グループホームでの訪問診療 – 認知症ケアの質を高める医療連携

グループホームでの訪問診療 - 認知症ケアの質を高める医療連携

グループホームにお住まいの高齢者は、認知症と診断されており、介護認定されているというのが原則です。

そうした環境で、日常的に医療を受けやすくするための訪問診療は、症状の進行を和らげたり、急変時に落ち着いて対処したりするうえで重要です。

また、スタッフが適切なケア方法を学びながら支援を続けるためにも、医療機関との連携が欠かせないです。

これから、グループホームでの訪問診療がどのように医療アクセスを高め、認知症ケアの質を向上させるのかを詳しく解説します。

目次

グループホームにおける訪問診療の意義と役割

認知症の高齢者を支えるうえで、グループホームは小規模で家庭的な環境を大切にします。そこに訪問診療を導入することで、入居者の安心やスタッフの負担軽減に大きく寄与します。

はじめに、訪問診療がなぜ重要なのか、そしてどのようなメリットがあるのかを整理します。

認知症高齢者の医療ニーズとグループホームの特性

認知症高齢者には生活リズムの乱れやコミュニケーションの難しさがあり、身体面のトラブルも発生しやすいです。一方で、グループホームは家庭的な雰囲気を重視する特徴があります。

病院とは違い、医療機器の充実度は限られていますが、人員配置やスケジュールの柔軟性により、個別ケアを提供しやすい利点があります。

入居者のニーズをまとめると、次のようになります。

  • 進行する認知症症状に応じたこまめな医療アドバイス
  • 慢性疾患(高血圧や糖尿病など)の定期的な評価と治療
  • 夜間や休日の急変時に対応できる体制
  • 終末期や看取りの場にふさわしい配慮

暮らしの延長線上にある医療を実現するためにも、外部からのサポートが大切です。

少し視覚的にイメージを整理します。

グループホームの特性利点注意点
小規模で家庭的な環境一人ひとりに目が行き届きやすいスタッフ数が限られる
生活リズムの柔軟な設定が可能個別性に合わせたケアプランが立案しやすいケアマネジメントが複雑化しやすい
地域に密着近隣との交流や地域資源の活用がしやすい緊急時に迅速な医療連携が必要

入居者の生活の質向上につながる医療提供

認知症高齢者にとって、慣れた場所や顔なじみのスタッフとの生活は落ち着きを保ちやすいです。そこへ医療的なケアを組み込むことで、日常の質を高める効果が得られます。

たとえば、食事や排泄の状況に合わせて薬を調整したり、皮膚トラブルの早期発見につなげたりできます。また、嚥下機能や口腔ケアも継続的にフォローすることで、肺炎などのリスクを下げることが可能です。

日常生活と医療の両面を合わせた支援を意識することで、入居者は心身ともに穏やかな時間を過ごしやすくなります。

次の一覧に、訪問診療があることで得られる主な利点を挙げます。

  • 定期的な健康チェックにより、些細な異変に早く気づける
  • 外来通院のストレスを減らし、本人の生活リズムを崩しにくい
  • 医療と介護スタッフの連携が密になるため、ケアの統一性を保ちやすい
  • 家族も医師と直接対話しやすく、現状を把握しやすくなる

看取りまでを支える継続的な医療ケア

認知症の方は身体合併症を引き起こしやすく、病状が急変するリスクがあります。終末期に向かう過程では、通院が困難になるケースがさらに増えます。

その状況でこそ、訪問診療による継続的なケアが力を発揮します。血液検査、ポータブルエコー、医療処置などを含め、質の高い医療を提供することができます。

日々の変化をスタッフと共有しつつ、本人の状況に合わせた治療方針やケアプランを検討できるため、安心して最期まで見守る体制をつくりやすいです。

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項目具体的な内容大切なポイント
定期的な健康観察バイタルサイン測定、栄養状態チェック小さな変化の報告・連絡を徹底する
診察と治療方針の決定診察後に薬剤調整や処置方法を検討入居者や家族の意思を尊重した選択が必要
看取り時の緩和ケア対応痛みや不安を和らげる薬剤の使用苦痛軽減と本人らしい暮らしの両立
家族とのコミュニケーション説明や相談を密に行い、不安を軽減するこまめな状況報告とケア内容の共有が重要

