訪問診療の曜日や時間指定はできる?訪問スケジュールの決め方と変更

訪問診療の曜日や時間指定はできる?訪問スケジュールの決め方と変更

訪問診療を利用する際、患者や家族の生活リズムに合わせて曜日や時間を指定できるかは大きな関心事ですが、医師の巡回ルートの効率性により完全な指定は難しい場合が多くあります。

しかし、事前にしっかりと相談し、互いの事情を共有することで、納得のいくスケジュールを組むことは十分可能です。

この記事では、訪問スケジュールの決定方法や変更時のルール、そしてトラブルを未然に防ぐためのポイントについて詳しく解説します。

これから在宅医療を始める方が、安心して治療を継続できる環境を整える手助けとなる情報をお届けします。

目次

訪問診療で曜日や時間の指定は可能なのか

訪問診療における曜日や時間の指定は、患者側の希望をベースにしつつも、最終的にはクリニックの巡回ルートや診療体制とすり合わせて決定します。完全に自由な指定は難しいものの、生活スタイルに合わせた調整は可能です。

在宅医療を検討し始めたとき、多くの患者や家族が抱く疑問の一つが「自分たちの都合の良い日時に来てもらえるのか」という点です。通院とは異なり、訪問診療は医師が患者の自宅へ出向くスタイルをとります。

そのため、移動時間や地理的な条件がスケジュール決定に大きく影響します。まずは、訪問診療におけるスケジュール調整の基本的な考え方について理解を深めましょう。

基本的にはクリニック側との相談で決定する

訪問診療のスケジュールは、原則としてクリニック側との協議によって決まります。これは、医師が1日に複数の患者宅を効率よく回る必要があるためです。

医師は地域ごとにエリアを区切り、無駄な移動時間を減らすことで、より多くの患者を診療できる体制を整えています。すべての患者が自由に日時を指定すると移動距離が長くなり、診療時間が削られてしまう恐れがあるからです。

したがって、最初の面談や契約の段階で、クリニックの担当者から「この地域の訪問は火曜日と金曜日の午後が基本です」といった提案を受けることが一般的です。もちろん、これは一方的な押し付けではありません。

クリニック側も患者が安心して療養生活を送れるよう配慮しますから、提示された日程で都合が悪い場合は、率直にその旨を伝えて調整を図ります。双方が歩み寄ることで、無理のない訪問スケジュールを構築していくのです。

要望の通りやすさと調整のポイント

調整項目要望の通りやすさ解説
訪問曜日の指定△(相談可)クリニックがその地域を巡回する曜日が決まっている場合が多いですが、複数の候補日から選べることもあります。
時間帯の指定△(幅を持たせて可)「14時きっかり」のようなピンポイント指定は困難ですが、「午前中」や「15時以降」といった大まかな希望は考慮してもらえます。
緊急時の対応○(随時対応)定期訪問の日時に関わらず、容態急変時には24時間365日体制で往診や連絡に応じる体制が整っています。

患者や家族の希望がどの程度通るか

患者や家族の希望がどの程度通るかは、そのクリニックの規模や医師の数、そして担当エリアの混雑状況によって異なります。医師が複数名在籍している大規模な在宅療養支援診療所であれば、比較的柔軟に日時を調整できる可能性があります。

一方で、医師一人で運営しているクリニックの場合、巡回ルートを固定していることが多く、個別の要望に対応する余裕が少ないこともあります。しかし、デイサービスなどの介護サービスを利用している場合は、それらと重ならないように調整が必要です。

この点は医療機関側も十分に理解しているため、「デイサービスに行く月曜の午前は避けてほしい」といった具体的な理由がある希望については、可能な限り優先してスケジュールを組むよう努力してくれます。

大切なのは、単に「この時間がいい」と言うだけでなく、なぜその時間である必要があるのかという背景をしっかり伝えることです。

24時間365日対応と定期訪問の違い

ここで明確にしておくべきなのが、「定期訪問(訪問診療)」と「往診」の違いです。私たちが議論しているスケジュールの調整は、あくまで計画的に行われる「定期訪問」に関するものです。

