経管栄養の下痢・嘔吐・逆流性誤嚥を防ぐ|半固形化栄養剤の導入と訪問診療

経管栄養の下痢・嘔吐・逆流性誤嚥を防ぐ|半固形化栄養剤の導入と訪問診療

経管栄養を行っている患者さんの多くが直面する下痢や嘔吐、そして命に関わる逆流性誤嚥といった深刻なトラブル。これらの問題は、従来の液体栄養剤から「半固形化栄養剤」へ切り替えると大幅な改善が期待できます。

半固形化栄養剤は胃内で適度な形状を保つため、胃食道逆流を防ぎ、生理的な消化活動を促すことで便性状の安定化にも寄与します。

また、短時間での注入が可能となり、患者さんの拘束時間を減らすとともに、介護者の負担も軽減します。

目次

経管栄養で起こりやすい下痢や嘔吐の原因はどこにあるのか

経管栄養中のトラブルの多くは、液体状の栄養剤が胃内で保持されにくいことや、注入速度が身体の消化吸収能力と合っていないことに起因しており、消化管への物理的な負担と生理的な機能不全が主な原因です。

液体栄養剤が胃食道逆流を引き起こす仕組み

私たちが普段口から食事を摂るとき、食べ物は咀嚼され、唾液と混ざり合って適度な粘度を持った状態で胃に送り込まれます。胃はこの食塊を受け止め、蠕動運動によって消化しながら少しずつ十二指腸へと送り出します。

しかし、従来の液体栄養剤は文字通り「水」のような性状をしています。胃の中に液体が急速に溜まると、胃はそれを固形物として認識しづらく、貯留機能が十分に働きません。

さらに、寝たきりの状態や加齢によって胃の入り口である噴門部の締まりが弱くなっていると、水のような液体は容易に食道へと逆流してしまいます。その結果、嘔吐や最悪の場合は誤嚥性肺炎を引き起こす大きな要因となるのです。

注入速度が速すぎると消化管に負担がかかる

液体栄養剤を使用する場合、滴下速度の調整は非常に繊細な管理を必要とします。早く終わらせたいからといって速度を上げてしまうと、大量の液体が短時間で小腸に流れ込むことになります。

小腸は急激な液体の流入に対応しきれず、消化吸収が追いつきません。すると、高濃度の栄養剤を薄めようとして腸壁から水分が分泌され、腸管内の水分量が過剰になります。これが浸透圧性の下痢を引き起こす原因の一つです。

また、急激な血糖値の上昇やそれに伴う反応性低血糖など、いわゆるダンピング症候群のような症状を招く場合もあります。患者さんの身体にとって、液体を短時間で受け入れるのは大きな負担となるのです。

経管栄養におけるトラブルと主な要因

トラブル症状主な発生メカニズム患者さんへの影響
胃食道逆流・嘔吐液体が胃内で留まらず、噴門部の緩みから食道へ戻る誤嚥性肺炎のリスク増大、不快感、食道炎
下痢・軟便急速な注入による小腸への刺激、浸透圧の負荷脱水症状、皮膚トラブル、栄養吸収不良
腹部膨満感消化管の運動低下、ガス貯留、過剰な水分苦痛による食欲不振、呼吸状態の悪化

栄養剤の温度や濃度が身体に合っていない可能性

注入速度や形状だけでなく、栄養剤そのものの温度や濃度も消化管の状態に影響を与えます。

冷蔵庫から出したばかりの冷たい栄養剤をそのまま注入すると、胃腸が刺激を受けて蠕動運動が過剰になり、下痢や腹痛を誘発します。逆に、体温程度に温めると消化管への刺激を和らげられます。

また、栄養剤の濃度が高すぎると浸透圧が高くなり、腸管内へ水分を引き寄せて下痢の原因となります。導入初期や体調不良時には、栄養剤の濃度を薄めたり、消化しやすい成分のものに変更したりするなど、きめ細かな調整が必要です。

身体の状態は日々変化するため、漫然と同じ設定で続けるのではなく、日々の観察に基づいた微調整が大切です。

半固形化栄養剤を取り入れるとどのような変化が期待できるか

半固形化栄養剤を導入すると、胃内での滞留性が高まり逆流リスクが低減します。さらに生理的な消化活動が促進されるため、下痢の改善や拘束時間の短縮といった、生活の質を向上させる多くの変化が期待できます。

