訪問診療を検討し始めた際、多くの患者様やご家族が最初に抱く疑問の一つが「なぜ月2回の訪問が基本とされているのか」という点です。
自身の体調が安定している場合、月1回でも十分ではないかと感じることもあれば、逆に手厚いケアを求めて回数を増やしたいと考えることもあるでしょう。
この「月2回」という頻度は、単なる慣習ではなく、日本の医療保険制度における「在宅時医学総合管理料」などの算定要件や、医師が責任を持って24時間体制の医学管理を行うための仕組みと深く結びついています。
この記事では、回数が決まる背景にあるルールの詳細、費用への影響、そして患者様の病状に応じた柔軟な対応について、専門的な視点からわかりやすく解説します。
訪問診療が月2回といわれる法的根拠と医学的管理の必要性
在宅医療で「月2回」の訪問が標準とされるのは、医療保険制度の規定と医学的安全管理の両面から必要性が高いためです。
医師が定期的に患者様のご自宅を訪問し、計画的な医学管理を行うことで、急な体調変化を未然に防ぐ体制が整います。この回数が標準となっている根拠について詳しく解説します。
在宅時医学総合管理料の算定要件との関係
訪問診療を受ける多くの患者様に対して、医療機関は「在宅時医学総合管理料(在医総管)」という管理料を算定します。
この管理料は、医師が24時間365日の対応体制を整え、患者様の普段の状態を把握し続けるために必要な費用として設定されています。
厚生労働省が定める保険診療のルールにおいて、この管理料を算定するための要件の一つとして、原則として月2回以上の訪問診療を行うことが前提となっているケースが多くあります。
もちろん、月1回の訪問で算定できる区分も存在しますが、重症化予防やきめ細やかな病状管理を行うためには、2週間に1回程度の間隔で診察を行うことが望ましいとされています。
月2回の診察を行うことで、医師は患者様の些細な変化に気づきやすくなり、薬の調整や生活指導を適切なタイミングで行えるようになります。
つまり、制度上の要件を満たすと同時に、医療の質を担保するための頻度として定着しているのです。
計画的な医学管理による重症化予防
訪問診療の最大の特徴は、体調が悪くなった時だけ診察するのではなく、安定している時も含めて継続的に診察を行う「計画的な医学管理」にあります。
高齢の患者様や慢性疾患をお持ちの方は、自覚症状がないまま病状が進行したり、脱水や栄養状態の悪化が徐々に進んだりすることが珍しくありません。
月2回のペースで医師や看護師が関わることで、こうした変化を早期に発見できます。
早期発見がもたらすメリット
2週間に1回の診察があれば、前回の診察時との比較が容易になります。
血圧の変動、浮腫(むくみ)の有無、顔色の変化などを医師が直接確認することで、入院が必要になるような大きなトラブルを未然に防ぐ確率が高まります。
在宅での生活を長く続けるためには、この「予防的な視点」での関わりが非常に重要です。
24時間365日の連絡体制を維持するための基盤
在宅医療を提供する診療所(在宅療養支援診療所など)は、患者様からの緊急連絡にいつでも対応できる体制を整えています。
この安心感を提供するためには、医師が患者様の「平時の状態」を正確に把握している必要があります。
もし訪問頻度が極端に少ないと、いざ緊急の連絡が入った際に、それが普段と比べてどれくらい危険な状態なのかを判断する材料が乏しくなってしまいます。
月2回の定期訪問を行うことは、医師と患者様、そしてご家族との信頼関係を築く時間でもあります。
定期的な対話を通じて、患者様の価値観やご家族の介護力を理解しておくことが、緊急時の迅速かつ的確な判断につながります。
その結果、月2回の訪問は単なる回数の規定ではなく、緊急時対応の精度を高めるための基盤づくりという意味合いも持っています。
訪問頻度と医療管理の質の相関関係
訪問診療の頻度がどのように医学管理の質や制度上の扱いに影響するか、以下の表で整理しました。
頻度ごとの特徴を理解することで、なぜ月2回が推奨されるのかがより明確になります。
| 訪問頻度 | 医学的なメリット・デメリット | 制度上の主な位置づけ |
|---|---|---|
| 月2回以上 | 病状変化の早期発見がしやすく、服薬管理や処置の調整が細やかに行える。信頼関係も構築しやすい。 | 在宅時医学総合管理料の一般的な算定基準を満たし、24時間対応体制の対象となりやすい。 |
