が顕著になると一気に歩行能力が弱まる可能性があるので、変化の兆しを早めに捉えることが重要です。
骨粗鬆症と骨折との関係
骨密度が低下し、骨がもろくなる状態を「骨粗鬆症」と呼びます。とくに閉経後の女性や高齢の男性などで骨折リスクが高まる原因となります。
骨粗鬆症の検査は病院で骨密度を測定するだけでなく、レントゲン写真や血液検査などと組み合わせて総合的に判断します。
下のテーブルは骨粗鬆症を疑うときの主なチェック項目です。早めに医療機関で診断を受ける参考にしてください。
チェック項目 | 具体的な状態 |
---|---|
身長の低下 | 若い頃と比べて3cm以上縮んだ |
腰や背中の痛み | 日常的に背中や腰が重い、または鈍い痛みを感じる |
姿勢の変化 | 猫背になった、背中が丸くなったと指摘される |
軽い衝撃でも痛みが強い | 手をついただけで強い痛みが出る |
内臓機能の低下 | 背骨の変形による内臓への圧迫で食欲低下などが起こる |
骨粗鬆症の治療は、骨を強化する薬剤の服用やビタミンD、カルシウム、タンパク質を意識した食事が中心です。
骨が弱くなっている状態で転倒すると骨折につながる確率が高いため、骨密度が低い方こそ転倒予防に力を入れる必要があります。早期発見と継続的な対策によって骨折リスクを下げることが期待できます。
転倒リスクを高める生活環境要因
室内環境や日常生活での動作が転倒リスクに大きく影響します。廊下や部屋の境目にある小さな段差、滑りやすい床材、暗い廊下やトイレまでの距離など、家庭内には思いがけない「つまずきポイント」が点在します。
例えば、床に置きっぱなしの物や、布団やカーペットの端に足が引っかかるなど、わずかな油断が大きなケガにつながる恐れがあります。
さらに、靴やスリッパが足のサイズに合っていない場合にも転倒しやすくなります。かかとがしっかりホールドされる履物を選ぶことで、室内でも足元が安定しやすくなるでしょう。
屋内移動の際は、歩幅を小さくしてつま先やかかとを強く引きずらないように心がけると、つまずきリスクを下げられます。
早期発見が予後に及ぼす影響
骨折が起こった場合、早めに医療機関を受診するかどうかで予後が大きく変わります。痛みを我慢しているうちに骨折が悪化し、治療やリハビリ期間が長引くケースがあります。
高齢の方の場合、一度の骨折が引き金となって寝たきり状態へ移行することもあるため、「おかしいかもしれない」と思った段階で主治医や訪問診療の相談窓口などに連絡してください。
在宅療養中に少しでも異変を感じたら、本人や家族がどのように対処すればいいのかを前もって把握しておくことが大切です。自己判断で放置すると、結果的に通院負担が増えたり、療養期間が長くなったりする可能性が高まります。
日頃からケガの早期発見と迅速な連携体制を整えることで、回復の見通しをよくすることにつながります。
転倒・骨折を招く要因と危険サイン
自宅での転倒を防ぐためには、どのような要因が関係しているのかを把握し、危険サインを見逃さないことが大切です。
原因には身体面だけでなく、心理的な負担や環境的な問題も含まれます。本人だけでなく家族もこれらを理解し、同じ目線で対策を考えていくと、より安心できる在宅療養環境に近づけるでしょう。
夜間の歩行時トラブルと対策
夜間は足元が暗く、急にトイレに立ち上がったり、電気のスイッチを探すために手元がふさがったりすることで転倒リスクが高まります。
睡眠不足や夜間頻尿などがある場合は、特に気をつけたいポイントです。暗い環境で無理に歩こうとするとバランスを崩しやすくなり、家具の角やドア枠に足や腕をぶつける事故が起こりやすいと考えられます。
対策としては、夜間用の足元灯や、ベッド脇の手すりを取り付ける、寝室からトイレまでの移動距離を短くするなどが挙げられます。就寝前にコップ1杯の水を飲むなどの水分補給を計画的に行い、夜間のトイレ回数を減らす工夫も有効です。
