経鼻経管栄養・胃ろうチューブの自己抜去と再挿入|訪問診療の緊急対応フロー

経鼻経管栄養・胃ろうチューブの自己抜去と再挿入|訪問診療の緊急対応フロー

突然のチューブ自己抜去は、ご家族や介護スタッフにとって心臓が止まるような思いをする瞬間です。しかし、まずは落ち着いて栄養剤の注入を止め、状態を確認することが大切です。

慌てて救急車を呼ぶ前に訪問診療医へ連絡すると、住み慣れた場所で安全に再挿入できるケースが多くあります。

この記事では、発見時の初期対応から、訪問診療による再挿入の手順、そして再発を防ぐための具体的な工夫までを網羅し、緊急時に迷わず行動できる指針を提示します。

目次

チューブが抜けた瞬間に家族や介護者が取るべき初期対応とは?

経管栄養チューブが抜けてしまったとき、最も大切なのは「慌てずに安全を確保すること」です。発見した瞬間は動揺してしまいますが、冷静な初動がその後の患者さんの負担を大きく減らします。

まずは生命に関わるリスクを排除し、医療処置につなぐための準備を整える必要があります。医師や看護師が到着するまでの間に、現場でできる具体的な処置について確認していきましょう。

栄養剤の注入中であれば直ちに中止し誤嚥を防ぐ

もし栄養剤を注入している最中にチューブが抜けてしまった場合、最優先すべきは注入の即時停止です。

チューブの先端が胃から抜けて食道や口腔内、あるいは体外に出てしまっている状態で栄養剤を流し続けると、気管に入り込み誤嚥性肺炎を引き起こす危険性が高まります。

注入ポンプを使用している場合はアラームが鳴ることもありますが、自然滴下は気づくのが遅れるケースもあります。発見次第、クレンメを閉じてボトルを体より低い位置に下ろすか、接続を外してください。

顔や首周りに栄養剤が付着しているときはきれいに拭き取り、口腔内にたまっている場合は吸引やガーゼでの拭き取りを行い、気道を確保することが大切です。

抜けた部分の出血確認とガーゼによる保護

次に確認すべきは、チューブが挿入されていた部位の状態です。経鼻チューブでは鼻腔からの出血がないか、胃ろうでは瘻孔(お腹の穴)からの出血や胃内容物の漏れがないかを観察します。

無理に止血しようと強く押さえるのではなく、清潔なガーゼやタオルを優しく当てて様子を見ます。

抜けた際の状況確認

確認項目チェックポイント対応の目安
出血の有無鼻や腹部から血が流れているか圧迫止血を行い医師へ報告
痛みの訴え本人が痛がっているかバイタル測定し数値を記録
チューブの状態先端が破損していないか抜けたチューブは保管する
胃内容物の流出衣服や寝具の汚れ具合皮膚保護のため清拭を行う

抜けたチューブを無理に戻そうとしない

「すぐに入れ直せば穴が塞がらないのではないか」と考え、ご家族や介護職員が自己判断でチューブを押し込もうとするのは極めて危険です。

胃ろうの場合、瘻孔と胃壁のトンネルがずれてしまい、腹腔内にチューブが迷入して腹膜炎を起こす可能性があります。経鼻でも、誤って気管に挿入してしまうリスクがあります。

抜けてしまったチューブは、再挿入の際に医師が破損の有無を確認する重要な情報源となります。捨てずにビニール袋などに入れて保管し、医療機関に引き渡せるように準備しておいてください。

この段階では「何もしない」ことが、患者さんを守る最善の策となる場合が多いことを心に留めておく必要があります。

なぜ患者さんはチューブを自分で抜いてしまうのか?

自己抜去が起こる背景には、患者さんなりの切実な理由が存在します。認知症による判断力の低下だけで片付けるのではなく、身体的な苦痛や精神的な不安が引き金になっているケースが大半です。

理由を深く掘り下げて考えると、単なる抑制ではない、より人間らしい解決策が見えてきます。言葉でうまく伝えられない患者さんの「無言の訴え」を読み解く視点が必要です。

テープかぶれや固定の不快感が引き起こす皮膚トラブル

経鼻チューブの場合、常に鼻や頬にテープが貼られている状態は想像以上にストレスがかかります。

汗や皮脂で蒸れたり、テープの粘着剤で皮膚がかぶれて痒みが生じたりすると、無意識に手が行ってしまいます。特に夏場や乾燥する冬場は、皮膚のコンディションが悪化しやすく、痒みは痛み以上に我慢し難いものです。

