神経難病患者のレスパイトケアと短期入所|介護者の休息を確保するための医療連携

神経難病の介護は長期戦であり、24時間365日のケアを家族だけで担い続けるのは現実的ではありません。
レスパイトケアや短期入所(ショートステイ)を適切に活用することは、介護者の心身の健康を守り、結果として患者さんが在宅生活を長く続けるための基盤となります。
医療的ケアが必要な方でも、医療機関でのレスパイト入院や医療型短期入所など、状態に応じた選択肢が存在します。
この記事では、利用のタイミングや施設の種類、費用負担を軽減する制度、そして医療連携によるスムーズな導入方法について詳しく解説します。共倒れを防ぎ、穏やかな在宅療養を続けるために、外部の力を借りる準備を始めましょう。
介護者の心身を守り共倒れを防ぐためにレスパイトを活用する
神経難病の介護において、レスパイトケアは単なる「休息」以上の意味を持ちます。進行性の疾患である神経難病は、時間の経過とともに医療的ケアの必要性が増し、介護者の負担は右肩上がりに増加します。
家族だからといって全てを背負い込むのではなく、専門的なサービスを利用して一時的にケアから離れる時間は、在宅生活を維持するために必要です。
24時間365日の緊張状態から解放される時間を作る
在宅での神経難病介護は、昼夜を問わない吸引や体位変換、排泄介助など、途切れることのない緊張感を伴います。
特に夜間のケアが必要な場合、介護者は慢性的な睡眠不足に陥りやすく、身体的な疲労だけでなく精神的なストレスも蓄積していきます。
「自分がやらなければならない」という責任感は尊いものですが、それが過度なプレッシャーとなり、介護うつや燃え尽き症候群を引き起こすリスクを高めます。
レスパイトケア活用によるメリット
- 介護者がまとまった睡眠や休息を取り、心身の疲労を回復できる
- 患者本人が自宅以外の環境で刺激を受け、気分転換や社会参加につながる
- 専門職による24時間の見守りやケアにより、医療的安全性が確保される
- 介護者の急病や冠婚葬祭などの緊急時に、スムーズな受け入れが可能になる
レスパイトケアを利用して数日間でも介護から物理的に離れると、介護者はまとまった睡眠を取ったり、自分の趣味の時間を持ったりできます。
心身の緊張を解き、リフレッシュすれば、再び患者さんと向き合うためのエネルギーを養えるでしょう。
介護者が健康であってこそ、質の高いケアを提供し続けられます。自分のための時間を確保することに罪悪感を持つ必要はありません。それは長期的な在宅療養を成功させるための戦略的な休息です。
患者本人にとっても自宅以外で過ごす気分転換になる
レスパイトケアは介護者のためだけのものではありません。患者さん本人にとっても、自宅以外の環境で過ごすことは良い刺激となります。
病気が進行すると外出の機会が減り、生活空間が自宅の寝室に限られてしまいがちです。外部の施設を利用すると、普段とは違う景色を見たり、家族以外の人と会話をしたりする機会が生まれます。
また、施設では理学療法士や作業療法士による専門的なリハビリテーションを受けられる場合もあります。いつもと違うスタッフとの関わりやレクリエーション活動は、患者さんの気分転換になり、社会的な孤立感を和らげる効果も期待できます。
「家族に迷惑をかけたくない」と考えて利用をためらう患者さんもいますが、施設での生活が生活の質(QOL)向上につながることを説明し、前向きに利用を検討してもらいましょう。
専門職によるケアを受けて安心感を確保する
在宅介護では、家族が医療的ケアを担う場面が多くありますが、やはり専門職のスキルには及びません。
レスパイトケアや短期入所を利用している期間は、医師、看護師、介護福祉士などのプロフェッショナルが24時間体制で見守りを行います。
家族が見ていない間の体調変化にも迅速に対応してもらえるため、安心して任せられます。
普段の在宅ケアの方法について、施設の専門スタッフから客観的なアドバイスをもらえる場合もあります。
例えば、より楽な介助方法や、床ずれ防止の工夫など、プロの視点を取り入れると、帰宅後の在宅介護の質が向上する場合もあります。専門家の目が入ることは、家族にとっても大きな安心材料となります。
緊急時に備えて預け先との関係を構築しておく
介護者が突然の病気や怪我、冠婚葬祭などで急に家を空けなければならなくなる事態は、誰にでも起こり得ます。