ただし、水分をまったく摂らないと脱水や血圧の乱れを起こすリスクがあるため、主治医や看護師と相談しながらペースを調整すると安心です。
夜間歩行のトラブルと対策の例をまとめています。
夜間によくあるトラブル | 具体例 | 対策例 |
---|---|---|
足元が暗い | 照明のスイッチが遠い | 足元灯を設置する、ベッド周りに照明を置く |
急に立ち上がる | トイレに行くために慌てて起きる | 起き上がり時に手すりを活用する |
方向感覚の乱れ | 真っ暗な廊下で方向がわからない | 常夜灯をつけておく、移動距離を短くする |
寝ぼけやすい | 睡眠薬を服用後にふらつく | 足元をしっかり固定できる履物を選ぶ |
気温差による立ちくらみ | 暖かい寝室から廊下へ移動する際 | 上着を用意しておく、急激に体を動かさない |
薬の副作用やめまい・ふらつきへの注意
高齢者や基礎疾患を持つ方が飲んでいる薬には、眠気やふらつきなどの副作用を伴うものが少なくありません。降圧薬(血圧を下げる薬)では立ちくらみが起こる可能性があり、睡眠導入剤では寝起きの混乱やふらつきが増えます。
本人は「夜眠れないので薬が必要」と思っていても、実際には副作用がバランス能力を落として転倒につながるケースがあります。
主治医や薬剤師と相談し、薬の種類や服用時間、分量を見直すことが大切です。小さな変化でも、めまいやふらつきを感じるようになった時点で医療者に伝え、薬の調整や別の薬への切り替えを検討するのが望ましいです。
予防のために「薬が強いせいかもしれない」と自覚する姿勢を持っておくと、転倒リスクを早めに減らせます。
筋力低下とバランス能力の評価法
日常生活動作がスムーズにいかなくなったと感じたとき、筋力やバランス能力が低下しているかどうかをチェックする方法があります。
たとえば「片足立ちで10秒間キープできるか」「椅子に座った状態から、手を使わずに立ち上がれるか」などの簡易チェックは、筋力やバランス感覚を把握するうえで有効です。
以下のような項目を定期的に実施すると、自分の身体能力の変化に気づきやすくなります。少しでも弱まりを感じたら医療者へ相談して運動指導を受けたり、日常習慣を見直したりするとよいでしょう。
- 片足立ちで10秒以上維持できるか
- 普段歩くときに足を引きずる感覚があるか
- 立ち上がり時に手を膝につかずに起きられるか
- 階段の昇降に膝痛や強い息切れがないか
- 椅子からの立ち上がり時、ふらつきが出るか
慢性疾患との関連を見逃さない
心不全や腎不全、脳血管障害など、慢性疾患を複数抱えているときは、筋力や持久力の低下が急速に進むことがあります。
たとえば、軽い肺炎をきっかけに長期入院をしたあとに急に歩けなくなるなど、体力が一時的に落ちた状態を回復しきれず、そのままバランス能力が低下してしまうケースも見られます。
慢性疾患を持っている方の場合、日常生活での些細な変化が転倒や骨折につながりやすいです。血圧、体重、呼吸状態、むくみなどのバイタルサインを定期的にチェックし、普段と違う兆候が出てきたらすぐに医療者へ相談して対応することが大切です。
下の表は慢性疾患が転倒リスクに影響する例を示したものです。
慢性疾患 | 転倒リスクとの関連 | 対策の一例 |
---|---|---|
心不全 | 動悸や息切れで急に立ち止まる | 定期的な心機能チェック |
脳血管障害(脳梗塞など) | 片麻痺やしびれでバランスを取りにくい | リハビリを計画的に実施 |
腎不全 | むくみや倦怠感で脚が思うように動かない | 体液バランス管理と投薬コントロール |
糖尿病 | 血糖値の変動によるめまいや疲労感 | 食事療法と運動療法を組み合わせる |
