障害者医療証(マル障)で訪問診療は無料になる?助成対象と所得制限の仕組み

障害者医療証(マル障)を持っていれば、訪問診療の費用が無料になるのか。在宅療養中のご本人やご家族にとって、医療費の負担は切実な問題です。
マル障の助成は訪問診療にも適用されますが、住民税の課税状況や所得制限によって自己負担額が変わります。
住民税非課税の方は自己負担なしで訪問診療を受けられる一方、課税されている方は1割の一部負担金が発生します。さらに、所得が一定額を超えるとマル障そのものを申請できません。
この記事では、マル障の助成対象や所得制限の具体的な基準額、訪問診療での使い方まで丁寧に解説します。
マル障(障害者医療証)とは?訪問診療の費用負担を軽くできる公的医療助成制度
マル障(障害者医療証)は、重度の心身障害がある方の医療費自己負担額を助成する公的制度です。訪問診療も含めた保険診療全般に適用されるため、在宅で療養されている方の経済的負担を大幅に軽減できます。
マル障は正式名称「心身障害者医療費助成制度」のこと
マル障とは、正式には「心身障害者医療費助成制度」と呼ばれる医療助成の仕組みです。東京都をはじめとする自治体が実施しており、障害のある方が病院や診療所で保険診療を受けた際の窓口負担を軽減してくれます。
この制度の正式名称にある「心身障害者」とは、身体障害や知的障害、精神障害のある方を広く含みます。名称に「マル障」という通称がついているのは、受給者証に丸囲みの「障」という印が記されているためです。
助成される医療費の範囲は保険診療に限られる
マル障で助成されるのは、各種医療保険(国民健康保険や社会保険など)が適用される診療費・薬剤費・訪問看護医療費などに限られます。保険診療であれば、通院・入院だけでなく訪問診療も助成の対象です。
マル障の助成対象・対象外の医療費
| 区分 | 具体的な内容 | 助成 |
|---|---|---|
| 診療費 | 医科・歯科の保険診療 | 対象 |
| 薬剤費 | 調剤薬局でのお薬代 | 対象 |
| 訪問看護 | 医療保険による訪問看護 | 対象 |
| 入院時食事代 | 食事療養標準負担額 | 対象外 |
| 差額ベッド代 | 個室料など | 対象外 |
| 健康診断 | 予防接種・検診 | 対象外 |
訪問診療にもマル障は使える
在宅で医師の診察を受ける訪問診療は、保険診療として実施されるのが一般的です。そのため、マル障の助成対象に含まれます。マル障受給者証と保険証を訪問診療を行うクリニックに提示すれば、窓口での自己負担額が軽減されます。
ただし、訪問診療のなかでも保険診療に該当しない部分(文書料や自費の検査など)は助成の対象外です。どこまでが助成範囲なのかは、受診前に医療機関へ確認しておくと安心できます。
マル障の助成対象になる人・ならない人をはっきり整理
マル障は重度の障害がある方すべてに交付されるわけではありません。障害の等級や年齢要件、所得制限など複数の条件を満たす必要があり、対象外となるケースも少なくないため事前に確認が大切です。
対象となる障害の種類と等級
マル障の対象となるのは、一定以上の等級の障害者手帳を持っている方です。身体障害者手帳であれば1級・2級が基本ですが、内部障害(心臓・腎臓・呼吸器・膀胱・直腸・小腸・免疫・肝臓の機能障害)に限っては3級まで対象に含まれます。
知的障害の場合は愛の手帳1度・2度、精神障害の場合は精神障害者保健福祉手帳1級の方が対象です。精神障害者保健福祉手帳1級の方は、2019年1月1日から新たに対象に加わりました。
