訪問診療の頻回訪問(週1回以上)が必要なケース|重症化時の対応頻度

訪問診療の頻回訪問(週1回以上)が必要なケース|重症化時の対応頻度

訪問診療を利用する際、通常は月2回程度の定期訪問が基本ですが、患者様の病状や身体の状態によっては、週1回以上の頻回訪問が必要となるケースが少なくありません。

特に、癌の末期や重度の心不全、あるいは高度な医療処置を日常的に必要とする方にとっては、医師による頻繁な観察とケアが在宅生活を維持する生命線となります。

ご家族だけで判断に迷う症状の変化も、医師が頻繁に訪問することで早期に発見し、重症化を防ぐ手立てを講じることができます。

この記事では、どのような状況で訪問回数が増えるのか、また重症化した際に医療チームがどのように対応するのかについて、具体的な基準と体制を詳しく解説します。

目次

訪問診療における頻回訪問の定義と基準

訪問診療における「頻回訪問」とは、医学的な必要性に基づいて週1回以上、あるいは連日のように医師が患者様のもとを訪れる診療形態であり、通常の月2回の計画とは明確に区別されます。

病状が不安定で予断を許さない場合や、急激な変化が予測される局面において、柔軟に回数を増やすことで入院治療に匹敵する手厚い医療管理を在宅で実現します。

通常の訪問頻度と頻回訪問の違い

一般的な訪問診療では、病状が比較的安定している慢性疾患の患者様を対象としており、2週間に1回程度のペースで医師が訪問します。

この頻度で薬の処方や体調確認を行い、日常生活の指導を継続します。

一方で、頻回訪問が必要となるのは、病状が日々変化しやすく、数日空けるだけで命に関わるリスクが高まる場合です。

頻回訪問と通常の訪問診療の違いを整理すると、以下のようになります。

訪問頻度別に見る主な特徴

項目通常の訪問診療頻回訪問診療
訪問の目安月2回(隔週)週1回以上〜毎日
対象となる主な状態病状が安定している慢性疾患末期がん、重症心不全、急性増悪期
主な医療内容定期処方、健康観察、生活指導疼痛緩和、点滴管理、頻繁な処置
目的現状維持と予防苦痛の除去、急変対応、看取り

このように、頻回訪問では単に回数が増えるだけでなく、毎回詳細な診察を行い、その日の状態に合わせて臨機応変に治療方針を微修正します。

その結果、自宅という環境でも安心して療養生活を継続できる基盤が整います。

頻回訪問を導入する医学的な判断基準

医師が週1回以上の訪問が必要だと判断するには、明確な医学的根拠が存在します。

具体的には、厚生労働省が定める「在宅時医学総合管理料」や「在宅がん医療総合診療料」などの算定要件に準拠しつつ、患者様の個別のリスクを評価します。

主な判断材料となるのは、悪性腫瘍の進行度、心不全や呼吸不全の重症度、褥瘡(床ずれ)の状態、そして人工呼吸器や中心静脈栄養といった高度な医療機器の使用状況です。

さらに、これらに加えて介護力(家族のサポート体制)の有無も重要な要素となります。

医学的な管理が必要であっても、家族によるケアが手厚く行える場合と、独居や老老介護でサポートが薄い場合とでは、医師が介入すべき頻度が異なるため、これらを総合的に勘案して訪問スケジュールを立案します。

診療計画の見直しと頻度変更のタイミング

訪問頻度は一度決めたら固定されるものではなく、患者様の状態変化に合わせて随時見直しを行います。

病状が安定すれば週1回から月2回へと減らすこともありますし、逆に風邪をこじらせて肺炎の兆候が見られる場合や、食事が摂れなくなり脱水の懸念がある場合などは、一時的に訪問回数を増やします。

