訪問診療を支える看護小規模多機能型居宅介護の力 – 現場の負担軽減とケア品質の向上を目指して

訪問診療を支える看護小規模多機能型居宅介護の力 - 現場の負担軽減とケア品質の向上を目指して

在宅での医療や介護を検討する方々にとって、どのようなサービスを組み合わせれば暮らしの安心につながるのかは大きな関心事です。

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、通い・泊まり・訪問介護・訪問看護といった複数の機能を一体化し、幅広いニーズに対応できる特徴があります。

医療機関による訪問診療との連携を深めることで、利用者と家族にとっての負担を和らげ、生活の質の向上をめざす取り組みが進んでいます。

以下では、看多機の概要やサービス特性、訪問診療との協働の具体例を詳しく解説し、今後の展望や導入のポイントなどを包括的にご紹介します。

目次

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の基本理解

在宅での生活を総合的に支えるために誕生した看多機は、日常生活のケアだけでなく医療的ニーズにも応えられるところが大きな魅力です。利用者自身や家族にとって安心感を得やすいサービスとして注目されています。

ここでは看多機の定義や特徴、そして主なサービス内容を一通り把握することが重要になります。

看多機の定義と特徴

看多機は、1つの事業所で「通い」「泊まり」「訪問介護」「訪問看護」のサービスを柔軟に受けられる点が大きな特長です。介護と医療を兼ね備えた対応力を持つことで、利用者の状態変化にも素早く対応できます。

通所と訪問の両方をスムーズに利用できるため、利用者や家族が複数の事業所を探し回る負担を軽減する利点があります。

また、看護職員が常駐し医療処置が行いやすい仕組みになっているため、医療依存度が高い方の在宅ケア継続をサポートします。

次の一覧は看多機の基本的な特徴をまとめたものです。

項目主な内容
医療的ケアの対応範囲バイタルチェック、点滴管理、在宅酸素管理などが可能(医療連携体制に応じて変動)
同一事業所での一体サービス「通い」「泊まり」「訪問」機能を組み合わせ、柔軟な利用形態を提供
利用者の居宅までのアクセス地域密着型サービスとして近隣を中心に対応し、緊急時にも駆けつけやすい
介護度の幅広い受け入れ自立度が高い方から要介護5まで、状態に合わせたケアプランを立案可能

看多機は利用者に合わせてサービスの組み合わせを変えられるため、在宅生活を継続するうえでの選択肢として注目されます。

「通い」「泊まり」「訪問介護」「訪問看護」の一体的サービス

看多機の大きなメリットは、事業所ごとに分断されやすいサービスを1つの事業所で一貫して利用できることです。

通いで日中のケアを受けていた方が体調不良となった場合でも、そのまま泊まりのサービスを利用できたり、必要に応じて訪問看護に切り替えたりと柔軟に対処が可能です。

利用者本人や家族にとっては、変化が生じた際にも途切れのないケアを続けられる点が大きな安心材料になります。

利用者の状態が急変する恐れがある場合や、一定期間だけ泊まりが必要な場合でも、担当スタッフがサービス間をまたいで情報を共有しながら関わるため、引き継ぎに伴うストレスが少なくなります。

多職種が連携して包括的に支えられる仕組みが、看多機の重要なポイントです。

医療と介護の連携による包括的ケア

看多機では看護師が常勤または常駐しているため、介護度が高く医療的処置が必要な方に対して、安心した支援を展開できます。

たとえば、褥瘡の処置や経管栄養、在宅酸素療法なども看護師が対応し、状況に応じて医師の指示を仰ぐなど、医療連携を密に行います。

これにより、「入院せずに在宅で最期まで暮らしたい」という希望を持つ方にとっても、具体的な実現が見込みやすくなります。

医療機関と看多機が情報を共有する仕組みが構築されれば、細かなバイタルサインの変化なども早期にキャッチして診療につなげることができます。

経営母体が病院である看多機も存在し、そうした場合は連携がよりスムーズに行われやすい点が長所と言えます。

看多機が支援する主なニーズと対象者

看多機がカバーするニーズは幅広く、高齢者だけでなく、難病などで医療的ケアが欠かせない方にも利用が検討されます。

たとえば、在宅酸素や点滴管理、長期的な医療的サポートが必要な方でも、自宅に近い環境で生活を続けられる選択肢として活用できます。

さらに、家族の介護負担が重いケースでは、泊まりサービスを一時的に利用することで家族が休息をとれるなど、レスパイト的な機能を担います。

次の一覧は、看多機の利用対象となり得る具体例です。

状況・ケース看多機の活用例
高齢者の要介護度が高いケース常に医療的ケアが必要な場合にも、看護師が常駐している環境で継続ケアが実現しやすい
末期がんなど終末期ケアが必要な方痛みのコントロールや看取りのケアを含む在宅支援にスムーズに対応
家族の介護疲れが大きい場合通い・泊まりを組み合わせ、家族が息抜きできる仕組みを作りやすい
若年性疾患や難病への対応病状変化に合わせて訪問・通いを柔軟に利用し、安定した在宅療養をサポート

