特別訪問看護指示書が出るタイミング|急性期や看取りの対応

特別訪問看護指示書が出るタイミング|急性期や看取りの対応

在宅療養中に容体が急変した際や、人生の最期の時間を自宅で過ごすと決めた時、これまで通りの週数回の訪問看護では支えきれないのではないかと不安を感じるご家族は少なくありません。

特別訪問看護指示書は、そのような緊急時や急性増悪期、そして看取りの時期において、主治医が必要と判断した場合に交付される特別な指示書です。

これが交付されると、通常は週3回までの訪問回数制限が解除され、最長14日間、毎日看護師が訪問して濃厚な医療処置やケアを提供できるようになります。

本記事では、この指示書が出る具体的なタイミングや対象となる症状、家族が知っておくべき対応について詳しく解説します。

目次

特別訪問看護指示書の基礎知識と交付の仕組み

特別訪問看護指示書とは、主治医が診療に基づき、急性増悪等により一時的に頻回な訪問看護が必要であると判断した場合に交付する書類であり、この指示書があれば通常よりも手厚い看護体制を短期間集中的に構築することが可能になります。

在宅医療を受けている患者様の状態は日々変化します。安定している時期もあれば、急に熱が出たり、痛みが強くなったりして、医療的な介入頻度を上げなければならない時期もあります。

通常の「訪問看護指示書」では、介護保険や医療保険の規定により、週に訪問できる回数に上限が設けられています。

多くの場合、週に1回から3回程度が一般的です。そうした制限では対応しきれない緊急事態が発生した際に、この「特別訪問看護指示書」が大きな役割を果たします。

通常の指示書と特別訪問看護指示書の決定的な違い

通常の訪問看護指示書は、有効期間が最長で6ヶ月間あり、長期的な視点での療養支援を目的としています。

これに対し、特別訪問看護指示書は「急性増悪時」や「退院直後」「看取り」といった、医療的処置が頻繁に必要な特定の期間に限定して発行します。

最大の違いは、訪問回数の制限が解除される点です。

通常であれば週3回までといった制限がありますが、特別訪問看護指示書が出ている期間は、週4日以上の訪問が可能になり、必要であれば毎日、あるいは1日に複数回の訪問も行えるようになります。

通常時と特別指示期間の比較

項目通常の訪問看護指示書特別訪問看護指示書
訪問の目的状態の維持、リハビリ、生活支援急性期の治療、看取り、頻回な処置
訪問回数原則週3回まで(状態による)週4回以上可能(毎日も可)
有効期間最長6ヶ月最長14日間

この制度を活用することで、自宅にいながら入院に近いレベルの観察や処置を受けることができるため、患者様とご家族にとって大きな安心材料となります。

ただし、この指示書はあくまで「一時的」な対応を行うためのものであり、恒久的に毎日訪問できるわけではない点を理解しておくことが重要です。

有効期間と交付できる回数の原則

特別訪問看護指示書の有効期間は、指示日から最長で14日間と定められています。この14日間のカウントは、医師が診療を行い、必要性を認めて指示を出した日から始まります。

原則として、この指示書が交付できるのは月に1回だけです。つまり、一度発行されると、その月内は再び発行することはできません。

その一方で、気管カニューレを使用している場合や、真皮を超える深い褥瘡(床ずれ)がある場合など、厚生労働大臣が定める特定の状態にある患者様については、月に2回まで交付することが可能です。

その結果、より長期にわたる集中的なケアが必要なケースにも対応できる仕組みになっています。

ご自身の状況がこの例外に当てはまるかどうかは、主治医や訪問看護ステーションの管理者に確認することが大切です。

医師が交付を判断する基準と権限

この指示書を交付できるのは、患者様の主治医だけです。訪問看護師が「もっと訪問回数を増やしたい」と考えたとしても、看護師単独の判断で訪問回数を増やすことはできません。

看護師は日々のケアの中で患者様の状態変化を鋭敏に察知し、その情報を詳細に医師へ報告します。

医師はその報告と自らの診療情報をもとに、「今、集中的なケアを行わなければ、在宅生活の継続が困難になる」「入院を避けて自宅で治療するためには頻回な訪問が必要だ」と医学的に判断した時に初めて指示書を作成します。