定期訪問は、月2回などの頻度であらかじめ決められた日時に医師が訪れ、診察や薬の処方、健康管理を行うもので、病状が安定しているときも継続的に行われます。

一方で、多くの在宅療養支援診療所が掲げる「24時間365日対応」というのは、急な体調変化などの緊急時に対応する「往診」や電話相談のことを指します。緊急時はスケジュールの枠を超えて、昼夜を問わず医師や看護師が駆けつけます。

つまり、定期訪問の日時はある程度クリニックの都合に合わせる必要がありますが、何かあったときの安心感は24時間体制で担保されているというわけです。この二つの性質を理解しておくと、スケジュール調整に対する不安も軽減するでしょう。

初回の訪問スケジュールが決まるまでの流れ

初回訪問までのスケジュール決定は、入念な事前面談と情報共有を経て行います。患者の病状や生活環境を把握した上で、無理なく継続できる日時を確定させます。

訪問診療を開始するには、いくつかの準備段階を経る必要があります。いきなり医師がやってきて診療を始めるわけではありません。

患者がどのような医療を必要としているのか、家族はどの程度サポートできるのか、そして生活のリズムはどうなっているのか。これらを詳細に確認した上で、最適な訪問日時を設定します。

ここでは、問い合わせから実際の訪問が始まるまでの具体的なフローを見ていきましょう。

問い合わせから事前面談での調整

まずは電話やウェブサイトを通じて、地域の訪問診療クリニックへ問い合わせを行います。この段階で、現在の病状や住所、介護サービスの利用状況などを簡単に伝えます。

その後、相談員や看護師、場合によっては医師が自宅や入院中の病院を訪れ、「事前面談」を行います。医療的なニーズの確認はもちろんですが、スケジュールのすり合わせもこの場で行うことが一般的だからです。

事前面談では、患者の一日の過ごし方や、同居家族の勤務状況などを伝えます。「午前中はヘルパーさんが来る」「午後はリハビリがある」といった情報は、訪問日時を決める上で欠かせない要素です。

クリニック側はこの情報を持ち帰り、既存の巡回ルートと照らし合わせながら、訪問可能な候補日時を検討します。

初回訪問までのタイムラインと確認事項

時期行うべきこと確認すべきポイント
問い合わせクリニックへの連絡・相談住所が訪問エリア内か、希望する診療科に対応しているかを確認します。
事前面談病状・生活状況の共有介護サービスの予定や家族の立ち会い可能な曜日・時間帯を明確に伝えます。
日程調整候補日の提示と決定初回訪問日だけでなく、2回目以降の定期訪問の曜日・時間の目安も確認します。

医師や看護師の空き状況とのすり合わせ

クリニック側では、事前面談で得た情報をもとに、担当医や同行する看護師のスケジュールを確認します。訪問診療はチーム医療であることが多く、医師だけでなく、ドライバーや医療事務、看護師がチームを組んで動いています。

そのため、医師一人の予定が空いていればよいというわけではありません。チーム全体がその時間にそのエリアへ移動できるかどうかが鍵となります。

特に、特定の専門医(例えば神経内科や緩和ケアの専門医など)の診察を希望する場合は、その医師が稼働している曜日が限られていることもあります。この場合、希望する曜日と医師の担当日が合致しなければ、調整が必要です。

場合によっては、主治医は固定しつつも、どうしても都合がつかない週は別の代診医師が訪問するといった柔軟な運用でカバーすることもあります。

契約時に確認すべき診療日時の詳細

双方の条件が整い、訪問診療を開始することが決まったら、契約手続きを行います。この際、重要事項説明書や契約書を取り交わしますが、ここに記載される診療日時の詳細を必ず確認してください。

「毎週火曜日の午後」といったざっくりした取り決めだけでなく、「14時から16時の間」といった時間の幅についても合意形成しておくことが大切です。

また、祝日が重なった場合の対応についても確認が必要です。通常のクリニックであれば祝日は休診ですが、訪問診療の場合、対応は分かれます。

祝日でも通常通り訪問するクリニックもあれば、前後の日程に振り替えるクリニックもあります。こうした細かいルールを契約時にクリアにしておくことで、開始後のトラブルを防ぐことができます。

