胃ろうと経鼻経管栄養の違いと選び方|在宅療養におけるメリット・デメリット比較

胃ろうと経鼻経管栄養の違いと選び方|在宅療養におけるメリット・デメリット比較

医師から「そろそろ口から食べるのは限界かもしれません」と告げられたとき、ご家族は大きなショックを受けるでしょう。それと同時に、今後の栄養管理について早急な決断を求められます。

栄養摂取の手段を選ぶことは、単なる延命措置を決めることではありません。その後の療養生活の質を決定づける、非常に大切な要素なのです。

在宅療養という環境において、胃ろうと経鼻経管栄養が具体的にどう違うのでしょうか。それぞれの特徴と基本的な仕組みについて、詳しく解説していきます。

目次

手術は必要?胃ろうと経鼻経管栄養の仕組みと身体への侵襲性の違い

胃ろうは手術が必要ですが、一度作れば長期的に安定して使用できるのが最大の特徴です。

一方、経鼻経管栄養は手術不要ですぐに開始できるものの、常時チューブが顔にあることによる不快感が続きます。

この二つの方法は、導入の手軽さと継続的な快適さにおいて、根本的な違いがあるのです。

胃ろう(PEG)はどのようにお腹に造設されるのか

胃ろう(PEG)は、内視鏡を使ってお腹の皮膚と胃壁に小さな穴を開けて作ります。そこに専用のチューブ(カテーテル)を通して、直接胃に栄養を届ける方法です。

手術と聞くと「高齢の親に耐えられるだろうか」と不安になるかもしれません。しかし、手術時間は通常15分から30分程度で済み、局所麻酔を使用するため身体への負担は比較的少ないとされています。

造設後、お腹の穴(ろう孔)が安定するまでには1週間から2週間程度かかります。一度完成すれば、カテーテルは目立たないボタン式のものに変更できます。

そのため、服を着ていれば外見からはほとんど分からなくなります。在宅療養において、見た目が自然であることは、患者さん本人の尊厳を守る上でも非常に大きな意味を持ちます。

ご家族が「病人」としてではなく自然に接する上でも、大切なポイントになるでしょう。

鼻から管を通す経鼻経管栄養の導入ハードルは低いのか

経鼻経管栄養は、鼻の穴から細いチューブを挿入し、食道を通って胃まで到達させる方法です。最大の特徴は、外科的な手術を必要としない点にあります。そのため、全身状態が悪く手術に耐えられない場合に選ばれるケースが多いです。

また、一時的に口から食べられない期間だけ栄養補給をしたい場合にも適しています。導入はベッドサイドで医師が行えて、特別な設備や手術室の予約を待つ必要がありません。

「まずは栄養状態を改善したい」と考えるご家族には心理的なハードルが低い選択肢です。

しかし、導入の手軽さと引き換えに、チューブが常に喉の奥を通っている違和感が生じます。顔にテープでチューブを固定しなければならない煩わしさも避けられません。

これが在宅療養におけるご本人の大きなストレス要因となることは、決して珍しくないのです。

導入時の負担と継続期間の目安

項目胃ろう(PEG)経鼻経管栄養
手術の有無必要(内視鏡手術・15〜30分程度)不要(ベッドサイドで処置可能)
導入のタイミング全身状態が安定している時緊急時や短期的な栄養補給時
推奨される期間長期(1ヶ月以上〜年単位)短期(数週間〜1ヶ月未満が理想)
身体への初期侵襲中程度(創部の痛みなど)軽度(挿入時の不快感)

どちらが本人にとって楽なのかを考える視点

「手術をする」という行為自体は、確かに胃ろうの方が一時的な負担が大きいように見えます。

しかし、長い目で見たときの「生活の楽さ」はまた別の話です。経鼻経管栄養の場合、常に異物が鼻や喉にある状態が24時間、休みなく続きます。

想像してみてください、風邪で鼻が詰まっているだけでも息苦しいのに、そこに管が常に入っている状態です。

一方、胃ろうは手術直後の傷の痛みが治まれば、顔周りに管がないため非常に楽になります。呼吸も発声もしやすくなり、日常のストレスが大幅に軽減されるでしょう。

在宅療養が数ヶ月、数年と続く可能性がある場合、毎日の快適さを優先して胃ろうを選ぶケースが多いのはこのためです。

逆に、リハビリ次第で数週間以内に口から食べられるようになる見込みが高いなら、手術は不要かもしれません。その場合は、経鼻経管栄養でつなぐという判断が賢明だと言えるでしょう。