胃ろうも同様で、カテーテルのストッパーが皮膚に食い込んでいたり、漏れた胃液で皮膚がただれていたりすると、その違和感を取り除こうとしてチューブを引っ張ってしまうときがあります。

日々のスキンケアやテープの貼り方を工夫するだけで、自己抜去のリスクを減らせる場合もあります。

認知症やせん妄による混乱と異物への恐怖

認知症が進行している方や、一時的なせん妄状態にある方は、自分の体に接続されているチューブが何のためのものか理解できなくなるときがあります。

「蛇がついている」「紐で縛られている」といった幻覚や錯覚を覚え、恐怖心から必死に取り外そうとする行動に出る方もいます。

また、入院環境から自宅へ戻った直後など、環境の変化によるストレスがせん妄を誘発することもあります。夜間にふと目が覚めたとき、鼻や腹部の違和感に驚いて抜いてしまうケースも少なくありません。

このような心理状態を汲み取り、安心できる声かけや環境調整を行うことが大切です。

身体の拘束感に対する本能的な拒否反応

人間には自由を求める本能があり、チューブによって行動が制限されることへの抵抗感は自然なものです。

特に、活動的な患者さんの場合、チューブが邪魔で寝返りが打ちにくい、好きな姿勢が取れないといった物理的な制約がストレスになります。

リハビリテーションや着替えの際にチューブが引っかかって痛い思いをした経験がトラウマとなり、チューブそのものを敵視してしまうときもあります。

チューブの取り回しを背中側に逃がすなど、視界に入らない工夫や動きを妨げない配慮が、心理的な拒否感を和らげることにつながります。

自己抜去につながる主な要因と背景

要因の分類具体的な引き金患者さんの心理
皮膚トラブルテープのかぶれ・痒みとにかく痒くて取りたい
認知機能チューブの誤認(蛇など)怖いものが付いている
環境要因夜間の不安・せん妄ここはどこかわからない
物理的制約動作時の引っ掛かり自由に動けなくて邪魔だ

素人判断での再挿入はどのような危険を招くのか?

医療資格を持たない方が見よう見まねでチューブを再挿入することは、命に関わる重大な事故に直結します。

「以前、看護師さんがやっているのを見たから」「穴が塞がるのが怖いから」という善意からの行動が、取り返しのつかない事態を招くときがあります。

経鼻チューブが気管に入った場合の誤嚥性肺炎リスク

経鼻経管栄養チューブの挿入は、解剖学的な知識と熟練した技術を要する医療行為です。

鼻から入れたチューブは、咽頭で食道と気管の分岐点を通過しますが、このとき誤って気管に入ってしまうケースが頻繁に起こります。

もし気管に入ったことに気づかず栄養剤を注入してしまうと、肺に直接液体が流れ込み、重篤な誤嚥性肺炎や窒息を引き起こします。

医師は聴診器で気泡音を確認したり、レントゲンで位置を確認したりして確実に胃に入っていることを判断しますが、家庭でこれを確実に行うのは不可能です。

咳き込みなどの反応が出にくい高齢者も多いため、外見上の反応だけで判断するのは極めて危険です。

胃ろうカテーテルの迷入による汎発性腹膜炎

胃ろうの場合、皮膚の表面の穴(瘻孔)と胃の穴が完全に癒着してトンネルが完成するまでには時間がかかります。

造設して間もない時期や、栄養状態が悪く組織が脆弱な方の場合、自己抜去によって胃壁と腹壁の癒着が剥がれてしまうことがあります。

誤った処置による合併症リスク

手技の種類起こりうる事故身体への影響
経鼻チューブの無理な挿入鼻腔粘膜の損傷・出血痛みによる不穏の悪化
気管への誤挿入肺への栄養剤注入呼吸不全・肺炎・死亡
胃ろうの盲目的な挿入腹腔内への誤挿入汎発性腹膜炎・敗血症
不潔なチューブの使用創部の細菌感染発熱・化膿・全身状態悪化