胃内での滞留時間が長くなり逆流を防ぎやすくなる

半固形化栄養剤の最大の特徴は、その名の通り「とろみ」や「固形」の性質を持っていることです。

胃の中に注入された半固形化栄養剤は、液体のようにサラサラと動くのではなく、ある程度の形状を保って胃底に留まります。胃から食道への逆流が物理的に起こりにくくなるのはこのためです。

また、胃が「固形物が入ってきた」と認識するため、本来の生理的な反応である適応性弛緩(胃が広がって食べ物を蓄える動き)や、規則的な排出運動が促されます。

この生理的なしくみに沿った栄養摂取は、胃食道逆流を防ぐだけでなく、嘔吐の頻度を劇的に減らす効果が期待できます。結果として、誤嚥性肺炎のリスクを下げることにもつながるのです。

下痢の頻度が減り排便コントロールがしやすくなる

液体栄養剤で下痢に悩んでいた患者さんが、半固形化栄養剤に変更した途端に便の性状が安定するケースは珍しくありません。

これは、栄養剤が半固形であるため、小腸へ流れ込む速度が緩やかになることが大きく関係しています。

液体のように一気に小腸へ雪崩れ込まないため、小腸は十分な時間をかけて栄養と水分を吸収できます。

また、半固形化栄養剤の中には食物繊維やグアーガム分解物などが含まれているものも多く、これらが腸内環境を整える助けとなります。

下痢が治まると頻繁なおむつ交換やスキンケアの負担が減り、患者さん自身の不快感も解消します。排便のリズムが整うことは、全身の健康管理においても非常に大きな意味を持つのです。

投与時間が短縮されて介護者の負担も軽減する

液体栄養剤の場合、1回の注入に1時間から2時間、あるいはそれ以上の時間をかけるのが一般的です。その間、患者さんは同じ姿勢を保たなければならず、介護者も見守りを続けなければなりません。

これに対し、半固形化栄養剤は「短時間摂取法」が可能です。1回の量を15分から30分程度で注入できるため、拘束時間が大幅に短縮されます。

これは患者さんが自由な時間を持てるようになるだけでなく、リハビリテーションや入浴など、人間らしい生活を取り戻すことにつながります。

介護者にとっても、長時間の注入管理から解放され、精神的・身体的な余裕が生まれるのは計り知れないメリットです。

食事にかける時間が短くなると一日の生活リズムにメリハリが生まれ、より活動的な療養生活を送る基盤が整います。

液体栄養剤と半固形化栄養剤の主な違い

比較項目従来の液体栄養剤半固形化栄養剤
胃内での動き流動性が高く、逆流しやすい形状を保ち、逆流しにくい
注入にかかる時間1〜2時間以上の持続注入15〜30分程度の短時間注入
排便への影響下痢を起こしやすい有形便になりやすい

どのような患者さんが半固形化栄養剤の導入に適しているか

胃瘻を造設しており消化機能が保たれている方や、誤嚥性肺炎を繰り返すリスクが高い方が適応となります。

また、長時間の座位保持が困難で注入時間を短縮したい方も、半固形化栄養剤の導入によって特に大きな恩恵を受けられます。

胃瘻を造設していて消化機能が保たれている方

半固形化栄養剤は、基本的に胃瘻(PEG)を使用している患者さんが対象となります。

経鼻経管栄養(鼻からのチューブ)の場合、チューブが細すぎるため、粘度のある半固形化栄養剤を通過させるのが難しく、詰まりの原因となるからです。

また、半固形化栄養剤を使用する大前提として、胃や腸の消化吸収機能がある程度正常に働いていることが必要です。胃の手術後で胃の容量が極端に小さい方や、重度の腸閉塞がある方などは慎重な判断が必要です。

しかし、脳血管障害の後遺症や神経難病などで嚥下機能だけが低下しており、消化管の機能は保たれている多くの患者さんにとって、半固形化栄養剤は生理的な消化プロセスに近い理想的な栄養摂取方法となり得ます。

