外来と訪問診療の併用で広がる治療の可能性 – 専門医療と在宅ケアを組み合わせる利点

外来と訪問診療の併用で広がる治療の可能性 - 専門医療と在宅ケアを組み合わせる利点

「家からあまり出られないけれど、専門的な治療や検査はきちんと受けたい」
そんな方にとって、外来診療と訪問診療を組み合わせることは有力な選択肢です。
外来では専門的な検査や治療を受けつつ、日々の体調管理や細かなケアはご自宅で訪問診療が担当します。
こうした併用により、通院の負担を減らしながら、安心して自宅での療養を続けやすくなります。

目次

外来と訪問診療を併用する意義

外来診療では不足しがちなケアを補完

外来診療は、病院やクリニックを訪れて医師の診察や治療を受ける医療形態です。特定の疾患に対する専門的な診断や高度な検査、手術など、病院の設備や専門医の知識を活かした医療を提供します。

しかし、通院が難しい方や、病状が不安定で頻繁な体調変化がある方にとっては、限られた診察時間だけでは十分なケアが行き届かない場合があります。

訪問診療は、医師や看護師が患者さんのご自宅を定期的に訪問し、診察や治療、健康管理を行う医療サービスです。病状の観察、薬剤管理、点滴、カテーテル管理など、在宅での療養に必要な医療処置やケアを提供します。

外来診療ではカバーしきれない、日常生活の中での細やかな医療ニーズや、緊急時の対応を含めた継続的なサポートを行います。

外来と訪問診療を組み合わせることで、専門的な医療は外来で、日常的な健康管理や急な体調変化への対応は訪問診療で、というように、それぞれの強みを活かした切れ目のないケアが可能になります。

訪問診療で提供される主なケア内容

ケア内容詳細
定期的な診察病状観察、問診、身体診察
薬剤管理処方、服薬指導、副作用チェック
医療処置点滴、注射、カテーテル交換、褥瘡処置

専門医療と在宅ケアの連携が生む相乗効果

外来で受ける専門的な診断や治療方針と、訪問診療で提供される日々の体調管理や生活に寄り添ったケアが連携することで、単独で受ける医療以上の相乗効果を生み出します。

外来の医師は病気の専門家として大局的な治療計画を立て、訪問診療の医師や看護師は患者さんの自宅での生活状況や日々の変化をきめ細かく把握します。

この二つの情報が共有されることで、より患者さんの状態に合った、現実的で効果的な治療計画を立てられます。例えば、外来で処方された薬の副作用の兆候を訪問診療で見つけ、速やかに外来の医師に情報共有することで、早期に薬剤調整を行えます。

また、自宅でのリハビリ状況や食事の様子などを訪問診療チームが把握し、外来でのリハビリ計画や栄養指導に反映させることも可能です。

このように、専門的な視点と生活に根ざした視点が組み合わさることで、病気だけでなく、患者さんの全体的な健康状態や生活の質(QOL)向上につながります。

患者・家族の心理的負担の軽減

病気と向き合う患者さんやそれを支えるご家族にとって、医療に関する様々な負担は小さくありません。特に、通院にかかる時間や労力、待ち時間、そして自宅での療養に対する不安は大きな心理的な負担となります。

外来と訪問診療を併用することで、これらの負担を軽減できます。通院の頻度を必要最小限に抑え、自宅で医療を受けられる訪問診療を組み合わせることで、移動の負担や待ち時間のストレスが減ります。

また、自宅に医療者が来てくれるという安心感は、患者さんだけでなく、介護を担うご家族の精神的な支えにもなります。

病状の急変時にも、まずは訪問診療の医師に相談できる体制があることで、救急搬送の判断に迷うといった不安を軽減し、落ち着いて対応できるようになります。

自宅という慣れた環境で医療を受けられることは、患者さんの精神的な安定にもつながり、療養生活の質を高めます。

治療継続性の向上と安定的な管理

病気の治療を効果的に進めるためには、継続性が非常に重要です。しかし、体調の波や通院の負担などにより、治療を中断したり、予定通りに医療を受けられなくなったりすることがあります。