したがって、ご家族が「不安だから毎日来てほしい」と希望しても、医学的な必要性が認められなければ交付されません。

あくまで病状の急性増悪や緊急性が判断の基準となります。

急性増悪時における指示書交付のタイミング

肺炎や脱水症状、尿路感染症などにより全身状態が急激に悪化し、入院治療に準じた医療処置を自宅で行う必要があると医師が判断した時が、特別訪問看護指示書が交付される典型的なタイミングです。

「急性増悪」とは、安定していた慢性疾患の症状が急に悪くなったり、新たな病気が発症して体調がガクンと崩れたりすることを指します。

高齢の患者様の場合、少しの風邪がきっかけで誤嚥性肺炎を起こしたり、夏場の水分不足から重度の脱水症状に陥ったりすることが珍しくありません。

このような時、即座に入院するという選択肢もありますが、住み慣れた自宅での療養を希望する場合、この指示書を活用して治療を行います。

主な急性増悪の症状

症状の種類具体的な状態必要となる主な処置
呼吸器症状肺炎、気管支炎、呼吸困難、SPO2低下酸素吸入管理、頻回な吸引、吸入、抗生剤点滴
循環・代謝脱水、心不全の悪化、高熱、意識障害持続点滴、バイタル監視、水分出納管理
創傷・皮膚褥瘡の悪化、外傷、手術創のトラブル洗浄、デブリードマン介助、軟膏処置、被覆材交換

肺炎や尿路感染症などの感染症発症時

在宅療養において最も頻繁に見られる急性増悪の原因の一つが感染症です。特に誤嚥性肺炎や尿路感染症は、高熱や呼吸困難、意識レベルの低下を引き起こします。

医師は抗生物質の点滴や酸素吸入の導入が必要だと判断します。

このような医療処置を安全に行うためには、看護師による頻回な観察と管理が必要です。

例えば、1日に数回の点滴管理や、痰の吸引、酸素濃度のモニタリングなどを行うために、特別訪問看護指示書が交付されます。

この期間中は、看護師が全身状態を細かくチェックし、薬の効果が出ているか、副作用が出ていないかを見守ります。

早期に集中的なケアを行うことで、重症化を防ぎ、再び安定した在宅生活に戻ることを目指します。

脱水症状や栄養状態の急激な悪化

食事が喉を通らなくなったり、水分が十分に摂れなくなったりすると、急激に脱水症状が進みます。特に高齢者は予備能力が低いため、短期間で危険な状態に陥ることがあります。

このような場合、持続的な点滴(補液)が必要になります。

点滴を24時間持続で行う場合や、一日に複数回の点滴交換が必要な場合、家族だけで管理するのは困難です。

また、点滴の針が抜けていないか、刺入部が腫れていないかなどのトラブルにも対応しなければなりません。

特別訪問看護指示書が出れば、看護師が毎日訪問して点滴ラインを管理し、水分出納バランス(入る水分と出る尿などの量)を確認します。

これにより、自宅にいながら病院に近い環境で水分・栄養管理を行うことが可能になります。

退院直後の不安定な時期のサポート

病院での治療を終えて退院した直後は、環境の変化や生活リズムの違いから、心身ともに不安定になりやすい時期です。

病院ではナースコールを押せばすぐに看護師が来てくれましたが、自宅では家族が中心となってケアをしなければなりません。

このギャップを埋めるために、退院直後に特別訪問看護指示書が出されることがあります。

特に、新しい医療機器(在宅酸素療法や吸引機など)を導入して退院する場合や、病状が完全に安定しきらないまま退院する場合に有効です。

最初の2週間、看護師が毎日訪問して、ご本人とご家族に機器の操作方法を指導したり、自宅での生活動作における注意点をアドバイスしたりします。

この集中的な支援があることで、在宅療養への移行をスムーズに行うことができます。

看取り(ターミナルケア)における対応と役割

人生の最期を自宅で迎えると決めた「看取り」の時期には、刻一刻と変化する身体状況に応じた苦痛緩和と、不安を抱えるご家族への精神的支援を行うために特別訪問看護指示書が交付されます。