定期的な訪問スケジュールの組み方とルール

定期訪問は月2回の頻度が基本であり、効率的な巡回のために曜日を固定して運用するのが一般的です。ただし、交通事情などによる時間の前後は避けられないため、ある程度の幅を持たせたスケジュール管理が必要です。

訪問診療が始まると、基本的には決まったリズムで医師が自宅を訪れるようになります。この「定期的な訪問」こそが、在宅医療の根幹を支えるシステムです。

なぜスケジュールを固定する必要があるのか、どのようなルールで運用されているのかを知ることで、患者側も生活の予定を立てやすくなります。

月2回以上の訪問が基本となる理由

訪問診療では、通常「月2回」の訪問が基本セットとして提案されます。これは、国の定めた診療報酬制度において、在宅時医学総合管理料などを算定するための要件が関わっていますが、それ以上に医学的な管理の観点から重要です。

2週間に1回程度、医師が直接患者の状態を確認することで、体調の微細な変化に気づき、薬の調整や生活指導を行うことができます。状態が安定している患者であっても、この頻度で診察を行うことが、急変を未然に防ぐことにつながります。

もちろん、病状が不安定な時期や、末期がんなどで頻繁な緩和ケアが必要な場合は、週1回や週2回、あるいは毎日といった高頻度での訪問スケジュールが組まれます。

逆に、状態が非常に安定していても、月1回の訪問では緊急時の対応体制を維持することが制度上難しくなる場合があるため、やはり月2回が標準的なラインとなります。

固定制と変動制のメリット・デメリット

方式メリットデメリット
曜日・時間固定制生活のリズムを作りやすく、家族も予定を立てやすい。また、毎回同じ医師が担当しやすい。祝日や医師の学会出席などで予定が変更になると、再調整の手間が発生する。
都度予約・変動制患者や家族の不定期な予定に合わせて診察を受けられる。希望の日時が埋まっている可能性が高く、訪問時間が読みにくい。担当医が変わることもある。
併用型基本は固定しつつ、都合が悪い週だけ変更するなど柔軟性がある。クリニック側の管理が煩雑になるため、対応できる医療機関が限られる。

曜日固定制と変動制のメリットデメリット

多くのクリニックでは「曜日固定制」を採用しています。例えば「第1・第3木曜日の午後」といった具合です。これには大きなメリットがあります。

患者にとっては「木曜の午後は先生が来るから自宅にいよう」と予定が立てやすく、同時に、介護サービスなど他の予定ともバッティングしにくくなります。

クリニックにとっても、同じルートを定期的に回ることで移動効率を最大化でき、結果として一人ひとりの患者に十分な時間を割くことができます。

一方で、仕事のシフトが不規則な家族が立ち会いたい場合などは、固定制だと不都合が生じることもあります。そうした場合、毎回次回の予約を決める「変動制」をとることもありますが、これはあくまで例外的です。

変動制は希望日時がすでに埋まっているリスクが高く、ルート効率も悪くなるため、結果として訪問時間の指定がより困難になる傾向があります。

安定した療養生活のためには、可能な限り曜日を固定し、そのリズムに合わせて生活を整えることをお勧めします。

交通事情や前の患者の状況による時間のズレ

訪問診療のスケジュール管理で最も理解が必要なのが、訪問時間の「ズレ」です。病院での予約外来であれば、ある程度時間は守られますが、訪問診療は道路状況や天候に大きく左右されます。

また、前の患者の容態が悪化して処置に時間がかかった場合や、緊急の往診が入った場合などは、到着時間が大幅に遅れることも珍しくありません。

そのため、クリニックからは「14時」というピンポイントの時間ではなく、「13時から15時の間」や「午後の診療枠(13時〜16時)」といった幅を持たせた案内がなされます。

待つ側としては不安になるかもしれませんが、これは他の患者への丁寧な診療の結果でもあります。もし到着が大幅に遅れる場合には、通常クリニックから電話連絡が入ります。

この「時間の幅」をあらかじめ許容しておくことが、ストレスなく訪問診療を利用するコツと言えます。

急な予定変更やキャンセルへの対応方法

患者都合による変更は早めの連絡が原則ですが、体調不良時は無理に変更せず往診を依頼するなど、状況に応じた判断が必要です。緊急時の連絡手段を事前に確認しておくことが大切です。