本人が感じる苦痛と見た目の問題はどう違う?在宅でのQOLへの影響

在宅での生活の質(QOL)に関しては、顔周りがフリーになり不快感が少ない胃ろうの方が有利です。

経鼻経管栄養は長期化するほど苦痛や見た目のストレスが大きくなる傾向にあります。ご本人が穏やかに過ごせる環境を作るために、この違いを知っておきましょう。

喉の違和感とチューブ自己抜去のリスク

経鼻経管栄養で最も家族を悩ませるのが、患者さん自身による「自己抜去」の問題です。

鼻から喉にかけて常にチューブが入っている不快感は、想像以上に大きなものです。認知症がある方や意識がはっきりしない方では、無意識のうちにチューブを引き抜いてしまうことが多々あります。

抜いてしまうと、再度医師や看護師に挿入してもらわなければなりません。そのたびに痛い思いをすることになり、ご本人にとっても辛い経験となります。

また、チューブを抜かないように手にミトンをつけるなどの身体拘束が必要になるケースもあります。これはご本人にとっても、それを見守るご家族にとっても、非常に辛い選択です。

「管が気になって夜も眠れない」「イライラして怒りっぽくなった」という変化が見られるときもあり、精神的な穏やかさを保つ上では、大きなデメリットとなり得るでしょう。

顔にテープを貼る生活が与える心理的な影響

経鼻経管栄養では、チューブが抜けないように鼻や頬にテープでしっかりと固定する必要があります。在宅療養では、訪問客や親戚が来るときもありますが、顔にチューブがある姿を見られるのを嫌がる方もいます。

また、テープによる肌荒れやかぶれも頻繁に起こり、皮膚トラブルのケアも欠かせません。鏡を見るたびに「病気の自分」を突きつけられるような感覚に陥り、塞ぎ込んでしまう方もいらっしゃいます。

これに対し、胃ろうはお腹の部分を服で隠せば、外見上は健康な時と変わりません。外出や散歩に行く際も、周囲の目を気にせずに済むため、社会的なつながりを保ちやすいのです。

胃ろうの手術後に残る痛みと傷跡のケア

胃ろうのデメリットとして挙げられるのは、やはり造設直後の痛みです。腹部に穴を開けるわけですから、傷が完全に癒えるまでは痛み止めが必要になるときもあります。

また、稀にろう孔の周囲から胃液が漏れ出し、皮膚がただれてしまう「スキントラブル」も起こり得ます。

肉芽と呼ばれる盛り上がりができるケースもありますが、これらは適切なケアでコントロール可能です。

カテーテルの種類を本人の体型に合ったものに調整すると、多くの場合は改善します。時間の経過とともに状態は安定し、痛みも消失していくのが一般的です。

長期的な視点で見れば、毎日の喉の不快感に比べれば、管理された腹部の小さな傷の方がストレスは少ないと言えます。適切なスキンケアと観察を行えば、日常生活に大きな支障をきたすことは少ないでしょう。

長期療養における本人および家族のストレス要因

  • 経鼻経管栄養:常時続く咽頭部の異物感と飲み込みにくさ
  • 経鼻経管栄養:顔面のテープによる皮膚トラブルと見た目の変化
  • 経鼻経管栄養:チューブを抜いてしまわないかという常時監視の緊張感
  • 胃ろう:手術直後の創部痛と感染リスクへの不安
  • 胃ろう:腹部の定期的なスキンケアの手間

在宅介護における管理の手間とトラブル対応の違い

胃ろうの方が日常的な管理の手間が少なく、トラブル時の対応も比較的穏やかです。

対照的に、経鼻経管栄養はチューブ詰まりや抜けなどの突発的なトラブルが多くなりがちです。家族の精神的負担を考えると、管理のしやすさは重要な判断基準になります。

毎日の注入作業とチューブ洗浄の手間

栄養剤を注入する作業自体は、胃ろうでも経鼻でも大きな違いはありません。栄養剤を入れたバッグを高い位置に吊るし、滴下速度を調整して流し込む手順は同じです。

しかし、注入前後の確認作業には大きな差があります。

経鼻経管栄養の場合、チューブが確実に胃に入っているかを毎回確認する必要があります。もしチューブが食道から外れて気管に入り込んでいた場合、誤嚥性肺炎などの重大な事故につながるからです。