外来と訪問診療を併用することで、治療の継続性を高め、病状を安定的に管理しやすくなります。

定期的な外来受診で専門的な評価を受けつつ、訪問診療で日々の体調をチェックし、必要に応じて医療的な介入を行うことで、病状の悪化を早期に発見し、対応できます。

特に慢性疾患の場合、長期にわたる治療が必要となりますが、訪問診療があることで、自宅での療養生活を送りながら、計画的な治療を継続できます。

薬の飲み忘れを防ぐための支援や、自宅でのリハビリ状況の確認など、訪問診療チームが日常生活に寄り添ったサポートを提供することで、治療計画から逸脱することを防ぎ、病状の安定維持に貢献します。

治療継続性を高める要因

  • 自宅で医療を受けられる利便性
  • 日々の体調変化への迅速な対応
  • 薬剤管理や服薬支援
  • 医療チームによる継続的な見守り

外来診療と訪問診療の具体的な併用モデル

専門科への外来通院と日常ケアの在宅提供

このモデルは、特定の専門的な疾患(例:がん、心疾患、腎疾患など)に対する高度な治療や定期的な専門医の診察、検査は病院の外来で受け、それ以外の日常的な健康管理や医療処置は訪問診療で提供する形です。

例えば、がんの化学療法は病院の外来で受け、副作用の管理や全身状態のチェック、痛みのコントロールなどは訪問診療の医師や看護師が自宅で行います。

当院でよくあるケースとしては、糖尿病そのものは当院でフォローしながら、定期的に眼科を受診して網膜症のチェックや治療を受けていただく形です。
糖尿病が続くと目の奥の血管が傷み、視力が落ちたり、最悪の場合は失明につながることがあります。
そのため、眼科の専門医に定期的に診てもらい、早めに変化を見つけて対応していくことが、失明のリスクを減らすうえでとても大切です。
このときに、緑内障の治療を行ったり、メガネの度数を調整したりする方もいらっしゃいます。

これにより、専門的な治療は妥協せずに行いながら、自宅での療養生活を安心して送れます。

外来診療の頻度を抑え、訪問診療で密なフォロー

病状が比較的安定しているものの、定期的な医療的なチェックが必要な場合に適したモデルです。

外来受診の頻度を数ヶ月に一度などに減らし、その間の期間は訪問診療でより頻繁に(例えば週に一度など)自宅で診察やケアを受けます。

これにより、通院の負担を大幅に減らしつつ、訪問診療チームが日々の体調変化をきめ細かく把握し、早期の異常発見や対応につなげます。

特に、高齢で体力的に通院が難しい方や、複数の慢性疾患を抱えている方に有効です。

急性期治療後の在宅ケア移行モデル

病院での急性期治療を終え、病状が安定した後に自宅へ移行する際に用いられるモデルです。退院直後は訪問診療を頻繁に利用し、自宅での療養環境に慣れるまでの医療的なサポートを受けます。

病状がさらに安定してきたら、訪問診療の頻度を減らしつつ、定期的な外来受診を開始または再開します。これにより、病院から自宅へのスムーズな移行を支援し、自宅での療養生活を安全に開始できます。退院後の再入院予防にもつながります。