そうした緊急時に初めてショートステイを探そうとしても、満床で受け入れ先が見つからないことや、患者さんの状態を把握していないために断られるケースが少なくありません。
平時から定期的にレスパイトケアを利用し、施設スタッフと顔なじみになっておくことは、最大のリスク管理です。
スタッフが患者さんの病状や性格、ケアの手順を熟知していれば、緊急時でもスムーズに受け入れてもらえます。
いざという時の避難場所を確保しておくという意味でも、状態が安定しているうちからレスパイトケアを計画的に利用し、複数の事業所との関係を作っておくと良いです。
レスパイトケアや短期入所を検討すべき具体的なタイミング
「まだ頑張れる」「もっと大変な人がいるはずだ」と無理を重ねてしまい、限界を迎えてから相談に来られるケースが後を絶ちません。
しかし、レスパイトケアは限界が来る前に利用すべきものです。適切なタイミングを見極め、計画的に休息を取り入れると、生活のリズムを崩さずに介護を続けられます。
介護者が疲労を感じる前や体調に異変を感じた時
最も重要なタイミングは、介護者が「疲れた」と自覚する前、あるいは些細な体調不良を感じ始めた時です。
慢性的な疲労は判断力を鈍らせ、ケアレスミスを招く原因にもなります。「最近イライラしやすくなった」「夜眠れない」「食欲がない」といったサインが現れたら、それは身体からのSOSです。
完全にダウンしてしまうと、回復までに長い時間を要し、その間の患者さんの居場所探しも困難を極めます。まだ余力があるうちに休息を取ることは、決して甘えではありません。
定期的にショートステイを利用し、「介護をしない日」をカレンダーに組み込むと、心に余裕を持って日々のケアに向き合えるようになります。
利用を検討すべき状況の整理
| 状況・タイミング | 具体的な兆候やイベント | 利用の目的と効果 |
|---|---|---|
| 身体的・精神的疲労 | 睡眠不足、イライラ、食欲不振、腰痛の悪化など | 限界を迎える前の予防的休息。共倒れを防ぎ、介護意欲を維持する。 |
| 家族の行事・イベント | 結婚式、葬儀、法事、入学式、卒業式、家族旅行 | 家族全員が役割を果たし、行事に集中できる。患者の移動負担も回避。 |
| 介護者の急な事情 | 自身の入院、手術、急な出張、感染症への罹患 | 緊急時の安全確保。事前に登録しておけば迅速な対応が可能。 |
| リフォームや環境整備 | 自宅の改修工事、大掃除、害虫駆除など | 騒音やホコリから患者を守り、工事期間中の生活環境を確保する。 |
冠婚葬祭や兄弟姉妹の行事など家族の用事がある場合
家族には患者さんの介護以外にも大切な役割があります。親戚の結婚式や葬儀、子供の学校行事、地域の活動など、外せない用事は必ず発生します。
こうした際に、無理に連れて行くことや、誰か一人が犠牲になって留守番をすることは、家族全体のストレスになります。
予定が決まった段階で早めにショートステイの予約を入れると、家族全員が心置きなく行事に参加できます。
特に神経難病の患者さんの場合、移動や外出先でのケアが大きな負担となるケースも多いため、無理な外出を避けて施設で安全に過ごしてもらうほうが、本人にとっても安楽であるときが多々あります。
介護者のリフレッシュや旅行で精神的な余裕を取り戻す
介護を理由に、自分の楽しみや趣味を全て諦める必要はありません。友人と旅行に行ったり、ゆっくりと買い物をしたり、映画を見に行ったりすることは、精神的な健康を保つために非常に有効です。
「介護があるから」と全てを断念していると、知らず知らずのうちに患者さんへの不満が溜まってしまうこともあります。「楽しむために患者を預けるなんて」という罪悪感を持つ必要はありません。
介護者がリフレッシュして笑顔で戻ってくるのは、患者さんにとっても嬉しいことです。メリハリのある生活を送るために、ポジティブな理由でのレスパイト利用を積極的に検討してください。
医療依存度が高い神経難病患者を受け入れる施設と特徴
神経難病の患者さんは、人工呼吸器や痰の吸引、経管栄養など、日常的に医療処置を必要とする場合が多く、一般的な介護施設では受け入れが難しいときがあります。
しかし、医療ニーズの高い患者さんに対応できる施設や制度は確実に存在します。患者さんの病状や必要なケアレベルに合わせて、適切な施設を選びましょう。
