医療費の自己負担額を抑える仕組み – 訪問診療と高額療養費制度の賢い活用法

医療費の自己負担額を抑える仕組み - 訪問診療と高額療養費制度の賢い活用法

ご自宅で療養生活を送る際、医療費の負担は大きな関心事の一つです。

特に訪問診療を利用する場合、どれくらいの費用がかかるのか、負担を軽減する方法はあるのか、不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、訪問診療における医療費の基本的な仕組みから、高額な医療費負担を軽減するための「高額療養費制度」について、分かりやすく解説します。

制度を正しく理解し、賢く活用することで、安心して在宅療養に取り組むための一助となれば幸いです。

目次

訪問診療と医療費の基本知識

医療費の自己負担の仕組みと計算方法

日本は国民皆保険制度を採用しており、原則として全ての国民が公的医療保険に加入しています。医療機関で診療を受けた際、窓口で支払う医療費は、実際にかかった医療費総額の一部です。

この自己負担割合は、年齢や所得によって異なります。

自己負担割合

一般的に、義務教育就学後から69歳までの方は3割負担、義務教育就学前のお子様や70歳以上75歳未満の方は2割負担(現役並み所得者は3割)、75歳以上の方は原則1割負担(現役並み所得者は3割)となります。

この割合は、法律や制度の改正により変更されることがありますので、常に最新の情報を確認することが大切です。

年齢・所得に応じた医療費の自己負担割合

年齢区分所得区分自己負担割合
義務教育就学前2割
義務教育就学後~69歳3割
70歳~74歳一般・低所得者2割
現役並み所得者3割
75歳以上(後期高齢者医療制度)一般・低所得者1割
現役並み所得者3割

※所得区分や負担割合は、制度改正により変更される場合があります。詳細は加入している医療保険の窓口や市区町村の担当課にご確認ください。

計算例

例えば、医療費総額が10,000円で、自己負担割合が3割の場合、窓口で支払う金額は3,000円となります。訪問診療においても、この基本的な自己負担の仕組みは同様に適用されます。

訪問診療にかかる一般的な費用の内訳

訪問診療では、ご自宅に医師が訪問して診療を行うため、外来診療とは異なる費用項目が発生します。主な費用には、基本診療費、往診料や訪問診療料、検査費、処置費、薬剤費などがあります。

これらは医療保険が適用されるものがほとんどです。

訪問診療の費用項目例

費用項目内容備考
在宅患者訪問診療料(Ⅰ)または(Ⅱ)計画的な医学管理のもと、定期的に訪問して診療を行う場合の費用診療する場所や患者さんの状態により点数が異なります
往診料患者さんや家族の求めに応じて、緊急または予定外に訪問して診療を行う場合の費用時間帯(日中・夜間・休日・深夜)により加算があります
検査・画像診断料血液検査、尿検査、心電図検査、超音波検査など実施した検査内容に応じて算定します
処置料褥瘡の処置、気管カニューレ交換、点滴など実施した処置内容に応じて算定します
薬剤料・特定保険医療材料料処方された薬剤の費用、特定の医療材料の費用使用した薬剤や材料に応じて算定します
在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料継続的な医学管理を行う場合の費用患者さんの状態や居住場所により異なります

この他にも、患者さんの状態や提供する医療サービスによって、さまざまな費用が発生する可能性があります。

具体的な費用については、事前に訪問診療を行う医療機関に確認することが重要です。

医療保険制度の基本と訪問診療との関係

日本の医療保険制度は、病気やけがをした際に、誰もが必要な医療を受けられるようにするための社会保障制度です。訪問診療も、この医療保険制度に基づいて提供される医療サービスの一つです。

したがって、訪問診療で発生する費用の多くは医療保険の適用対象となり、患者さんの自己負担は一部で済みます。

国民皆保険制度

日本では、全ての国民がいずれかの公的医療保険(健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度など)に加入する国民皆保険制度がとられています。

これにより、どの医療保険に加入していても、原則として同じ診療内容であれば同じ医療費で医療を受けることができます。

訪問診療における保険適用範囲

訪問診療における医師の診察、検査、処置、薬剤の処方などは、基本的に医療保険の適用範囲内です。

ただし、交通費(医療機関によっては実費請求の場合あり)や、保険適用外の特別なサービスを利用した場合は、全額自己負担となることがあります。

どの範囲までが保険適用となるのか、事前に医療機関へ確認しておくと安心です。

  • 医師による診察
  • 必要な検査(血液検査、尿検査など)
  • 医療処置(点滴、褥瘡処置など)
  • 薬の処方

医療費控除と訪問診療の関連性

医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得税や住民税の負担が軽減される制度です。訪問診療で支払った費用も、医療費控除の対象となります。

