訪問看護の24時間対応体制加算とは?費用・算定条件・利用者が受けられる安心を解説

訪問看護の24時間対応体制加算とは?費用・算定条件・利用者が受けられる安心を解説

「夜中に容体が急変したらどうしよう」「休日でも相談できる場所はあるのだろうか」――在宅療養を続けるご本人やご家族にとって、こうした不安は尽きません。

訪問看護の24時間対応体制加算は、まさにその不安を和らげるために設けられた制度です。訪問看護ステーションが24時間365日、電話相談や緊急時の訪問に対応できる体制を整えている場合に、月1回算定できます。

この記事では、加算の仕組みから費用、算定条件、利用者が享受できる安心までを丁寧に解説します。制度を正しく知ると、在宅での療養生活をより前向きに捉えていただけるはずです。

目次

訪問看護の24時間対応体制加算は夜間・休日でも相談や緊急訪問を受けられる仕組み

24時間対応体制加算とは、訪問看護ステーションが営業時間外を含め、利用者やご家族からの電話連絡・相談にいつでも対応し、必要に応じて緊急の訪問看護を提供できる体制を評価する加算です。

医療保険の訪問看護管理療養費に上乗せし、月1回算定できます。

そもそも訪問看護における「24時間対応」とは何を指すのか

訪問看護の「24時間対応」とは、日中の計画的な訪問に加え、夜間や休日であっても利用者やご家族が看護師に電話で相談できる体制を意味します。体調の急変や医療機器のトラブルなど、予期せぬ事態に対応できる点が特徴です。

ただし、看護師が常に自宅に待機しているわけではありません。オンコール(待機当番)制によって連絡を受けた看護師が電話で助言を行い、必要があれば訪問に駆けつける体制です。

24時間対応体制加算が生まれた背景には在宅療養ニーズの急増がある

高齢化が進むなかで、自宅で療養生活を送りたいと望む方は増え続けています。一方で、在宅での看取りや医療依存度の高い方への対応には、夜間・休日を含む切れ目のないケアが求められます。

国は地域包括ケアシステムの推進を掲げ、「在宅限界」を引き上げる施策を進めてきました。24時間対応体制加算は、訪問看護ステーションの体制整備を後押しする目的で設けられた制度です。

医療保険の24時間対応体制加算と介護保険の緊急時訪問看護加算の対応関係

項目医療保険介護保険
加算名称24時間対応体制加算緊急時訪問看護加算
算定頻度月1回月1回
届出先地方厚生(支)局長都道府県知事
同月併算定同一利用者への同月算定は不可

24時間対応体制加算を算定できるのは訪問看護ステーションだけ

この加算を届け出ることができるのは、都道府県知事の指定を受けた訪問看護ステーションに限られます。病院や診療所が行う訪問看護には、この加算制度は適用されません。

また、1人の利用者に対して加算を算定できるのは1つのステーションだけです。複数のステーションから訪問看護を受けている場合は、どちらが算定するかを事前に確認しておく必要があります。

24時間対応体制加算の費用は月額6,520円または6,800円で自己負担は1割から3割

2024年度の診療報酬改定により、24時間対応体制加算は2つの区分に再編されました。

看護業務の負担軽減に取り組んでいるステーションは月額6,800円(イ)、それ以外のステーションは月額6,520円(ロ)となっています。利用者の自己負担は、負担割合に応じた金額です。

加算額「イ」と「ロ」の違いは看護師の働き方改革への取り組み

区分「イ」の6,800円を算定するには、夜間対応後の勤務間隔確保やオンコール連続回数の制限など、負担軽減の取り組みを2つ以上実施している必要があります。区分「ロ」の6,520円は、それ以外の場合に適用されます。

看護師が安心して働ける環境を整えているステーションほど高い評価を受ける仕組みであり、利用者にとっても質の高いケアにつながります。

利用者が実際に支払う自己負担額はどれくらいになるのか

自己負担額は、加算額に負担割合を掛けた金額です。1割負担の方であれば、区分「イ」の場合で月額680円、区分「ロ」で652円となります。3割負担の方でも月額2,040円または1,956円です。