パーキンソン病 | 筋肉のこわばりや姿勢反射の低下 | 専門医の指導に基づく内服薬調整 |
家族が把握すべき兆候と声かけ
転倒予防を考えるうえで、家族や介護者の役割は重要です。本人の状態変化にいち早く気づき、適切な声かけができると、事故を防ぎやすくなります。
「最近歩く速度が落ちた」「トイレで転びそうになっていた」「何となく疲れやすそう」などの変化に気づいたら、無理をさせず休憩を促したり、主治医への連絡を勧めたりするとよいでしょう。
本人が「大丈夫だから」「歳のせいで仕方がない」と言う場合でも、家族の目から明らかにいつもと違う様子を感じたら、遠慮なく医療者に報告して対策を考えたほうが安心です。
転倒は一瞬の油断から起きるため、「まだ平気だろう」と思って見過ごすと、後から大きな後悔につながりかねません。
自宅でできる転倒予防策
転倒リスクを下げるためには、本人の体調管理だけでなく、住環境を改善することが有効です。住まいの状況やライフスタイルに合わせて対策をカスタマイズすれば、在宅療養中でも安全と快適さを両立しやすくなります。
医療者と相談しながら進めることもできますし、自治体の福祉窓口などが活用できる場合もあります。どのようにして実践すればよいか、基本的なポイントをいくつか挙げます。
家具配置と段差解消の基本ポイント
通路や居室の段差を解消し、スムーズに移動できる動線を確保しておくことが重要です。
バリアフリーといっても大がかりなリフォームを想定する必要はなく、段差をなくすスロープや床材の貼り替えなど、小規模な改修でリスクを大幅に下げられるケースがあります。
家具の配置を見直して、足や杖がぶつかる障害物を減らすだけでも転倒しにくい環境が得られます。
また、テーブルやベッドの位置を調整し、動きたい方向へすぐに移動できるようにしておくと、急な立ち上がりや方向転換の回数を減らせます。狭いスペースに家具を詰め込みすぎると、身体の向きを変える動作が増え、転倒リスクが上がります。
日常生活に必要なものを取り出しやすい位置にまとめ、余分な物を置かない整理整頓を意識すると安心です。
照明の見直しと動線の確保
暗い環境での歩行は転倒の大きな要因です。高齢の方は光の刺激に対する感度が低下し、若い頃と同じ明るさでは手元や足元が十分に見えない可能性があります。
リビングや寝室だけでなく、廊下やトイレ、洗面所などの小さな空間にも適度な明かりを確保すると快適です。直接目に入る光が強すぎると眩しさで逆に見えづらくなるので、やわらかい光を広範囲に照らす照明を選ぶと良いでしょう。
動線を確保するためには、歩くルートに物を置かない、コード類をまとめて見えにくいようにする、床に敷いたカーペットの端が浮いていないかチェックするなどの工夫が必要です。
室内移動でしばしば障害となるのが、延長コードや配線類のからまりです。危険だと思う部分はまとめて配線カバーなどに入れ、足を引っかけないようにしておきましょう。
下記に照明と動線を整える際のポイントを整理しています。
見直しポイント | 対応策 | 期待できる効果 |
---|---|---|
廊下やトイレの照明 | 足元灯やセンサーライトを導入 | 夜間の視界を確保し転倒リスクを低減 |
部屋全体の照明の質 | 蛍光灯からLEDへの切り替え | 広い範囲を明るく照らし、目の疲れを軽減 |
コード類の整理 | 配線カバーで隠す | 足が引っかかる事故を防止 |
カーペットの端の固定 | 滑り止めテープやシートを貼る | めくれ上がりによるつまずきを減らす |
動線の狭さを解消 | 家具の再配置や撤去 | スムーズな通行で、急な方向転換を抑制 |
補助具の選択と手すりの設置
転倒リスクを低減するうえで、手すりの設置や補助具の活用は非常に有用です。歩行器や杖などの補助具は体の状態に合ったものを選ぶ必要があります。サイズや握りやすさ、重さなど、個人の身体能力や住環境に応じて検討してください。