生活していれば、急な用事や家族の都合で、予定していた訪問診療を受けられなくなることもあるでしょう。逆に、医師側の事情で変更をお願いされるケースもあります。

こうしたイレギュラーな事態が発生したとき、どのように対応すればよいのかを知っておくことは重要です。

患者側の都合による変更依頼の期限

患者や家族の都合で訪問日時を変更したい場合、可能な限り早めにクリニックへ連絡を入れることが求められます。多くのクリニックでは、前日の午前中まで、あるいは2営業日前までといった変更受付の期限を設けています。

これは、空いた時間に別の患者を入れたり、ルートを再構築したりするための時間を確保するためです。当日のキャンセルや変更は、移動中の医師やスタッフに大きな負担をかけ、本当に診察が必要な他の患者への訪問機会を奪うことにもなりかねません。

もちろん、冠婚葬祭や急な体調不良などやむを得ない事情がある場合は当日でも連絡すべきですが、単なる予定の失念やダブルブッキングなどの理由での当日変更は避けるのがマナーです。

変更連絡を入れる際の連絡チェックポイント

  • 変更希望の理由を明確に伝える
    単なる都合なのか、体調の変化なのかによって、クリニック側の対応(日程変更か、緊急往診か)が変わります。
  • 代替日時の候補を複数用意する
    「来週ならいつでもいい」ではなく、「月曜の午前か、水曜の午後」具体的に提示すると調整がスムーズです。
  • 薬の残量を確認してから連絡する
    訪問が延期になると、手持ちの薬が足りなくなる恐れがあります。変更依頼の電話の際に、薬が次回の訪問まで持つかどうかを必ず伝えましょう。
  • 電話がつながりやすい時間帯にかける
    朝一番や昼休み直後は電話が混み合います。診療時間内の落ち着いた時間帯(10時〜11時、14時〜16時など)にかけると、事務スタッフとゆっくり話せます。

医師側の緊急往診による予定変更の可能性

訪問診療特有の事情として、医師側の都合による急な予定変更があります。これは医師の私用ではなく、担当している他の患者の容態急変による「緊急往診」が主な理由です。

在宅医療では、いつ誰が重篤な状態になるか予測できません。医師は常に命の危険がある患者を最優先に対応します。そのため、定期訪問の予定日であっても、緊急呼び出しが入ればそちらへ向かわざるを得ない場合があります。

その際は、クリニックから電話で「急患対応のため、訪問時間が遅れます」あるいは「本日の訪問を明日に変更させてください」といった連絡が入ります。

こうした事態は「お互い様」の精神で理解することが大切です。いつか自分自身や家族が緊急対応を必要としたとき、同じように優先してもらえるシステムによって守られているからです。

変更連絡を入れる際の正しい手順

変更の連絡を入れる際は、まずクリニックの代表電話や、指定された連絡先へ電話をします。メールやFAXでの連絡は、リアルタイムで確認されない可能性があるため、急ぎの変更には適しません。

電話では、患者名と次回の予定日時を伝えた上で、変更したい旨を申し出ます。ここで重要なのが、「体調が悪いから訪問日を早めてほしい」のか、「都合が悪いから延期してほしい」のかを明確にすることです。

もし体調が悪いのであれば、それはスケジュールの変更ではなく「往診依頼」や「電話診療」として処理されるべき案件かもしれません。

事務スタッフは医療のプロではない場合もあるため、患者側から現在の状態を正確に伝え、医師の判断を仰ぐように誘導してもらうことが重要です。

曜日や時間の希望が通りやすいケースと難しいケース

希望が通りやすいのは平日の日中です。逆に夕方や土日は人員体制の関係で指定が難しくなります。クリニックの混雑傾向を把握することで、スムーズな調整が可能になります。

訪問診療のスケジュール調整において、希望が通りやすい時間帯とそうでない時間帯には明確な傾向があります。これを知っておくと、無理な要望を出して断られるストレスを減らし、現実的なラインで交渉を進めることができます。