導入を積極的に検討すべき方の特徴

  • 胃瘻(PEG)を造設済みで、カテーテルの太さが十分にある方
  • 胃食道逆流による嘔吐や誤嚥性肺炎を繰り返している方
  • 液体栄養剤の使用中に慢性の下痢や軟便が続いている方
  • リハビリやデイサービスのため、注入時間を短縮したい方
  • 長時間の同一体位保持が苦痛で、褥瘡のリスクがある方

誤嚥性肺炎を繰り返してしまうリスクが高い方

誤嚥性肺炎は、高齢者の死因の上位を占める恐ろしい病態です。特に経管栄養を行っている患者さんは、胃からの逆流物が気管に入り込むことで肺炎を発症するリスクと常に隣り合わせです。

液体栄養剤で管理していて、唾液や逆流物の誤嚥による発熱を繰り返しているような場合は、半固形化栄養剤への変更を強く検討すべきタイミングといえます。

半固形化すると胃内容物の逆流を物理的に抑え込めるため、誤嚥のリスクを直接的に減らせます。

訪問診療医と相談し、嚥下機能の評価とともに栄養剤の形態を見直すことは、肺炎予防の観点からも非常に重要です。

長時間の座位保持が難しく短時間で済ませたい方

経管栄養の注入中は、逆流を防ぐために上体を30度から45度程度起こした姿勢(ギャッジアップ)を保つのが一般的です。

しかし、関節の拘縮があったり、円背(背中が丸くなっている状態)が強かったりする患者さんにとって、長時間同じ姿勢をとり続ける状態は苦痛を伴います。

場合によっては、その姿勢自体が褥瘡(床ずれ)の原因となるケースもあります。半固形化栄養剤であれば、注入時間が短縮されるため、無理な姿勢を強いる時間を大幅に減らせます。

短時間で栄養摂取を終え、その後は楽な姿勢で休めるため、患者さんの身体的なストレスを軽減し、安楽な在宅生活を支えることにつながります。

訪問診療の医師や看護師は在宅での導入をどうサポートするか

在宅での導入に際しては、訪問診療チームが患者さんの消化機能評価や適切な注入量の設定を行います。

さらに家族への手技指導や緊急時のバックアップ体制を整え、安全かつスムーズな移行を全面的にサポートします。

患者さんの消化機能に合わせた注入量の調整を行う

半固形化栄養剤の導入は、いきなり全量を変更するのではなく、患者さんの胃腸が新しい形状に慣れるように段階的に進めることが大切です。

訪問診療の医師は、まず患者さんの腹部の状態、排便状況、過去のトラブル歴などを詳細に診察します。その上で、最初は1回の注入量を少なめに設定し、水分量とのバランスを見ながら徐々に増やしていく計画を立てます。

無理な増量は嘔吐や腹部膨満感の原因となるため、プロフェッショナルな視点での微調整が必要です。

定期的な訪問診療の中で体重の変化や血液検査のデータなども確認し、栄養状態が改善しているかを客観的に評価しながら、その時々の患者さんに適した注入量を処方します。

トラブルが起きた際の緊急対応や連絡体制を整える

新しいことを始めるときには不安がつきものです。「注入中に急に吐いてしまったらどうしよう」「カテーテルが詰まったらどうすればいいのか」といった家族の不安に寄り添うのも訪問診療チームの役割です。

導入初期には、訪問看護師が注入の時間に合わせて訪問し、実際の様子を見守ることもあります。また、夜間や休日にトラブルが発生した場合でも、24時間365日対応可能な連絡体制を整えている訪問診療クリニックであれば、電話での指示や必要に応じた緊急往診が可能です。

いつでも医療者とつながっているという安心感は、在宅でのケアを継続する上で何よりも心強い支えとなります。

家族や介護者への具体的な注入手技の指導を行う

半固形化栄養剤の注入には、加圧バッグを使用したり、シリンジ(注射筒)で押し出したりと、液体栄養剤の滴下とは異なる手技が必要です。

特に、どのくらいの力をかけて押し出すのか、どのくらいの速さが適切なのかといった「感覚」の部分は、言葉だけでは伝わりにくいものです。

訪問看護師や医師は、実際に家族の手元を見ながら、具体的なコツや注意点を指導します。栄養剤の準備から、注入中の姿勢の整え方、終了後のカテーテルの洗浄方法まで、一連の流れを一緒に確認します。