| 月1回 | 病状が極めて安定している場合に限定される。急変時の予兆を見逃すリスクが相対的に高まる。 | 特定の条件下では算定可能だが、医療機関によっては24時間対応の契約外となる場合がある。 |
| 隔月・不定期 | 継続的な医学管理とはみなされず、体調悪化時の対応が遅れる可能性がある。 | 「訪問診療」ではなく、要請に応じた「往診」扱いとなるケースが多く、管理料の算定対象外となる。 |
このように、月2回以上の頻度を確保することは、医学的な安全性を高めると同時に、制度上の手厚いサポートを受けるための条件にもなっています。
訪問診療と往診の違いによる訪問回数の考え方
訪問診療と往診は似て非なるものであり、訪問回数の考え方も根本的に異なります。
両者の違いを正しく理解することは、適切な医療サービスを受けるための第一歩となります。
訪問診療はあらかじめ計画された定期的な診察
訪問診療とは、通院が困難な患者様に対して、医師があらかじめ診療計画を立て、定期的かつ計画的に自宅を訪問して診察を行うものです。
ここで重要なのは「定期的」であるという点です。
患者様の体調が良いか悪いかに関わらず、約束した日時に医師が訪問します。これが先述した「月2回」という基本回数の枠組みになります。
継続的に診察を行うことで、慢性疾患のコントロールやリハビリテーションの指示、栄養管理などを行います。
訪問診療は、いわば「自宅が診察室になる」イメージであり、病院の外来診療を自宅で定期的に受ける仕組みと言い換えることもできます。
この継続性こそが、在宅生活の安定を支える柱となります。
往診は患家の求めに応じた緊急的な対応
一方、往診とは、患者様の体調が急変した際など、患者様やご家族の求めに応じてその都度、不定期に医師が訪問することを指します。
例えば、「急に高熱が出た」「転倒して痛みが強い」といった突発的な事態に対して行われるのが往診です。したがって、往診には「月○回」という定まった回数の概念はありません。
基本的には、定期的な訪問診療を行っている患者様が急変した場合に、緊急の往診として医師が駆けつけるケースが一般的です。
訪問診療の契約をしていない状態で、急病の時だけ往診を依頼するというケースは、現在のかかりつけ医制度の中では少なくなってきています。
往診はあくまで臨時的な対応であり、ベースには定期的な訪問診療が存在します。
二つの診療形態の組み合わせによる安心感
在宅医療の現場では、この「訪問診療」と「往診」を適切に組み合わせることで、万全の体制を構築します。
基本的には月2回の訪問診療でベースとなる健康管理を行い、予期せぬトラブルが起きた際には往診で対応する、という二段構えです。
| 項目 | 訪問診療(定期訪問) | 往診(臨時訪問) |
|---|---|---|
| 訪問のきっかけ | 事前に策定された診療計画に基づく | 患者様やご家族からの緊急の要請に基づく |
| 訪問の日時 | あらかじめ決まった曜日・時間 | 要請があり次第、速やかに(不定期) |
| 主な目的 | 病状の安定維持、重症化予防、薬の管理 | 急性の症状緩和、救急処置、状況判断 |
この表で示したように役割が異なる二つが機能するからこそ、患者様は自宅で安心して療養生活を続けることができます。
定期訪問があるからこそ往診が機能する
初めて会う医師が、緊急時にいきなり自宅に来て適切な診断を下すことは容易ではありません。
普段の血圧、服用している薬、アレルギーの有無、そしてご本人の性格などを「訪問診療」を通じて医師が熟知しているからこそ、いざという時の「往診」で的確な処置が可能になります。
その意味で、月2回の訪問診療は、緊急時の往診を有効に機能させるための準備期間でもあるといえます。
患者の病状や容体によって訪問回数が増減するケース
訪問診療は月2回が基本ですが、これはあくまで標準的な目安であり、すべての患者様に一律に適用されるわけではありません。
医療は個別性が高く、患者様の病状、進行度、そしてご家族のサポート状況によって、必要とされる訪問回数は柔軟に調整されます。
病状が不安定な時期や看取り期における頻回訪問