毎月の費用としては大きな金額ではありません。夜間・休日を含めた安心を得られることを考えると、費用対効果は高いといえるでしょう。

訪問看護の費用全体のなかで24時間対応体制加算が占める位置

訪問看護の費用は、基本療養費と管理療養費を柱に各種加算が上乗せされる構造です。24時間対応体制加算は管理療養費の加算項目の1つであり、月々の費用全体のなかでは比較的小さな割合にとどまります。

それでも、「困ったときにいつでも相談できる」という心理的な支えが得られる点は、金額以上の価値があるのではないでしょうか。

加算区分別の費用と自己負担額の目安

区分加算額(月額)1割負担の目安
イ(負担軽減あり)6,800円680円
ロ(それ以外)6,520円652円

24時間対応体制加算を算定するために訪問看護ステーションが満たすべき条件

24時間対応体制加算を算定するには、訪問看護ステーションがいくつかの要件を満たし、行政に届け出を行ったうえで、利用者本人の同意を得る必要があります。以下で主な算定条件を順に確認していきましょう。

常時連絡対応と緊急訪問の体制を整えていること

もっとも基本的な要件は、利用者やご家族から電話等で看護に関する相談を受けた場合に、常時対応できる体制が整っていることです。加えて、電話だけでは対応できない緊急時には、実際に訪問看護を提供できる体制も必要になります。

オンコールを担当する看護師は、携帯電話を常に持ち歩き、利用者からの連絡に備えます。このオンコール体制こそが、24時間対応を支える根幹です。

地方厚生局への届出と利用者への書面での説明・同意取得

ステーションは地方厚生(支)局長に届出を行い、受理される必要があります。届出なしに加算を算定することはできません。

さらに、利用者に対してはステーションの名称・所在地・電話番号・時間外の連絡方法を記載した書面を交付し、体制について説明したうえで同意を得ることが求められます。口頭だけの説明では不十分であり、文書の交付が必須です。

算定に必要な主な要件

  • 電話等による看護相談に常時対応できる体制の整備
  • 必要時の緊急訪問看護が可能な体制の確保
  • 地方厚生(支)局長への届出と受理
  • 利用者への書面交付・説明・同意取得
  • 対応記録の訪問看護記録書への記載

区分「イ」を算定するには看護業務の負担軽減に取り組む必要がある

より高い区分「イ」(6,800円)を算定するためには、以下の6項目のうち、1番目または2番目を含む2つ以上の取り組みを実施していなければなりません。

夜間対応した翌日の勤務間隔の確保、オンコール連続回数を2回までに制限、夜間対応後の休日確保、勤務体制の工夫、ICT等の活用による業務効率化、オンコール担当者への支援体制の確保の6項目です。

看護師の負担を減らしながら持続可能な体制を維持するための基準といえます。

対応記録は訪問看護記録書にかならず残す

利用者やご家族から連絡・相談を受けた場合、また緊急の訪問看護を実施した場合には、その日時・内容・対応状況を訪問看護記録書に記録しなければなりません。

記録は算定の根拠となるだけでなく、次回の訪問に引き継ぐ大切な情報源でもあります。

介護保険の緊急時訪問看護加算と24時間対応体制加算は何が違うのか

介護保険には「緊急時訪問看護加算」という、24時間対応体制加算と名称も趣旨もよく似た加算があります。両者は適用される保険制度が異なるだけでなく、加算額や届出先にも違いがあるため、混同しないよう整理しておきましょう。

名称が違うだけで仕組みはほぼ同じ

医療保険では「24時間対応体制加算」、介護保険では「緊急時訪問看護加算」と呼ばれますが、いずれも24時間365日、利用者やご家族からの連絡に対応し緊急訪問が可能な体制を評価する加算です。

月1回の算定であり、利用者への書面説明と同意取得が必要な点は共通しています。

同じ月に両方の加算を算定することはできない

注意が必要なのは、同一の利用者に対して医療保険の24時間対応体制加算と介護保険の緊急時訪問看護加算を同月に併算定できないルールです。

月の途中で保険が切り替わるケースでは、どちらで加算を算定するか事前に確認しておきましょう。

どちらの保険で加算を受けるかはケアマネジャーや主治医と相談する

介護保険と医療保険のどちらが適用されるかは、利用者の疾患や年齢、要介護度などによって決まります。担当のケアマネジャーや主治医に相談し、適切な保険制度のもとで加算を受けることをおすすめします。

