特別養護老人ホームと訪問診療の適切な選択 – 病状や状態による比較

特別養護老人ホームと訪問診療の適切な選択 - 病状や状態による比較

ご自身やご家族が、年齢を重ねたり、病気を抱えたりする中で、今後の療養生活について考える機会が増えることでしょう。

「施設で専門的なケアを受けるべきか」「住み慣れた自宅で医療を受けたい」といった悩みは、多くの方が直面するものです。

この記事では、介護が必要な高齢者のための代表的な選択肢である特別養護老人ホーム(特養)と、自宅で医療を受けられる訪問診療について、それぞれの特徴や費用、医療・介護体制などを詳しく比較し、ご自身の状況や希望に合わせた適切な選択をするための情報を提供します。

目次

特別養護老人ホームと訪問診療の基本理解

特別養護老人ホームの概要

特別養護老人ホーム(特養)は、介護保険法に基づき、地方公共団体や社会福祉法人が運営する公的な介護施設です。「介護老人福祉施設」とも呼ばれ、原則として要介護3以上で、常時介護が必要な状態でありながら、自宅での生活が困難な高齢者が入居対象となります。

特養では、食事、入浴、排泄などの日常生活上の介助、機能訓練、健康管理、療養上の世話といったサービスを24時間体制で提供します。

看取りに対応している施設も増えており、終の棲家としての役割も担っています。比較的費用が抑えられるため、入居希望者が多く、地域によっては待機期間が長くなることもあります。

訪問診療の概要と特徴

訪問診療は、病気や障害などにより医療機関への通院が困難な方に対して、医師が定期的に自宅や入居している施設(一部の高齢者向け住宅など)へ訪問し、計画的な医学管理や診療を行う医療サービスです。

一般的に、月に1回または2回以上の頻度で訪問し、診察、薬の処方、療養上の相談、指導などを行います。緊急時には臨時で往診を行ったり、24時間体制で連絡が取れる体制を整えている医療機関も多くあります。

住み慣れた環境で療養生活を送りたいというニーズに応えるものであり、患者さんやご家族のQOL(生活の質)の維持・向上を目指します。

訪問診療の利用が考えられる主なケース

  • 寝たきりやそれに近い状態で通院が難しい方
  • 認知症があり、定期的な通院が困難な方
  • 退院後、自宅での継続的な医療管理が必要な方
  • がん末期などで、自宅での緩和ケアを希望する方

それぞれの医療・介護体制の違い

特別養護老人ホームと訪問診療では、提供される医療・介護体制に違いがあります。特養では、施設内に配置された医師(配置医)や看護職員、介護職員が連携してケアにあたります。

配置医は入居者の日常的な健康管理を行いますが、専門的な治療や緊急性の高い対応が必要な場合は、協力医療機関と連携します。 一方、訪問診療は、患者さんの自宅が診療の場となります。

訪問診療医が主治医となり、看護師や薬剤師、ケアマネジャーなど多職種と連携しながら、在宅での療養を支えます。

介護が必要な場合は、訪問介護やデイサービスといった介護保険サービスを別途利用することになります。

医療・介護体制の比較

項目特別養護老人ホーム訪問診療(在宅)
主な医療提供者配置医師、看護職員訪問診療医、訪問看護師
介護提供者施設介護職員訪問介護員(別途契約)など
24時間対応介護職員は常駐、看護職員は日中中心(夜間オンコール体制の施設も)訪問診療医・訪問看護師が連携し、緊急時対応体制を整備(契約による)

入居・利用の主な条件と対象者

特別養護老人ホームの入居対象は、原則として65歳以上で、身体上または精神上の著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難な方で、要介護認定で要介護3以上と判定された方です。

ただし、要介護1や2の方でも、認知症で日常生活に支障をきたす行動が頻繁に見られる場合や、知的障害・精神障害などにより日常生活が困難な状態である場合など、やむを得ない事情により特養以外での生活が著しく困難であると認められる場合には、特例的に入居できることがあります。