このように、看多機は在宅医療や介護における不安を軽減しながら、本人に最も近い環境でケアを受けられる点が魅力です。

訪問診療と看多機の連携メリット

看多機の特色が生きるのは、医療機関による訪問診療と連動させた取り組みです。訪問診療は医師や看護師が自宅に足を運んで診察・治療を行うため、外来受診が困難な状態の方にとっては欠かせない存在です。

看多機と訪問診療の情報共有や連携が進むと、より質の高い在宅ケア体制が整いやすくなります。医師と看護スタッフが連携し、緊急時にも素早く連絡を取り合える点は利用者にとって安心材料と言えます。

退院直後の在宅移行支援における連携強化

急性期や回復期の入院を経て退院した方が、在宅療養にスムーズに移行するには、医療と介護の密接な連携が重要です。看多機が関わることで、退院後すぐに通いを利用でき、必要に応じて泊まりや訪問看護を組み合わせられます。

退院前から訪問診療の医師や看多機スタッフがカンファレンスを行い、本人や家族の不安点を整理しておくと、退院後の生活を落ち着いてスタートしやすくなります。

退院直後は体調が不安定になりやすいため、ちょっとした変化を見逃さず早期に医療介入ができる体制を整えることが大切です。

看多機と訪問診療を合わせたチームが連携しておけば、通院困難な利用者にとっても安心できる環境が実現しやすくなります。

次の一覧は退院直後の在宅移行で想定されるケアの例です。

ケア内容具体的な対応
バイタルチェック血圧、脈拍、呼吸数、体温などを連日モニタリング
創部の管理手術後の創部消毒やドレーン管理
薬剤の内服・管理処方薬の飲み忘れや副作用チェック
栄養状態の評価食事摂取量の把握や必要時の経管栄養管理
リハビリテーション在宅での訪問リハビリと通いサービスを組み合わせ、ADLを維持向上

このような支援を自宅で継続するにあたり、訪問診療の存在と看多機のフレキシブルなサービスが大きく貢献します。

末期がん患者の看取りケースにおける協働

看多機はターミナル期(終末期)のケアにも力を発揮します。

通常、末期がんで痛みのコントロールや緩和ケアが必要になる場合、在宅での看取りを望んでいても「医療面が不十分ではないか」「家族の精神的負担が大きいのではないか」と心配する方も少なくありません。

看多機に看護師が常勤し、訪問診療の医師と常に連絡を取り合っていれば、痛み止めの調整や呼吸苦の緩和など、在宅でも適切な医療支援を受けられる可能性が高まります。

看多機を利用すると、体調が悪化した際は泊まりサービスを使って医療処置を集中的に行い、その後再び自宅で生活を続けるなど柔軟に調整しやすくなる点も特徴です。

家族が一定期間だけ看多機に頼れる体制を整えることで、看取りまでの長い時間を在宅で過ごしやすくなります。

医療依存度の高い利用者への対応

気管切開や人工呼吸器の管理、IVH(中心静脈栄養)の留置など医療依存度が高い方に対しても、看多機が支えとなるケースが増えています。

訪問診療と看多機が連携を図ることで、医師の指示のもと看多機の看護師が日々のケアを行い、異常があれば直ちに医療側に連絡を取り合う仕組みが機能します。

本人だけでなく家族も「もしものときにすぐ対応してもらえる」という安心感を得やすくなり、自宅での生活を継続するハードルを下げられます。

利用者の日常生活全体を看多機が把握していれば、体調変化の前兆があった際に気付きやすくなります。

医師が訪問診療に来るタイミングだけでは把握しきれない部分を看多機が補い、連絡体制を強化することで重篤な事態を未然に防ぎやすくなります。

診療報酬改定による連携促進策

近年、在宅医療の推進を目的として診療報酬・介護報酬双方において改定が行われています。

看多機と訪問診療の連携を促すための報酬項目も整備されつつあり、連携実績やカンファレンスの開催などが評価される仕組みが見られます。

医療者だけでなく、介護事業者にも連携のインセンティブが働くことで、利用者本位のケア体制が広がりつつあります。

看多機における医療的ケアの実際

看多機は名前に「看護小規模多機能」とある通り、医療的なケアを見据えた体制を構築しています。看護職員を中心に、利用者の状態に合わせて適切な処置や管理が行われるため、在宅療養を支える仕組みとして価値があります。