病院でのレスパイト入院は高度な医療処置に対応できる
人工呼吸器を装着していたり、頻回な吸引が必要だったりする場合、最も安心なのは病院による「レスパイト入院」です。
これは、治療目的ではなく、介護者の休息を目的とした入院システムです。地域包括ケア病棟や緩和ケア病棟、または一般病棟の空きベッドを利用して行われます。医師と看護師が常駐しているため、急変時の対応も万全です。
ただし、利用できる期間に制限があったり(通常は1回あたり14日以内など)、医療保険の適用ルールが複雑だったりするため、事前に地域連携室やソーシャルワーカーに確認する必要があります。
かかりつけの病院が実施していない場合でも、連携している他の病院を紹介してもらえることがあります。
主な受け入れ先とその特徴
- レスパイト入院(病院):高度な医療管理が可能。人工呼吸器や頻回な処置が必要な場合に適している。
- 医療型短期入所(障害福祉):医療機関等が提供。比較的安価で、長期的な関係構築がしやすい。
- 介護老人保健施設(介護保険):リハビリが充実。医師・看護師配置があり、医療ニーズに対応可能。
- 有料老人ホーム・特養:施設により対応力に差がある。「難病対応可」の施設を探す必要がある。
障害者総合支援法に基づく医療型短期入所を利用する
65歳未満の方や、障害者手帳をお持ちの方が利用できるのが、障害福祉サービスとしての「短期入所(ショートステイ)」です。
その中でも「医療型短期入所」は、病院や診療所、介護医療院などが行っており、医療的ケアが必要な重症心身障害者や神経難病患者の受け入れを専門としています。
福祉制度を利用するため、費用負担が比較的抑えられるというメリットがあります。また、長期的な視点での生活支援を行ってくれる事業所も多く、顔なじみのスタッフに継続的にケアしてもらえる安心感があります。
利用には、お住まいの自治体から障害福祉サービスの受給者証の交付を受ける必要があります。
指定難病に対応した介護老人保健施設の空床利用
介護保険を利用する場合、介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)のショートステイが選択肢に入ります。
特に老健は、医師や看護師が配置されており、在宅復帰を目的としたリハビリテーション機能も持っているため、医療ニーズのある方でも比較的受け入れられやすい傾向にあります。
最近では、神経難病患者の受け入れに力を入れている「難病対応型」の施設も増えてきています。ただし、施設によって対応可能な医療処置の範囲(例えば人工呼吸器の種類や、夜間の吸引頻度など)が異なるため、事前の詳細な確認が必要です。
ケアマネジャーを通じて、具体的な医療行為に対応できる施設をリストアップしてもらいましょう。
利用申し込みから入所当日までに進めるべき準備と手続き
レスパイトケアを利用したいと思っても、電話をしてすぐに利用できるわけではありません。特に医療的ケアが必要な場合、安全に受け入れるための準備や情報共有に時間がかかります。
スムーズに利用を開始するために、必要な手順を理解し、余裕を持って準備を進めることが大切です。
ケアマネジャーや相談支援専門員へ利用希望を伝える
最初の一歩は、担当のケアマネジャー(介護保険の場合)や相談支援専門員(障害福祉サービスの場合)への相談です。
「いつ頃」「どのくらいの期間」「どのような理由で」利用したいかを具体的に伝えます。まだ具体的な日程が決まっていなくても、「将来的に利用したいので、受け入れ可能な施設を探しておきたい」と伝えておくことが重要です。
専門家は、地域の施設情報や空き状況、医療的ケアの対応可否などの情報を持っています。患者さんの状態にマッチした施設を絞り込み、見学や面談の調整を行ってくれます。
初めての利用の場合、施設探しから契約までに1〜2ヶ月かかるケースも珍しくありません。
利用開始までのステップ
| ステップ | 行うべきアクション | 留意点 |
|---|---|---|
| 1. 相談・検索 | ケアマネジャー等に希望を伝え、候補施設を探す。 | 医療的ケアの内容(吸引、呼吸器等)を正確に伝える。 |
| 2. 書類準備 | 主治医に診療情報提供書、訪看にサマリーを依頼。 | 作成に時間がかかるため、早めの依頼が必要。 |