訪問診療の利用対象は、年齢や疾患に制限はありませんが、主に通院が困難な方が対象となります。

医師が医学的な判断に基づき、訪問診療の必要性を認めれば利用できます。

例えば、脳卒中の後遺症で歩行が難しい方、重度の心臓病や呼吸器疾患で外出が困難な方、がんの治療中で体力が低下している方などが挙げられます。

特養の入居条件のポイント

  • 原則として要介護3以上
  • 常時介護が必要な状態
  • 自宅での生活が困難

病状・状態別の適切な選択基準

要介護度による選択ポイント

要介護度は、介護サービスの必要度合いを示す指標であり、選択を考える上での一つの目安となります。

要介護1~2の場合

要介護1や2の方は、日常生活の一部に介助が必要な状態ですが、比較的お元気な方も多くいらっしゃいます。

この段階では、まず在宅での生活を継続しながら、訪問介護やデイサービス、そして必要に応じて訪問診療を利用することを検討するのが一般的です。

住み慣れた環境で、できる限り自立した生活を送ることを目指します。ただし、認知症の進行が著しい場合や、同居家族の介護負担が大きい場合など、状況によっては特養への特例入所が認められることもあります。

要介護3~5の場合

要介護3以上になると、食事、入浴、排泄など日常生活の多くの場面で介助が必要となり、常時介護が求められる状態です。このため、特別養護老人ホームへの入居が主な選択肢として考えられます。

施設では24時間体制で介護を受けられるため、ご本人もご家族も安心感を得やすいでしょう。

一方で、要介護度が高くても、ご本人が強く在宅療養を希望し、家族の支援体制や訪問診療・訪問看護などの在宅サービスを十分に活用できる環境が整えば、自宅での生活を継続することも可能です。

この場合、医療と介護の密な連携がより重要になります。

認知症・慢性疾患の場合の比較

認知症や慢性疾患を抱える方にとって、どちらの療養環境が適しているかは、症状の程度や必要なケアの内容によって異なります。

認知症ケアにおける比較

項目特別養護老人ホーム訪問診療(在宅)
環境集団生活、専門スタッフによるケア住み慣れた環境、家族中心のケア
徘徊・問題行動への対応施設の構造や人員体制で対応家族の負担が大きい場合あり、介護サービスとの連携が重要
専門性認知症ケアに特化したユニットを持つ施設もある認知症専門医による訪問診療も可能

特別養護老人ホームでは、認知症ケアの専門知識を持つスタッフが配置され、徘徊や不穏といった症状に対応できる環境が整っている場合があります。

集団生活の中で他の入居者との交流が刺激になることもあります。 一方、訪問診療を利用した在宅療養では、住み慣れた環境で過ごせる安心感が、認知症の方にとって精神的な安定につながることがあります。

ただし、症状が進行し、徘徊や介護抵抗などが顕著になると、ご家族の負担が非常に大きくなる可能性があります。

この場合、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどを組み合わせ、ご家族の負担軽減を図ることが大切です。認知症の専門医による訪問診療を受けることも選択肢の一つです。

慢性疾患管理における比較

高血圧、糖尿病、心臓病、呼吸器疾患などの慢性疾患を持つ方は、継続的な医学管理が必要です。 特別養護老人ホームでは、配置医や看護職員が日常的な健康管理、服薬管理、定期的な検査などを行います。

体調変化にも早期に対応しやすい体制です。ただし、配置医が専門外の疾患については、協力医療機関の専門医と連携して対応することになります。

訪問診療では、かかりつけの訪問診療医が定期的に診察し、患者さんの状態に合わせたきめ細やかな医学管理を行います。

専門的な治療が必要な場合は、地域の専門病院と連携を取りながら治療を進めます。在宅酸素療法や経管栄養など、医療的なケアが必要な場合も、訪問看護師と連携して対応可能です。

末期がんや看取り期の選択基準

人生の最終段階をどこで、どのように過ごしたいかというご本人の意思は、最も尊重されるべきです。

末期がんなどで積極的な治療が難しくなり、緩和ケアや看取りが中心となる時期の選択肢として、特養と訪問診療(在宅)があります。

特養での看取り

近年、看取り介護を行う特別養護老人ホームが増えています。医師、看護職員、介護職員などが連携し、ご本人やご家族の意向を尊重しながら、苦痛の緩和や精神的なケアを行います。