介護スタッフの安心感と負担軽減

認知症ケアでは、介護スタッフの適切なケア技術と精神的安定も大切です。

体調が急変したときや、認知症特有の行動・心理症状(BPSD)が強く出たときに、医師と直接連絡を取り合える安心感は大きいです。

訪問診療により、医師が定期的に顔を出してくれることでスタッフが気軽に相談しやすくなり、チームとしてのケア体制を整備しやすくなります。

グループホーム内での医療対応に対する不安が和らぎ、スタッフが落ち着いて入居者と向き合えるようになる効果が期待できます。

これによってスタッフの定着率も高まり、結果的に施設全体のサービス品質向上につながります。

訪問診療による認知症ケアの質的向上

ここからは、訪問診療がどのように認知症ケアの具体的な質向上につながるのかを見ていきます。認知症は個人差が大きく、症状の進行具合もさまざまです。だからこそ、専門家との連携が極めて重要です。

認知症の進行に合わせた適切な医療介入

認知症の進行度や種類によって、必要とされるアプローチは異なります。医師が定期的に入居者を診ることで、軽度〜中等度〜重度への移行段階を見極め、早い段階での介入ができます。

軽度の時期には記憶力の低下や意欲の減少を軽減する治療に注力し、中等度以降には活動量やコミュニケーションを維持する工夫を盛り込みます。

入居者の状態変化を見落とさずに対応するためには、医療だけでなく介護やリハビリ職との連携が大切です。特に、認知症が原因で身体の動きにも支障が出始めると、リハビリの支援が重要になります。

歩行練習や転倒予防など、日常動作を保つ方法を多角的に検討できます。

  • 認知症が初期段階: 日々の生活習慣を見直し、負担を減らしながら認知機能を刺激する
  • 中等度の段階: 医療との連携で薬物療法や心理ケアを強化し、本人のストレスを緩和する
  • 重度の段階: 体力の低下や意思表示の難しさを考慮し、穏やかに生活を送れる環境づくりを行う

薬剤調整と多剤併用の改善

高齢者は複数の疾患を抱えていることが多く、薬の種類も増えがちです。しかし、薬同士の相互作用で副作用が強く出たり、本来の効果が得られなくなったりするリスクがあります。

訪問診療医が定期的に診察すれば、以下のような点を随時チェックできます。

  • 認知症治療薬の効果と副作用のバランス
  • 生活習慣病(高血圧・糖尿病など)の投薬状況
  • 眠剤や抗精神病薬の必要性と用量

認知症高齢者は飲み忘れや飲み違いも起こしやすいので、スタッフと連携しながら服薬状況をこまめに確認し、副作用や相互作用を未然に防ぎます。

余計な薬を減らすことで身体への負担が和らぎ、日中の眠気やふらつきも軽減される可能性があります。

チェックポイント主な内容効果
服薬状況のモニタリング薬の種類・服用時間・飲み忘れなど副作用や相互作用の早期発見
薬剤ごとの効果検証認知症治療薬、抗精神病薬など本人の症状に合わせた治療がしやすい
定期的な診断書の更新投薬理由や必要性の評価不要な薬を減らし身体的負担を軽減
スタッフとの情報共有飲み方や副作用に関する注意点ケアの一体感を高める