柔軟に対応してもらえる時間帯の傾向

一般的に、平日の日中、特に午後の早い時間帯(13時から15時頃)は、比較的スケジュール調整がしやすい傾向にあります。午前中は検査や急な往診依頼が入ることが多く、夕方は外来診療を行っているクリニックであればそちらに戻る必要があるためです。

また、週の半ばである水曜日や木曜日も、月曜日のような週明けの混雑や、金曜日の週末前の駆け込み需要が少ないため、狙い目と言えます。

さらに、クリニックの所在地から近いエリアに住んでいる場合も、移動のロスが少ないため、時間の融通が利きやすくなります。「ついでに寄る」ことができる場所であれば、ルートの合間に組み込んでもらえる可能性が高まるからです。

時間帯別混雑目安と対応のしやすさ

時間帯・曜日混雑度対応のしやすさ・特徴
月曜・金曜週明けの体調不良者や、週末前の確認で依頼が集中しやすく、希望が通りにくい。
平日 10:00-12:00午前中の訪問を希望する高齢者が多いため、早い段階で枠が埋まりやすい。
平日 13:00-15:00比較的空きがあり、時間の微調整も相談しやすい時間帯。
夕方 16:00以降家族の帰宅に合わせて希望する人が多いが、医師が帰院する時間とも重なり、枠が少ない。
土日・祝日特高体制を縮小しているクリニックが多く、定期訪問の枠として指定するのは非常に困難。

混雑しやすい曜日や時間帯の特徴

逆に、指定が難しいのが「夕方17時以降」や「土日」です。多くの家族が「仕事から帰ってきてから立ち会いたい」と考えるため、夕方の枠は激戦区となります。

しかし、クリニック側としては夜間のオンコール体制への移行時間でもあり、定期訪問の枠をこれ以上増やせない事情があります。また、月曜日の午前中も非常に混雑します。

土日の間に体調を崩した患者からの連絡が集中するため、定期訪問のスケジュールも圧迫されがちだからです。どうしても家族の立ち会いが必要で、かつ土日や夜間しか無理という場合は、妥協案を検討する必要があります。

例えば、訪問診療専門でかつ医師数が多い大規模な医療法人を探すか、毎回立ち会うのではなく、月に1回だけ立ち会ってあとは連絡ノートでやり取りするといった方法です。

緊急性が高い場合の特別対応について

ここまでの話はあくまで「通常の定期訪問」に限った話です。もし患者の病状が重く、頻繁な処置や観察が必要な「緊急性が高い」と判断された場合は、話が別です。

医療的必要性が高ければ、クリニック側は優先的にスケジュールを確保します。例えば、退院直後で容態が不安定な場合や、終末期で看取りが近い場合などは、曜日や時間の枠を超えて、必要な時に必要なだけ訪問する体制が組まれます。

この場合、患者側の「希望」というよりも、医師の「判断」主導でスケジュールが決まっていきます。命に関わる状況においては、クリニックの都合やルート効率よりも、患者の生命と安全が最優先されるためです。

訪問診療と訪問看護のスケジュール調整の違い

訪問診療と訪問看護は役割が異なり、スケジュール調整のアプローチも変わります。両者を併用する場合は、役割分担を明確にし、ケアマネジャーを中心とした全体の調整が重要です。

在宅医療では、医師による「訪問診療」と、看護師による「訪問看護」をセットで利用するケースが非常に多くあります。これらは密接に連携していますが、運営主体やスケジュールの決め方には違いがあります。

両者の違いを理解し、上手に組み合わせることが、快適な在宅療養生活への近道です。

医師の診察と看護師のケアの役割分担

訪問診療(医師)の主な役割は、診断、治療方針の決定、薬の処方、そして死亡診断など、医師にしかできない医療行為です。一方、訪問看護(看護師)の役割は、医師の指示に基づいた医療処置、日常の健康状態の観察、家族への療養指導など多岐にわたります。