不適切な処置による感染症や瘻孔損傷

この状態で無理にカテーテルを押し込むと、チューブが胃の中ではなく、胃と腹壁の隙間(腹腔内)に入り込んでしまいます。

そこに栄養剤を注入するとお腹の中に栄養剤がばら撒かれ、激痛を伴う「汎発性腹膜炎」を発症します。これは緊急手術が必要になるケースもある致死的な状態です。

たとえ癒着が完成していると思われても、内部の損傷具合は外からは分からないため、医師による確認が必要です。

また、サイズが合わない代用品を詰めたり、角度を間違えて挿入したりすると、瘻孔の内壁を傷つけ、出血や肉芽形成の原因となります。

瘻孔が傷つくと、その後の管理が難しくなり、最悪の場合は胃ろうを一度閉鎖して、別の場所に作り直さなければならなくなることもあります。

訪問診療医が行う再挿入の具体的な手順と流れ

連絡を受けた訪問診療医は迅速に患家へ向かい、適切な処置を行います。在宅医療の現場では、病院とは異なる限られた設備の中で最大限の安全を確保するための手順が確立されています。

医師が到着してから再挿入が完了し、再び栄養が開始できるまでの流れを知っておくと、ご家族も安心して見守れます。

到着後のバイタルチェックと腹部の状態観察

医師が到着して最初に行うのは、患者さんの全身状態の把握です。血圧や脈拍、体温や酸素飽和度を測定し、自己抜去によるショック状態や呼吸状態の悪化がないかを確認します。

同時に腹部の触診や聴診を行い、お腹の張りや腸の動き、痛みの有無(圧痛や反跳痛)を慎重に評価します。

この段階で腹膜炎の兆候が見られるときや、大量出血が疑われるときは、在宅での処置を中止し、連携病院への搬送を判断することもあります。

安全に再挿入できるコンディションであるかを見極めることが、訪問診療医の重要な役割です。

カテーテル選択と慎重な挿入操作

状態が安定していると判断されれば、新しいカテーテルやチューブの準備に入ります。

胃ろうの場合は、以前使用していたものと同じサイズ、あるいは瘻孔が縮小している可能性を考慮してワンサイズ細いものを選択するケースもあります。キシロカインゼリーなどで十分に潤滑し、愛護的に挿入を行います。

経鼻チューブは左右の鼻腔の状態を確認し、通りの良い方から慎重に挿入を進めます。

嚥下反射に合わせて飲み込んでもらうなど、患者さんの苦痛を最小限に抑えるテクニックを駆使します。挿入中は常に顔色や呼吸状態をモニタリングし、無理な操作は行いません。

X線撮影やpH試験紙による確実な位置確認

チューブが挿入された後、最も重要なのが「先端が正しい位置(胃内)にあるか」の確認です。聴診器で胃に空気を送り込んだ音(気泡音)を確認する方法が一般的ですが、それだけでは確実性に欠ける場合があります。

そのため、ポータブルレントゲン撮影装置を持ち込んでその場で撮影したり、吸引した胃液のpHを試験紙で測定して強酸性であることを確認したりと、複数の方法を組み合わせて位置確認を行います。

これらの客観的な指標によって安全が担保されて初めて、栄養剤の注入再開が許可されます。

医師による再挿入の流れ

ステップ実施内容安全確認事項
1. 状況評価全身状態と局所の観察腹膜炎兆候の除外
2. 準備適切な機材の選定滅菌操作の徹底
3. 挿入医師による手技苦痛の緩和と愛護的操作
4. 確認気泡音・吸引液・画像胃内留置の確定診断
5. 固定テープやバンパー固定皮膚トラブルへの配慮
6. 再開少量の水注入テスト通過障害や漏れの確認

経鼻と胃ろうで異なる緊急度と閉鎖リスク

「チューブが抜けた」という事象は同じでも、経鼻経管栄養と胃ろう(PEG)では、その緊急性や対応のタイムリミットが大きく異なります。

どちらのタイプを使用しているかによって、医療機関への連絡の急ぎ具合が変わってくるのです。

胃ろうの穴は数時間で塞がり始める

胃ろうを使用している方にとって、自己抜去は時間との戦いです。胃ろうの穴(瘻孔)は人間の持つ自然治癒力によって、異物がなくなると急速に縮小し、閉鎖しようとします。

個人差はありますが、抜去から数時間放置しただけで新しいカテーテルが入らなくなる方も珍しくありません。

一度穴が塞がってしまうと、ブジーという器具を使って拡張する痛みを伴う処置が必要になったり、最悪の場合は再度入院して内視鏡手術で穴を開け直さなければならなくなります。

そのため、胃ろうが抜けたときは昼夜を問わず速やかに訪問診療医へ連絡し、指示を仰ぐ必要があります。「朝まで待とう」という判断が、再手術のリスクを高めてしまうのです。