住み慣れた施設で、顔なじみのスタッフに見守られながら最期を迎えられるという利点があります。ただし、すべての特養が看取りに対応しているわけではないため、事前の確認が必要です。

また、医療的な介入の範囲には限界がある場合もあります。

訪問診療による在宅での看取り

訪問診療を利用すれば、住み慣れた自宅で最期まで過ごす「在宅看取り」も可能です。訪問診療医や訪問看護師が定期的に訪問し、痛みのコントロールなどの緩和ケア、精神的なサポートを行います。

ご家族にとっては、大切な人との時間を自宅でゆっくりと過ごせるというメリットがあります。一方で、24時間体制での介護や容態急変時の対応など、ご家族の精神的・身体的負担が大きくなることもあります。

そのため、訪問看護や訪問介護などのサービスを十分に活用し、医療チームと密に連携することが重要です。

どちらの選択をするにしても、ご本人、ご家族、医療・介護スタッフが十分に話し合い、ご本人の意思を最大限に尊重した上で決定することが大切です。

急性期・慢性期での適応の違い

病気の進行段階によっても、適した療養環境は異なります。 急性期とは、病気の発症直後や症状が急激に悪化した時期を指し、集中的な治療が必要となります。

この時期は、病院での入院治療が原則です。特別養護老人ホームや訪問診療は、急性期を脱し、病状が安定した後の療養生活を支える役割を担います。

慢性期は、病状がある程度安定し、長期的な療養やリハビリテーションが必要な時期です。特別養護老人ホームは、慢性期の状態にある高齢者が、安定した環境で日常生活の支援を受けながら暮らすための施設です。

訪問診療は、慢性疾患を抱えながら自宅で療養する方を対象に、定期的な医学管理や症状コントロールを行います。病状が安定していても、通院が困難な場合には良い選択肢となります。

もし、慢性期の療養中に病状が急変した場合は、特養では協力医療機関へ、在宅療養中であれば訪問診療医が連携する病院へ速やかに繋ぎ、適切な医療を受けられるようにします。

家族・本人の希望を反映した選択

療養場所の選択において、ご本人の意思とご家族の希望を丁寧に確認し、すり合わせることが何よりも重要です。「どこで」「誰と」「どのように」過ごしたいのか、ご本人の価値観や人生観を尊重した選択が求められます。

ご本人が住み慣れた自宅での生活を強く望む場合でも、介護するご家族の負担が過大にならないよう配慮が必要です。

介護力、経済状況、精神的な負担などを総合的に考慮し、無理のない計画を立てることが大切です。

訪問診療や訪問介護、デイサービス、ショートステイなどの社会資源を上手に活用し、ご家族だけで抱え込まないようにしましょう。

家族が確認すべきこと

  • 本人の明確な意思(可能な限り確認する)
  • 家族の介護力(時間的、体力的、精神的余裕)
  • 経済的な負担の見通し
  • 緊急時の対応体制の確認

逆に、ご本人が施設入所を希望する場合や、ご家族が在宅介護に限界を感じている場合もあります。そのような場合は、特別養護老人ホームなどの施設入所を検討することも一つの方法です。

いずれの選択をするにしても、ご本人とご家族が納得できるまで十分に話し合い、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーなどの専門家にも相談しながら、多角的な視点から検討を進めることが望ましいです。

医療・介護サービスの比較と連携

医療対応力と緊急時の体制

療養生活を送る上で、医療対応力と緊急時の体制は非常に重要なポイントです。

医療対応力と緊急時体制の比較

項目特別養護老人ホーム訪問診療(在宅)
日常の医療配置医師による健康管理、看護職員による医療的ケア訪問診療医による定期的な診察、訪問看護師による医療的ケア
専門的な医療協力医療機関との連携訪問診療医が地域の専門医や病院と連携
緊急時対応看護職員・配置医師が対応、協力医療機関へ搬送訪問診療医・訪問看護師が往診、連携病院へ搬送手配
24時間対応介護職員は24時間常駐。看護職員はオンコール体制が多い契約により24時間連絡・対応体制を構築可能