助成を受けられない人の条件
手帳の等級が対象範囲内であっても、以下のいずれかに当てはまる方は助成を受けられません。まず、所得が基準額を超えている場合です。20歳以上の方は本人の所得で判定し、20歳未満の方は世帯主や被保険者の所得で判定します。
また、生活保護を受給中の方、医療保険に未加入の方も対象外となります。65歳以上になってから初めて障害者手帳を取得した方は、原則としてマル障を申請できません。後期高齢者医療の被保険者で住民税が課税されている方も対象外です。
65歳の年齢制限は見落としやすい落とし穴
マル障で特に注意したいのが「65歳」という年齢に関する制限です。65歳に達する日の前日までにマル障の申請を済ませていない場合、その後は申請ができなくなります。
ただし、東京都内に住所がなかった方や、生活保護を受給していたために65歳前に申請できなかった方は、例外として認められるケースもあります。都外から転入した方で、転入前にマル障を受給していた場合も特例の対象です。
| 対象外の条件 | 補足 |
|---|---|
| 所得制限超過 | 扶養人数により基準額が異なる |
| 生活保護受給中 | 公費で医療費が賄われるため |
| 医療保険に未加入 | 国保・社保等への加入が必要 |
| 65歳以上で初取得 | 64歳までの手帳取得が原則 |
| 後期高齢者で課税 | 住民税非課税なら対象の場合あり |
所得制限の基準額と計算方法を正しく把握しておこう
マル障には所得制限があり、基準額を超える所得がある方は助成の対象から外れます。基準額は扶養親族の人数に応じて段階的に引き上げられるため、ご自身の世帯構成に照らして確認しましょう。
扶養親族の人数ごとの所得制限基準額
マル障の所得制限基準額は、扶養親族等の人数によって異なります。扶養親族がいない場合は366万1,000円、1人いる場合は404万1,000円が基準です。扶養親族が増えるごとに約38万円ずつ加算されていきます。
なお、この基準額には各種控除が加算されるケースもあります。老人扶養親族1人につき10万円、特定扶養親族や19歳未満の控除対象扶養親族1人につき25万円が上乗せされます。
所得の判定対象は年齢によって異なる
20歳以上の方は本人の所得で判定されます。一方、20歳未満の方の場合は、国民健康保険の世帯主もしくは社会保険の被保険者の所得が基準となります。
扶養親族数ごとの所得制限基準額一覧
| 扶養親族数 | 所得制限基準額 |
|---|---|
| 0人 | 366万1,000円 |
| 1人 | 404万1,000円 |
| 2人 | 442万1,000円 |
| 3人 | 480万1,000円 |
所得制限は毎年9月に見直される
マル障の所得制限は、毎年9月1日にその年の所得情報に基づいて見直されます。前年度は所得超過で対象外だった方でも、収入の変動により基準額以内に収まれば、改めて申請できるようになります。
ただし、所得制限を超過して資格を失った場合、基準額以下に戻っても自動的に資格が復活するわけではありません。再度の申請手続きが必要なので忘れないようにしてください。
給与所得者には特別な控除がある
給与所得または公的年金等に係る所得がある方は、所得金額の合計額から10万円を控除した金額で判定します。
この10万円控除は見落としがちなので、所得が基準額ギリギリの場合は特に意識しておくとよいでしょう。
訪問診療でマル障を使ったときの自己負担額はいくらになる?