経鼻は穴が塞がることはないが再挿入の苦痛が強い

一方、経鼻経管栄養の場合、鼻の穴が塞がることはないため、物理的なタイムリミットという点では胃ろうほど切迫していません。

しかし、栄養や水分が補給できない時間が長く続くと脱水症状につながるため、早めの対応が必要であることに変わりはありません。

経鼻と胃ろうの緊急対応比較

比較項目経鼻経管栄養胃ろう(PEG)
穴の閉鎖なし(鼻腔は閉じない)あり(数時間で縮小開始)
緊急度高いが数時間の猶予あり極めて高い(即時対応必要)
再挿入の難易度苦痛強いが手技は一般的穴が閉じると極めて困難
家族の対応抜去後の観察のみ応急処置が必要な場合も

応急処置として代替カテーテルを入れる場合

問題となるのは、再挿入に伴う患者さんの苦痛です。鼻から喉を通してチューブを入れる行為は非常に不快であり、認知症の方などは激しく抵抗される場合もあります。

頻繁な自己抜去と再挿入の繰り返しは鼻腔粘膜を傷つけ、出血や痛みを慢性化させる原因です。

そのため、再挿入のタイミングに合わせてミトンなどの抑制具の使用検討や、より抜かれにくい胃ろうへの移行を検討するきっかけになるケースもあります。

胃ろうが抜けてしまい、どうしても医師の到着に時間がかかる場合(悪天候や遠隔地など)、医師の指示のもとで、ご家族や看護師が応急的に穴を確保する処置を行うことがあります。

「レリーフ」と呼ばれる代わりの棒状の器具や、吸引カテーテルなどを一時的に瘻孔に差し込み、テープで固定して穴が塞がるのを防ぐ方法です。

ただし、これはあくまで例外的な緊急避難措置であり、事前に医師からの十分な指導と同意が必要です。決して自己判断で行わず、電話で医師と繋がりながら指示に従って行うのが鉄則です。

再発を防ぐために在宅で導入できる工夫

一度自己抜去が起きると、再び同じことが起こる可能性は非常に高いと言えます。

しかし、安易に身体拘束に頼るのではなく、患者さんの不快感を取り除き、環境を整えると予防できるケースも多くあります。

腹帯や専用カバーでチューブを隠すアプローチ

最もシンプルで効果的な方法は、チューブを患者さんの目や手の届かないところに隠すことです。

胃ろうでは、伸縮性のある腹帯を使用したり、つなぎ型の介護服(続き服)を着用したりして、直接カテーテルに触れられないようにします。

経鼻チューブでは、チューブを耳の後ろに回して固定したり、帽子をかぶってチューブのラインを隠したりする方法があります。

また、チューブの固定テープを目立ちにくい色にする、肌に優しい素材に変えて痒みを軽減するなど、細かな配慮が違和感の軽減につながります。

「そこに何かある」という感覚を消すことが、自己抜去の衝動を抑える第一歩です。

ボタン型胃ろうへの変更を検討する

もし現在、体から長いチューブが出ている「チューブ型」の胃ろうカテーテルを使用しているのであれば、「ボタン型(バンパー埋没型)」への変更を検討する価値があります。

ボタン型は腹壁にぴったりと収まり、体外に出っ張りがほとんどないため、手で掴んで引っ張ることが物理的に難しくなります。

栄養注入時のみ接続チューブをつなぐ手間はありますが、普段の生活での邪魔にならず、見た目もすっきりするため、患者さんのストレス軽減に大きく寄与します。

カテーテルの種類変更は定期交換のタイミングで行えるため、訪問診療医に相談してみると良いでしょう。

ミトン使用は最終手段として慎重に判断する

様々な工夫をしても自己抜去が繰り返され、生命の危険がある場合には、手にミトン(手袋)を装着する身体拘束を検討せざるを得ないこともあります。

しかし、これは患者さんの尊厳に関わるデリケートな問題であり、ご家族にとっても辛い決断となります。

在宅医療においては、身体拘束は「切迫性」「非代替性」「一時性」の3要件を満たした上で、医師・看護師・家族が十分に話し合って決定する必要があります。

漫然と使い続けるのではなく、夜間のみ使用する、見守りがある時間は外すなど、可能な限り自由な時間を確保する運用が求められます。

家庭でできる予防策チェック

  • 腹帯やサポーターで接続部を保護しているか
  • 固定テープの下の皮膚にかぶれはないか
  • チューブが寝返りの邪魔になっていないか
  • 夜間の照明や室温は快適に保たれているか
  • ご本人の寂しさや不安に寄り添えているか
  • 医師にボタン型への変更を相談したか