医療保険と介護保険の加算比較

比較項目医療保険介護保険
加算名称24時間対応体制加算緊急時訪問看護加算
加算額6,520円 or 6,800円574単位(Ⅰ)等
算定回数月1回月1回

24時間対応体制加算で在宅療養中の利用者と家族が得られる3つの安心

24時間対応体制加算は、制度として費用や算定条件が定められているだけではありません。利用者やご家族の日々の暮らしに大きな安心をもたらしてくれる制度でもあります。

夜間・休日でも看護師に電話で相談できるという心の支え

体調の変化は、日中よりも夜間や明け方に起きやすいと感じている方は多いのではないでしょうか。24時間対応体制加算に同意していれば、深夜でも看護師に電話で症状を伝え、対応方法の助言を受けられます。

「電話していいのだろうか」と遠慮する方もいらっしゃいますが、利用者からの連絡に応えることこそがこの制度の目的です。気になることがあれば遠慮なく相談してください。

緊急時には看護師が自宅に駆けつけてくれる

電話相談だけでは解決が難しい場合、看護師が自宅を訪問して対応してくれます。点滴の管理や医療機器のトラブル、疼痛コントロールの調整など、対面でなければ対処できない状況にも備えられる安心感は大きなものです。

24時間対応体制加算で利用者が受けられるサポート

場面対応内容
発熱・体調急変時電話で症状を確認し、受診の要否や応急処置を助言
医療機器のトラブル電話指導または緊急訪問で対処
不安・精神的な動揺看護師が傾聴し、必要時は訪問
看取り期の急変速やかに訪問し、主治医と連携

在宅療養を「続けられる」という自信につながる

24時間いつでも相談できる体制があるだけで、「自宅で療養を続けられるかもしれない」という前向きな気持ちが生まれます。住み慣れた環境で自分らしい暮らしを維持したい方にとって、心強い味方です。

ご家族にとっても「自分たちだけで看なければ」というプレッシャーが和らぎ、介護疲れの予防にもつながるでしょう。

2024年度の診療報酬改定で24時間対応体制加算はどう変わったか

2024年度の診療報酬改定では、24時間対応体制加算に大きな見直しが入りました。従来の一律6,400円から2区分制に移行し、看護師の負担軽減策をより手厚く評価する方向へ舵が切られています。

改定前は一律6,400円だった加算が2区分に分かれた

改定前の24時間対応体制加算は月額6,400円の1区分のみでした。2024年度改定では、看護業務の負担軽減に取り組むステーションを「イ」(6,800円)、それ以外を「ロ」(6,520円)と分けることで、質の高い体制づくりを促しています。

「ロ」の金額も改定前の6,400円から引き上げられており、24時間対応体制そのものへの評価が底上げされたかたちです。

看護師以外の職員が電話対応を担えるようになった

改定のもう1つの注目点は、一定の条件を満たせば看護師以外の職員が夜間の電話連絡に対応できるようになったことです。

対応マニュアルの整備、看護師への速やかな報告体制の構築、利用者への説明と同意取得などの条件をクリアすれば認められます。

看護師のオンコール負担を軽減する施策として期待されており、小規模なステーションでも24時間体制を維持しやすくなるでしょう。

改定の狙いは「持続可能な24時間体制」の構築

今回の改定は、単に加算額を引き上げるだけでなく、看護師が長く働き続けられる環境づくりに主眼を置いています。夜間対応の翌日に休息を確保する、オンコールの連続回数を制限するといった具体策が評価対象に入った点は、現場にとって大きな前進です。

改定の主な変更点

  • 一律6,400円から「イ」6,800円・「ロ」6,520円の2区分制へ移行
  • 看護業務の負担軽減の取り組みを算定要件として明確化
  • 看護師以外の職員による電話対応を条件付きで容認