慢性疾患管理における併用事例

高血圧、糖尿病、心不全などの慢性疾患を複数抱える患者さんによく見られるモデルです。

特定の専門医(循環器内科、糖尿病内科など)の外来で定期的な診察や検査を受け、病状に応じた薬剤調整などを行います。

同時に、訪問診療の医師が自宅で全身状態のチェック、複数の薬剤の管理、生活習慣に関するアドバイスなどを行います。

外来の専門的な視点と、訪問診療の生活に寄り添った視点を組み合わせることで、複雑な病状をより包括的に管理し、合併症の予防や病状の安定化を目指します。

慢性疾患管理の併用例

外来での役割訪問診療での役割
専門的な診断と治療計画日々の体調管理と医療処置
定期的な専門検査薬剤管理と服薬支援
高度な医療介入生活習慣へのアドバイスと支援

訪問診療をベースに外来で高度医療を受ける

主に自宅での療養が中心となっている患者さんが、特定の目的のために病院の外来を利用するモデルです。

例えば、自宅で訪問診療を受けながら療養している方が、年に一度の精密検査のために専門病院の外来を受診したり、特定の専門医のセカンドオピニオンを聞くために外来を利用したりする場合などがこれにあたります。

訪問診療が日々の基本的な医療を支え、必要に応じて外来の高度な医療や専門家の意見を取り入れることで、自宅での療養の質を高めます。

外来診療と訪問診療を併用する患者像

通院が困難な高齢者・障害者

加齢に伴う身体機能の低下や、疾患による後遺症、あるいは身体的な障害により、一人で公共交通機関を利用することが難しい方、家族の付き添いがあっても移動に大きな負担がかかる方などが該当します。

このような方々にとって、定期的な外来通院は大きな負担となり、治療の継続を妨げる要因となることがあります。訪問診療を併用することで、通院の頻度を減らし、自宅で必要な医療を受けられるようになります。

通院困難な状況の例

  • 寝たきりまたはそれに近い状態
  • 重度の認知症
  • 人工呼吸器や酸素療法が必要
  • 移動に介助が必須

慢性疾患を持つ在宅患者

高血圧、糖尿病、心疾患、呼吸器疾患、神経難病など、複数の慢性疾患を抱え、継続的な医療管理が必要な方々です。これらの疾患は、病状が不安定になりやすく、定期的な診察や検査、薬剤調整が重要です。

自宅で療養している場合、訪問診療が日々の健康状態を把握し、病状の悪化を早期に発見することで、入院が必要となる事態を防ぐ手助けとなります。

外来で専門的な評価を受けつつ、訪問診療で日常的な管理を行うことで、病状の安定を目指します。

専門的な定期検査が必要な患者

特定の疾患の経過観察や、治療の効果判定のために、定期的に専門的な検査(例:画像診断、内視鏡検査、血液検査など)が必要な患者さんです。これらの検査は病院の設備が必要なため、外来を受診する必要があります。

しかし、検査以外の日常的なケアや体調管理は自宅で行いたいという場合に、外来での検査と訪問診療での日常管理を組み合わせる選択肢があります。これにより、必要な検査は受けつつ、自宅での生活を維持できます。

在宅での緩和ケアを希望する患者

がんと診断され、積極的な治療が難しくなった方や、終末期を迎えた方で、住み慣れた自宅で最期まで過ごしたいと希望する患者さんです。

外来で痛みのコントロールや症状緩和に関する専門的なアドバイスを受けることもありますが、中心となるのは自宅での疼痛管理、呼吸困難の緩和、精神的なケアなど、QOLを維持・向上させるための医療やケアです。

訪問診療は、患者さんの自宅を訪問し、これらの緩和ケアを継続的に提供します。緊急時の対応も含め、24時間体制で患者さんとご家族を支えます。

在宅緩和ケアの要素

医療・ケア内容目的
疼痛コントロール痛みの軽減とQOL向上
症状緩和呼吸困難、吐き気などの緩和
精神的・社会的ケア不安の軽減、精神的な安定
ご家族への支援介護負担の軽減、精神的なサポート

外来・訪問診療併用の導入方法と注意点

併用開始のタイミングの見極め方

外来と訪問診療の併用を検討するタイミングは、患者さんの病状や生活状況によって異なります。一般的には、以下のような状況が併用を検討するきっかけとなります。

  • 病状が進行し、通院が身体的に負担になってきた
  • 自宅での療養を希望するが、医療的な管理が必要
  • 退院後の生活に不安があり、自宅での医療サポートが必要
  • 病状が不安定で、急な体調変化に対応できる体制が必要