変更のタイミングは、定期訪問時の診察結果や、訪問看護師からの報告、ご家族からの相談に基づいて決定します。

特に退院直後で在宅生活に慣れていない時期や、最期の時が近づいている時期には、こまめに計画を見直し、過不足のない医療提供を目指します。

週1回以上の訪問が求められる具体的な疾患

進行した悪性腫瘍や重篤な循環器・呼吸器疾患、神経難病などは、病状が時間単位で変化する可能性があるため、週1回以上の頻回訪問による密な経過観察と処置が不可欠です。

医師がこまめに介入することで、不快な症状の早期緩和や不安の解消を図り、在宅療養の質を維持します。

末期がんにおける疼痛管理と全身状態の把握

進行がんや末期がんの患者様の場合、週1回以上の訪問が必要になるケースが非常に多く見られます。

がんによる痛み(癌性疼痛)は日々変化するため、鎮痛剤(医療用麻薬など)の種類や量を微調整する必要があります。

また、腹水や胸水が溜まって苦しい場合や、腫瘍による閉塞症状が出ている場合など、身体的な苦痛が多岐にわたります。

医師は頻繁に訪問することで、痛みの強さや副作用の有無を確認し、患者様が少しでも穏やかに過ごせるよう薬のコントロールを行います。

疾患別の頻回訪問が必要となる主な理由

疾患分類頻回訪問が必要となる主な医学的理由注意すべき症状
末期悪性腫瘍疼痛コントロール、腹水・胸水の管理、急変対応痛みの増強、呼吸苦、意識レベル低下
重症心不全体液管理(浮腫・体重)、利尿剤の調整息切れ、急激な体重増加、起座呼吸
神経難病呼吸管理(人工呼吸器)、栄養管理、誤嚥予防SPO2低下、発熱、痰の増加

さらに、精神的な不安や死への恐怖に対しても、対面で話を傾聴し、心理的なサポートを提供します。

病状の進行スピードが速いため、月2回の訪問では対応が後手に回る可能性があり、先手先手のケアを行うために頻回訪問を実施します。

重症心不全および呼吸不全の増悪予防

重度の心不全や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患を持つ患者様も、頻回訪問の対象となります。

心不全の患者様は、わずかな塩分・水分の摂取過多や感染症をきっかけに、急激に呼吸困難や浮腫(むくみ)が悪化することがあります。

週1回以上の診察で、肺の音を聴診し、足のむくみを確認し、体重の変動をチェックすることで、心不全の増悪を早期に察知します。

呼吸不全の患者様の場合も、酸素飽和度の測定や呼吸状態の観察を密に行い、必要に応じて酸素流量の調整や吸入薬の変更を行います。

これらの疾患は「急性増悪」を繰り返すたびに体力が低下していく特徴があるため、増悪の兆候をいち早く捉えて対処することが、在宅生活を長く続ける鍵となります。

神経難病における進行抑制と合併症管理

筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病などの神経難病も、進行期には週1回以上の訪問を必要とします。

これらの疾患では、嚥下機能(飲み込む力)の低下による誤嚥性肺炎のリスクや、全身の筋力低下による呼吸障害のリスクが常に伴います。

医師は定期的に神経学的な所見をとり、病気の進行具合を確認するとともに、胃瘻(いろう)や気管切開部の管理を行います。

また、自分では体を動かせないことによる拘縮や痛みに対しても、投薬やリハビリテーションの指示を行います。

意思疎通が困難になってくる段階でも、医師が頻繁に顔を合わせることで、患者様のわずかな表情の変化や訴えを汲み取り、適切なケアにつなげることができます。

頻繁な医療処置を伴う状態と管理

生命維持に直結する医療機器や高度な処置が必要な場合、週1回以上の訪問を通じて機器の動作確認や感染徴候のチェックを行い、トラブルを未然に防ぐ管理体制を敷きます。

カテーテルや在宅酸素療法などの医療デバイスは、適切な管理なしには重大なリスク要因となるため、専門的な視点での継続的な監視が必要です。

中心静脈栄養(IVH)や持続点滴の管理

口から食事が摂れない患者様の中には、中心静脈栄養(IVH)やポートを使用して高カロリー輸液を行っている方がいます。

また、脱水補正や抗生剤投与のために持続的な点滴を行うこともあります。

これらのカテーテル管理は非常に重要で、刺入部の消毒や固定の確認、ルートの閉塞有無のチェックが必要です。各処置における管理ポイントは以下の通りです。

医療処置別の管理ポイントと訪問の必要性

医療処置・機器主な管理・確認事項リスク管理の視点
中心静脈栄養・点滴刺入部の観察、ルート交換、滴下速度確認カテーテル感染、閉塞、自己抜去
人工呼吸器・気管切開設定確認、カニューレ交換、回路チェック回路外れ、気道閉塞、誤嚥性肺炎
重度褥瘡処置壊死組織除去、洗浄、外用薬変更創部感染、骨髄炎、敗血症

カテーテル関連血流感染症(CRBSI)などの重篤な感染症を防ぐため、医師や看護師が頻繁に状態を確認します。

特に在宅での点滴管理は、ご家族の協力が必要な場面も多いため、手技の指導やトラブル時の対応方法を伝えるためにも、導入初期や不安定な時期には訪問頻度を増やしてサポートを強化します。