スケジュールの観点から見ると、訪問診療は月2回程度の間隔で行われる「点」の関わりであるのに対し、訪問看護はより高頻度で生活に密着した「線」の関わりとなります。

そのため、訪問看護の方が曜日の固定や時間の指定に関して、より生活リズムに合わせた柔軟な設定が求められますし、実際に対応してくれることも多いです。

訪問診療と訪問看護のスケジュール特性比較

項目訪問診療(医師)訪問看護(看護師)
訪問頻度月2回が基本(病状による)週1回〜毎日まで幅広い
滞在時間10分〜20分程度(診察中心)30分〜60分程度(ケア・処置中心)
日時指定ルート優先で指定は限定的ケアプランに基づき比較的指定しやすい
他サービスとの調整医師の予定が最優先される傾向ヘルパーや入浴サービスと細かく調整

複数のサービスを併用する場合の時間管理

訪問診療と訪問看護、さらに訪問介護(ヘルパー)や訪問入浴などを併用する場合、一日のスケジュールが過密になりがちです。ここで重要なのが、それぞれのサービスを「同日に固める」か「分散させる」かという判断です。

例えば、医師の診察に合わせて訪問看護師にも来てもらい、処置の介助や医師への報告を行ってもらう「同席」のスタイルをとる場合があります。これは情報の共有には非常に有効ですが、患者にとっては一度に多くの人が来るため疲れてしまうこともあります。

逆に、医師が来ない週に看護師が訪問し、手薄になる期間をカバーするという分散型をとれば、常に見守られている安心感があります。どちらが良いかは患者の体力や性格、家族の負担感を考慮して決める必要があります。

ケアマネジャーを含めた全体調整の重要性

これら複雑なスケジュールをパズルのように組み合わせ、全体をコーディネートするのがケアマネジャー(介護支援専門員)の役割です。訪問診療の導入が決まったら、必ずケアマネジャーに報告し、ケアプラン(介護サービス計画書)との整合性を図ってもらう必要があります。

医師の訪問時間が変更になった場合、それがヘルパーの訪問時間と重なってしまうと、サービスが提供できないといったトラブルが起こり得ます。ケアマネジャーは各事業所の空き状況やサービス内容を把握しているため、各サービスの時間調整役を担ってくれます。

自分で全て抱え込まず、ケアマネジャーを頼ることが、スムーズなスケジュール管理の秘訣です。

訪問スケジュールに関するトラブルを防ぐために

トラブルを避けるには、契約書の内容を正しく理解し、緊急時の連絡体制を整えることが大切です。家族間での情報共有も徹底し、認識のズレをなくしましょう。

訪問診療は長く続く関係性が前提となるため、スケジュールに関する小さな不満や認識のズレが、やがて大きなトラブルや不信感につながることがあります。

最後に、こうしたトラブルを未然に防ぎ、良好な信頼関係を築くためのポイントを確認しておきましょう。

契約書や重要事項説明書での確認ポイント

契約時に渡される書類は、字が細かく読むのが面倒に感じるかもしれませんが、後々のトラブルを防ぐための重要なルールブックです。特に「診療時間」や「キャンセル料」、「緊急時の対応」に関する項目は必ず目を通し、不明点はその場で質問してください。

例えば、「交通事情により到着時間が前後することがあります」という免責事項が書かれていることがほとんどです。これを理解していないと、「14時に来ると言ったのに14時半になっても来ない」とイライラすることになります。

また、自己都合キャンセルの場合に、往診料などの費用が発生する規定があるかどうかも確認が必要です。書面での合意内容を正しく理解しておくことが、自分自身を守ることにつながります。

トラブル防止のための確認事項リスト

  • 到着時間の許容範囲(目安)を確認したか
    「前後30分はずれる可能性がある」など、具体的な幅を聞いておく。
  • 緊急連絡先はすぐにわかる場所に掲示しているか
    冷蔵庫や電話の横など、家族の誰もが目にする場所に貼っておく。
  • 不在時の対応を決めているか
    インターホンを鳴らしても応答がない場合、勝手に入って良いのか、電話をするのか等を取り決めておく。
  • キーボックスや鍵の管理方法は共有できているか
    独居や寝たきりの場合、医師が入室するための鍵の受け渡し方法を明確にしておく。