行動・心理症状(BPSD)への医療的アプローチ

徘徊や暴言、興奮、幻覚など、認知症特有の行動・心理症状(BPSD)が強く出ると、対応するスタッフや周囲のストレスも高まります。

訪問診療医がそうした症状を診断し、薬物療法や心理療法のサポートを行うことで、ケアの負担を軽減できます。

また、本人の生活環境を医師が実際に確認し、BPSDを引き起こす要因を一緒に考察できる点も大きな利点です。

原因が病気ではなく、生活リズムやコミュニケーション方法にある場合は、スタッフのケア方法を見直すだけで症状が落ち着くケースもあります。

グループホーム全体でBPSDに対処する方針を共有し、個別のケアマネジメントを行うことで、本人が安心できる日常をサポートします。

身体合併症の早期発見と管理

認知症がある方は自分の不調を言葉で伝えづらい場合があります。そのため、身体合併症を見逃して病気が進んでしまうリスクが高いです。

訪問診療で定期的に診察を受けることで、以下のような病気を早期に発見・管理しやすくなります。

  • 肺炎、尿路感染症、褥瘡などの感染症
  • 心不全や脳血管障害などの循環器系トラブル
  • がんや慢性呼吸器疾患などの重篤な病気

スタッフと医療者が常に情報交換し、体温や食事量、排泄状況などを共有することで、ちょっとした兆候の段階で検査や処置に結びつけやすいです。

結果的に入居者の負担を少なくしながら、重症化を防ぐことにつながります。

グループホームと医療機関の効果的な連携モデル

グループホームで訪問診療の利点を十分に活かすためには、医療機関との連携体制を整備する必要があります。双方向で情報を交換し、緊急時にも対応できる関係を築くことがポイントです。

訪問診療クリニックとグループホームの連携体制構築

連携体制を整える際には、医師や看護師が定期的にグループホームを訪問するだけでなく、施設側からも適宜医療機関に情報提供ができる仕組みが大切です。

双方が「必要な情報」を「適切なタイミング」で共有することで、入居者一人ひとりに合った医療を届けやすくなります。

具体的な取り組みの一例を挙げます。

  • 定期訪問日程を決め、月に数回程度、医師が診療時間を確保する
  • 常に連絡可能な窓口を設け、日中・夜間の緊急連絡方法を明確にする
  • 訪問時に気づいた問題点をスタッフとすぐに共有する

下記に訪問診療の頻度と連絡体制の一例を整理します。

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項目内容備考
定期訪問の頻度月2回または週1回などの定期スケジュール施設の入居人数や状態に応じて柔軟に設定
緊急時連絡先医療機関のオンコール体制看護師や医師の携帯番号を共有
記録の共有タイミング診察後や緊急対応後重要事項はメールやFAXで即時送信
情報交換の定期ミーティング担当医、看護師、ケアスタッフで意見交換入居者の状態報告と対応策の検討

情報共有システムの活用と記録の一元化

グループホームにはアナログな記録方式を採用するケースが多いですが、訪問診療を円滑に進めるためには、スタッフや医師間で正確かつタイムリーな情報共有が必要です。

記録を電子化する方法や、オンラインで閲覧できるクラウドサービスを導入すると、以下のメリットを得やすいです。

  • 過去の診察内容や処方履歴を瞬時に確認できる
  • 医師がグループホーム外にいてもデータをリアルタイムで閲覧・指示できる
  • 重複する検査や不要な薬剤処方を防ぎ、効率的な医療提供が可能になる

記録の一元化はヒューマンエラーの低減にもつながります。スタッフが交代しても同じ情報を参照でき、ケアの継続性を保ちやすいです。

緊急時対応プロトコルの整備

高齢者が多く暮らすグループホームでは、予期しない体調急変が起こるリスクが常にあります。緊急時にあわてず動けるよう、事前にプロトコルを準備しておくことは非常に重要です。

具体的には次のような内容を決めておきます。

  • 倒れたり意識がなくなった場合の優先連絡先
  • 救急搬送を判断する際の基準(バイタルサインの数値など)
  • 看護師や医師が現場に到着するまでに施設側で行う応急処置

訪問診療を依頼している医療機関が救急車への同行や受け入れ先の手配をどの程度支援できるのかも、平時から確認しておくことでスムーズな対応が可能です。

次の一覧は、緊急時対応を円滑化するために必要なポイントです。

  • 連絡手段: 医師や看護師の直通電話、緊急時のメール連絡網
  • 必要物品: 救急カート、応急処置用具の定期点検
  • スタッフ教育: バイタルサイン測定の手順、応急処置の基本
  • 役割分担: 通報係、応急処置係、他入居者の安全確保係など

多職種カンファレンスの実施と効果

医療と介護だけでなく、リハビリ職や管理栄養士、ケアマネジャー、そして家族を含めた多職種で情報を交換する場を設けると、個々の入居者に合わせたケアプランをよりきめ細かく考えられます。

特に認知症ケアは、心理面や身体面を総合的にフォローする必要があるため、多彩な専門家の意見が重要です。

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参加職種主な役割効果
訪問診療医診断、治療方針の提示医療的見地からの具体的アドバイス
看護師健康観察、医療処置のサポート日々の異常兆候を早期に報告
介護スタッフ日常的なケア、本人とのコミュニケーション実際の生活状況を細かく把握
管理栄養士食事プランの作成、栄養管理嚥下障害や食欲低下への対策
リハビリ職運動機能維持、身体機能向上の支援転倒予防や日常動作の維持
ケアマネジャー全体のケアプラン調整、サービス調整各専門職との連絡・調整を一元化しやすい
家族本人の背景や意向の共有家庭状況や本人の希望をより深く理解できる