病状が不安定な時期や、人生の最期をご自宅で過ごされる「看取り(ターミナルケア)」の時期には、月2回の訪問では医学的な安全を確保できない場合があります。
このようなケースでは、週に1回、あるいは毎日のように医師や看護師が訪問することもあります。
特に、がんの末期や心不全の重症期などで、痛みのコントロール(緩和ケア)や頻繁な処置が必要な場合は、患者様の苦痛を取り除くことを最優先に考え、訪問回数を大幅に増やします。
医療保険制度には「在宅がん医療総合診療料」や「頻回訪問加算」といった仕組みがあり、必要な医療を必要な回数だけ提供できる体制が整えられています。
状態が極めて安定している場合の対応
逆に、病状が長期間にわたって非常に安定しており、薬の変更もなく、ご家族によるケア体制も盤石である場合には、医師の判断により月1回の訪問診療で対応することもあります。
ただし、これには慎重な判断が必要です。
高齢者は些細なきっかけで体調を崩しやすいため、月1回の訪問にする場合でも、訪問看護ステーションと連携を密にし、看護師による観察を補完的に行うなどの工夫が求められます。
月1回への変更を希望される場合は、単に「元気だから」という理由だけでなく、緊急時の対応方法や普段の連絡体制について、主治医と十分に話し合う必要があります。
訪問回数の変更を検討する主な要因
訪問回数は固定されたものではなく、患者様の状態変化に合わせて常に見直しが行われます。具体的にどのような状況で回数の増減が検討されるのか、主な要因を整理します。
- 床ずれ(褥瘡)の処置や点滴管理など、日常的な医療処置が新たに必要になった場合。
- 退院直後であり、在宅生活のリズムが整うまでの不安定な期間を支える必要がある場合。
- がん性疼痛のコントロールなど、薬の調整を頻繁に行う必要性が生じた場合。
- 老衰などが進行し、お看取りの時期が近づいてきたと医師が判断した場合。
- ご家族の介護疲れが見え始め、医療的なサポートを厚くして負担を軽減する必要がある場合。
これらの要因が生じた際は、速やかにケアマネジャーや医師に相談することで、適切な回数への変更が可能となります。
訪問回数によって変動する医療費と自己負担額の仕組み
訪問回数が増えれば安心感は増しますが、同時に気になるのが費用の問題です。
基本となる管理料と、訪問ごとの診療費がどのように組み合わさるのかを理解することで、経済的な見通しを立てることができます。
在宅医療にかかる費用の二階建て構造
在宅医療の費用は、大きく分けて二つの部分から成り立っています。一つは、訪問の回数に関わらず月額で発生する「管理料(在宅時医学総合管理料など)」です。
これは、24時間体制の維持や計画的な管理に対する基本料金のようなものです。もう一つは、実際に医師が足を運んで診察を行うたびに発生する「訪問診療料」です。
したがって、訪問回数が月2回から4回に増えれば、その分「訪問診療料」の部分は加算されますが、基本となる「管理料」は(病状や契約内容によりますが)一定の範囲内で収まることもあります。
ただし、頻回訪問が必要な重症例などの場合は、より点数の高い管理料区分へと変更になることもあります。
高齢者の自己負担割合と高額療養費制度
75歳以上の後期高齢者の場合、医療費の自己負担割合は原則1割(現役並み所得者は3割)です。
訪問診療は外来通院に比べて総額の医療費が高くなる傾向にありますが、患者様の支払う金額が青天井に増えるわけではありません。
「高額療養費制度」というセーフティネットが存在するためです。
一ヶ月あたりの医療費の自己負担額には上限が設けられています。
一般的な所得の方(1割負担)であれば、上限額(例えば18,000円など、制度改正により変動あり)を超えた分は払い戻されるか、あるいは最初から請求されない仕組みになっています。
このため、医学的に必要があって訪問回数が増えたとしても、経済的な負担は一定額で止まるケースが多いのです。
費用の目安と回数による違い
以下に、一般的な1割負担の高齢者が訪問診療を利用した場合の費用イメージをまとめます。
これはあくまで概算であり、検査や処置の内容、薬代、在宅療養指導管理料(酸素療法やインスリンなど)の有無によって金額は変動します。
| 訪問回数(月) | 自己負担額の目安(1割負担) | 費用の構成要素の傾向 |
|---|---|---|