マル障を使って訪問診療を受けた場合の自己負担額は、住民税の課税・非課税で大きく変わります。非課税の方は自己負担なし、課税されている方は1割負担となり、月ごとの上限額も設定されています。
住民税非課税の方は自己負担ゼロで訪問診療を受けられる
住民税非課税の方がマル障を使った場合、保険診療にかかる自己負担額はありません。つまり、訪問診療の費用は実質的に無料になります。通常であれば1割〜3割の窓口負担が発生しますが、マル障がその全額を助成してくれるのです。
この「自己負担ゼロ」が適用されるのは、あくまでも保険診療の範囲に限られます。文書料や保険外の検査、差額ベッド代などは助成の対象にならない点は忘れずに。
住民税課税の方は1割負担で月額上限あり
住民税が課税されている方の場合、マル障適用後の自己負担は1割です。通常の医療保険だけなら3割負担のところを1割まで軽減できるため、経済的な恩恵は十分に大きいといえます。
さらに、1か月あたりの自己負担上限額が設けられています。外来(訪問診療を含む)は月額1万8,000円、入院は月額5万7,600円が上限です。年間の上限は14万4,000円となっており、上限を超えた分は高額医療費として助成されます。
入院の場合は多数回該当でさらに負担が軽くなる
過去12か月以内に入院の自己負担上限額に3回以上達した場合、4回目からは「多数回該当」として上限額が4万4,400円に引き下げられます。在宅療養中でも入退院を繰り返す方にとっては見逃せない仕組みです。
- 住民税非課税の方は自己負担なし
- 住民税課税の方は1割負担(通院上限:月1万8,000円)
- 入院の自己負担上限は月5万7,600円
- 年間上限は14万4,000円
- 多数回該当で入院上限が4万4,400円に軽減
マル障受給者証の申請手続きと必要書類をそろえよう
マル障を利用するには、お住まいの区市町村の窓口で申請し、受給者証の交付を受ける必要があります。必要書類をあらかじめ準備しておけば、手続きはスムーズに進められます。
申請窓口は区市町村の障害福祉課
マル障の申請は、住民票のある区市役所・町村役場の障害福祉担当窓口で受け付けています。精神障害者保健福祉手帳1級で申請する場合は、保健所や保健センターが窓口になる自治体もあるため、事前に確認するとよいでしょう。
郵送での申請を受け付けている自治体も増えています。窓口に出向くのが難しい方は、お住まいの自治体のホームページや電話で郵送申請の可否を確認してみてください。
申請に必要な書類一覧
申請時に必要な書類は、障害者手帳(身体障害者手帳・愛の手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれか)、健康保険の資格が確認できるもの(マイナ保険証や資格確認書など)、マイナンバーがわかる書類と身元確認書類です。
マル障申請に必要な書類
| 書類 | 詳細 |
|---|---|
| 障害者手帳 | 身体・愛の手帳・精神手帳のいずれか |
| 保険資格の確認書類 | マイナ保険証や資格確認書 |
| マイナンバー関連 | 個人番号カードまたは通知カード |
| 身元確認書類 | 運転免許証やパスポートなど |
| 課税証明書 | 転入者の場合に必要になることがある |
受給者証は毎年9月に自動更新される
マル障受給者証の有効期間は、毎年9月1日から翌年の8月31日までです。資格が継続する方には、8月下旬に新しい受給者証が郵送されます。基本的に更新手続きは不要ですが、所得制限の確認は毎年行われます。
精神障害者保健福祉手帳でマル障を受給している方は例外です。精神手帳には有効期限があるため、手帳の更新後に改めてマル障の継続申請が必要になります。手帳を更新してもマル障は自動更新されないので、忘れずに手続きしましょう。
訪問診療でマル障を使うときに気をつけたい落とし穴
マル障は在宅療養中の方にとって心強い制度ですが、いくつか見落としやすい注意点があります。受給者証の提示方法や対象外の費用、介護保険との関係など、知っておくべきポイントを押さえておきましょう。
受給者証を提示しないと助成が受けられない
マル障の助成を受けるには、訪問診療のクリニックにマル障受給者証と保険証(マイナ保険証や資格確認書)を提示する必要があります。訪問診療の場合、初回の訪問時にこれらを医療機関に預けるか、コピーを渡すのが一般的です。
もし受給者証を提示せずに受診した場合は、通常の自己負担が発生します。後から区市町村の窓口で払い戻し(償還払い)の申請を行えば助成分が返金されますが、手間がかかるため最初から提示しておくのが賢明です。
マル障を取り扱わない医療機関がある
都内の医療機関であっても、マル障を取り扱っていないクリニックがまれに存在します。また、都外の医療機関では基本的にマル障の現物給付(窓口での自己負担軽減)を受けられません。