医師との連携も深く、利用者を総合的に支援できます。

看護師を中心としたトータルケア体制

看多機では、看護師が複数人在籍しているケースが多く、利用者の医療行為や健康管理を一元的に担います。医師・薬剤師・管理栄養士・リハビリスタッフなどとも連携しながら、必要な医療的ケアを行う仕組みを整えています。

訪問診療の医師から診療情報を共有された場合も、看多機の看護師が日常の観察や処置を行い、変化があればすぐ医師に相談する流れが確立しやすくなります。

利用者の状態は日々変化するため、スタッフ間でコミュニケーションを密に取り、時間帯やサービス形態を超えて医療と介護を連動させることが重要です。

対応可能な医療処置の範囲

看多機で対応できる医療処置は、主治医の指示や地域の連携状況によって異なりますが、以下のような事例が挙げられます。

  • 経管栄養(胃ろう・経鼻栄養チューブなど)の管理
  • ストーマ(人工肛門)のケア
  • 点滴やIVHラインの管理
  • 在宅酸素療法(HOT)や人工呼吸器の操作補助
  • 排痰ケアや吸引
  • 床ずれ(褥瘡)の処置
  • 注射や採血(医師の指示・管理体制による)

上記の処置に加え、日常的なバイタルチェックや服薬管理も行うため、利用者の状況をきめ細かく把握できます。家族が自力では難しいケアも看多機のスタッフが担うため、在宅療養のハードルを下げやすくなります。

主治医との連携による医療管理

医療的ケアが必要な利用者の場合、看多機のスタッフは主治医との連携をこまめに行い、指示書の内容を遵守しながら業務を進めます。

訪問診療が入っている場合はカンファレンスを実施し、利用者の病状やケア方針を共有して調整を図ります。

スタッフ同士だけでなく、医師との連絡にも時間を惜しまず取り組むことで、利用者にとって安心感のあるケアが続けやすくなります。

次の一覧は、主治医との連携が重要になる要素をまとめたものです。

要素具体的内容
診療情報の共有病名、治療方針、薬剤情報、注意点などを相互に把握
緊急時の対応指示夜間や休日でも連絡を取り合える体制づくり
定期的な経過報告看多機から主治医にバイタルや症状変化を報告
服薬や点滴の調整必要時に薬剤内容を変更し、看多機が投薬や点滴を実施
疑問点や不安点の事前相談家族と一緒に看多機の看護師が医師に尋ねる場面など

こうした連携を密に行うことで、利用者の在宅療養をより安全で安定したものにしやすくなります。

緊急時対応と24時間365日のサポート体制

在宅療養では、予期せぬタイミングで症状の悪化や体調不良が起こることがあります。看多機は24時間365日の体制を整え、利用者の緊急事態に対応する仕組みを持っています。

夜間や早朝、休日の緊急コールにも対応可能なように、スタッフがオンコールで待機し、必要であれば訪問や泊まりのサービスを駆使する形で支援します。

次の一覧は、看多機の緊急時サポート例です。

シチュエーション対応内容
夜間の呼吸苦や痛みの訴え看護師が電話相談を受け、必要ならば医師と連絡し処置
急な発熱や下痢状況を聞き取り、可能なら看多機への泊まりを利用検討
転倒によるケガ看多機スタッフが駆けつけ、応急処置の後に医療機関を手配
脱水や栄養摂取不良状況に応じた補液や栄養管理を看護師がサポート

このように、看多機は利用者の生活を日常から緊急時まで途切れずに支えようとする姿勢が大きな特徴と言えます。

家族・介護者の負担軽減効果

在宅療養を継続する場合、利用者本人だけでなく家族や介護者へのサポートも重要視されます。看多機は家族が感じる身体的・精神的な負担を和らげる手段として役立ち、介護者の生活の質を保つ工夫も行います。