在宅酸素療法および気管切開のケア

在宅酸素療法(HOT)を行っている患者様や、気管切開をして人工呼吸器を装着している患者様の場合、呼吸状態の安定を図るために週1回以上の診察を行います。

酸素流量が適切かどうかの判断や、人工呼吸器の設定確認、カニューレ(管)の交換や位置確認など、専門的な処置が求められます。

特に気管切開部は、痰詰まりや肉芽形成などのトラブルが起きやすいため、こまめな観察が必要です。

また、吸引が必要な場合は、吸引手技が適切に行われているか、痰の性状(色や粘り気)に変化がないかを確認し、感染症の兆候があれば直ちに抗生剤の投与などの治療を開始します。

重度褥瘡(床ずれ)の処置と治癒促進

寝たきりの患者様に発生しやすい褥瘡(床ずれ)は、初期段階であれば軟膏処置などで対応可能ですが、深達度が進んだ重度の褥瘡になると、壊死組織の除去(デブリードマン)や特殊な被覆材の使用など、外科的な処置が必要になります。

このような場合、週に一度あるいはそれ以上の頻度で医師が創部の状態を観察し、感染の有無を評価した上で処置を行います。

褥瘡は栄養状態や体位変換の頻度とも密接に関係しているため、処置だけでなく、栄養剤の処方やご家族・介護スタッフへの体位変換指導も併せて行います。

頻回に介入することで、創部の悪化を防ぎ、治癒に向けた適切な環境を整えることができます。

お看取りやターミナルケアにおける訪問頻度の変化

お看取りの時期(ターミナル期)には、患者様の身体的変化やご家族の不安に対応するため、訪問頻度を大幅に増やして全人的なサポートを行います。

死期が近づくと時間単位で状況が変わるため、医療的な処置に加えて、心のケアや最期の時間を穏やかに過ごすための環境調整が最優先事項となります。

死亡前14日以内の頻回訪問加算対象期間

医学的に余命が数日から2週間程度と予測される時期に入ると、診療報酬上の「在宅ターミナルケア加算」等の対象となり、必要に応じて毎日訪問することも可能になります。

この時期は、血圧の低下、尿量の減少、意識レベルの低下など、身体機能が徐々に停止に向かうサインが現れます。

お看取りが近づいている際に見られる主な兆候には、以下のようなものがあります。

お看取りが近づいている際に見られる兆候

  • 食事や水分の摂取量が極端に減り、飲み込むことが難しくなり始める
  • 呼びかけへの反応が鈍くなり、眠っている時間が一日の中で長くなる
  • 呼吸のリズムが不規則になり、一時的に止まるような呼吸(無呼吸)が見られる
  • 手足の先が冷たくなり、皮膚の色が青紫っぽく変化してくる
  • 喉の奥でゴロゴロという音がする(死前喘鳴)頻度が増える

医師はこれらの変化を的確にアセスメントし、今何が起きているのか、これからどのような変化が起こりうるのかを、丁寧にご家族へ説明します。

予期せぬ変化に動揺しないよう、あらかじめ見通しを共有することが、穏やかなお看取りには重要です。

苦痛緩和を最優先した緩和ケアの実施

最期の時を過ごす上で最も重視するのは、痛みや呼吸苦などの不快な症状を取り除くことです。これを「緩和ケア」と呼びます。

がんの痛みにはモルヒネなどの医療用麻薬を使用し、呼吸が苦しい場合には鎮静薬の使用を検討するなど、患者様が苦しまずに眠るように過ごせる状態を目指します。

この時期は薬の効き方が不安定になりやすいため、医師が頻繁に訪問して薬剤の量を微調整します。

さらに、口腔内の乾燥を防ぐケアや、体位の工夫など、薬以外の方法でも安楽を追求します。

「何も食べられなくて心配」というご家族の声に対しても、点滴が逆に身体の負担になる場合があることなどを説明し、医学的に正しい判断のもとでケアを行います。

ご家族への精神的ケア(グリーフケア)の開始

ターミナルケアにおける訪問診療の大きな役割の一つが、ご家族への精神的な支援です。

大切な人を失うことへの恐怖や、介護疲れ、本当にこれで良いのかという葛藤に対し、医師や看護師が寄り添います。

頻回に訪問し、ご家族の話を聞く時間を設けることで、孤立感を和らげます。また、お看取りの瞬間に立ち会う際の心構えや、呼吸が止まった時の対応についても具体的にアドバイスします。