このような場合は、いったん医療保険の自己負担分を窓口で支払い、後日、領収書を持参して区市町村の担当窓口で払い戻し手続きを行います。
訪問診療のクリニックを選ぶ段階で、マル障に対応しているかどうか確認しておくと安心です。
介護保険との優先関係に注意が必要
マル障は医療保険に対する助成制度であり、介護保険の自己負担には適用されません。要介護認定を受けている方が訪問看護を利用する場合、介護保険が優先されるためマル障の助成対象にならないことがあります。
医療保険で訪問看護が適用される場合(厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合など)は、マル障の助成対象になります。
自分がどちらの保険で訪問サービスを受けているのか、担当のケアマネジャーや医療機関に確認しておくとよいでしょう。
- 都内でもマル障非対応の医療機関がある
- 都外の医療機関では原則として現物給付が受けられない
- 非対応の場合は後日に償還払いで助成金を受け取る
マル障と他の公費助成制度は併用できるのか
マル障以外にも医療費を助成する公費制度は複数存在します。それぞれの制度との併用関係を正しく把握しておかないと、思わぬ自己負担が発生する場合があるため注意してください。
マル親・マル乳・マル子・マル青との併用はできない
| 制度名 | 対象 | マル障との併用 |
|---|---|---|
| マル親 | ひとり親家庭 | 不可 |
| マル乳 | 乳幼児 | 不可 |
| マル子 | 義務教育就学児 | 不可 |
| マル青 | 高校生等 | 不可 |
自立支援医療(更生医療・育成医療・精神通院)との関係
自立支援医療制度は、特定の障害に対する治療にかかる医療費の自己負担を軽減する仕組みです。マル障と自立支援医療は、それぞれ別の公費制度として併用できるケースがあります。
たとえば精神通院医療の自立支援医療を受けている方がマル障の対象でもある場合、まず自立支援医療が適用され、さらに残った自己負担部分にマル障が適用される形になることがあります。
自治体によって運用が異なるため、担当窓口に確認することをおすすめします。
高額療養費制度との関係
医療保険には高額療養費制度があり、1か月の医療費自己負担が一定額を超えた場合に超過分が払い戻されます。マル障の助成額を算定する際、高額療養費として保険者から支給される金額は差し引かれます。
つまり、高額療養費とマル障の二重取りはできない仕組みです。保険者からの付加給付がある場合も同様に差し引かれるため、実際の助成額は個々の状況によって変わってきます。



よくある質問
- マル障(障害者医療証)は訪問診療でも使えるのか?
-
マル障は訪問診療でも使えます。訪問診療は保険診療として実施されるため、マル障の助成対象に含まれます。
受給者証と保険証を訪問診療クリニックに提示すれば、窓口負担が軽減されます。ただし、保険診療に該当しない費用(文書料や自費の検査など)は助成の範囲外です。
- マル障の所得制限基準額は扶養親族がいない場合いくらか?
-
扶養親族等が0人の場合、マル障の所得制限基準額は366万1,000円です。この金額は各種控除を加算する前の基準であり、給与所得者には10万円の特別控除が適用されます。
扶養親族が1人増えるごとに約38万円ずつ基準額が引き上げられます。所得制限は毎年9月に見直されるため、前年は対象外だった方でも所得の変動により申請可能になることがあります。
- マル障受給者証を持っていれば訪問診療の自己負担は完全にゼロになるのか?
-
住民税が非課税の方であれば、マル障を使った訪問診療の自己負担は発生しません。保険診療分の自己負担額が全額助成されるため、実質無料で訪問診療を受けられます。
一方、住民税が課税されている方は1割の一部負担金が必要です。通院の場合は月額1万8,000円、年間14万4,000円の上限が設けられているため、負担が際限なく増えることはありません。
- マル障の申請で65歳以上の方が注意すべき点は何か?
-
65歳以上になってから初めて障害者手帳を取得した方は、原則としてマル障の申請ができません。また、65歳に達する日の前日までに申請を済ませていない方も対象外となります。
ただし、都内に住所がなかった方や生活保護を受けていたために申請できなかった方は、例外として認められる場合があります。該当するかどうかは、お住まいの区市町村の窓口に相談してみてください。
- マル障受給者証の更新手続きは毎年必要なのか?
-
身体障害者手帳や愛の手帳でマル障を受給している方は、基本的に更新手続きは不要です。毎年8月下旬に所得確認が行われ、資格が継続する方には新しい受給者証が自動で郵送されます。
精神障害者保健福祉手帳でマル障を受給している方は注意が必要です。精神手帳には有効期限があり、手帳の更新後に改めてマル障の継続申請を行う必要があります。手帳を更新しただけではマル障は自動更新されません。