特別養護老人ホームでは、配置医師が日常的な健康管理を行い、看護職員がバイタルチェックや服薬管理、簡単な医療処置などを行います。

ただし、配置医師は常駐ではない施設も多く、夜間や休日は看護職員がオンコールで対応し、必要に応じて協力医療機関と連携を取るのが一般的です。

訪問診療では、契約内容に応じて、訪問診療医や訪問看護ステーションが24時間体制で連絡を受け付け、緊急時には往診や電話での指示、必要であれば救急搬送の手配などを行います。

この24時間対応体制は、在宅療養を続ける上で大きな安心材料となります。

介護サービスの内容と質の違い

提供される介護サービスの内容や提供方法にも違いがあります。

特別養護老人ホームでは、施設内の介護職員が、食事、入浴、排泄といった身体介護から、掃除、洗濯といった生活援助まで、入居者の日常生活全般を支援します。

集団ケアが基本となりますが、個別性を尊重したケアプランに基づき、個々の状態に合わせたサービス提供を目指しています。レクリエーションや機能訓練なども行われます。

訪問診療を受けながら在宅で生活する場合、介護サービスは別途、介護保険を利用して訪問介護事業所などと契約します。訪問介護では、ホームヘルパーが自宅を訪問し、ケアプランに基づいて身体介護や生活援助を行います。

必要なサービスを必要な時間だけ利用できる個別ケアが特徴です。その他、デイサービス(通所介護)で日中の活動の場を確保したり、ショートステイ(短期入所生活介護)で一時的に施設を利用したりすることも可能です。

主な介護サービス内容の比較

サービス内容特別養護老人ホーム訪問診療(在宅)+訪問介護など
食事介助施設内で提供、介助調理援助、食事介助(訪問介護)
入浴介助施設内の浴場で介助自宅での入浴介助、またはデイサービス利用(訪問介護、訪問入浴介護)
排泄介助定時・随時介助ケアプランに基づいた介助(訪問介護)
生活援助施設職員が対応(掃除、洗濯など)掃除、洗濯、買い物代行など(訪問介護)

配置医と訪問診療医の役割分担

特別養護老人ホームに入居している方が、専門的な医療管理や看取り期の緩和ケアなどを目的に、外部の訪問診療を併用するケースも考えられます。

この場合、施設の配置医師と訪問診療医の役割分担と情報共有が非常に重要になります。

一般的に、施設の配置医師は入居者の日常的な健康管理や施設内で対応可能な範囲の医療を担当します。一方、訪問診療医は、特定の専門疾患の管理や、配置医師だけでは対応が難しい高度な医療的判断、緩和ケアなどを担当することが多いです。

両者が定期的に情報交換を行い、治療方針やケア内容について共通認識を持つことで、入居者にとってより質の高い医療・介護サービスを提供できます。

この連携を円滑に進めるためには、ご家族やケアマネジャーも積極的に関わり、情報伝達の橋渡しをすることも大切です。

施設と在宅での多職種連携

高齢者の療養生活を支えるためには、医師、看護師、介護福祉士、ケアマネジャー、理学療法士、作業療法士、薬剤師、管理栄養士など、多くの専門職が関わります。

これらの多職種がそれぞれの専門性を活かし、情報を共有しながら連携して支援を行う「多職種連携」が、質の高いケアを実現するために必要です。

特別養護老人ホームでは、施設内にこれらの専門職が配置されているか、外部の専門職と契約している場合が多く、施設内でのカンファレンスなどを通じて比較的スムーズに情報共有や連携が行われやすい環境です。

在宅療養(訪問診療利用)の場合、関わる専門職はそれぞれ異なる事業所に所属していることが多いため、ケアマネジャーが中心となって、サービス担当者会議などを開催し、情報共有や役割分担、連携体制の構築を行います。