医療費控除の対象となる費用

医療費控除の対象となるのは、医師による診療費、治療に必要な医薬品の購入費、通院のための交通費(公共交通機関利用の場合)などです。

訪問診療の場合、医師の診療費や処方された薬代はもちろん、訪問看護を利用した場合の費用なども対象になることがあります。

医療費控除の対象となる主な費用には、

  • 医師や歯科医師による診療費
  • 治療費、治療や療養に必要な医薬品の購入費(風邪薬などの市販薬も含む)
  • 病院や診療所、介護老人保健施設などに支払った入院費
  • 入所費、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術費(治療目的のもの)
  • 保健師や看護師、准看護師による療養上の世話の対価(特に訪問看護など)
  • 助産師による分娩介助料、介護保険制度下で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額

などがあります。

申請手続き

医療費控除を受けるためには、確定申告が必要です。確定申告の際に、支払った医療費の領収書に基づいて「医療費控除の明細書」を作成し、申告書に添付して税務署に提出します。

領収書は5年間保存する義務がありますので、大切に保管しましょう。近年では、医療費通知(医療費のお知らせ)を添付することで明細書の記入を簡略化できる場合もあります。

高額療養費制度の仕組みと申請方法

高額療養費制度は、医療費の自己負担額が高額になった場合に、一定の限度額を超えた分が払い戻される制度です。

訪問診療を利用する際にも、この制度を活用することで医療費の負担を大きく軽減できる可能性があります。

高額療養費制度とは?制度の概要と目的

高額療養費制度は、家計における医療費の負担が過大にならないように設けられた、公的医療保険の制度の一つです。

1ヶ月(月の初日から末日まで)にかかった医療費の自己負担額が、年齢や所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた金額が支給されます。

制度の目的

この制度の主な目的は、重い病気やけがなどで高額な医療が必要になった場合でも、安心して医療を受けられるようにすることです。

医療費の心配を少しでも減らし、治療に専念できる環境を整えることを目指しています。

対象となる医療費

保険診療の対象となる医療費が対象です。入院時の食事代や差額ベッド代、先進医療にかかる費用など、保険適用外の費用は対象となりません。

訪問診療においても、保険診療の範囲内であれば対象となります。

自己負担限度額の計算方法と所得区分

自己負担限度額は、年齢(70歳未満か70歳以上か)や被保険者の所得水準によって区分され、それぞれに限度額が設定されています。

同じ医療費でも、所得区分によって自己負担する上限額が変わってきます。

所得区分の確認方法

ご自身がどの所得区分に該当するかは、加入している公的医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、市区町村の国民健康保険担当窓口、後期高齢者医療広域連合など)に問い合わせることで確認できます。

また、毎月送られてくる医療費通知や、保険証に記載されている情報からもある程度推測できる場合があります。

所得区分別自己負担限度額(70歳未満)

所得区分適用区分自己負担限度額(月額)
住民税非課税世帯ア(年収約1,160万円~)252,600円+(医療費-842,000円)×1%
イ(年収約770万~約1,160万円)167,400円+(医療費-558,000円)×1%
上記以外ウ(年収約370万~約770万円)80,100円+(医療費-267,000円)×1%
エ(~年収約370万円)57,600円
オ(住民税非課税者)35,400円

※「医療費」とは、保険診療にかかる総医療費(10割)のことです。多数回該当(過去12ヶ月以内に3回以上高額療養費の支給があった場合、4回目から限度額が引き下げられる)の場合、限度額が異なります。

所得区分別自己負担限度額(70歳以上)

所得区分外来(個人ごと)入院・世帯ごと
現役並み所得者Ⅲ(課税所得690万円以上)252,600円+(医療費-842,000円)×1%252,600円+(医療費-842,000円)×1%
現役並み所得者Ⅱ(課税所得380万円以上)167,400円+(医療費-558,000円)×1%167,400円+(医療費-558,000円)×1%
現役並み所得者Ⅰ(課税所得145万円以上)80,100円+(医療費-267,000円)×1%80,100円+(医療費-267,000円)×1%
一般(上記以外)18,000円(年間上限144,000円)57,600円
住民税非課税等(区分Ⅱ)8,000円24,600円
住民税非課税等(区分Ⅰ)8,000円15,000円