| 月2回 | 約6,000円 〜 8,000円 | 基本の在宅時医学総合管理料 + 訪問診療料×2回分。最も標準的なパターン。 |
| 月4回 | 約8,000円 〜 12,000円 | 訪問診療料の回数分が増加。上限額(高額療養費)に達する場合がある。 |
| 緊急往診あり | 上限額(約18,000円等)に達する可能性大 | 夜間・休日の往診料は高めに設定されているため、上限額適用となることが多い。 |
表からもわかるように、緊急時の往診が含まれると上限額に達する可能性が高まりますが、定期訪問のみであれば予測可能な範囲に収まりやすい傾向があります。
交通費などの保険外費用について
医療保険が適用される診療費とは別に、医療機関によっては「交通費」を実費として請求する場合があります。
この交通費は医療保険の対象外であり、高額療養費制度の計算にも含まれません。訪問回数が増えれば、その回数分だけ交通費の負担も増えることになります。
契約前に、交通費の規定がどうなっているかを確認することが大切です。
介護保険サービスやケアマネジャーとの連携によるスケジュール調整
在宅での療養生活は、医療だけで完結するものではありません。
訪問介護(ヘルパー)、訪問看護、デイサービス、訪問入浴など、様々な介護保険サービスと組み合わせて生活が成り立っています。
医師の訪問診療も、こうした他のサービスとの兼ね合いを考慮してスケジュールが組まれます。
ケアプランと訪問診療の整合性
介護保険サービスを利用するためには、ケアマネジャー(介護支援専門員)が作成するケアプラン(居宅サービス計画書)が必要です。
訪問診療の日程は、このケアプランの中に位置づけられます。
例えば、「月曜日と木曜日の午前中はデイサービスに行く」「火曜日の午後は訪問入浴が来る」といった既存の予定を縫うようにして、医師の訪問日時が設定されます。
月2回の訪問日は、原則として固定の曜日・時間帯に設定されることが一般的です。
そのおかげで、患者様もご家族も生活のリズムを作りやすくなりますし、他の介護サービス事業者も予定を立てやすくなります。
多職種連携の中心としてのケアマネジャー
訪問回数や日程の調整において、鍵を握るのがケアマネジャーです。
ケアマネジャーは、医師からの医学的な助言(どの程度の頻度で診察が必要か)と、ご本人・ご家族の生活上の都合、そして介護サービスの空き状況をパズルのように組み合わせます。
もし「訪問診療の回数を増やしたい」あるいは「曜日を変更したい」と考えた場合は、直接クリニックに相談するだけでなく、ケアマネジャーにも情報を共有することが大切です。
そうすることで、全体のバランスを崩さずにスムーズな調整が可能になります。
連携する主な専門職と役割
訪問診療のスケジュール調整において、どのような専門職が関わり、どのような視点で調整が行われるのかを整理します。
- 訪問看護師:医師の訪問がない週の体調管理を担当し、医師と訪問日を交互にするなどの調整を提案する。
- 薬剤師:医師の処方変更に合わせて、薬の配達や服薬指導のタイミングを調整し、残薬管理を行う。
- ヘルパー(訪問介護):診察時に家族が不在の場合、医師の受け入れや準備をサポートするために訪問時間を合わせる。
- 理学療法士:リハビリの直後や直前に診察を行うことで、身体機能の変化を医師と共有しやすくする。
これらの専門職が互いに情報を共有し合うことで、患者様にとって無理のないスケジュールが構築されます。
在宅医療を開始する際の流れと頻度決定のタイミング
これから在宅医療を始めようと考えている方にとって、いつ、誰が、どのようにして訪問回数を決めるのかは気になるところです。
訪問診療の開始までには一定の手順があり、その中で患者様の状態を詳しく評価し、最適な訪問スケジュールを決定していきます。
初回面談・契約時のアセスメント
一般的に、訪問診療を開始する前には、医師や相談員(ソーシャルワーカー)による事前面談や、初回往診が行われます。
このタイミングで、現在の病状、これまでの治療経過、ご家族の介護力、そしてご本人の希望などを詳細に聞き取ります。
このアセスメント(評価)の結果に基づき、「医学的に見てどれくらいの頻度で診察が必要か」を医師が提案します。
多くの場合はここで「まずは月2回から始めましょう」という提案がなされますが、病状が重い場合は週1回などの提案があるかもしれません。