胃ろうの場合は、カテーテルが胃に直接固定されているため、位置がずれるリスクは低く安心です。ボタン式の胃ろうであれば、普段は蓋をしておき、食事の時だけチューブをつなぐため邪魔になりません。

また、経鼻チューブは細長いため、薬や濃厚流動食が詰まりやすいという難点があります。その都度お湯でフラッシュするなどの、丁寧な洗浄作業が求められます。

定期的な交換頻度と通院の必要性

体内に留置する器具は、衛生面と劣化防止のために定期交換が必要です。経鼻経管栄養のチューブは汚れやすく、また硬くなって粘膜を傷つける恐れがあります。そのため、2週間から1ヶ月に1回は交換しなければなりません。

多くの場合、訪問診療医や訪問看護師が自宅で交換してくれますが、交換のたびに鼻の奥に管を通す不快感があります。

胃ろうのカテーテルの交換目安は、製品によりますが概ね4ヶ月から半年程度です。交換頻度が少ないため、本人の身体的な負担も少なく済みます。

交換は自宅で行える場合もありますし、外来受診が必要な場合もあります。いずれにせよ、年に数回のイベントで済むというのは、介護スケジュールを組む上でも非常に楽になります。

日常的なケアと交換頻度

管理項目胃ろう(PEG)経鼻経管栄養
交換頻度4ヶ月〜6ヶ月に1回(種類による)2週間〜4週間に1回
交換場所在宅または外来(医師が実施)在宅(医師または看護師が実施)
注入前の確認瘻孔周囲の観察程度で比較的容易気泡音確認や吸引など慎重な確認が必要
チューブ詰まり太さがあるため比較的詰まりにくい細く長いため詰まりやすく注意が必要

チューブが抜けてしまった時の緊急対応

在宅療養で最も焦るのが「管が抜けた!」という瞬間です。

経鼻チューブが抜けた場合、家族が入れ直すことは医療行為にあたるため原則できません。すぐに訪問看護ステーションや医師に連絡し、駆けつけてもらう必要があります。

夜間や休日に抜けてしまった場合、対応に時間がかかり、その間の栄養注入が遅れることもあります。

胃ろうのカテーテルが抜けた際も同様に緊急事態ですが、胃ろうの穴はすぐには塞がりません。多くの場合、応急処置として代わりのチューブなどを差し込んで穴を確保する指示が出されます。

これも家族にとってはパニックになる瞬間ですが、事前に対応マニュアルを確認しておくと落ち着いて行動できます。いざという時の連絡先を明確にしておくことが、在宅介護の安心につながります。

誤嚥性肺炎のリスクと消化器症状への影響

どちらの方法を選んでも誤嚥性肺炎のリスクはゼロにはなりませんが、管理のしやすさには差があります。

経鼻経管栄養はチューブが胃の入り口を半開きにしてしまうため、構造的に逆流しやすいのです。胃ろうの方が比較的リスクをコントロールしやすい傾向にあります。

なぜ経管栄養でも誤嚥性肺炎が起こるのか

「口から食べないなら誤嚥(ごえん)はしないはず」と思われがちですが、実はそうではありません。

唾液の誤嚥や、胃から逆流した栄養剤を誤嚥することで肺炎を起こすケースが非常に多いのです。

特に高齢者は、胃の入り口を締める筋肉が弱まっている場合がよくあります。そのため、寝ている間に胃の中身が食道へ逆流しやすくなっているのです。

これを防ぐためには、注入中は上半身を30度から45度くらい起こすなどの工夫が必要です。注入後はすぐに横にせず、しばらく座った姿勢を保つといったケアも欠かせません。

これは胃ろうでも経鼻でも共通して言える、非常に大切なポイントです。日々のケアの中で、体位管理を徹底することが肺炎予防の鍵となります。

経鼻経管栄養特有の逆流リスクとは

経鼻経管栄養のチューブは、鼻から入って食道を通り、胃の入り口(噴門部)を通過して胃の中に留置されます。つまり、本来はしっかりと閉じていなければならない胃の入り口に、常にチューブが挟まっている状態になります。

ドアに足が挟まって半開きになっている状態をイメージしてください。この隙間から胃の内容物が食道へ逆流しやすくなり、それが気管に入り込むため誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