※70歳以上の方の場合、まず外来の自己負担額を個人単位で計算し、その後に入院費用を含めた世帯単位での自己負担限度額を適用します。多数回該当の場合、限度額が異なります。

高額療養費の申請手続きと必要書類

高額療養費の支給を受けるためには、原則として申請手続きが必要です。

ただし、加入している医療保険によっては、自動的に計算して払い戻してくれる場合や、事前に「限度額適用認定証」を医療機関の窓口に提示することで、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることができる場合もあります。

申請窓口

申請窓口は、加入している公的医療保険によって異なります。国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合は市区町村の担当窓口、健康保険組合や協会けんぽの場合はそれぞれの保険者となります。

主な必要書類

申請に必要な書類は保険者によって多少異なりますが、一般的には以下のものが必要となることが多いです。

  • 高額療養費支給申請書(保険者から入手)
  • 医療機関の領収書(原本が必要な場合あり)
  • 保険証
  • 振込先口座の情報がわかるもの(通帳など)
  • マイナンバーカードまたは通知カード(本人確認書類)

事前に保険者に確認し、必要な書類を準備しましょう。

払い戻し時期と受け取り方法

高額療養費の払い戻しまでには、通常、申請から3ヶ月程度かかります。ただし、審査状況などにより、これより時間がかかる場合もあります。

払い戻しまでの期間

医療機関から保険者へ診療報酬明細書(レセプト)が送られ、その内容審査を経て支給額が決定されるため、一定の期間を要します。

特に、複数の医療機関にかかった場合や、月をまたいで診療があった場合などは、確認に時間がかかることがあります。

受け取り方法

支給が決定されると、申請時に指定した銀行口座に振り込まれるのが一般的です。保険者によっては、支給決定通知書が送られてくることもあります。

訪問診療における高額療養費制度の活用ポイント

訪問診療は、定期的な医療管理が必要な方や、通院が困難な方にとって重要な医療サービスです。高額療養費制度をうまく活用することで、訪問診療にかかる経済的な負担を軽減できます。

訪問診療特有の医療費と高額療養費の関係

訪問診療では、在宅時医学総合管理料(在医総管)や施設入居時等医学総合管理料(施設総管)といった、継続的な医学管理に対する評価が行われます。これらの費用も高額療養費制度の対象となります。

計画的な訪問診療を受ける中で、月々の医療費が自己負担限度額を超える場合には、高額療養費制度の利用を検討しましょう。

在宅時医学総合管理料など

在宅時医学総合管理料は、複数の疾患を持つ患者さんや、常時医療的なケアが必要な患者さんに対して、総合的な医学管理を行った場合に算定されるものです。

この費用も、他の診療費と合算して高額療養費の計算対象となります。

長期療養時の高額療養費の合算方法

高額療養費制度は、月ごと(1日から末日まで)の医療費自己負担額に基づいて計算されます。

そのため、長期にわたって療養が必要な場合でも、毎月、自己負担限度額を超えた分が払い戻しの対象となります。

月ごとの計算

例えば、ある月に自己負担限度額を超えればその月の分が、翌月も超えれば翌月の分が、それぞれ支給対象となります。

医療費の支払いが高額になる月が続く場合は、毎月申請が必要になることもあります(保険者によっては自動計算の場合もあります)。

世帯合算と多数回該当の活用法

高額療養費制度には、個人の負担をさらに軽減するための「世帯合算」や「多数回該当」という仕組みがあります。

世帯合算の条件

同じ医療保険に加入している同一世帯内で、1ヶ月に複数の人が病気やけがで医療機関にかかった場合や、一人が複数の医療機関にかかった場合(それぞれ21,000円以上の自己負担がある場合に限る。

70歳以上は金額の制約なし)、それらの自己負担額を合算できます。合算した額が自己負担限度額を超えれば、超えた分が払い戻されます。

世帯合算の条件

対象者条件備考
70歳未満同一世帯で、同一月に、各医療機関での自己負担額(※)が21,000円以上のものが2つ以上ある場合※入院・外来、医科・歯科は別々に計算
70歳以上同一世帯で、同一月に、全ての医療費自己負担額を合算可能金額の制約なし

※同一世帯とは、同じ公的医療保険に加入している家族のことです。住民票が同じでも、加入している医療保険が異なれば合算できません(例:夫が会社の健康保険、妻が国民健康保険の場合など)。