こうした会合で意見を交わし、共通の方向性を持つことで、入居者が自分のペースを尊重されつつ安心して暮らせる体制を整えやすくなります。

家族を含めた意思決定支援

認知症高齢者の意思表示が難しくなると、家族が大きな決定を代行する場面が増えます。しかし、家族だけでは判断が難しい医療面の選択肢も存在します。

そこへ訪問診療医が加わることで、状況の説明や治療方針について丁寧に説明し、家族の不安や疑問を解消しながら適切な判断へ導きやすくなります。

グループホームでは普段の生活の様子もスタッフが把握しているため、医療者と家族が話し合う際には具体的な情報を提供できます。本人の意向を尊重したケアや治療方針を築くうえで、大切なプロセスです。

訪問診療を活用したグループホームでの看取りケア

人生の最終段階を迎える高齢者にとって、落ち着いた環境で最期まで暮らし続けることは大きな安心感につながります。グループホームを利用しながら看取りを迎えるケースは年々増えています。

そこに訪問診療を組み合わせる意義について見てみます。

グループホームでの看取りの現状と課題

従来、看取りは病院で行うことが一般的でしたが、近年では住み慣れた施設や自宅で看取りを希望する方が増えています。

グループホームは「家庭的な環境」を特徴とするため、終末期のケアを提供しやすい利点があります。ただ、以下のような課題もあります。

  • 施設によって看取り経験が異なり、スタッフのスキルにばらつきがある
  • 医療的な処置や緊急対応に限界がある
  • 家族とのコミュニケーションが不足すると、意向が伝わりにくい

訪問診療を活用することで、医療的なサポートを継続でき、スタッフの戸惑いも軽減しやすくなります。終末期のケアに必要な体制づくりが十分に行われれば、安心して看取りに集中できるでしょう。

訪問診療医による終末期ケアの実践

看取り期に入ると、日常的なケアだけでは対処できない症状コントロールが重要になります。

痛みや呼吸困難、意識混濁などが生じたときに、医師が適宜訪問し処置や薬剤調整を行うことで、本人の苦痛を大きく和らげられます。

また、家族やスタッフが困惑する場面でも、在宅医が対応できるケースも多く、緊急搬送の頻度を減らすことができます。

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看取り期に多い症状訪問診療での対応期待できる効果
痛み鎮痛薬の処方や使用量調整苦痛の軽減、快適な終末期生活
呼吸苦酸素投与の指示や苦痛緩和の薬剤使用息苦しさを緩和し、安らぎを保つ
不穏、せん妄抗精神病薬や睡眠導入剤の適切な処方本人の混乱と家族の不安の軽減
栄養・水分摂取低下点滴の検討や、無理のない補給方法のアドバイス余計なストレスを与えず、苦痛を減らす

医師が定期的に状態を観察することで、不要な医療行為を控えたり、必要な処置だけに絞ったりする選択ができ、穏やかな看取りを進められます。

アドバンス・ケア・プランニングの重要性

看取り期には、どこまで医療行為を行うかという判断が何度も求められます。

そのため、本人がまだ意思表示できる段階から自分の最終的な医療・ケアの希望を話し合うアドバンス・ケア・プランニング(ACP)が重視されます。

グループホームと訪問診療医、そして家族が一緒に本人の価値観や人生観を踏まえた選択肢を整理しておくことで、いざというときに迷わずにケア方針を決めることができます。

訪問診療の現場ではACPをサポートする機会が多く、本人の変化に合わせて定期的に内容を見直します。その結果、最終段階になって慌ただしく判断を迫られることを防ぎ、落ち着いたケアを実現しやすくなります。