結果的に家族が心に余裕を持って利用者と向き合うことができ、ケアの質が高まりやすくなります。

レスパイトケアとしての機能

看多機の「泊まりサービス」は、家族が一時的に介護から離れ、休息をとったり用事を済ませたりするうえで頼りになる仕組みです。

要介護度が高い方は、家族が24時間体制で見守ることが多く、慢性的な疲労やストレスが生まれがちです。

そのため、泊まりを利用してショートステイのように過ごす日を設けることで、家族の心身をリフレッシュし、介護の継続意欲を高めることにつなげられます。

家族が息抜きするのは「わがまま」と考える人もいますが、実際には休息を取ることが結果的に利用者のケアを安定させることに直結します。看多機の泊まりを活用することで、気兼ねなく休みを確保できる点がメリットです。

相談対応による精神的サポート

看護師や介護スタッフが利用者だけでなく家族の悩み相談にも応じることは、家族の精神的負担を軽減するうえでとても重要です。

介護疲れや病状の変化への不安、終末期を迎えることへの心構えなど、専門知識を持つスタッフに気軽に相談できる場があると、家族は孤立感を減らしやすくなります。

たとえば、定期的に家族面談やケアカンファレンスを設定し、疑問点や要望を共有するだけでも大きな安心につながります。

「どうしても気になることがある」と感じた場合にも、看多機側に一報入れればすぐに対応策を検討できる体制があることが心強い点です。

柔軟なサービス提供による介護負担の分散

看多機は「通い」「泊まり」「訪問」を状態に合わせて組み合わせられるため、家族が担う介護の一部を柔軟にアウトソースできます。

たとえば、週に数日だけ通いを利用し、緊急時や負担が大きい時期だけ泊まりを活用するなど、状況に合わせた利用を選べます。訪問介護や訪問看護を併用すれば、家族が外出しづらい場面でも必要なケアを継続可能です。

以下は看多機を活用した介護負担の分散例です。

  • 平日は家族が仕事に行くため、日中は通いを利用して食事・入浴・機能訓練などを実施
  • 週末にリフレッシュが必要な際には泊まりを利用し、家族は自宅で休息を取る
  • 体調不良があった時期だけ短期的に訪問介護の回数を増やす

このように組み合わせを変えることで、家族が無理なく介護を続けられる環境づくりが可能になります。

医療的ケアに対する不安軽減

家族がもっとも不安を感じやすいのは「医療処置が必要になったときに対処できるのか」という点です。看多機を利用すれば、看護師が注射や点滴、褥瘡管理などを担うため、家族が医療的ケアを無理に覚える必要はありません。

必要なときに専門家が自宅を訪問して対応することで、家族が誤った処置をするリスクを下げられます。

訪問診療の医師とも連携が取れているため、状態の悪化が予想されるときには先手を打った対応を計画しやすくなります。

「急に容体が変わったらどうしよう」という不安を軽減し、家族が落ち着いて生活を支え続けることができます。

家族と専門職の協働によるケアの質向上

家族が利用者の普段の様子を細かく把握している一方、専門職には医療・介護の知識や経験があります。これらを組み合わせることで、利用者にとって的確なケアを提供できるという相乗効果が生まれます。

家族が気づいた体調の異変を早めに報告すれば、看多機のスタッフが専門的にアセスメントし、必要ならば主治医と連絡を取るなどの迅速な対応が可能です。

専門職から家族へ、家庭内でのケア方法のアドバイスを行うことで、利用者の生活全体をより安全・快適なものに高められます。

家族と専門職が互いに協力し合うことで、看多機を利用しながらの在宅ケアが効果的に機能するようになります。

地域包括ケアにおける看多機の役割と将来展望

超高齢社会が進むなか、在宅医療と介護を一体的に提供する看多機は地域包括ケアシステムの核となる存在として期待されます。

大都市だけでなく、地方や過疎地域でも看多機を活用する動きが広まれば、施設が少ない地域の在宅ケアを支える仕組みとして機能する可能性が高まります。

医療・介護の垣根を低くし、住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためのインフラとしての重要度が高まっています。

地域医療資源としての看多機の位置づけ

看多機は地域密着型サービスとして位置づけられており、利用者の要介護度や年齢にかかわらず受け入れやすい特徴があります。

大規模な施設を建てるのが難しい地域でも、小規模の看多機であればコミュニティとの距離が近く、連携しやすい利点があります。

医療機関や行政機関、他の介護事業所などと連絡体制を築くことで、その地域に暮らす人々の健康と生活を包括的にフォローする拠点となり得ます。

次の一覧は、看多機が地域医療資源として持つ可能性を示す例です。

ポイント内容
コミュニティとの関係地域住民や自治体と交流・情報交換をしながらサービスを根付かせる
多職種連携の促進在宅医療・介護の専門職が集い、知識や情報を共有して質を高めやすくする
緊急・災害時の避難先地域全体を巻き込んだ連携によって、高齢者の避難先として機能できる可能性もある
介護人材の育成地域で働く若手スタッフの実践訓練・スキルアップの場となる