終末期においては、予測できない身体の変化が起こります。痛み、呼吸の苦しさ、倦怠感、身の置き所のなさなど、様々な症状が出現します。

これらを最小限に抑え、穏やかな時間を過ごすためには、医療用麻薬の調整や細やかなケアが必要です。また、死期が近づくにつれて、ご家族の不安もピークに達します。

「息が止まってしまったらどうすればいいのか」「この苦しそうな様子は普通なのか」といった問いに対し、専門職がそばにいて支えることが重要です。

終末期に提供される主なケア内容

ケアの領域具体的な支援内容目的
身体的ケア清拭、体位変換、排泄介助、口腔ケア清潔保持、安楽の確保、尊厳の維持
症状緩和鎮痛薬管理、酸素吸入、リンパドレナージ痛みや呼吸苦、浮腫などの苦痛除去
精神的・社会的傾聴、家族への説明、緊急時連絡体制不安の軽減、看取りへの心の準備

がん末期における鎮痛コントロール

がんの末期においては、疼痛管理(ペインコントロール)が非常に重要です。飲み薬でのコントロールが難しくなった場合、皮下注射や静脈注射を持続的に行うポンプを使用することがあります。

これらの機器の管理や、痛みの程度に合わせた薬液量の調整(レスキューの使用など)には、高度な専門知識が必要です。

特別訪問看護指示書が交付されることで、看護師は毎日訪問し、患者様の痛みの訴えに耳を傾け、医師と連携して鎮痛薬の調整を行います。

「痛くない時間」を増やすことは、患者様がご家族と穏やかに会話をする時間を守ること直結します。また、薬の副作用による眠気や吐き気などの症状マネジメントも同時に行います。

非がん疾患の終末期ケア

老衰や心不全、呼吸不全などの非がん疾患の終末期においても、特別訪問看護指示書は重要な役割を果たします。

がんのように予後が明確でないことも多いですが、徐々に食事量が減り、寝ている時間が長くなり、意識レベルが低下していく過程で、適切なケアが必要です。

特に心不全の末期では、呼吸苦や浮腫(むくみ)の管理が課題となります。利尿剤の調整や、安楽な体位の工夫、口腔ケアなどを通じて苦痛を和らげます。

老衰の場合は、無理な延命措置を行わず、自然な経過を見守る「看取りのケア」が中心となります。

枯れるように穏やかに最期を迎えるための環境を整え、ご家族が最期の瞬間に立ち会えるよう準備を整えます。

家族の精神的ケア(グリーフケア)の準備

看取りの時期における看護師の役割は、患者様へのケアだけにとどまりません。患者様を支えるご家族へのケアも同じくらい重要です。

大切な人を失うことへの恐怖、介護疲れ、予期せぬ変化への動揺など、ご家族は極限のストレス状態にあります。

頻回に訪問することで、看護師はご家族の話をゆっくりと聞く時間を持つことができます。

今起こっている変化が自然なことであると説明し、次に何が起こる可能性があるかを予見して伝えることで、ご家族の心の準備を助けます。

同時に、最期の瞬間にどう振る舞えばよいか、どのような言葉をかければよいかをアドバイスし、後悔のないお別れができるように支援します。

これは、死別後の悲嘆(グリーフ)を和らげるための重要な準備でもあります。

指示書交付までの具体的な流れと手順

特別訪問看護指示書が必要となる事態が発生してから、実際に頻回な訪問看護が開始されるまでの順序は、迅速な連携によって進められます。

開始までの流れ

  • ご家族または看護師による患者様の異変の発見と状態観察
  • 訪問看護師から主治医への詳細な状況報告と医学的判断の仰ぎ
  • 主治医による特別訪問看護指示書の発行決定と処置内容の指示
  • ケアマネジャーへの報告および介護保険から医療保険への切り替え確認
  • 訪問看護ステーションによる緊急訪問スケジュールの調整と実施

基本的には、患者様の状態変化をきっかけとして動き出しますが、この流れをスムーズにするためには、患者様・ご家族、訪問看護ステーション、そして主治医の三者の協力が必要です。