| 3. 面談・見学 | 施設を訪問し、設備確認やケア方法の打ち合わせ。 | 本人のこだわりや、緊急時の対応についても話し合う。 |
| 4. 契約・調整 | 契約書の締結、利用日程の予約確定。 | 持ち物リストを確認し、薬や物品の準備を始める。 |
診療情報提供書や看護サマリーを主治医に依頼する
受け入れ先が決まったら、医師による「診療情報提供書(紹介状)」の作成が必要になります。
これは、患者さんの病名、現在の病状、内服薬、必要な医療処置などを正確に伝えるための書類です。また、訪問看護を利用しているときは、訪問看護師に「看護サマリー(看護要約)」を作成してもらうケースもあります。
これらの書類は、施設側が「安全に受け入れられるか」を判断し、入所後のケアプランを作成するための重要な資料となります。
作成には数週間かかる場合もあるため、利用の目処が立ったら早めに主治医や訪問看護ステーションに依頼しましょう。
施設との面談や契約を行い具体的なケア方法を共有する
書類審査に通ったら、実際の施設を見学し、スタッフとの面談(事前面接)を行います。
ここでは、書類だけでは伝わらない細かなケアの要望や、患者さんの性格、好き嫌いなどを伝えます。できれば患者さん本人も同行し、施設の雰囲気を感じてもらうのが良いでしょう。
問題がなければ契約を結び、利用日程を確定します。初回は1泊2日などの短期間から始めて、徐々に慣らしていく「お試し利用」を推奨する施設もあります。無理のないペースで環境に慣れていくことが、継続的な利用につながります。
利用にかかる費用負担と活用できる公的助成制度の仕組み
レスパイトケアを継続的に利用するためには、費用の問題も無視できません。医療保険、介護保険、障害福祉サービスなど、利用する制度によって自己負担額や計算方法が異なります。
難病患者特有の助成制度を活用すると、負担を大幅に軽減できる場合があります。
医療保険と介護保険のどちらが適用されるか確認する
利用する施設やサービスによって、適用される保険が異なります。病院での「レスパイト入院」は基本的に医療保険が適用されます。
一方、老健や特養のショートステイは介護保険、障害者支援施設での短期入所は障害福祉サービスの適用となります。年齢や病気の種類によって優先される保険も変わります。
例えば、40歳以上65歳未満の特定疾病(ALSやパーキンソン病など)に該当する方は介護保険が優先されますが、厚生労働大臣が定める疾病等(人工呼吸器を使用している状態など)に該当する場合は、医療保険での訪問看護などが利用できるケースもあります。
どの制度を使うのが最も経済的負担が少ないか、ソーシャルワーカーやケアマネジャーにシミュレーションしてもらうと良いでしょう。
指定難病受給者証を利用した場合の自己負担上限額
指定難病の医療費助成制度(特定医療費受給者証)をお持ちの場合、医療保険適用のレスパイト入院にかかる医療費や、訪問看護、食費・居住費の一部(生活療養標準負担額)が助成対象となることがあります。
所得に応じて月額の自己負担上限額が設定されており、それを超えた分は公費で負担されます。
障害福祉サービスの「医療型短期入所」を利用する場合も、「自立支援医療(更生医療・育成医療)」や自治体独自の重度心身障害者医療費助成制度などを併用すると、実質の負担が無料または低額になるケースがあります。お住まいの自治体の制度をよく確認しましょう。
費用の内訳と軽減策の例
| 費用の種類 | 内容 | 活用できる可能性のある制度 |
|---|---|---|
| 基本サービス費 | ケアや医療処置にかかる費用(1〜3割負担)。 | 指定難病受給者証、高額療養費制度、高額介護サービス費。 |
| 食費・居住費 | 食事代や部屋代(滞在費)。全額自己負担が原則。 | 介護保険負担限度額認定証(低所得者向け減免)。 |
| 差額ベッド代 | 個室などを希望した場合の追加料金。 | 原則自己負担。※治療上の必要性がある場合はかからない事も。 |
| 日用品費 | オムツ、タオル、パジャマレンタル代など。 | 自治体のオムツ助成券などが使える場合がある。 |
居住費や食費など保険適用外の費用を把握する
注意が必要なのは、保険適用外の費用です。基本的に、食費(食事療養費)や居住費(滞在費)、個室を利用した場合の差額ベッド代、テレビカード代、オムツ代などは自己負担となります。