この時点で、費用面やスケジュールの希望もしっかりと伝え、合意の上で契約を結ぶことが重要です。
退院時カンファレンスでの調整
病院から退院して在宅医療へ移行する場合、「退院時カンファレンス」という会議が開かれることがあります。
病院の主治医、看護師、在宅医、ケアマネジャー、訪問看護師などが一堂に会し(またはオンラインで)、患者様の情報を共有します。
この場では、退院直後の不安定な時期をどう支えるかが議論されます。
退院直後は環境の変化で体調を崩しやすいため、最初の1ヶ月だけは訪問回数を多めに設定し、落ち着いてきたら月2回に戻す、といった柔軟な計画が立てられることもあります。
開始までの標準的なフロー
在宅医療の相談から、実際に定期訪問が始まり、回数が定着するまでの流れを以下の表にまとめます。どの段階でこちらの要望を伝えればよいかの参考にしてください。
| 段階 | 内容 | 頻度決定に関わるポイント |
|---|---|---|
| 問い合わせ・相談 | 医療機関の相談窓口へ電話や面談の予約を入れる。 | 現在の病状を伝え、受け入れ可能か確認する。 |
| 事前面談・説明 | 医師や相談員から仕組みや費用の説明を受ける。 | 医師が病状を把握し、暫定的な訪問回数を提示する。 |
| 契約・初回訪問 | 同意書を交わし、第1回目の診察を実施する。 | 実際の診察を経て、正式な訪問スケジュールを確定する。 |
| 定期訪問開始 | 計画に基づき、定期的な診療がスタートする。 | 様子を見ながら、必要に応じて回数の見直しを行う。 |
在宅時医学総合管理料と施設入居時等医学総合管理料の算定要件
訪問診療の回数と費用の関係を深く理解するためには、「在宅時医学総合管理料(在医総管)」と「施設入居時等医学総合管理料(施設総管)」の違いを知っておくことが役立ちます。
これらは医師が受け取る報酬の名称ですが、患者様がどこに住んでいるかによって適用されるルールが異なります。
自宅か施設かによる区分の違い
一戸建てやマンションなどの「ご自宅」で療養される場合は「在宅時医学総合管理料」が適用されます。
一方、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの「施設」に入居されている場合は「施設入居時等医学総合管理料」が適用されるのが基本です。
施設の場合、同じ建物の中に複数の患者様がいらっしゃることが多いため、医師は効率的に回診することができます。
そのため、施設総管の点数(費用)は、在医総管に比べて低く設定されている場合があります。
しかし、訪問回数の基準については、どちらも「月2回以上」が基本ラインとなっている点に変わりはありません。
回数による点数の格差
これらの管理料は、月ごとの定額制ですが、訪問回数によって点数が区分されているわけではありません(一部の特例を除く)。
基本的には「月2回以上の訪問診療を行っていること」が算定の前提条件となります。
もし月1回しか訪問しなかった場合、これらの高い点数の管理料は算定できず、より低い点数の区分で算定するか、あるいは管理料自体を算定しないことになります。
医療機関経営の視点から見ると、24時間の待機体制を維持するコストを賄うためには、正規の管理料を算定することが必要です。
その関係で、多くのクリニックでは、経営的な持続可能性と医療の質を両立させるために、月2回の訪問を標準としている側面があります。
管理料の区分と訪問頻度の関係概要
居住場所と訪問頻度がどのように管理料の算定に関わってくるのか、主なパターンを整理しました。
| 管理料の名称 | 対象となる患者様 | 回数に関する主な要件 |
|---|---|---|
| 在宅時医学総合管理料 | 自宅で療養する患者様 | 原則として月2回以上の訪問診療が必要。個別の医学管理計画の策定が必要。 |
| 施設入居時等医学総合管理料 | 特定の施設に入居する患者様 | 原則として月2回以上の訪問診療が必要。同一建物内の診療人数により点数が変動。 |
| (例外)月1回算定の場合 | 病状が安定している患者様 | 特定の要件を満たせば月1回でも算定可能だが、点数は低くなる場合がある。 |
よくある質問
- 月2回も来てもらう必要がないほど元気なのですが、月1回に減らすことはできますか?