主治医やケアマネジャーとよく相談し、患者さんの現在の状態と今後の見通しを踏まえて、最適なタイミングを見極めることが大切です。

主治医・訪問医の情報共有と連携体制の整備

外来と訪問診療を併用する上で最も重要となるのが、関係する医療者間の密な情報共有と連携です。外来の主治医と訪問診療の医師(訪問医)が、患者さんの病状、治療経過、処方内容、自宅での様子などの情報を定期的に共有することで、一貫性のある治療を提供できます。

情報共有の方法としては、診療情報提供書、電話、FAX、あるいはICTを活用した情報共有システムなどがあります。

患者さんやご家族が、外来での診察内容や訪問診療での出来事を、それぞれの医療者に正確に伝えることも、情報共有を円滑に進める上で重要です。病院と訪問診療クリニックの間で、顔の見える連携体制を構築することが望ましいです。

連携体制の重要性

  • 一貫性のある治療の提供
  • 病状変化への迅速な対応
  • 重複投薬や相互作用の防止
  • 患者・家族の安心感の向上

患者・家族への説明と理解促進

外来と訪問診療を併用することのメリット、デメリット、具体的な医療提供体制、費用などについて、患者さんご本人とご家族に十分に説明し、理解を得ることが必要です。

併用によって医療体制がどのように変わるのか、それぞれの役割分担はどうなるのかを明確に伝えることで、患者さんやご家族が安心して医療を受けられるようになります。

疑問や不安な点があれば、遠慮なく医療者に質問し、納得した上で併用を開始することが大切です。

併用診療における診療報酬・制度上の留意点

外来診療と訪問診療は、それぞれ異なる診療報酬体系に基づいています。併用する場合、それぞれの医療行為に対して診療報酬が発生します。

また、患者さんの病状や利用するサービスの種類によっては、医療保険だけでなく、介護保険が適用される場合もあります。自己負担額や利用できる制度について、事前に医療機関の相談窓口やケアマネジャーに確認しておくことが重要です。

制度上の制約や、併用によって発生する費用について正確に理解しておくことで、安心してサービスを利用できます。

併用が適さないケースの判断基準

外来と訪問診療の併用は多くのメリットがありますが、全ての患者さんに適しているわけではありません。

例えば、病状が非常に不安定で、常時高度な医療管理が必要な場合や、緊急時の対応が可能な設備が自宅にない場合などは、病院での入院治療が優先されることがあります。

また、患者さんやご家族が自宅での療養を強く希望しない場合や、自宅の環境が医療提供に適さない場合なども、併用が難しいことがあります。

医療者とよく相談し、患者さんの状態や希望、自宅環境などを総合的に判断することが必要です。

外来と訪問診療併用による治療効果の実際

慢性疾患患者の入院リスクの低減

慢性疾患を持つ患者さんにとって、病状の悪化による入院は、身体的・精神的な負担が大きく、医療費も増加します。

外来と訪問診療を併用することで、訪問診療の医師や看護師が自宅で患者さんの状態を継続的に観察し、病状の小さな変化も見逃さずに早期に対応できます。

これにより、病状が悪化して入院が必要となる事態を未然に防ぐ、あるいは遅らせる効果が期待できます。定期的な外来での専門的評価と、訪問診療でのきめ細やかな管理が、病状の安定維持に貢献します。

認知症患者の在宅生活維持の向上

認知症が進むと、通院自体が大きな負担となり、環境の変化による混乱や精神的な不安定さを招くことがあります。外来と訪問診療を併用することで、通院のストレスを軽減し、住み慣れた自宅で安心して医療やケアを受けられるようになります。

訪問診療の医師や看護師は、認知症の進行に伴う様々な症状(BPSDなど)に対して、自宅での生活状況を踏まえた適切なアドバイスや医療的な介入を行います。これにより、認知症患者さんが可能な限り長く、自宅での生活を維持できるよう支援します。