介護者が自信を持って手技を行えるようになるまで、繰り返し丁寧にサポートして安全な在宅療養環境を構築します。

訪問診療チームによる導入サポート内容

サポート項目具体的な支援内容家族・介護者のメリット
医学的評価・処方消化機能の確認、栄養剤種類の選定、注入量の決定自己判断によるリスクを回避し、医学的根拠に基づいたケアができる
実地手技指導注入器具の使い方のレクチャー、速度や圧力の調整指導正しい手技を習得でき、事故やトラブルを未然に防げる
経過観察・調整便性状や体重変化のモニタリング、トラブル時の対応導入後の不安を解消し、長期的に安定した療養を継続できる

半固形化栄養剤を安全に開始するための具体的な準備と手順

導入にあたっては、医療機関と相談して適切な栄養剤や専用器具を準備します。

最初は少量から開始して徐々に量を増やす慎重なステップを踏むとともに、注入前後の姿勢管理を徹底することが安全な実施には必要です。

必要な器具や栄養剤の種類を医療機関と相談して揃える

半固形化栄養剤には、あらかじめ半固形の状態でパックされている製品と、粉末や液体の粘度調整食品を混ぜて自分で半固形化するタイプがあります。

利便性が高いのは既製品のパックタイプですが、患者さんの状態や経済的な事情に合わせて選択します。

また、注入には専用の太口径の接続チューブや、加圧バッグ、あるいはカテーテルチップシリンジなどが必要です。これらは一般的なドラッグストアでは手に入らないものも多いため、訪問診療の医師や薬局と相談し、入手ルートを確保します。

特に接続チューブは、胃瘻カテーテルの種類に適合したものでなければならないため、医療スタッフによる確認が重要です。事前に必要な物品リストを作成し、漏れがないように準備を整えます。

安全な導入スケジュールの例

段階注入量・頻度の目安注意点・確認事項
開始期(1〜3日目)通常の半量程度を1日1回から開始。残りは従来の液体で補う。腹痛、嘔吐がないか重点的に観察。水分補給を忘れない。
増量期(4〜7日目)問題なければ1日2回〜3回へ回数を増やす。便の性状を確認。硬すぎる場合は水分量を調整。
安定期(2週目以降)目標とする全量を半固形化栄養剤で注入。体重測定を行い、栄養状態を評価。生活リズムに合わせて時間を固定。

少量から開始して徐々に量を増やしていく進め方

胃腸が新しい栄養剤の刺激に慣れるまでには時間がかかります。焦りは禁物です。導入初日は、例えば昼の1回だけを半固形化栄養剤にし、量は通常の半分程度に留めるなど、慎重なスタートを切ります。

注入後は、お腹が張っていないか、気持ち悪そうにしていないか、顔色や呼吸状態をよく観察します。数日間続けて問題がなければ、徐々に量を増やし、回数も朝夕と広げていきます。

もし途中で下痢や嘔吐が見られた場合は、一度前の段階に戻すか、一時中断して医師に相談します。「急がば回れ」の精神で、患者さんの身体の反応を最優先に進めることが、結果的に早期の定着につながります。

注入中の姿勢や注入後の安静時間を正しく管理する

半固形化栄養剤は逆流しにくいとはいえ、完全に防げるわけではありません。注入中は必ず上体を30度以上起こし、胃の入り口が食道より高くなるように位置を調整します。

可能であれば座位に近い姿勢をとると、重力を利用して栄養剤が胃の底に落ちやすくなります。注入が終わった後も、すぐに横にするのではなく、30分から1時間程度は上体を起こしたまま安静を保つことが大切です。