緊急性が高い場合が多いため、手続きに時間をかけすぎないような仕組みになっていますが、正しい手順を理解しておくことで、いざという時に慌てずに行動できます。

状態変化の報告と医師への相談

すべては、患者様の「いつもと違う」変化に気づくことから始まります。ご家族が異変に気づいた場合、まずは訪問看護ステーションやかかりつけ医に連絡を入れます。

すでに定期的に訪問看護を利用している場合は、訪問した看護師がバイタルサインの異常や症状の悪化を確認し、その場で主治医に電話連絡を行うケースが多いです。

看護師は、体温、血圧、酸素飽和度などの数値データに加え、本人の意識状態や苦痛の訴えを医師に伝えます。

医師はこの情報をもとに、往診を行うか、あるいは電話での指示で対応するかを判断します。

この段階で医師が「集中的な看護が必要だ」と判断した場合、特別訪問看護指示書の発行準備に入ります。

ケアマネジャーとの連携とプラン調整

特別訪問看護指示書が発行されると、訪問看護の利用形態が「医療保険」へと切り替わることが一般的です(本来が介護保険利用の方の場合)。

そのため、ケアプランを管理しているケアマネジャーへの連絡が必要です。

訪問看護ステーションの担当者は、ケアマネジャーに対し「〇月〇日から特別指示書が出るため、医療保険での訪問に切り替わります」と伝えます。

その結果、介護保険の区分支給限度額の計算から訪問看護分が外れるため、ヘルパーの回数を増やしたり、福祉用具を追加したりといった他のサービスの調整が可能になる場合があります。

ご家族が直接複雑な手続きをする必要はほとんどありませんが、関係機関が連携して動いていることを知っておくと安心です。

指示書の受け取りと訪問スケジュールの変更

医師が作成した特別訪問看護指示書は、基本的には医療機関から直接訪問看護ステーションへ送付されます(郵送やFAXなど)。緊急の場合は、口頭での指示が先行し、後から書類が届くこともあります。

指示が出た時点で、訪問看護ステーションは直ちにスタッフのシフト調整を行います。毎日訪問するための人員を確保し、どの時間帯に訪問するかをご家族と相談して決定します。

朝の状態確認が必要なのか、夕方の処置が必要なのか、あるいは朝夕の2回訪問が必要なのか、病状に合わせて柔軟にスケジュールを組み直します。

こうして、密度の高い看護体制がスタートします。

頻度と期間の制限および例外措置

特別訪問看護指示書による訪問には制度上の明確なルールがあり、原則として月に1回、14日間までという制限がありますが、特定の重篤な状態にある場合には例外的に月に2回まで交付が可能となります。

この制度は無限に利用できるものではありません。医療資源の適正な配分という観点から、本当に必要な時期に限定して適用されるように設計されています。

しかし、病状によっては14日間では安定しないケースや、長期にわたって高度な管理が必要なケースもあります。

そのため、一律な制限ではなく、患者様の病状の深刻さに応じた柔軟な運用規定(例外措置)が設けられています。

頻度に関する規定まとめ

区分交付頻度対象となる主な状態
原則月1回(14日間)一般的な急性増悪、退院直後、通常の看取り
特例(例外)月2回(28日間)気管カニューレ使用、真皮を超える褥瘡
訪問回数1日複数回可頻回な処置、点滴管理、疼痛管理が必要な場合

「月1回・14日間」の原則ルール

基本ルールを再確認します。特別訪問看護指示書は、一人の患者様に対して「月に1回」しか交付できません。そして、その有効期間は指示日から数えて「14日間」です。

例えば、4月1日に指示書が出た場合、4月14日までが対象期間となります。もし4月20日に再び状態が悪化しても、原則として4月中に2回目の指示書を出すことはできません。

この期間中は、医療保険が適用され、週4日以上の訪問が可能になります。

利用者の負担割合(1割〜3割)に応じた費用がかかりますが、通常の介護保険の枠とは別枠で計算されるため、介護サービスの単位数を気にする必要がなくなります。

14日を過ぎると、通常の訪問看護(介護保険または医療保険の通常ルール)に戻ります。

「月2回」交付が可能になる特定条件

状態が非常に重篤であり、継続的な頻回訪問が不可欠であると認められる特定の条件に該当する場合、月に2回まで特別訪問看護指示書を交付することができます。

その結果、最大で月に28日間(14日×2回)の集中的な訪問が可能となり、実質的にほぼ毎日看護師が訪問できる体制を作れます。

この例外が適用されるのは、「気管カニューレを使用している状態」や「真皮を超える褥瘡(じょくそう)の状態」にある患者様です。

これらは、日々の処置を怠ると生命に関わる、あるいは著しく状態が悪化するリスクが高いため、特例として認められています。この判断も主治医が行い、指示書にその旨を記載します。

週4日以上かつ1日複数回の訪問が必要なケース

特別訪問看護指示書が出ている期間は、「週4日以上」の訪問が基本となりますが、必要であれば「1日2回」や「1日3回」の訪問も可能です。これを「難病等複数回訪問加算」といいます。