また、太いチューブを使えば使うほど隙間は大きくなりますし、細いチューブだと詰まりやすいというジレンマがあります。

この構造的な問題は、経鼻経管栄養の大きなデメリットの一つと言えるでしょう。

お腹を下しやすい、吐きやすいといった症状への対応

栄養剤は高濃度であるものが多く、急速に胃に入れると下痢や嘔吐を引き起こすときがあります。これを「ダンピング症候群」とも呼びますが、注入速度を調節すると防げるケースが多いです。

胃ろうの場合、最近では「半固形栄養剤」という選択肢が使えるメリットがあります。これは液体の栄養剤ではなく、ゼリー状のものを短時間で注入する方法です。

固形物は胃の中で留まりやすいため逆流しにくく、下痢もしにくいという特徴があります。経鼻経管栄養の細いチューブでは、強い圧力をかける必要があるため実施が困難です。

太いカテーテルを使える胃ろうならではの、大きな利点と言えるでしょう。

合併症とリスク要因の違い

リスク項目胃ろう(PEG)経鼻経管栄養
逆流性誤嚥あり(体位管理で軽減可能)高い(噴門部が開いた状態になるため)
唾液の誤嚥あり(口腔ケアが必要)あり(喉の異物感で唾液が増えることも)
皮膚トラブルろう孔周囲のただれ、肉芽テープかぶれ、鼻翼の圧迫潰瘍
消化器症状下痢、腹部膨満感下痢、嘔吐、チューブ刺激による不快感

口から食べるリハビリ(嚥下訓練)への影響と可能性

「いつかはまた口から食べさせたい」と願う場合、喉に異物がない胃ろうの方がリハビリを進めやすいです。

経鼻経管栄養はチューブが邪魔になり、嚥下訓練の妨げになることが多くあります。「食べる楽しみ」を取り戻すためにも、胃ろうは有効な選択肢となり得ます。

喉にチューブがある状態での飲み込み訓練の難しさ

想像してみてください。鼻から喉の奥に管が通っている状態で、美味しいものを飲み込もうとしても難しいはずです。異物感が強くて、スムーズに飲み込めないでしょう。

経鼻経管栄養のチューブは、まさに嚥下運動を阻害する要因になってしまいます。飲み込むときには喉頭が挙上(のど仏が上がる動き)しますが、チューブがその動きを制限してしまう場合もあります。

また、常に喉に刺激があるため、感覚が鈍くなってしまったり、逆に過敏になってしまったりすることもあります。

本格的に「口から食べる」を目指すのであれば、経鼻チューブから胃ろうへ移行することが推奨されます。これには、明確な解剖学的な理由があるのです。

胃ろうは「食べる楽しみ」を奪うものではない

誤解されがちですが、胃ろうにしたからといって、一切口から食べてはいけないわけではありません。

むしろ、栄養状態を胃ろうでしっかりと確保した上で、リハビリを行えます。安全なゼリーやとろみ食を「楽しみとして」少量ずつ食べる訓練が可能になるのです。

栄養は胃ろうから100%摂れているという安心感があるため、無理に口から食べさせようとして誤嚥させてしまうリスクを減らせます。「味わう」と「栄養を摂る」を分けて考えられるのが、胃ろうの大きなメリットです。

実際に、胃ろうを造設して体力が回復し、リハビリが進んで再び口から食べられるようになった方もいます。最終的に胃ろうを閉じたという事例も、決して少なくありません。

嚥下リハビリテーションとの相性

項目胃ろう(PEG)経鼻経管栄養
飲み込みやすさ阻害要因がなくスムーズチューブが邪魔で飲み込みにくい
訓練の実施積極的に行いやすいチューブ留置中は制限がかかることが多い
口腔ケア口の中に器具がなく清掃しやすいチューブが邪魔でケアしにくい
味覚への影響影響なしチューブの素材の臭いや違和感がある

五感を刺激することが脳への良い影響を与える

食べることは単なる栄養補給ではありません。匂いを感じ、味を楽しみ、噛むことで脳を刺激する大切な行為です。経鼻経管栄養で常に不快感がある状態よりも、胃ろうで身体的な苦痛を取り除いた方が良い影響を与えます。