救急車を呼ぶべきか訪問医を待つべきかの判断基準

「血が出ている」「様子がおかしい」といった状況では、救急車を呼ぶべきか迷われることでしょう。

在宅医療を受けている患者さんの場合、かかりつけの訪問医が24時間対応してくれる体制が整っていることが多いですが、一刻を争う事態も存在します。

ここでは、冷静なトリアージ(重症度判定)を行うための基準を明確にします。

大量出血や意識レベルの低下は迷わず119番

自己抜去に伴い、洗面器一杯分のような大量の吐血や、腹部からの噴水のような出血が見られるときは、動脈などの太い血管が損傷している可能性があります。

また、呼びかけに反応がない、呼吸が苦しそうで顔色が悪い(チアノーゼ)、冷や汗をかいているといったショック症状が見られる場合も緊急事態です。

このような生命の危機が差し迫っている兆候があるときは、訪問診療医への連絡よりも先に救急車(119番)を呼んでください。

救急隊には「在宅医療を受けていること」「かかりつけ訪問医の名前」を伝えると、その後の病院選定や連携がスムーズに進みます。

緊急度判断の重要ポイント

  • 大量出血や意識消失は直ちに救急車を要請する
  • 呼吸困難や激しい腹痛は急性期の疑いがある
  • 少量出血や痛みが軽度の場合は訪問医へ連絡する
  • 出血がなく本人がケロリとしているなら待機する

本人の状態が落ち着いているなら在宅医に連絡

一方で、チューブは抜けているものの出血がごくわずかで、患者さんご本人の意識がはっきりしており、痛みも訴えていないようであれば救急車を呼ぶ必要はありません。

むしろ、救急外来での長時間の待ち時間や、不慣れな環境への搬送は、患者さんにとって大きな負担となり、認知症の悪化(リロケーションダメージ)を招くリスクもあります。

まずは契約している訪問診療クリニックの緊急連絡先に電話をかけましょう。医師や看護師が状況を聞き取り、「今すぐ向かいます」あるいは「〇〇の処置をして待っていてください」といった具体的な指示を出してくれます。

普段の状態をよく知るチームに対応してもらうのが、最も安全で安心な選択肢となります。

休日・夜間の対応体制を事前に確認しておくことが大切

自己抜去などのトラブルは、不思議と夜間や休日に起こりやすいものです。いざという時に「電話がつながらない」「どこに連絡していいかわからない」とパニックにならないよう、平時の備えが必要です。

訪問診療の契約時に渡される「緊急時連絡先」を電話の近くや冷蔵庫など目立つ場所に貼っておき、24時間365日対応の体制(往診体制)がどのようになっているかをケアマネジャーや医師に確認しておくことが重要です。

事前のシミュレーションが、緊急時の心の余裕を生み出します。

よくある質問

経鼻経管栄養・胃ろうチューブを家族が再挿入してもよいですか?

経鼻チューブの再挿入は、誤って気管に入ってしまうリスクが高いため、原則としてご家族が行うことは推奨されません。

解剖学的な知識と、聴診や吸引による確実な確認技術が必要です。必ず医師や訪問看護師などの医療従事者に依頼してください。

経鼻経管栄養・胃ろうチューブの交換費用はいくらかかりますか?

自己抜去による緊急の再挿入や交換にかかる費用は、医療保険の対象となります。

お持ちの保険証の負担割合や、公費負担の有無によって自己負担額は異なりますが、訪問診療料や往診料、カテーテル材料費などが算定されます。

具体的な金額はクリニックへお問い合わせください。

胃ろうの穴はどれくらいの時間で塞がりますか?

個人差が大きいですが、早い方では抜去から1~2時間程度で穴が収縮し始め、カテーテルが入らなくなるケースがあります。

特に造設から日が浅い場合や、栄養状態が良い方は組織の修復が早く進みます。発見次第、速やかに医療機関へ連絡することが穴を温存する鍵となります。

経鼻経管栄養・胃ろうチューブの再挿入の処置に痛みはありますか?

経鼻チューブ、胃ろうともに、再挿入時にはある程度の違和感や痛みを伴う場合があります。

しかし、医師はキシロカインゼリー(麻酔入り潤滑剤)を使用し、声かけを行いながら可能な限り苦痛が少ないように処置を行います。

痛みが強いときは鎮痛剤を使用することもありますので、遠慮なくお伝えください。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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