例えば、末期がんで痛みのコントロールが不安定なため、朝と夜に注射薬の交換や状態確認が必要な場合や、独居で脱水のリスクが高く、こまめな水分補給の介助と確認が必要な場合などが該当します。

一日に複数回看護師が顔を見せることは、患者様の安心感につながるだけでなく、急変の予兆を早期に発見するためにも非常に有効です。

真皮を超える褥瘡など具体的医療処置への対応

「真皮を超える褥瘡」や「気管カニューレ」などの高度な医療的ケアが必要な状態では、専門的な技術を持つ看護師による毎日の処置が、患部の治癒促進や感染予防において決定的な役割を果たします。

在宅医療の現場では、病院と同等の処置環境を整えることは簡単ではありません。

しかし、特別訪問看護指示書を活用することで、プロフェッショナルなケアを毎日提供し、衛生環境を保ち、適切な医療処置を継続することができます。

ここでは、特例の対象にもなる重度な状態への具体的な対応について解説します。

重度褥瘡(床ずれ)の処置と管理

「真皮を超える褥瘡」とは、皮膚の表面だけでなく、皮下組織や筋肉、場合によっては骨が見えるほど深くまで進行した床ずれのことです。

この状態になると、壊死組織(死んだ肉)を除去したり、ポケットと呼ばれる空洞の中を洗浄したりする高度な処置が必要です。

看護師は毎日訪問し、傷の状態を観察して、感染の兆候(悪臭、膿、発赤の拡大)がないかチェックします。

医師の指示に基づき、適切な軟膏を選定して塗布し、滲出液を吸収するための被覆材を交換します。

また、新たな褥瘡を作らないための除圧(体圧分散マットレスの調整や体位変換の指導)も同時に行います。家族だけでこのレベルの処置を行うのは困難であり、専門職の介入が重要です。

高度医療処置の例

処置項目具体的なケア内容リスク管理
重度褥瘡処置洗浄、壊死組織除去、軟膏処置、被覆材選定感染予防、栄養状態の改善、除圧管理
気管カニューレガーゼ交換、カニューレ洗浄、吸引、カフ圧調整窒息予防、誤嚥性肺炎予防、皮膚トラブル防止
IVH管理ルート交換、刺入部消毒、ヘパリンロックカテーテル関連血流感染症(CRBSI)の防止

気管カニューレと呼吸管理

気管切開を行い、気管カニューレ(のどに入っている管)を使用している患者様の場合、痰が詰まると即座に窒息のリスクがあります。

また、カニューレの周囲が汚染されると、気管支炎や肺炎の原因になります。

特別訪問看護指示書(月2回交付対象)が出ている場合、看護師は頻繁に訪問してカニューレの交換介助や、Yガーゼの交換、カニューレバンドの調整などを行います。

また、痰の吸引手技をご家族に指導したり、吸引器の管理方法を伝えたりもします。呼吸状態は生命に直結するため、日々の細やかな観察と、少しの異常も見逃さないプロの目が求められます。

中心静脈栄養(IVH)等の高度管理

口から食事が摂れない方で、中心静脈(心臓に近い太い血管)にカテーテルを入れて高カロリー輸液を行っている場合(IVH・CVポートなど)、カテーテル感染のリスク管理が非常に重要です。

ここから細菌が入ると、全身に菌が回る敗血症を引き起こす恐れがあります。

看護師は無菌操作を徹底して輸液ラインの交換や、刺入部の消毒を行います。

特別訪問看護指示書が適用されるような状態では、全身状態が悪化して免疫力が落ちていることが多いため、より一層厳密な管理が求められます。

ご家族に対しても、消毒の重要性や、観察すべきポイント(熱が出ていないか、赤くなっていないか)を教育し、協働して感染を防ぎます。

家族に求められる準備と観察のポイント

特別訪問看護指示書が出ている期間は、医療依存度が高まっている時期であり、ご家族による日々の観察と、訪問看護師や医師への迅速な報告が、患者様の安全を守るための鍵となります。