看取り後のケアと振り返り

グループホームで看取りを終えた後、スタッフや家族には喪失感や疲労が残る場合があります。

チーム全体で振り返りを行い、対応の良かった点や改善すべき点を共有することは、今後のケアの質を高める上で大きな意味を持ちます。

また、スタッフ同士が精神的負担をフォローし合える環境づくりも大切です。訪問診療医がそこでの医療的視点を提供し、ケア全体を評価することもできます。

訪問診療連携による地域包括ケアの推進

認知症高齢者を支えるには、グループホームだけでなく、地域全体で協力する仕組みが必要です。

訪問診療を活用したケアモデルを地域に広げることで、他の介護施設や医療機関とも連携しやすくなります。

グループホームを核とした地域連携の可能性

グループホームは地域に開かれた小規模施設なので、周辺の医療機関や自治体、さらにはボランティア団体などとのつながりをつくりやすいです。

訪問診療の支援を受けながら、地域の医療・介護資源を有効に活用すれば、高齢者だけでなく家族や地域住民も含めたコミュニティづくりへとつながります。具体的には、次のような連携を考えられます。

  • 地域のクリニックや病院との情報交換を活発化し、医師の訪問診療を受け入れやすくする
  • デイサービスやショートステイなどの在宅介護サービスと連携し、入居者の生活を支える
  • 地域の住民向けに認知症カフェや勉強会を開き、正しい認知症理解を広める

認知症ケアパスにおける訪問診療の位置づけ

認知症ケアパスは、認知症の人と家族がいつ、どのようなサポートを受ければいいかを示すガイドラインのようなものです。

グループホームが選択肢に含まれる場合、訪問診療が病院と在宅(施設)を結ぶ橋渡し役として設定されることが増えています。薬物治療やリハビリテーション、看取りまで一貫して関われる点が強みです。

  • 早期発見・初期治療: 病院で診断を受けたあと、適切なタイミングで訪問診療が入る
  • 中期の生活支援: グループホームなどの施設における生活を医療面からサポート
  • 終末期ケア: 訪問診療と施設のケア体制を強化し、看取りまで継続的に関与

このようにケアパス上に訪問診療を位置づけることで、医療と介護が途切れなく結びつき、認知症高齢者が安心して暮らしを続けられます。

地域の医療・介護資源との協働

在宅医療や訪問看護、リハビリセンター、福祉用具事業所など、地域にはさまざまな医療・介護資源があります。

グループホームがそうした専門家やサービスを取りまとめる役割を果たすことで、入居者にあった支援を組み合わせやすくなります。

訪問診療医もそのネットワークの一員として、緊急時や状態変化に合わせて対応を調整できます。

次の一覧は、地域との協働を高めるために役立つポイントです。

  • 近隣の訪問看護ステーションとの情報交換を活発化する
  • 福祉用具事業所と定期的に連絡を取り、車いすや介護ベッドのメンテナンスを円滑にする
  • 認知症カフェや地域の交流会にスタッフや医療者が参加して、顔の見える関係性をつくる
  • 公的機関の包括支援センターなどと連携し、制度の活用方法を学び合う

認知症高齢者を支える地域づくりへの貢献

グループホームが中心となって訪問診療を受け入れ、地域の医療・介護資源と連動すると、周辺住民にも大きなメリットが生まれます。

認知症の方やその家族が気軽に相談できる場所や仕組みが身近にあると、孤立しにくくなるからです。結果として、地域全体が高齢者を包括的に受け入れる土壌を育てやすくなります。

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取り組みの例地域への効果グループホームの役割
認知症相談窓口の開設相談先が明確になることで不安の早期解消を図りやすいスタッフや訪問診療医が窓口対応をサポートする
地域住民向けの健康チェックイベント日頃から健康管理の意識を高め、認知症予防や早期発見に役立つグループホームのスペースを開放する
学校との連携(世代間交流)子どもたちが認知症を理解し、自然な交流を深めるイベント企画や情報提供を行う
地域包括ケアネットワーク構築病院や介護施設、行政が連携しやすくなり、緊急時も協力体制があるコーディネーターとして関係機関をつなぐ

訪問診療連携の実践事例と今後の展望

訪問診療を取り入れたグループホームの医療連携は、多くの地域で徐々に広がりを見せています。実践の成果と、今後の改善点を総合的に考えてみます。

医療・介護報酬制度を活用した持続可能な連携

訪問診療や施設ケアに関する報酬制度は、年々見直しがおこなわれています。上手に活用すれば、グループホームと医療機関が協力して継続可能な連携体制をつくることが可能です。