医療用品店や福祉用具専門相談員が在籍している販売店では、試用もできる場合があります。
手すりを設置する際には、廊下、トイレ、浴室など、立ち上がる動作や方向転換が多い場所に取り付けると転倒の防止につながります。握り部分の形状や高さも個人差があります。
正しい位置や角度で取り付けないと使いづらく、かえってケガにつながる恐れがあります。リフォーム会社や福祉住環境コーディネーターなどに相談しながら進めると安心です。
また、住宅改修費や用具購入費は、要件を満たせば介護保険で賄うこともできるので、行政機関やケアマネジャーに相談されてみるのも良いでしょう。
日常生活に組み込む簡単エクササイズ
筋力低下を防ぐために、負荷の軽いエクササイズを生活習慣に取り入れるとよいでしょう。たとえば椅子に座った状態での足踏み運動や、背もたれを持ちながらのスクワットなど、無理なく続けられるメニューが適しています。
急激な動きで関節を痛めるリスクを減らすために、柔軟運動や体操から始めると安心です。
以下のようなエクササイズを日常生活の合間に行うと、筋力とバランス感覚を維持しやすくなります。
- テレビを見ながら足踏み運動をする
- 椅子や手すりにつかまりながら、かかと上げ下げ運動を行う
- 風呂上がりに軽くストレッチをして足腰の筋肉をほぐす
- 朝起きた時に背筋を伸ばして深呼吸を行い、身体を温める
痛みや疲労感が強いときには休息を優先し、具合が良いときには少しずつ回数を増やすなど、無理のないペースで続けることがポイントです。
骨折時の在宅対応と医療連携
転倒によって骨折が疑われるときは、医療機関を受診するタイミングや応急処置が重要です。在宅療養中に骨折が起こると、通院が難しい場合もあります。
往診や訪問看護を利用すれば、在宅のまま診察や処置を受けられる可能性があります。
ただし、骨折の程度や部位によっては緊急手術や入院が必要になるケースがあるため、「どの段階で医療者を呼ぶのか」「連絡先はどうするか」を家族とともに把握しておくことが大切です。
応急処置の手順と安静保持
転倒して痛みが強い場合や、腫れや変形が見られる場合は、骨折の疑いがあります。応急処置としては、まずは患部を冷やし、固定して動かさないようにすることが重要です。
腕や足の骨折が疑われるときには、雑誌や板など硬いものをあててテーピングやバンデージで軽く固定し、安静に過ごしてください。痛みが激しいときには、無理をせず適切な痛み止めを医師から処方してもらうと身体への負担を減らせます。
動けない場合は無理に移動せず、医師の往診や救急搬送を検討します。本人が痛みを訴えているのに無理に体を起こそうとすると、さらに骨折部分にダメージを与える可能性があります。
「家族だけで対応できるのか」「緊急で救急車を呼ぶのか」を判断するためにも、普段から医療機関の連絡先や応急処置の段取りを共有しておくことが大切です。
受診のタイミングと往診の活用
骨折が疑われるときはなるべく早く診断を受けることが回復を早めるポイントとなります。受診のタイミングは、痛みが強い、腫れが広範囲に及ぶ、変形が見られるなど明らかに重症が考えられるときが基本です。
在宅での移動が難しい方は往診サービスを利用できるか医療機関に相談するか、救急搬送の要否を判断してください。
往診ではレントゲン撮影が難しい場合もありますが、簡易的な診察や必要に応じた薬の処方を行うことが可能です。往診のドクターが状況を見て、入院の必要性や専門病院への紹介を判断する流れになることが多いです。
あらかじめ訪問診療を定期契約している方は、連絡体制が整っているためスムーズに医師と連携できるでしょう。
リハビリ開始時期と痛みコントロール