リラックスした状態で少量のプリンやアイスクリームを味わうほうが、ご本人の表情も明るくなるはずです。

在宅療養では、家族と一緒に食卓を囲み、同じ時間を過ごすことが何よりの喜びです。たとえ全量は食べられなくても、「美味しいね」と言い合える環境を作りたいものです。

そのためには、嚥下機能を阻害しない胃ろうの方が適している場合が多いのです。

費用面と施設入居・ショートステイの受け入れ状況

月々の管理費用に大きな差はありませんが、施設入居やショートステイの利用のしやすさには違いがあります。

管理の手間が少ない胃ろうの方が受け入れ先が見つかりやすく、経鼻経管栄養は断られるケースが比較的多いです。将来の生活スタイルを見据えて検討する必要があります。

在宅医療にかかる月々のコスト比較

胃ろうも経鼻経管栄養も健康保険が適用される医療行為です。在宅療養の場合、訪問診療料、訪問看護管理療養費、薬剤費、器具代などがかかります。基本的な自己負担額にはそれほど大きな差はありません。

ただし、胃ろうは最初の造設手術に入院費用と手術費用がかかります。

一方で、経鼻経管栄養はチューブ交換のために頻繁に医師や看護師の手技が必要になります。皮膚トラブルへの軟膏処置など、細かい処置費用が発生するときもあります。

トータルコストで見れば、「初期投資が必要な胃ろう」と「ランニングコストがかかる経鼻」という構図です。長期化すればするほど、その費用の差は縮まっていきます。

介護施設やデイサービスでの受け入れ可否

在宅介護を続けていく中で、ご家族の休息のためにショートステイを利用するときもあるでしょう。将来的には施設入居を検討したりすることもあるかもしれません。

この時、大きな壁になるのが「医療的ケアの受け入れ体制」です。

胃ろうの方は比較的多くの施設で受け入れています。カテーテルが外れるリスクが低く、注入管理も確立されているためです。

一方、経鼻経管栄養は自己抜去のリスクが高く、抜けてしまった場合の対応が困難です。看護師が常駐していないと対応できないため、受け入れを不可としている施設が少なくありません。

選択肢の広さという意味では、胃ろうに軍配が上がります。

お風呂や外出などの日常生活の自由度

お風呂好きの方にとって、入浴のしやすさは生活の質に直結します。胃ろうの場合、カテーテル部分を保護すれば普通に入浴できますし、ろう孔が完成していれば湯船に浸かることも可能です。

一方、経鼻経管栄養の場合は、顔のテープが濡れて剥がれないように注意が必要です。

洗顔も思うようにできず、ストレスを感じるときがあるでしょう。外出時も、胃ろうなら服の下に隠れているので周囲を気にする必要がありません。しかし、経鼻チューブは常に露出しています。

ご家族が車椅子で公園に連れて行きたいと思った時、連れ出しやすいのは胃ろうの方であることが多いのが現実です。

施設選びに影響する受け入れ条件の例

  • 特別養護老人ホーム:胃ろうは多くの施設で可、経鼻は不可または要相談が多い
  • 有料老人ホーム:看護師配置の手厚さによるが、胃ろうの方が歓迎されやすい
  • ショートステイ:経鼻経管栄養だと利用できる施設が極端に限定される傾向あり
  • デイサービス:胃ろうであれば入浴サービスなどもスムーズに受けられる
  • 訪問入浴:どちらも利用可能だが、経鼻は顔周りの固定に注意が必要

【比較まとめ】どちらを選ぶべきか?判断のためのフローチャート

余命が限られている場合や一時的な通過点であれば「経鼻経管栄養」が適しています。一方で、長期的な療養生活の安定と本人の快適さを優先するなら「胃ろう」を選ぶのが基本原則です。

家族の介護力と本人の生き方を照らし合わせて決定しましょう。

見込み期間と予後による判断基準

まず考えるべきは「この栄養摂取方法をどのくらいの期間続けるのか」という点です。

脳卒中の急性期などで、1〜2ヶ月後には口から食べられるようになる可能性が高い場合を考えてみましょう。その場合は、手術のリスクを負ってまで胃ろうを作る必要はありません。経鼻経管栄養で一時的に凌ぐのが合理的です。

しかし、認知症の進行や神経難病などで、今後年単位での栄養管理が必要と予想される場合はどうでしょうか。あるいは、回復の見込みが不明確で長期戦になりそうな場合もあるでしょう。