関係者間の積極的な情報交換と、患者さん・ご家族を中心としたチームアプローチが求められます。

費用・制度・利用手続きの違い

利用料金と公的補助の比較

費用は、療養場所を選択する上で大きな要素の一つです。特別養護老人ホームと訪問診療では、費用の構造や利用できる公的補助制度が異なります。

費用と公的補助の概要

項目特別養護老人ホーム訪問診療(在宅)
主な費用内訳居住費、食費、介護サービス費(自己負担分)、その他日常生活費診療費(医療保険)、薬剤費、訪問看護費、介護サービス費(介護保険)、その他(交通費など)
月額費用の目安所得や部屋のタイプにより異なる(例:約8万円~15万円程度)医療度や利用サービスにより大きく変動(例:数万円~数十万円)
主な公的補助高額介護サービス費、特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)高額療養費制度、高額介護サービス費、医療費助成制度(自治体による)

特別養護老人ホームの費用は、主に「居住費」「食費」「介護サービス費の自己負担分(通常1割、所得により2割または3割)」で構成されます。これに加えて、理美容代や嗜好品などの日常生活費が別途かかります。

居住費や食費は、所得段階や部屋のタイプ(多床室、個室など)によって異なり、低所得の方には負担限度額認定による軽減措置があります。

訪問診療の費用は、医療保険が適用され、診療費や検査費、薬剤費などがかかります。自己負担割合は年齢や所得に応じて1割~3割です。

これに加えて、訪問看護や訪問介護などの介護保険サービスを利用する場合は、その自己負担分も発生します。

また、訪問診療では医師の交通費が実費で請求されることもあります。 医療費や介護サービス費の自己負担額が高額になった場合には、「高額療養費制度」や「高額介護サービス費制度」を利用することで、一定の上限額を超えた分が払い戻されます。

医療・介護保険の適用範囲

特別養護老人ホームと訪問診療では、利用する保険制度が異なります。

保険適用の比較

サービス特別養護老人ホーム訪問診療(在宅)
施設サービス費(介護)介護保険適用なし
診療・薬剤費など(医療)配置医によるものは施設サービス費に含まれることが多い。外部医療機関受診時は医療保険。医療保険
訪問看護施設サービス費に含まれる医療保険または介護保険(疾患や状態による)
訪問介護・デイサービスなど施設サービスとして提供介護保険(別途契約)

特別養護老人ホームの入居にかかる基本的なサービス(介護、日常的な健康管理など)は、主に介護保険でカバーされます。

施設内で受ける配置医師の診察や一部の医療処置も介護保険給付に含まれることが多いですが、専門的な治療のために外部の医療機関を受診した場合は医療保険が適用されます。

訪問診療は医療行為であるため、医療保険が適用されます。訪問看護も、疾患や状態によっては医療保険または介護保険のいずれかが適用されます。在宅で訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを利用する場合は、介護保険が適用されます。

このように、どちらを選択するかによって、主に利用する保険制度やその範囲が変わってくることを理解しておく必要があります。

利用開始までの手続きと待機期間

利用を開始するまでの手続きや期間も異なります。

利用開始までの流れと期間の目安

項目特別養護老人ホーム訪問診療
相談・申込先施設へ直接、または市区町村の窓口、ケアマネジャー医療機関(クリニックなど)へ直接、またはケアマネジャー、地域包括支援センター
主な手続き入所申込書提出、面談、入所判定会議相談、初回面談(医師・相談員)、契約、診療計画作成
待機期間数ヶ月~数年(地域や施設により大きく異なる)比較的短い(数日~数週間程度、医療機関による)

特別養護老人ホームへの入居を希望する場合、まず施設に直接申し込むか、市区町村の担当窓口やケアマネジャーに相談します。

入所申込書を提出後、施設の担当者による面談が行われ、入所の必要性や緊急度などが総合的に判断されます。人気の高い施設や都市部では、待機者が多く、入居までに数ヶ月から数年かかることもあります。

訪問診療の利用を開始する際は、まず訪問診療を行っている医療機関に直接相談するか、かかりつけ医、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどを通じて紹介を受けます。

医療機関の医師や相談員との面談を経て、訪問診療の必要性が認められれば契約を結び、診療計画を作成して訪問が開始されます。

通常、申し込みから比較的短期間(数日~数週間程度)で利用を開始できることが多いです。

よくある質問

特別養護老人ホームと訪問診療、どちらを選べば良いか全く分かりません。最初の相談はどこにすれば良いですか?