このような取り組みを進めるうえで、看多機が果たす役割は大きいといえます。

在宅医療の質・量の充実への貢献

看多機の利用が進むと、在宅医療の裾野が広がり、質的・量的にも充実が期待されます。医療依存度の高いケースでも「在宅で過ごす」選択肢を実現しやすくなり、それをサポートできる人材や組織が育つからです。

医師や看護師が訪問診療を行いやすいだけでなく、看多機が日常的なケアを支えることで、病院以外の場でのケア環境が豊かになります。

介護を受ける側が増え続けるなか、病院や施設だけでは受け入れが追いつかない事例も出てきます。そのため、住まいと医療・介護が一体となった看多機の役割は大切さを増しています。

多職種連携のハブとしての機能

看多機は看護師、介護福祉士、リハビリスタッフなどが同じ場所で働き、訪問診療や薬局、地域包括支援センターなどの外部機関とも密接に連絡を取るハブのような役割を担います。

多職種の連携が円滑に進むと、利用者の課題を立体的にとらえ、より適切なサービス提供につなげることができます。

医師が「治療」の視点から指示を出し、看護師や介護職員が「生活」の視点を踏まえて調整することで、包括的なケアが実現しやすくなるのです。

次の一覧は、多職種が連携して利用者を支える際のメリットを示したものです。

職種主な役割と連携メリット
医師診断・治療の指示、緊急時の対応、医療方針の決定
看護師日々の健康管理、医療的ケア実施、主治医との情報共有
介護福祉士生活援助、身体介助、利用者や家族の不安への寄り添い
リハビリスタッフ機能訓練や身体状況の評価、在宅でも継続可能なリハプログラム提案
管理栄養士食事内容のアドバイス、経管栄養のサポート
薬剤師処方薬の確認、副作用リスクの情報提供

こうした多職種の連携をスムーズに回す拠点となるのが看多機の特徴です。

サテライト型事業所の展開による地域カバー

地域により人口構成や地理的条件が異なるため、本事業所とは別にサテライト型事業所を設置してサービス提供範囲を拡大する方法がとられることもあります。

小さな拠点を複数つくり、そこを通じて往診や訪問ケアを細やかに行うことで、交通の便が悪い地域でもスムーズに訪問しやすくなります。

医療機関と連携する際にも、サテライト事業所が連絡窓口となって利用者宅へ直行できる体制を作るなどの工夫が見られます。

今後の診療報酬・介護報酬改定の方向性

社会保障費の抑制が叫ばれる一方で、在宅ケアの拡充は避けて通れない課題となっています。

今後も診療報酬・介護報酬の改定で在宅ケアを推進する動きが継続すると予想されます。

看多機を中心に、多職種が連携してきめ細かなケアを提供する仕組みを評価する方向で調整が進んでいけば、さらに利用者や家族にとって使いやすいサービスへと発展していくと考えられます。

看護小規模多機能型居宅介護の導入を成功させるポイント

看多機を立ち上げ、運営を軌道に乗せるには多くの準備と綿密な連携が必要です。医療職、介護職、地域住民、行政などさまざまな関係者の協力を得ながら体制を整えることが大切になります。

ここでは、導入や運営を成功させるために押さえておきたい要点をいくつか挙げます。

導入準備と体制構築の手順

看多機を新たに導入する際は、事業計画の策定から施設整備、スタッフ採用・研修など多くの工程を踏む必要があります。適切なシミュレーションと地域の需要調査、そして行政や医療機関との協議が大切です。

特に、緊急時に対応できる医療連携体制を構築しておくことは、看多機運営の要となります。

以下は導入時の主なステップ例です。

  1. 地域ニーズの調査と事業計画の策定
  2. 建物・設備の準備(バリアフリー構造、医療処置が可能なスペースなど)
  3. スタッフの採用と教育計画の立案
  4. 医療機関・行政・地域住民への説明と連携手続き
  5. 試験運用やプレオープンを経て正式な開所