骨折後はリハビリを始める時期が回復に大きく影響します。痛みが落ち着くまでは安静にする必要がありますが、ずっと動かさないままだと筋力が落ちてしまうので、タイミングを見計らってリハビリを始めるのが望ましいです。
医師や理学療法士が個別にプログラムを組み、少しずつ可動域を広げたり、筋力を回復させたりしていきます。
痛みコントロールも大切で、適切な鎮痛剤の使用や冷却・温熱療法を組み合わせることで、苦痛を軽減しながらリハビリを行えます。痛みが強いままリハビリを進めると、体が緊張して逆効果になる場合があります。
担当医や理学療法士とこまめにコミュニケーションをとりながら、段階的に進めていきましょう。
介護保険サービスの利用例
高齢者で骨折を経験すると、一時的に日常生活動作が大きく制限されることがあります。そのようなときには介護保険サービスの利用を検討すると便利です。
訪問看護や訪問リハビリ、デイサービスなどを活用し、自宅にいながら専門的なケアやリハビリを受けられます。
短期的なサービス利用で状況が改善すれば、再び自立した生活に戻れる場合があります。逆に回復に時間がかかるようであれば、ケアマネジャーや医療者と相談しながら長期的なケアプランを立てることも可能です。
介護度の認定によって受けられるサービス範囲が異なるので、詳しくは市町村の介護保険担当窓口などに問い合わせるとよいでしょう。
下のテーブルに介護保険サービスの一例をまとめています。
サービス名 | 内容 | メリット |
---|---|---|
訪問看護 | 看護師が自宅を訪問し、医療的ケアや健康チェックを行う | 体調変化への対応が早くなる |
訪問リハビリ | 理学療法士や作業療法士が自宅でリハビリを提供 | 自宅環境での動作指導が受けられる |
デイサービス | 日中通所してリハビリやレクリエーションを行う | 外出機会をつくり気分転換になる |
ショートステイ | 施設に短期間入所し、集中的なケアを受ける | 家族の負担を一時的に軽減できる |
福祉用具レンタル | 車いすや歩行器、ベッドなどをレンタルする | 状態に合わせて手軽に用具を導入 |
訪問看護師・ケアマネとの連携方法
骨折による在宅でのケアには、医師だけでなく看護師やケアマネジャーとの綿密な連携が欠かせません。訪問看護師は、定期的なバイタルチェックや創部の観察、本人や家族への衛生指導などを行い、病状の変化を早期に捉えます。
ケアマネジャーは、介護保険サービスの調整や、他職種との連絡窓口となってくれる存在です。
「いつ、誰に、どのような情報を共有するのか」を明確にしておくと、転倒や骨折の予防から万が一の対応までスムーズに行えます。
普段からこまめにケアノートを記録しておく習慣をつけると、異変があったときにも的確に状況を伝えることができます。
リハビリテーションと再発防止のポイント
骨折や転倒を経験した方が再び活動的な生活を取り戻すには、適切なリハビリテーションと再発防止策をセットで考えることが重要です。
単純に骨がくっつくだけでは不十分で、筋肉や関節の機能を高めていかなければ、再度の転倒リスクが高まる可能性があります。リハビリは専門家の指導のもとで計画的に行うことで、より効果的に身体機能を回復できるでしょう。
専門家によるリハビリプログラムの重要性
リハビリを独学で行おうとしても、痛みや疲労の感じ方、適正な運動強度を判断するのは難しいです。理学療法士や作業療法士といった専門家は、個人の身体状況や生活状況を総合的に見ながら、無理なく続けられるプログラムを提供します。
リハビリの進行に合わせてメニューを少しずつ調整し、飽きがこないように工夫してくれるため、モチベーションが保ちやすいです。
また、ただ運動するだけでなく、日常生活での歩行や立ち座りなど具体的な動作をどう改善するかを指導してくれる点も大きなメリットです。