この習慣により、栄養剤が十二指腸へとスムーズに送られるのを助け、逆流のリスクをさらに低減できます。

クッションを活用して楽な姿勢を保てるよう工夫するなど、患者さんが苦痛を感じないポジショニングを心がけましょう。

導入後に注意すべきトラブルのサインと家庭での対処法

導入後は、腹部膨満感や便性状の変化などのサインを見逃さず、異常を感じたら注入を一時中断して様子を見るなどの適切な対処を行います。

誤嚥の兆候があれば速やかに医療者へ連絡することが、重大なトラブルを防ぐために重要です。

腹部膨満感や嘔気がある場合は注入を一時中断する

注入中や注入後に、患者さんが苦しそうな表情をしたり、お腹がパンパンに張っていたりする場合は、胃の中のものがうまく排出されていない可能性があります。また、げっぷが増えたり、冷や汗をかいたりするのも注意信号です。

このようなサインが見られたら、無理に注入を続けず、直ちに中断してください。お腹の張りが強いときは、胃瘻のボタンを開放してガス抜き(脱気)を行うと楽になる場合があります。

ガス抜きをしても改善しない、あるいは嘔吐してしまった場合は、その回の注入は見送り、水分補給程度にとどめて様子を見ます。症状が続くようであれば、自己判断せずに訪問診療医に連絡を入れましょう。

便の性状が変化したときは水分量や速度を見直す

半固形化栄養剤に変更すると、便が硬くなりすぎて便秘になるケースがあります。これは、栄養剤に含まれる水分量が液体栄養剤に比べて少ないのが原因の一つです。

便がコロコロして硬い、排便が困難そうだと感じたら、注入の前後に追加する水分(白湯)の量を増やしてみましょう。

逆に、下痢が続く場合は、注入速度が速すぎる可能性があります。半固形とはいえ、あまりに急速に注入すると腸への刺激が強くなります。注入時間を少し長めにとるよう調整してみてください。

便の状態は、体内の水分バランスや消化吸収の状況を映す鏡です。毎日の便チェックを通じて、水分量や速度の微調整を行うことが健康管理の鍵となります。

誤嚥の兆候が見られたらすぐに訪問診療医へ連絡する

最も警戒すべきは誤嚥の兆候です。注入中や注入後に激しく咳き込む、喉元でゴロゴロと音がする、熱が急に上がるといった症状は、誤嚥性肺炎の初期症状である可能性があります。

また、なんとなく元気がなくぐったりしている、呼吸が浅く速いといった変化も危険なサインです。

半固形化栄養剤は逆流しにくいとされていますが、体調の変化や姿勢の崩れによってリスクはゼロにはなりません。

もし誤嚥を疑う症状が見られた場合は、次回の訪問診療を待つのではなく、すぐに連絡を入れて指示を仰いでください。早期発見と早期対応が、重症化を防ぐための鉄則です。

見逃してはいけない誤嚥や体調不良のサイン

  • 注入中に咳き込みやむせ込みが見られる
  • 注入後に痰の量が増えたり、痰の色が黄色や緑色に変化したりする
  • 原因不明の発熱(37.5度以上)がある
  • 呼吸数が通常より多く、息苦しそうにしている
  • 血中酸素飽和度(SPO2)の値が普段より低下している

従来の液体栄養剤と半固形化栄養剤の使い分けはどう考えるか

液体と半固形にはそれぞれメリットとデメリットがあります。

水分補給の必要性や管理の手間、経済的なコストを比較検討し、患者さんの生活リズムや体調に合わせて柔軟に使い分けや併用を行うことが、持続可能な在宅療養の秘訣です。

水分補給のしやすさと管理の手間を比較して検討する

液体栄養剤は水分含有量が多く、栄養摂取と同時に水分補給もできるという利点があります。一方、半固形化栄養剤は水分量が相対的に少ないため、食事とは別に水分だけの注入を行う手間が発生する場合があります。

夏場や発熱時など脱水のリスクが高い時期には、あえて液体栄養剤を併用して水分を確保するという選択肢もあります。

また、半固形化栄養剤は準備や片付けが簡便な製品が多いですが、粘度調整が必要なタイプだと手間がかかります。

家族の介護力や、一日のスケジュールの中でどれだけ手間をかけられるかを考慮し、無理のない範囲で選択しましょう。

液体栄養剤と半固形化栄養剤の使い分け基準

検討項目液体栄養剤が適しているケース半固形化栄養剤が適しているケース
水分の必要量脱水傾向があり、多めの水分補給が必要な場合水分制限がある、または別途水分補給が可能な場合
消化機能胃腸の動きが極端に弱く、微量ずつしか受け付けない場合胃の貯留機能があり、正常な消化活動が期待できる場合
ライフスタイル夜間に時間をかけて注入し、日中は空けたい場合日中の活動時間を確保し、食事時間を短縮したい場合