これらの費用は、医療費助成の対象外となることが多いですが、世帯の所得状況によっては「負担限度額認定証」を申請すると、食費や居住費が減免される制度があります。
見積もりを取る際は、基本料金だけでなく、こうした実費負担分を含めた総額を確認することが大切です。知らずに利用して後から高額な請求が来て驚くことがないよう、事前に費用の内訳をしっかりと把握しておきましょう。
入所中にトラブルを防ぎ安心して過ごしてもらうための工夫
慣れ親しんだ自宅を離れることは、患者さんにとって大きなストレスになり得ます。また、施設スタッフにとっても、初めて接する患者さんのケアは手探りの部分があります。
お互いの不安を解消し、トラブルなく安全に過ごしてもらうためには、情報の「見える化」と環境の調整がカギとなります。
普段の吸引頻度や体位変換の工夫を詳細にメモする
「いつも通りにお願いします」という言葉は、実は一番伝わりにくいものです。「吸引は1時間に1回程度」「右を向くときはクッションをここに挟む」など、具体的な数値や方法を文章や図にして伝えることが大切です。
特に、本人が不快に感じる体位や、痛みを訴えやすい動作などは、必ず事前に共有しておきましょう。
「私のやり方ノート」や「ケアの手順書」を作成し、写真付きで解説しておくと、スタッフも迷わずにケアができます。
夜間の過ごし方や、眠りにつきやすい体勢、好きな音楽など、生活のリズムに関する情報も詳細に記しておくと、患者さんの安心感につながります。
緊急時の連絡先と医療的判断の希望を明確にする
万が一、滞在中に容体が急変した場合の対応についても、事前に取り決めておく必要があります。
誰に連絡をするのか、かかりつけ医への搬送を希望するのか、あるいは施設の方針に委ねるのか。特に、延命治療に関する希望(DNARなど)がある場合は、医師を交えてしっかりと話し合い、文書に残しておくと良いです。
連絡が取れない場合の代理決定者を決めておくのも重要です。緊急時にスタッフが迷わず迅速に行動できるよう、明確なフローチャートを用意しておくと良いでしょう。
スムーズな滞在のための持ち物と情報の工夫
- ケア手順書:吸引、体位変換、食事介助の方法を写真付きで解説したもの。
- コミュニケーションツール:文字盤、意思伝達装置、呼び出しブザー(ナースコールが押せない場合)。
- 薬・医療材料:予備を含めて多めに持参。カニューレや呼吸器回路の予備も必須。
- 愛用品・嗜好品:使い慣れた枕、ラジオ、タブレット、好きなおやつ(摂取可能な場合)。
コミュニケーションツールや愛用品を持参して環境を整える
発語が難しい患者さんの場合、文字盤や意思伝達装置(視線入力装置など)は命綱とも言えるコミュニケーションツールです。
これらを必ず持参し、スタッフにも使い方のレクチャーを行っておきましょう。使い慣れたスイッチや固定具もセットで持ち込むことが大切です。
また、普段使っている枕やタオルケット、家族の写真、お気に入りのDVDなどを持ち込むと、殺風景な居室を少しでも自宅に近い雰囲気にできます。
匂いや感触など、五感に馴染んだものがあるだけで、患者さんの心理的な安定感は大きく変わります。
在宅医療チームと連携してスムーズなレスパイトを実現する方法
レスパイトケアは、単発のイベントではありません。在宅療養という長い道のりの中にある、一つの通過点です。
そのため、在宅で支えている医療チームと、レスパイト先の施設がしっかりと連携し、切れ目のないケアを提供することが必要です。医療連携がスムーズであればあるほど、患者さんの負担は減り、介護者も安心して送り出せます。
訪問診療医や訪問看護師からの情報提供を依頼する
在宅での様子を一番よく知っているのは、普段訪問している医師や看護師です。彼らから施設側へ、医学的な情報だけでなく、「どうすれば本人が落ち着くか」「家族がどのような点に苦労しているか」といった生活面での情報を伝えてもらうことが非常に有効です。
ケアマネジャーを中心とした「サービス担当者会議」を開催し、レスパイト先の担当者も交えて顔合わせを行うのが理想的です。
直接言葉を交わすと細かなニュアンスやケアのコツを共有でき、チーム全体でのサポート体制が強化されます。
退院後の在宅生活へスムーズに戻るための申し送り