こうした計画的なプロセスを踏むことで、実際の運用開始後にトラブルを減らしやすくなります。

現場スタッフの教育・研修方法

看多機では看護と介護を一体的に行うため、スタッフには幅広い知識と柔軟な対応力が求められます。特に、医療的ケアに関する研修は欠かせない課題です。

看護師と介護職員が連携する際には、お互いの役割を理解し合いながら適切に協力する姿勢が重要になります。

  • 看護職員向け: 在宅医療特有のリスク管理、多職種連携のスキル、医師とのコミュニケーション力
  • 介護職員向け: 基礎的な医療知識や緊急時対応の理解、看護師との連携方法
  • 共通研修: 倫理観や利用者の尊厳を守る心構え、情報共有のルールなど

こうした教育プログラムを継続的に実施し、スタッフの力量を引き上げていくことで、利用者に安心感を提供できます。

地域・行政との連携方法

看多機は地域密着型サービスとして地域に根ざす必要があります。自治会や地域包括支援センター、行政担当部署などと連携しながら、地域の支援体制の一部として機能することが大切です。

地域のイベントや健康講座に参加したり、専門職による出張相談会を開いたりすると、地域住民との距離を縮めるきっかけになります。

また、行政との連携を深めることで、補助金や助成制度を活用しながら運営を安定させることも可能です。

医療機関が少ない地域や交通アクセスが悪い地域ほど、看多機の存在が大きな支えになるため、行政側も注目しているケースがあります。

利用者満足度向上のための工夫

看多機を利用する方々は、在宅療養や介護に不安を抱えている場合が多いです。そのため、安心感と満足度を高めるための工夫が欠かせません。

スタッフの接遇や言葉遣い、サービス提供時間の柔軟性、利用者の意見を反映する仕組みづくりなどが具体的な例として挙げられます。

利用者や家族の声を定期的に聞いて改善に取り組む姿勢を示すことで、信頼関係が強まり、地域社会からも評価を受けやすくなります。

医療面・介護面だけでなく、心理的・社会的サポートにも力を入れると、より利用者本位のサービスへと発展できます。

よくある質問

在宅療養や介護に関心を持つ方々から、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)に関して寄せられる質問や疑問の中から、代表的なものをいくつか取り上げます。利用を検討する際の参考にしてください。

看多機と訪問診療を同時に利用するメリットは何でしょうか?

看多機が日常のケアを包括的に担うことで、利用者の小さな体調変化をすぐに把握できます。その情報を元に訪問診療の医師が早めに治療や処置を行えるため、悪化を防ぎやすくなるメリットがあります。

泊まりサービスの利用はどの程度の期間まで可能でしょうか?

法的な制約としては連続した長期利用に一定の上限がありますが、必要に応じて短期的に泊まりを利用することが多いです。

連続での利用期間や日数制限は事業所によって異なるため、事前に相談されるとよいでしょう。

医療処置が複雑でも看多機で対応できますか?

基本的には看護師が常駐しているため、経管栄養やストーマケア、在宅酸素なども対応可能です。

ただし、人工呼吸器などより高度な医療管理が必要な場合、事業所によって対応範囲が異なるので確認が大事です。

看多機を利用するにはどのような手続きが必要でしょうか?

介護保険サービスのため、ケアマネジャー(介護支援専門員)と相談しながら利用計画を立案する形になります。

医療依存度が高い場合は主治医の意見書を参考にしながら、看多機事業所と利用の可否や条件を話し合います。

家族が遠方に住んでいて見守りが難しい場合でも利用できますか?

看多機のスタッフが利用者宅を定期的に訪問し、日常的な介護や看護の様子を確認します。通いの利用日には事業所に来てもらうため、家族の立場からも安心感が高まります。

緊急時の連絡体制やオンラインでの情報共有なども事業所によって取り組みがあります。

訪問診療の医師はどのように探せばよいでしょうか?

ケアマネジャーや看多機事業所、地域包括支援センターに問い合わせると地域で訪問診療を行っている医療機関を紹介してもらえることが多いです。

また、すでにかかりつけ医がいる場合は、その医師に訪問診療の可否を確認してみるとよいでしょう。

費用はどのくらいかかりますか?

介護保険利用で一定の自己負担割合(1割〜3割など)を支払います。医療的ケアが必要な場合は、医療保険の負担も別途発生します。

所得や住んでいる自治体によって減免制度があることもあるため、詳細は事業所や役所で確認してください。

今回の内容が皆様のお役に立ちますように。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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