経済的な負担や入手経路の違いを事前に確認しておく

栄養剤の種類によっては、医療保険が適用される医薬品扱いのものと、食品扱いのものがあります。半固形化栄養剤も同様で、処方薬として出されるものと、自費で購入しなければならないものがあります。

毎日使うものですから、経済的な負担は無視できません。一般的に、食品扱いの半固形化栄養剤は全額自己負担となるため、月単位で見るとコストがかさむときがあります。

訪問診療医やケアマネジャーと相談し、利用できる制度やコストパフォーマンスを比較検討しておきましょう。経済的な理由で継続が難しくなっては元も子もありません。

患者さんの生活リズムに合わせて併用する方法もある

「必ずどちらか一方でなければならない」という決まりはありません。

例えば、忙しい朝やデイサービスに行く前の昼食は短時間で済む半固形化栄養剤を使用し、時間のある夕食や就寝前は水分補給も兼ねて液体栄養剤を使用する、といったハイブリッドな使い方も可能です。

また、平日は家族の負担を減らすために半固形化、週末はゆっくりと液体で、というように介護者の都合に合わせて調整することも、在宅療養を長く続けるための知恵です。

患者さんの体調と家族の生活、その両方のバランスが取れるポイントを見つけるために、柔軟な発想で使い分けを考えてみてください。

よくある質問

半固形化栄養剤を使用すると便秘になるリスクはありますか?

半固形化栄養剤に変更すると、水分摂取量が減ることや、栄養剤が腸内で水分を吸収されやすくなることで、便が硬くなる傾向があります。

便秘を防ぐためには、栄養剤の注入とは別に、白湯などの水分をこまめに注入することが大切です。

また、食物繊維が含まれている種類の栄養剤を選ぶと、排便コントロールが改善する場合もあります。便の様子を見ながら水分量を調整してください。

胃瘻カテーテルが半固形化栄養剤で詰まることはありますか?

細いカテーテルや、チューブ型(バンパー型ではない長いチューブがついているタイプ)の場合、粘度の高い半固形化栄養剤が詰まるリスクはゼロではありません。

特に、注入後の洗浄(フラッシュ)が不十分だと、管の中に残った栄養剤が固まって閉塞の原因になります。注入後は必ず十分な量のぬるま湯でカテーテル内をきれいに洗い流す習慣をつけることが、詰まりの予防には非常に重要です。

半固形化栄養剤の注入回数は1日に何回が適切ですか?

一般的には1日3回、朝・昼・夕の食事の時間に合わせて行うのが生理的なリズムとして理想的です。しかし、患者さんの消化機能や家族の生活スタイルに合わせて、1日2回に調整する場合もあります。

また、1回の量が多すぎて嘔吐してしまうときは、1回の量を減らして回数を4回に増やすなどの工夫も考えられます。主治医と相談して、個々の患者さんに合った回数を決めていきます。

家族が半固形化栄養剤の注入手技を覚えるのは難しいですか?

最初は慣れない手順に戸惑うこともあるかもしれませんが、多くのご家族が数回の指導で手技を習得されています。

液体栄養剤のように滴下速度を細かく調整し続ける必要がないため、「半固形化の方が準備も片付けも楽で簡単だ」と感じる方も少なくありません。

訪問看護師や医師が自信を持てるまで丁寧に指導しますので、過度に心配する必要はありません。

半固形化栄養剤に切り替えて体重が増加することはありますか?

下痢が改善して栄養の吸収効率が良くなり、体重が増加して栄養状態が改善するケースはよくあります。これは喜ばしい変化ですが、急激な体重増加は心臓への負担になることもあります。

また、今までと同じカロリー量でも吸収が良くなりすぎてカロリーオーバーになる場合もあります。定期的に体重を測定し、必要に応じて栄養剤の量や種類を見直すことが大切です。

今回の内容が皆様のお役に立ちますように。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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