レスパイト期間が終わって自宅に戻る際も、連携が重要です。施設での過ごし方はどうだったか、体調に変化はなかったか、皮膚トラブル(褥瘡など)はできていないかなど、退所時に詳細な申し送り(退院時サマリー)を受け取るようにしましょう。
もし施設で新しい薬が処方されたり、処置の方法が変更されたりした場合は、必ず訪問看護師や主治医に報告します。
帰宅直後は環境の変化で体調を崩しやすい時期でもあるため、帰宅当日に訪問看護が入るようにスケジュールを組んでおくと安心です。
医療連携を成功させるためのポイント
| 連携のフェーズ | 行うべきこと | 目的 |
|---|---|---|
| 利用前 | サービス担当者会議への施設スタッフ参加依頼。 | 顔の見える関係作りと、ケア方針の統一。 |
| 利用中 | 施設からの問い合わせ窓口を訪問看護等に一本化。 | 家族への頻繁な連絡を防ぎ、休息を確保する。 |
| 利用後(帰宅時) | 施設からのサマリー受領と、帰宅直後の訪問看護手配。 | 状態変化の確認と、在宅生活へのスムーズな再適応。 |
| 平時 | 定期的な利用枠の確保と、情報更新。 | 緊急時の受け入れ体制の強化と信頼関係構築。 |
定期的な利用計画を立てて急な事態に備える
連携を深めるためには、突発的な利用だけでなく、定期的な利用計画を立てることが効果的です。
「2ヶ月に1回、3泊4日で利用する」といった習慣を作ると、施設側もベッド調整がしやすくなり、患者さんも「いつもの場所」として慣れていけます。
定期利用を通じて、施設と在宅チームの信頼関係が構築されていれば、いざという緊急時にも「○○さんならよく知っているから大丈夫」と、スムーズに受け入れてもらえる可能性が高まります。
レスパイトケアを在宅療養のサイクルの一部として組み込む視点を持ちましょう。
よくある質問
- 神経難病患者のレスパイトケアと短期入所の違いは何ですか?
-
神経難病患者のレスパイトケアとは、介護者の休息を目的としたケア全般を指す広い概念です。一方、短期入所(ショートステイ)は、そのレスパイトケアを実現するための具体的なサービスの一つです。
つまり、短期入所を利用するとレスパイトケアを行えます。
他にも、訪問看護師に長時間滞在してもらう、日中のデイサービスを利用する、などもレスパイトケアの一環と言えますが、宿泊を伴う休息確保の手段として短期入所が最も代表的です。
- 神経難病患者のレスパイトケアと短期入所を利用する際、人工呼吸器を装着していても受け入れ可能ですか?
-
はい、可能です。ただし、すべての施設で対応できるわけではありません。
人工呼吸器の管理が可能な人員配置と設備がある「医療型短期入所施設」や、病院が行う「レスパイト入院」、あるいは「難病対応型」の介護老人保健施設などを選ぶ必要があります。
施設によって対応できる呼吸器の機種や設定が異なる場合もあるため、事前の確認が必要です。主治医やケアマネジャーと相談し、医療的ケアに対応できる施設を探してください。
- 神経難病患者のレスパイトケアと短期入所の費用は、指定難病の医療費助成の対象になりますか?
-
利用するサービスの種類によって異なります。病院での「レスパイト入院」における医療費部分は、指定難病受給者証の対象となり、月額自己負担上限額の管理対象に含まれます。
一方で、介護保険適用のショートステイの場合、介護サービス費は指定難病の助成対象外となるのが一般的ですが、特定疾患に関する医療処置費用の一部が対象となるケースもあります。
また、食費や居住費は基本的に助成の対象外です。詳細な適用範囲は、お持ちの受給者証の種類や自治体の制度によって異なるため、窓口での確認が必要です。
- 神経難病患者のレスパイトケアと短期入所を急に利用したい場合、すぐに入れますか?
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初めて利用する施設の場合、即日の受け入れは難しいのが現状です。診療情報提供書の作成や事前面接、契約手続きなどに時間がかかるため、通常は準備に数週間から1ヶ月程度を要します。
ただし、すでに契約済みで定期的に利用している施設であれば、空床があれば緊急時でも受け入れてもらえる可能性が高くなります。
そのため、緊急時に備えて、状態が安定している時期から事前登録や「お試し利用」をしておくと良いでしょう。
今回の内容が皆様のお役に立ちますように。