患者様が亡くなられた後も、必要に応じてご家族の悲嘆(グリーフ)に対するケアを行い、心の整理をお手伝いすることもあります。

容体急変時や重症化時における緊急対応

在宅療養中の予期せぬ容体変化や重症化に対しては、24時間365日の連絡体制と緊急往診によって迅速に対応し、可能な限り自宅での治療継続を支援します。

定期訪問以外の時間帯でも医師が駆けつける体制を整えることで、病院受診の負担を減らし、患者様とご家族の安心を守ります。

24時間365日の連絡・相談体制(オンコール)

訪問診療を行っている医療機関の多くは、夜間や休日を問わず、患者様やご家族からの連絡を受け付ける窓口(オンコール体制)を設けています。

急に熱が出た、転倒して痛がっている、呼吸が苦しそうだ、といった異変を感じた際、まずは電話で状況を伝えていただきます。

電話口で医師や看護師が症状を聞き取り、緊急性の有無を判断します。

様子を見て翌日の訪問で良いのか、今すぐ医師が向かうべきなのか、あるいは救急車を呼ぶべきなのかを的確に指示します。

この「いつでも繋がる安心感」が、重症化時の不安を軽減する大きな支えとなります。

緊急往診の実施と現場での処置

電話での相談の結果、医師が直接診察する必要があると判断した場合は、定期訪問のスケジュールに関わらず、緊急往診を実施します。

医師は必要な医療機器や薬剤を持参して患者様宅へ急行します。現場での具体的な対応フローは以下の通りです。

急変時の状況別対応フロー

状況初期対応医療機関の対応
発熱や軽度の体調不良電話相談(オンコール)服薬指示、翌日の訪問調整、必要なら往診
呼吸困難、激しい痛み電話相談、緊急往診要請緊急往診による処置(酸素、注射等)
意識消失、大量出血救急車要請または医師へ連絡救急搬送の指示、搬送先病院との連携

現場では、点滴や注射、酸素投与、カテーテルの入れ直し、創処置、心電図検査やポータブルエコーによる検査など、病院の外来診療と同等の処置を行います。

例えば、肺炎による発熱であればその場で抗生剤の点滴を行い、心不全の悪化であれば利尿剤を静脈注射するなど、即座に治療を開始することで重症化の進行を食い止めます。

在宅での継続か病院への搬送かの判断

緊急往診の結果、在宅での処置だけでは対応が困難だと判断した場合、あるいは専門的な検査や手術が必要だと判断した場合は、提携している病院への紹介・搬送を行います。

しかし、すべての急変で入院を選択するわけではありません。

ご本人やご家族が「最期まで家で過ごしたい」と強く希望されている場合や、入院による環境変化が認知症の悪化(せん妄)を招くリスクが高い場合は、可能な限り在宅で治療を完結させる方針をとります。

医師は医学的な適応と、患者様・ご家族の価値観(QOL)の両方を天秤にかけ、その時点で最善と思われる選択肢を提案し、合意形成を図ります。

家族や介護者の負担と訪問診療のサポート体制

重症度の高い患者様を支えるご家族の身体的・精神的負担を軽減するため、頻回訪問を通じて介護者のSOSを早期に発見し、レスパイトケアの提案や手技指導などの具体的な支援策を提供します。

患者様の治療だけでなく、介護者を含めた生活全体を支えることが訪問診療の重要な役割です。

介護不安の軽減とレスパイトの提案

医師や看護師が頻繁に家に来ることは、ご家族にとって「何かあったらすぐに相談できる」という安心感に繋がります。

介護に関する些細な疑問や、将来への不安をその都度解消することで、精神的な重圧を和らげます。ご家族が抱え込みやすい負担には、以下のようなものがあります。

介護者の負担となりやすい主な要因

  • 夜間の頻繁な吸引や体位変換による慢性的な睡眠不足
  • 「自分が失敗したら大変なことになる」という医療的ケアへの重圧
  • 排泄介助や入浴介助による腰痛などの身体的な痛み
  • いつ急変するかわからないという常在的な緊張感
  • 社会との繋がりが薄れることによる孤独感や疎外感