そうしたケースでは、早い段階で胃ろうへの移行を検討すべきです。経鼻での管理を半年、1年と続けるのは、本人にとって苦行でしかありません。

意思決定のための比較

本人の状況・家族の希望推奨される選択肢理由
1〜2ヶ月以内に経口摂取に戻る見込み経鼻経管栄養手術不要で、回復したらすぐに抜去できるため。
長期(3ヶ月以上)の療養が見込まれる胃ろう(PEG)本人の苦痛が少なく、管理が容易でQOLが高いため。
認知症がありチューブを抜いてしまう胃ろう(PEG)身体拘束を避けるため。介護負担の軽減のため。
手術に耐えられないほど全身状態が悪い経鼻経管栄養侵襲性を最小限にする必要があるため。
施設入居を検討している胃ろう(PEG)受け入れ先の選択肢を確保するため。

家族の介護力とサポート体制の確認

「自宅で看たい」という気持ちがあっても、現実的な介護力が伴わなければ共倒れになってしまいます。

日中、誰が注入を行うのか、トラブル時にすぐに駆けつけられる人がいるのか。訪問看護はどの程度利用できるのか、といった環境要因も選択に大きく影響します。

特に老老介護や独居に近い状態であれば、トラブルが少なく管理が安定している胃ろうのほうが安全です。

逆に、24時間付き添える家族がいて、細やかなケアが可能であればどうでしょうか。その場合は、経鼻経管栄養での在宅療養も不可能ではありません。

ケアマネジャーや訪問看護師と相談し、チームとしての介護力を客観的に評価しましょう。

本人の尊厳と「どう生きたいか」を尊重する

医学的なメリット・デメリットだけでなく、本人の価値観も大切にしてください。

「体にメスを入れるのは絶対に嫌だ」という強い信念を持っていた方なら、その意思を尊重して経鼻を選ぶのも正解です。逆に「管に繋がれて人前に出るのは恥ずかしい」と考える方なら、胃ろうの方が尊厳を守れます。

本人の意思確認が難しい場合も多いですが、「元気だった頃のあの人ならどう言うだろうか?」と考えてみてください。家族で話し合うプロセスそのものが、後悔のない選択へとつながっていきます。

正解は一つではありません。その時々の状況に合わせて、柔軟に方法を変えていくことも可能なのです。

よくある質問

経鼻経管栄養のチューブを入れている認知症の患者が管を自分で抜いてしまう場合の対策はありますか?

ご本人が無意識にチューブを抜いてしまう事故は非常に多く、対策としては手にミトンを着けて指を使えなくする方法があります。

あるいは、チューブが視界に入らないように工夫するといった方法も取られます。

しかし、これらは身体拘束にあたり、ご本人のストレスを増大させる原因にもなります。頻繁に自己抜去が起こるようであれば、不快感が少なく抜去しにくい胃ろうへの変更を検討してください。

胃ろうを造設した後に再び口から食事ができるようになれば元の生活に戻れますか?

胃ろうは一度作ったら一生使い続けなければならないものではありません。

リハビリテーションによって嚥下機能が回復し、口から十分な栄養が摂れるようになれば、胃ろうのカテーテルを抜くことができます。

カテーテルを抜いた後の穴は、通常であれば自然に塞がりますので、元の生活に戻れます。むしろ、胃ろうで栄養状態を改善させる取り組みが、口から食べる機能を回復させるための近道になるケースもあります。

経鼻経管栄養から胃ろうへ切り替えるタイミングはいつ頃判断すべきでしょうか?

一般的には、経鼻経管栄養を開始してから4週間(約1ヶ月)が経過しても口から食べる見込みが立たない場合が一つの目安です。この時期に、胃ろうへの切り替えを検討すると良いでしょう。

長期間の経鼻留置は、鼻や喉の粘膜トラブル、誤嚥性肺炎のリスク、そして何よりご本人の苦痛を増大させるためです。

主治医や訪問看護師と相談し、1ヶ月以上栄養管理が必要と判断された時点で、早めに話し合うことが大切です。

高齢の親に胃ろうの手術を受けさせても体力的に大丈夫でしょうか?

胃ろうの造設手術(PEG)は、全身麻酔ではなく局所麻酔と鎮静剤を使用して行われることがほとんどです。

手術時間も15分から30分程度と比較的短いため、高齢の方でも耐えられるケースが多いです。

ただし、呼吸状態や心臓の機能が極端に悪い場合や、腹部の手術歴があり胃が癒着している場合などは難しいときもあります。

事前に内視鏡検査や全身状態の評価を行い、医師が手術可能と判断すれば、過度に心配する必要はありません。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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