-
患者様の病状が極めて安定しており、医師が医学的に「月1回の診察でも安全管理が可能」と判断した場合には、月1回への変更が可能なケースもあります。
ただし、月1回の訪問になると、医療機関によっては「24時間連絡体制」の対象外となる契約形態になることや、緊急時の対応優先度が変わる可能性があります。
今は元気でも、加齢とともに急激に状態が変わることもあるため、慎重な判断が必要です。
まずは主治医に、現在の体調で月1回にした場合のリスクとデメリットについて相談してみてください。
- 医師が訪問した際、本人が寝ていたり拒否したりした場合も1回にカウントされますか?
-
訪問診療は、医師が患者様と対面し、診察を行うことで初めて「1回」として算定されます。
したがって、訪問しても患者様が不在だったり、面会を拒否されて診察ができなかったりした場合は、診療費を請求することはできません。
ただし、悪質なキャンセルが続く場合などは、交通費相当の実費を請求されたり、診療契約自体の継続が難しくなったりすることがあります。
本人の気分や体調で診察が難しい場合は、事前に電話で相談するなど、柔軟な対応を心がけることが大切です。
- 訪問回数が増えると、その分だけ費用は倍増していくのでしょうか?
-
訪問回数が増えると、「訪問診療料」という診察ごとの費用は回数分だけ増えます。
しかし、費用の大きな割合を占める「在宅時医学総合管理料」は月単位の定額(固定)であるため、総額が単純に倍々になるわけではありません。
また、高額療養費制度があるため、一定の上限額を超えた分の自己負担は発生しません。
そのため、医療的に必要で回数が増えたとしても、経済的な負担はある程度の範囲内で抑えられる仕組みになっています。
- 月2回の訪問日は、毎月都合の良い日に変更してもらうことは可能ですか?
-
訪問診療は、医師が地域を効率よく回るためにルートを決めて動いています。
その都合上、基本的には「毎月第1・第3火曜日の午後」のように、曜日と時間を固定してスケジュールを組みます。
ご家族の都合などで一時的に日程を変更することは可能ですが、毎月バラバラの日程を指定することは難しいのが一般的です。
固定の曜日を決めることで、訪問看護やデイサービスなど他のサービスとも連携が取りやすくなるメリットがあります。
- 訪問診療の契約をしていないのですが、急病の時だけ来てもらうことはできますか?
-
基本的には難しいと考えてください。在宅医療を行うクリニックは、普段から契約している患者様の24時間対応を優先して行っています。
全く初診の患者様から「今すぐ来てほしい」と要請があっても、カルテもなく、どのような病状かわからない状態で医師を派遣することはリスクが高く、対応できない場合がほとんどです。
急な往診が必要になる不安がある場合は、平時から訪問診療の契約をしておき、月2回の診察を通じて医師との関係を築いておくことが大切です。
【以下ディスクリプション】
訪問診療が月2回基本とされる理由は、医療保険のルールと安全な医学管理にあります。回数の根拠、費用への影響、往診との違いを解説。状態に応じた柔軟な対応や頻度変更の仕組みも詳しく紹介します。