具体例としては、次のような制度が挙げられます。

  • 訪問診療にかかる費用負担を抑えるための公的医療保険
  • 介護サービスとの併用で負担を軽減する介護保険
  • 在宅療養支援診療所や地域包括ケア病棟などの整備

連携の取りやすさは、利用者だけでなく、医療機関と施設側の経営面にも影響します。無理のない形でサービスを提供するために、報酬制度の理解は欠かせないです。

項目主な内容メリット
在宅療養支援診療所訪問診療に特化し、24時間対応などを行う緊急時にも受け入れ体制を整えやすい
介護保険サービス(訪問看護など)医療ケアと併用して利用可能医療費・介護費の負担を分散し利用しやすくなる
地域包括ケア病棟急性期後のリハビリや医療を継続して提供グループホームに戻る前の中間的ステップを確保できる

ICT活用による連携強化の可能性

情報通信技術(ICT)の進歩により、遠隔モニタリングやオンラインミーティング、電子カルテの共有など、多様な連携手法が増えています。

グループホームでICTを活用すれば、医師が訪問できない時間帯でもスタッフが撮影した動画や写真、バイタルデータを共有し、仮の診断や応急処置のアドバイスを受けることができます。

多職種ミーティングをオンラインで開催すれば、集まる手間を減らしながらも質の高い情報交換が行えます。

スタッフがICT機器に慣れるための研修や、セキュリティ対策への注意も重要です。うまく取り入れれば、時間的・空間的な制約を超えてケアの質を高められるでしょう。

人材育成と教育体制の構築

訪問診療を活用するグループホームでは、医療知識や看取りケアの経験を持つスタッフが求められます。

医師から直接アドバイスをもらえる場が多いことを人材育成のチャンスにして、スタッフ全員の専門性を高める取り組みが大切です。

  • 勉強会や研修: 訪問診療医を講師に招き、認知症ケアや医療的処置の基礎を学ぶ
  • 先輩スタッフとの合同研修: 経験豊富なスタッフが実例を共有し、現場に即した技術と知識を学ぶ
  • 資格取得支援: 介護福祉士、認定看護師などの資格取得を支援し、人材のスキルアップを促す

このような体制を整備することで、現場のモチベーション向上や離職率低下にもつながり、長期的に安定したケアを提供できます。

今後の課題と展望

訪問診療を利用して認知症ケアを充実させる流れは広がりを見せていますが、以下の課題も残っています。

  • 施設が乱立し、医師の訪問スケジュールが過密になりやすい
  • 訪問診療の知名度が低く、利用者・家族が選択肢として認識していない
  • 地域差が大きく、都市部と地方でサービスの質に偏りがある

これらを克服するためには、地域全体の連携体制のさらなる強化や、医療者と施設スタッフの人的リソース拡充が求められます。

ICTや制度活用、新しい連携モデルなどを取り入れながら、より柔軟に対応することが重要です。

よくある質問

訪問診療を受けたいのですが、どうやって医療機関を探せばいいですか?

まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。地域の在宅療養支援診療所や訪問診療を行うクリニックを紹介してもらえます。

また、インターネットで検索し、口コミや評価を参考にすることも一案です。

訪問診療があると費用が高くなりませんか?

医療保険や介護保険を活用すれば、通常の外来受診と大きく変わらない自己負担で利用できるケースが多いです。

病状や制度によって負担割合が違うため、事前に医療機関やケアマネジャーに相談してみてください。

急な体調不良や緊急時はどのように対応してもらえますか?

訪問診療を行う医療機関では、24時間のオンコール体制を整備している場合があります。

グループホームと緊急連絡手段を共有し、どの段階で救急搬送を検討するか事前に打ち合わせておくと安心です。

家族が遠方に住んでいる場合でも、看取りまできちんと対応してもらえますか?

訪問診療によって継続的に健康管理が行われれば、遠方の家族でも細かい状態を把握しやすくなります。

オンライン通話やメールを活用して医師やスタッフが家族に情報を伝え、終末期のケア方針を検討することも可能です。

訪問診療と外来通院を併用することはできますか?

本人の状態や家族の希望に応じて、併用できます。

必要な検査は外来通院で行い、普段の診察や処方などは訪問診療で対応する形にすると、通院負担を抑えながら医療を受けられます。

今回の内容が皆様のお役に立ちますように。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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