介護者が疲弊している様子が見られた場合、医師は積極的に「レスパイトケア(休息のための入院やショートステイ)」を提案します。

患者様の状態が悪くても、医療対応が可能な施設と連携し、一時的に介護から離れる時間を作ることで、在宅介護を長く続けるためのエネルギーを回復してもらいます。

医療的ケアの手技指導と環境調整

吸引や胃瘻の管理など、ご家族が医療的ケアの一部を担う場合、手技がうまくいかないことが大きなストレスになります。

訪問診療の際には、医師や同行看護師が、より安全で楽な方法を具体的に指導します。

また、介護ベッドの配置やポータブルトイレの選定など、療養環境の整備についても、医学的な視点から助言を行います。

介護負担が少しでも減るような工夫を一緒に考え、実行に移します。適切な道具の使用や配置換えだけで、介護の労力が大幅に減ることも珍しくありません。

訪問看護との連携による見守り体制の強化

頻回訪問が必要な重症ケースでは、医師だけでなく訪問看護師と密に連携し、役割分担と情報共有を行うことで、24時間切れ目のない見守り体制を構築します。

チーム医療による重層的なサポートが、安全な在宅療養の基盤となります。

医師と看護師の役割分担と協働

医師は診断、治療方針の決定、処方、医学的な判断を行いますが、日々の細やかなケアや生活支援は訪問看護師が中心となって担います。

例えば、点滴のボトル交換や状態確認のために看護師が毎日訪問し、週1回医師が訪問して全身状態を評価するといった連携をとります。

それぞれの職種が担う役割のイメージは以下の通りです。

在宅医療チームの役割分担表

職種主な役割・担当業務訪問頻度のイメージ(重症時)
訪問診療医診断、処方、治療方針決定、往診週1〜2回 + 緊急時
訪問看護師状態観察、医療処置、保清、家族支援週3回〜毎日複数回
ケアマネジャーサービス調整、プラン作成、相談窓口月1回 + 随時調整

看護師は患者様の一番近くにいる医療従事者として、日々の変化を敏感に察知し、医師へ報告します。医師はその報告を受けて治療内容を変更したり、往診の必要性を判断したりします。

この両輪が機能することで、重症度の高い患者様でも安全に在宅療養を継続できます。

ICTツールを活用したリアルタイムな情報共有

頻回な対応が必要な患者様の場合、情報のタイムラグが命取りになることがあります。

そのため、多くの現場では、電子カルテの共有や、医療介護専用のSNSアプリ(ICTツール)を活用し、リアルタイムで情報を共有しています。

看護師が訪問先で撮影した患部の写真やバイタルデータを即座に医師へ送信し、医師がチャット等で指示を出すといったやり取りが日常的に行われています。

このため、医師が直接訪問していない時間帯でも、的確な医療判断を下すことが可能になります。

Q&A

頻回訪問になった場合、医療費の自己負担額は大きく増えますか?

訪問回数が増えると、その分診療報酬上の点数が加算されるため、医療費の総額は増加します。

しかし、日本の公的医療保険制度には「高額療養費制度」があり、所得に応じて月ごとの自己負担上限額が定められています。

頻回訪問や重篤な処置によって医療費が高額になった場合でも、この上限額を超えた分は払い戻される(または窓口での支払いが免除される)ため、青天井に負担が増えるわけではありません。

具体的な上限額は年齢や所得によって異なるため、相談員やケアマネジャーに確認することをお勧めします。

家族の希望で訪問回数を増やしてもらうことはできますか?

基本的には可能です。ただし、訪問診療は医療保険適用となるため、医師が「医学的に必要である」と判断した場合に限り保険適用での増回が認められます。

ご家族が不安でより頻繁に診てほしいという理由は、医学的な必要性として十分に考慮されます。

まずは医師や相談員に、現在の不安な点や、なぜ訪問を増やしてほしいのかを率直にご相談ください。

状況に応じて、医師の訪問を増やすか、あるいは訪問看護の回数を増やすなど、最適なプランを提案します。

夜中や早朝でも医師に来てもらうことは可能ですか?

24時間対応体制(機能強化型在宅療養支援診療所など)をとっている医療機関であれば、夜間や早朝であっても緊急往診が可能です。

ただし、すべての連絡に対して必ず往診するわけではなく、電話での病状確認の結果、緊急性が高いと判断された場合に限ります。

定期的な訪問として夜中や早朝を指定することは通常できませんが、急変時には時間を問わず対応しますので、遠慮なく連絡してください。

医師が忙しくて来られない場合、どうなりますか?

主治医が他の患者様の急変対応などでどうしても動けない場合は、連携している他の医師が代診として訪問したり、まずは訪問看護師が先行して駆けつけたりする体制をとっています。

地域の医療機関同士が連携グループを作ってバックアップ体制を敷いていることも多いため、「誰も来ない」という状況にならないようリスク管理がなされています。

緊急時には救急搬送も含めた適切な判断を行います。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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