まずは、お住まいの地域の地域包括支援センターにご相談することをおすすめします。専門の相談員が状況を伺い、適切なアドバイスや情報提供を行います。

また、既にかかりつけ医がいる場合は、その医師に相談するのも良いでしょう。介護保険サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーも重要な相談相手です。

これらの専門家は、ご本人やご家族の状況を総合的に把握し、適切な選択肢を一緒に考えてくれます。

訪問診療を利用する場合、家族はどの程度関わる必要がありますか?

訪問診療では、医師や看護師が定期的にご自宅を訪問しますが、日々の療養生活を支えるのはご家族の役割も大きくなります。

服薬管理、体調変化の観察、緊急時の連絡など、医療従事者と連携しながら関わることが求められます。ただし、介護保険サービス(訪問介護や訪問看護など)を組み合わせることで、ご家族の負担を軽減することも可能です。

どの程度の関与が必要かは、ご本人の状態や利用するサービスによって異なりますので、事前に医師やケアマネジャーとよく話し合うことが大切です。ご家族だけで抱え込まず、利用できるサポートは積極的に活用しましょう。

特別養護老人ホームの待機期間が長いと聞きました。すぐに入居できない場合、どうすれば良いですか?

特別養護老人ホームは申し込みから入居までに時間がかかることがあります。待機期間中は、在宅で訪問診療や訪問介護、デイサービスなどを利用しながら生活を継続する方法があります。

また、介護老人保健施設(老健)での一時的な入所やリハビリ、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、他の施設も選択肢として検討できます。

どのような選択肢があり、ご自身の状況に合っているか、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、情報を集めてみましょう。

施設見学や訪問診療クリニックへの相談の際、特に確認すべきポイントは何ですか?

納得のいく選択をするためには、事前の情報収集と確認が重要です。

施設見学のポイント

  • 施設の雰囲気、清潔さ、居室や共用スペースの環境
  • スタッフの対応や入居者の方々の表情、様子
  • 医療体制(協力医療機関、夜間・緊急時の具体的な対応フロー)
  • リハビリテーションやレクリエーションの内容と頻度
  • 食事の内容、形態(刻み食、ミキサー食などへの対応)、提供方法
  • 費用(月額利用料の内訳、追加でかかる費用)や契約内容の詳細
  • 看取りへの対応方針(希望する場合)

訪問診療クリニックへの相談ポイント

  • 対応可能な疾患や医療処置の範囲
  • 24時間対応の有無、緊急時の具体的な連絡体制と対応フロー
  • 連携している病院や薬局、訪問看護ステーション
  • 訪問頻度や1回あたりの診療時間、診療内容
  • 医師やスタッフの人柄、説明の分かりやすさ、相談のしやすさ
  • 費用(診療費以外にかかる交通費などの諸経費も含む)
  • 多職種連携の具体的な方法

これらの点を参考に、ご自身やご家族が重視するポイントをリストアップして質問すると良いでしょう。

本人の意思をどのように確認し、選択に反映すれば良いでしょうか?

ご本人の意思を尊重することが最も重要です。まず、ご本人がどのような療養生活を望んでいるのか、穏やかな環境でじっくりと話を聞きましょう。

その際、メリットだけでなくデメリットも伝え、ご本人が十分に理解した上で考えられるように支援します。認知症などで意思表示が難しい場合でも、これまでの言動や表情、大切にしてきた価値観、ライフスタイルなどから意向を推し量る努力が必要です。

ご家族だけで判断せず、必要であれば医師やケアマネジャー、医療ソーシャルワーカーなどの専門家にも相談し、ご本人にとって最善の選択ができるよう支援を受けましょう。

リビングウィル(事前指示書)やエンディングノートなどがあれば、それも重要な手がかりとなります。

今回の内容が皆様のお役に立ちますように。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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