看護師が毎日来るとはいえ、24時間ずっとそばにいるわけではありません。看護師がいない時間の患者様の様子を知っているのは、同居しているご家族だけです。

専門的な医療判断をする必要はありませんが、「なんとなくいつもと違う」「顔色が悪い気がする」といった直感的な気づきが、重大な変化の前触れであることは多々あります。

療養環境の整備と物品の確認

頻回な訪問看護が始まると、処置に必要な物品の消費スピードが上がります。

ガーゼ、手袋、消毒液、防水シーツ、オムツなどが十分に足りているかを確認し、不足しそうであれば早めに看護師に伝えて補充する必要があります。

また、看護師がスムーズに処置を行えるよう、ベッド周りのスペースを確保したり、処置時に使う照明を明るくしたりといった環境整備も大切です。

特に、点滴や酸素濃縮器などの医療機器が増える場合は、電源コードで足を引っかけないよう配線を整理するなど、安全面への配慮も必要になります。

小さな変化を見逃さない観察眼

ご家族に見ていただきたいのは、数値には表れにくい変化です。例えば、「今日は目が合う回数が少ない」「呼びかけへの反応が鈍い」「呼吸の音がいつもより大きい」「手足が冷たい」といった点です。

家族ができるサポート

  • 「いつもと違う」と感じる表情、呼吸、反応の変化をメモに残し看護師へ伝える
  • 処置に必要な医療材料や日用品の在庫を確認し、切れ目なく補充する
  • 看護師がいない時間帯の水分摂取量や排泄の有無を把握する
  • 緊急時の連絡先リストを目立つ場所に掲示し、家族全員で共有する
  • 患者様のそばにいて声をかけたり、手を握ったりして安心感を与える

また、痛みや苦しさを言葉で訴えられない患者様の場合、表情のゆがみや、体の強張り、うめき声などが苦痛のサインになります。

これらの様子をメモに残しておき、訪問した看護師に伝えることで、鎮痛薬の調整やケアの方法を見直す重要な手がかりになります。

「こんな些細なことを言ってもいいのかな」と遠慮せず、気になったことはすべて伝える姿勢が大切です。

医療チームとの情報共有体制

この時期は、医師、看護師、ケアマネジャー、薬剤師など多くの専門職が関わります。

ご家族が情報のハブ(中心)となって、連絡ノートを活用したり、緊急連絡先を携帯電話に登録してすぐにかけられるようにしたりと、連絡体制を整えておくことが安心につながります。

特に、夜間や休日に容体が急変した時の対応フロー(誰に最初に電話するか、救急車を呼ぶ基準はどうするか)を、あらかじめ看護師と相談して決めておくことが重要です。

事前にシミュレーションしておくことで、いざという時のパニックを防ぐことができます。

Q&A

月の途中からでも指示書は出してもらえますか?

はい、月の途中からでも交付可能です。患者様の状態が悪化したその日が起算日となり、そこから14日間の有効期間が始まります。

月をまたぐ場合でも(例:1月25日から2月7日まで)、有効期間内であれば問題なく利用できます。

ただし、月ごとの交付回数制限(原則月1回)には影響するため、翌月の対応については主治医や看護師との調整が必要です。

精神科訪問看護でもこの指示書は使えますか?

いいえ、精神科訪問看護指示書で訪問看護を利用している場合は、この「特別訪問看護指示書」の対象外となります。

精神疾患を有する方の急性増悪については、精神科特別訪問看護指示書という別の枠組みが存在します。

制度が異なるため、精神科の主治医や利用している訪問看護ステーションに詳細を確認する必要があります。

期間中に訪問看護ステーションを変更することは可能ですか?

制度上は可能ですが、実務的には調整が必要です。特別訪問看護指示書は、特定の訪問看護ステーションに対して医師が交付するものです。

したがって、ステーションを変更する場合は、医師に新しいステーション宛ての指示書を再度作成してもらう必要があります。

緊急時にスムーズな引き継ぎを行うためにも、関係者間での密な相談が重要です。

14日経つ前に状態が良くなったらどうなりますか?

状態が早期に改善し、頻回な訪問が必要なくなったと医師が判断すれば、14日間を待たずに通常の訪問看護体制に戻ることができます。

その場合、指示書の効力は終了したとみなされ、通常の介護保険や医療保険での週数回の訪問に移行します。無理に毎日訪問を続ける必要はありません。

特別指示期間が終わった後、すぐにまた悪化したらどうなりますか?

原則として月1回の交付に限られるため、同じ月に2回目の指示書を出すことはできません(例外対象者を除く)。

しかし、状態が悪いまま指示期間が終了した場合、通常の医療保険や介護保険の範囲内で最大限の訪問回数を組むなど、工夫して対応します。

また、翌月になれば再度交付が可能になるため、月が変わるタイミングで再交付を受けるケースもあります。

今回の内容が皆様のお役に立ちますように。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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