本人が「痛いから動きたくない」と思う心理的なハードルを下げ、適切なサポートを受けながらリハビリを続けることで、再発リスクを抑えながら体力の向上が期待できます。
回復段階別の運動とリハメニュー
骨折後の回復段階はおおまかに「急性期」「回復期」「維持期」に分けられます。急性期には患部の安静と痛みの軽減に主眼を置き、回復期には筋力強化や可動域拡大を促し、維持期には再発防止と体力保持を重点とします。
それぞれの段階で適切な運動を行うことで、スムーズに日常生活へ復帰しやすくなるでしょう。
- 急性期:痛みが強いので、患部を適切に保護し、負担をかけない範囲で軽いストレッチや深呼吸などを中心にする
- 回復期:徐々に関節を動かして可動域を広げる練習や、負荷の軽い筋トレを取り入れる
- 維持期:獲得した筋力やバランスを維持するため、ウォーキングや軽度のスクワットなどを続ける
本人のペースや全身状態を考慮しながら、無理のない範囲で段階的にリハメニューを進めると効果的です。
日常生活へ復帰するための工夫
骨折によって長期間安静にしていた後は、日常動作の一つひとつが負担に感じられます。たとえば、洗顔や調理など立位を維持する動作は意外と体力を使います。
いきなりフル稼働で家事や趣味を再開しようとすると、疲労が蓄積して再び転倒しやすくなるかもしれません。家族やヘルパーにサポートを頼みながら、少しずつ生活のペースを元に戻すことが大切です。
段階的な復帰のコツとして、以下のような方法が挙げられます。
- 1日の活動時間を決めて、無理なくこなせるスケジュールを組む
- 座ったままで行える家事や作業からスタートし、少しずつ立位や歩行が必要な内容を増やす
- 通所リハビリやデイサービスなどを利用し、専門家の目が届く環境で少しずつ活動範囲を広げる
- 小さな進歩を自分や家族が共有して、成果を感じながら取り組む
家族・介護者のサポート体制づくり
在宅でのリハビリや再発防止を成功させるには、家族や介護者の協力が欠かせません。リハビリを続けるうえでのモチベーション維持や、負担が大きい家事の代行、通院や往診時のサポートなど、支え合いの仕組みを作っておくと安心です。
特に高齢の方は、一度転倒すると「また転ぶかもしれない」という恐怖心から外出を避けるようになる傾向があります。
家族や介護者が積極的にコミュニケーションを取り、「体操の時間を一緒にやってみよう」「玄関前を一緒に散歩しよう」など、前向きな声かけを行うことが大切です。
必要に応じてヘルパーサービスやデイケアを導入し、在宅医療チームと連携を取りながら多角的にサポートすることで、本人の負担を減らしつつリハビリ効果を高めることができます。
一方、家族自身が介護負担で疲弊しないようにすることも重要です。
地域包括支援センターや医療ソーシャルワーカーに相談し、利用できる制度やサポート機関を定期的に確認することで、過度な負担を回避しつつ継続的にサポートを行いやすくなります。
- 家族全員で情報共有し、誰がどの役割を担うのか明確にする
- 外部サービス(訪問看護、ヘルパー、ショートステイなど)をうまく活用し、介護者の負担を軽減する
- 定期的にケアカンファレンスを開催し、主治医や訪問看護師、ケアマネジャーと最新の状況を共有する
- 家族同士で休みを取り合ったり、気分転換ができる時間を確保したりする
長期的に在宅療養を考えるうえで、家族と医療・介護関係者がチームになって「どうすれば安心して家にいられるか」を考える姿勢が大切です。
転倒や骨折は大きなダメージにつながりやすいですが、適切な準備と連携でリスクを下げることは十分可能です。
訪問診療を利用するかどうか迷っている方は、今回の記事を参考にして、在宅医療のチームと一緒に取り組む利点を検討してみてください。
大事なのは、遠慮なく専門家に相談し、安全で充実した療養生活を過ごすためにできることを早めに始めることです。
以上