認知症患者の在宅生活維持への効果

併用による効果詳細
通院負担の軽減環境変化による混乱を避ける
自宅での医療・ケア慣れた環境での安心感
BPSDへの対応専門的なアドバイスと介入
ご家族へのサポート介護負担の軽減、対応方法のアドバイス

疼痛・症状コントロールの質向上

がんや神経難病など、進行性の疾患では、痛みや呼吸困難、倦怠感などの様々な症状が出現することがあります。これらの症状を適切にコントロールすることは、患者さんのQOLを維持する上で非常に重要です。

外来で専門的な緩和ケアの診察を受け、痛みの原因診断や薬剤調整を行い、訪問診療で自宅での痛みの状態をきめ細かく把握し、必要に応じて薬剤の投与量や方法を調整します。

また、痛みの緩和だけでなく、呼吸困難や吐き気などの他の苦痛症状に対しても、訪問診療チームが迅速に対応することで、自宅での療養生活における苦痛を最小限に抑え、質の高い症状コントロールを実現します。

患者QOL(生活の質)の具体的改善例

外来と訪問診療の併用は、単に病気を治療するだけでなく、患者さん自身の生活の質を大きく向上させる可能性を秘めています。

  • 自宅での自由度の向上: 通院に縛られることなく、自分のペースで自宅での生活を送れるようになります。
  • 家族との時間の増加: 通院にかかる時間を家族との団らんに充てられます。
  • 慣れた環境での安心感: 住み慣れた自宅で療養できることによる精神的な安定が得られます。
  • 社会とのつながりの維持: 体調が良い時には、訪問リハビリなどを活用しながら、社会とのつながりを維持しやすくなります。

これらの要素は、患者さんの精神的な満足度を高め、より活動的で充実した療養生活を送る手助けとなります。

外来通院負担の軽減とその効果

外来通院には、移動時間、待ち時間、体力的な消耗など、患者さんにとって様々な負担が伴います。特に、高齢者や病状が重い方にとっては、通院自体が大きなストレスとなり、体調を崩す原因となることもあります。

外来と訪問診療を併用し、訪問診療で対応可能な医療やケアを自宅で受けることで、外来通院の頻度を減らせます。

これにより、患者さんの身体的な負担が軽減され、自宅で体力を温存しながら療養できます。通院のストレスが減ることは、精神的な安定にもつながり、治療への前向きな気持ちを維持する手助けとなります。

外来通院負担軽減のメリット

  • 移動時間と労力の削減
  • 待ち時間のストレス軽減
  • 体力的な消耗の抑制
  • 自宅での時間増加

外来と訪問診療の併用を支える医療体制

病院と訪問診療クリニックの連携実例

外来と訪問診療の併用を円滑に進めるためには、病院と訪問診療クリニックの間での強固な連携が不可欠です。多くの地域では、病院の地域連携室などが中心となり、退院支援や訪問診療クリニックへの情報提供を行っています。

また、定期的な合同カンファレンスを開催したり、共通の情報共有ツールを導入したりすることで、病院の医師と訪問診療の医師が患者さんの情報を密に共有し、治療方針について協議しています。

このような連携体制があることで、患者さんは病院での専門的な治療から自宅での継続的なケアへと、安心して移行できます。

訪問看護・介護サービスとのチームケアの推進

訪問診療は、医師だけでなく、訪問看護師、ケアマネジャー、ヘルパー、理学療法士、薬剤師など、様々な職種が連携して患者さんを支えるチームケアの一環として提供されることが多いです。

訪問診療の医師は全体の医療計画を立て、訪問看護師は医師の指示に基づいた医療処置や健康管理、療養上のケアを行います。ケアマネジャーは介護サービスの調整を行い、ヘルパーは身体介護や生活援助を提供します。