24時間対応体制加算を利用するときに知っておきたい注意点

24時間対応体制加算は心強い制度ですが、利用にあたっていくつか気をつけておきたいポイントがあります。事前に把握しておくと、制度を上手に活用できるでしょう。

加算を算定できるステーションは1人の利用者につき1か所だけ

複数の訪問看護ステーションから訪問看護を受けている場合でも、24時間対応体制加算を算定できるのは1か所のみです。どのステーションが加算を算定しているか、利用者側でも確認しておくとトラブルを防げます。

利用時に確認しておきたいポイント

確認事項内容
算定ステーションどのステーションが加算を算定しているか
緊急時の連絡先夜間・休日の電話番号を手元に控えているか
同意書の有無書面での説明を受け、同意書に署名したか
費用負担自己負担額を把握しているか

すべての訪問看護ステーションが24時間体制を整えているわけではない

24時間対応体制の構築は義務ではないため、すべてのステーションがこの加算を届け出ているとは限りません。

在宅療養を始めるにあたって24時間体制を重視する場合は、ステーションを選ぶ段階で対応の有無を確認することが大切です。

ケアマネジャーに希望を伝えれば、24時間対応体制のあるステーションを紹介してもらえます。

緊急訪問が必要になった場合の費用も事前に把握しておく

24時間対応体制加算は「体制を整えていること」への評価であり、実際に緊急訪問が行われた場合は別途「緊急訪問看護加算」などの費用が発生することがあります。

緊急時の費用がどのくらいになるのか、あらかじめステーションに確認しておくと安心です。

なお、電話相談だけで済む場合には追加費用はかかりません。

よくある質問

24時間対応体制加算を利用するには利用者本人の同意が必要ですか?

はい、24時間対応体制加算を算定するには利用者ご本人(またはご家族)の同意が必要です。ステーションの名称・所在地・電話番号・緊急時の連絡方法を記載した書面を受け取り、内容に納得したうえで同意書に署名します。

同意しなければ加算は算定されず、夜間の相談や緊急訪問を受けることも難しくなります。在宅療養の安心を確保するためにも、加算への同意を前向きに検討してみましょう。

24時間対応体制加算に同意しても緊急訪問がなければ追加費用は発生しませんか?

24時間対応体制加算は「体制を整えていること」を評価する加算ですので、同意した時点で毎月の加算費用(自己負担分)が発生します。1割負担の方であれば月額680円または652円程度です。

電話相談だけで済んだ場合に追加費用はかかりません。ただし実際に緊急の訪問看護が行われた場合には、別途「緊急訪問看護加算」等が加わることがあります。

24時間対応体制加算は複数の訪問看護ステーションから同時に算定できますか?

いいえ、1人の利用者に対して24時間対応体制加算を算定できるのは1つのステーションだけです。複数のステーションから訪問看護を受けていても、この加算は1か所のみが算定します。

どのステーションが算定するかは、ケアマネジャーと相談して決めるのが一般的です。加算を算定しているステーションが、夜間の電話対応や緊急訪問の窓口になります。

24時間対応体制加算の「イ」と「ロ」では利用者が受けるサービスに違いがありますか?

利用者が受けられるサービス内容(電話相談や緊急訪問への対応)自体に、区分「イ」と「ロ」の間で大きな差はありません。どちらの区分でも、24時間365日の連絡対応と必要時の緊急訪問は保証されています。

両者の違いは、訪問看護ステーションが看護師の働き方改革にどの程度取り組んでいるかという点にあります。

「イ」のステーションは夜間対応後の休息確保などに力を入れており、看護師のコンディション管理がより充実しているため、ケアの質が安定しやすいでしょう。

24時間対応体制加算に同意したあとに途中で解除することはできますか?

はい、利用者の意思でいつでも同意を撤回できます。同意はあくまで自由な判断に基づくものですので、不要と感じた場合は訪問看護ステーションの担当者にお申し出ください。

ただし、同意を撤回すると夜間・休日の電話相談や緊急訪問に対応してもらえなくなる可能性があります。解除を検討する際は、担当の看護師やケアマネジャーとよく話し合ってから判断されることをおすすめします。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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