連絡手段の確保と緊急連絡先の共有

スムーズな連携のためには、連絡手段の確保が欠かせません。最近では、電話だけでなく、専用のスマートフォンアプリや医療介護連携SNS(MCSなど)を導入して、チャット形式で連絡を取り合うクリニックも増えています。

「電話するほどではないけれど、次回の訪問時間を少し遅らせてほしい」といった連絡には、こうしたツールが非常に便利です。また、クリニックの電話番号を患者本人の携帯電話や自宅の固定電話に登録しておくことはもちろん、離れて暮らす家族の携帯電話にも登録しておくことを強くお勧めします。

いざという時、誰から連絡すれば良いのか、どこにかければ良いのかが明確であれば、パニックにならずに対応できます。

家族間での情報共有と協力体制の構築

意外と多いのが、家族間での情報共有不足によるトラブルです。「長男は火曜日がいいと言ったが、実際に介護している長女は水曜日がよかった」といったケースや、「今日先生が来ること聞いていなかった」と対応した家族が不機嫌になるといったケースです。

訪問診療のスケジュールは、メインの介護者だけでなく、関わる家族全員で共有する必要があります。カレンダーに大きく書き込む、家族のグループLINEで予定を共有するなど、情報の風通しを良くしておきましょう。

家族が一枚岩となって医療チームを迎える姿勢があれば、医師や看護師も安心して診療に専念でき、結果としてより質の高い医療を受けることにつながります。

よくある質問

訪問診療のスケジュール調整に関して、患者や家族から頻繁に寄せられる疑問について回答します。

祝日や年末年始の定期訪問はどうなりますか?

多くのクリニックでは、祝日や年末年始は定期訪問をお休みとし、その週の訪問を前後の日程に振り替える対応をとります。例えば、定期訪問日が月曜日でその日が祝日の場合、火曜日や金曜日などに変更して調整します。

ただし、病状が不安定で継続的な観察が必要な患者に対しては、休日であっても通常通り訪問を行う場合もあります。また、定期訪問はお休みでも、緊急時の往診対応は24時間365日体制で行っているところがほとんどですので、急変時の心配はありません。

具体的な年間スケジュールについては、契約時や年末年始前にクリニックから案内があります。

家族が不在でも診察してもらえますか?

可能です。患者本人が一人暮らしの場合や、日中家族が仕事に出ている場合でも、訪問診療を受けることができます。この場合、あらかじめ鍵の預かりやキーボックスの利用について取り決めを行い、医師や看護師が自宅に入室できる手段を確保します。

診察内容は「連絡ノート」や電話、メールなどを通じて後ほど家族に報告される仕組みをとるのが一般的です。

ただし、認知症で意思疎通が難しい場合や、重要な治療方針の決定が必要なタイミングでは、可能な限り家族の立ち会いをお願いされることがあります。

担当医の指名はできますか?

原則として難しい場合が多いですが、相談は可能です。訪問診療はエリアごとに担当医が決まっていることが多く、効率的な移動ルートを組むために医師の配置が固定されているためです。

しかし、「女性の先生がいい」「緩和ケアの専門医に診てほしい」といった明確な理由がある場合は、クリニック側も可能な範囲で調整を試みてくれます。

必ずしも希望が通るとは限りませんが、信頼関係を築く上で重要な要素ですので、最初の相談時に遠慮なく希望を伝えてみることをお勧めします。

訪問時間の幅はどのくらい見ておくべきですか?

一般的には、予定時刻の前後30分から1時間程度の幅を見ておくのが安全です。例えば「14時頃」という予定であれば、13時半から15時くらいまでは自宅で待機しておくことが望ましいです。

交通渋滞や、前の患者の診療が長引くことは日常的に起こり得ます。もし大幅に遅れる(例えば1時間以上)場合は、クリニックから連絡が入ることが通常です。

待ち時間がストレスにならないよう、テレビを見たり家事をしたりしながら、気長に待てる体制を整えておくのが良いでしょう。

訪問診療の訪問エリアと頻度に戻る

訪問診療の基礎知識TOP

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

目次