これらの多職種がそれぞれの専門性を活かし、情報を共有しながら連携することで、医療面だけでなく、介護や生活支援も含めた包括的なサポート体制を構築します。

チームケアを構成する主な職種

職種役割の例
訪問診療医診断、治療方針決定、定期的な診察
訪問看護師医療処置、健康観察、療養指導
ケアマネジャー介護サービス計画作成、関係機関との連絡調整
ヘルパー身体介護、生活援助

多職種連携を促進するICT活用

多職種間でのスムーズな情報共有と連携を支える上で、ICT(情報通信技術)の活用が進んでいます。

電子カルテシステムを共有したり、セキュアな情報共有プラットフォームを利用したりすることで、医師、看護師、薬剤師、ケアマネジャーなどが、患者さんの最新の病状やケアの状況をリアルタイムで把握できます。

これにより、電話やFAXに比べて迅速かつ正確な情報伝達が可能となり、多職種連携の質が向上します。特に、緊急時など迅速な対応が必要な場面で、ICTは重要な役割を果たします。

緊急時対応を含めた24時間体制の構築

在宅で療養する患者さんにとって、病状の急変は常に起こりうるリスクです。

外来と訪問診療を併用する場合、訪問診療クリニックが緊急時対応を含めた24時間365日対応の体制を構築していることが重要です。

夜間や休日でも、患者さんやご家族からの連絡を受け付け、必要に応じて医師や看護師が緊急訪問したり、入院が必要と判断した場合には連携病院へ搬送したりする体制が整っていることで、患者さんとご家族は安心して自宅での療養を続けられます。

よくある質問

外来と訪問診療を併用する場合、どちらの医師が主治医になるのですか?

基本的には、患者さんの病状や治療の中心となっている医療機関の医師が主治医となることが多いですが、訪問診療の医師が主治医となるケースもあります。

重要なのは、外来の医師と訪問診療の医師が密に連携し、情報共有を行うことです。

どちらの医師が主治医となるかについては、医療機関や患者さんの状況によって異なりますので、事前に確認することが大切です。

費用はどのくらいかかりますか?

外来診療と訪問診療はそれぞれに診療報酬が発生するため、両方を併用すると費用は増加します。ただし、病状や利用するサービス内容、医療保険や介護保険の適用状況によって費用は大きく異なります。

具体的な費用については、利用を検討している訪問診療クリニックや病院の相談窓口に問い合わせて、詳細な説明を受けるようにしてください。

訪問診療を始めるにはどうすれば良いですか?

まずは、現在かかっている外来の主治医や、地域のケアマネジャーに相談してみるのが良いでしょう。

訪問診療が必要な状態かどうかを判断してもらい、適切な訪問診療クリニックを紹介してもらうことができます。ご自身で訪問診療クリニックを探し、直接問い合わせることも可能です。

訪問診療の頻度はどのくらいですか?

訪問診療の頻度は、患者さんの病状や状態によって異なります。病状が安定している場合は月に1~2回程度、病状が不安定な場合や終末期の場合は週に複数回訪問することもあります。

医師が必要と判断した場合には、計画外の緊急往診を行うこともあります。患者さんの状態に合わせて、医師が訪問計画を立てます。

訪問診療でも専門的な治療は受けられますか?

訪問診療で提供できる医療には限界があります。高度な医療機器を用いた検査や手術、専門的なリハビリテーションなどは、病院の外来で受ける必要があります。

しかし、点滴や注射、カテーテル管理、疼痛管理など、在宅で可能な医療処置は訪問診療で受けることができます。外来と訪問診療を組み合わせることで、専門的な治療と在宅ケアを両立させることが可能です。

家族の立ち会いは必要ですか?

訪問診療の際には、患者さんの状態を把握するため、ご家族の立ち会いをお願いすることもあります。

特に、患者さんが病状について自分で説明することが難しい場合や、薬剤管理、医療処置などについてご家族への説明が必要な場合は、立ち会いが重要となります。

ただし、ご家族の都合がつかない場合でも、訪問診療を受けることは可能ですので、事前にクリニックに相談してください。

今回の内容が皆様のお役に立ちますように。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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