多数回該当の条件とメリット

過去12ヶ月以内に、高額療養費の支給が3回以上あった場合、4回目からは自己負担限度額がさらに引き下げられます。これを「多数回該当」といいます。

長期にわたり高額な医療費が必要な方にとっては、負担軽減効果が大きい仕組みです。この制度の適用により、自己負担限度額が下がるため、払い戻される金額が増える可能性があります。

介護保険との併用で負担を軽減する方法

訪問診療を受けている方の中には、同時に介護保険サービスを利用している方も少なくありません。

医療保険と介護保険にはそれぞれ自己負担限度額の制度があり、両方のサービスを利用した場合の負担を軽減する仕組みもあります。

医療保険と介護保険の使い分け

訪問診療は医療保険、訪問介護(ホームヘルプ)やデイサービスなどは介護保険、というように、サービス内容によって適用される保険が異なります。

訪問看護については、病状などにより医療保険と介護保険のどちらが適用されるかが変わります。

医療保険と介護保険の主なサービス

保険種類主なサービス例費用負担
医療保険訪問診療、訪問看護(医療保険適用時)、入院、外来診療、薬剤費高額療養費制度あり
介護保険訪問介護、訪問入浴、訪問リハビリ、デイサービス、ショートステイ、福祉用具貸与、住宅改修、訪問看護(介護保険適用時)高額介護サービス費制度あり

高額医療・高額介護合算療養費制度

1年間(毎年8月1日から翌年7月31日まで)に支払った医療保険と介護保険の自己負担額の合計が、一定の限度額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される「高額医療・高額介護合算療養費制度」があります。

この制度を利用することで、医療と介護の両方のサービスを利用している世帯の負担を軽減できます。申請窓口は、主に加入している医療保険の保険者となります。

訪問診療で使用する医療機器と高額療養費

訪問診療では、在宅酸素療法のための酸素濃縮器や、人工呼吸器など、さまざまな医療機器を使用することがあります。

これらの医療機器にかかる費用も、条件によっては高額療養費制度の対象となる場合があります。

レンタル機器の費用

在宅酸素療法装置などのレンタル費用は、多くの場合、医療保険の適用対象となり、高額療養費の計算に含まれます。

月々のレンタル料が自己負担限度額を超える要因の一つになることもあります。

購入機器の費用

医療機器の購入費用については、原則として高額療養費制度の対象外となることが多いです。

ただし、特定の条件下(例えば、医師の指示に基づき、治療上必要不可欠なものとして保険者が認めた場合など)では、一部助成の対象となる可能性もゼロではありません。

詳細については、加入している医療保険の保険者や医療機関に確認することが大切です。

特別な状況における医療費負担軽減策

特定の疾患を抱えている方や、高齢者、終末期医療を受けている方など、特別な状況にある方々に対しては、高額療養費制度以外にもさまざまな医療費負担軽減策が用意されています。

難病患者・特定疾患の方への支援制度

国が指定する難病(指定難病)や特定の疾患を抱える患者さんに対しては、医療費の助成制度があります。

特定医療費(指定難病)助成制度

指定難病と診断され、一定の基準を満たす場合、医療費の自己負担上限額が設定され、それを超える分は公費で助成されます。

この制度を利用することで、高額な治療が必要な難病患者さんの経済的負担が大幅に軽減されます。申請は都道府県の窓口(保健所など)で行います。

対象疾患

対象となる疾患は国によって定められており、定期的に見直しが行われます。ご自身の疾患が対象となるか、また申請方法などについては、主治医や保健所にご相談ください。

高齢者の医療費負担を軽減する制度

高齢者の方々は、医療を受ける機会が増える傾向にあります。そのため、医療費負担を軽減するための制度がいくつか設けられています。

後期高齢者医療制度

75歳以上の方(および65歳以上75歳未満で一定の障害があると認定された方)は、後期高齢者医療制度に加入します。

この制度では、所得に応じた自己負担割合(原則1割、現役並み所得者は3割)が適用され、高額療養費制度の自己負担限度額も、70歳未満の方とは異なる設定になっています。

高額療養費制度の特例

70歳以上の方の高額療養費制度では、外来診療について個人ごとの自己負担限度額が設けられているほか、入院時の食事療養費や生活療養費についても、低所得者に対する減額措置があります。

終末期医療における費用負担の軽減方法

終末期医療(ターミナルケア)をご自宅で受ける場合、患者さんやご家族の精神的・身体的負担だけでなく、経済的な負担も考慮する必要があります。

緩和ケアの利用

がんなどの終末期にある患者さんの苦痛を和らげるための緩和ケアは、医療保険が適用されます。

訪問診療においても、医師や看護師による緩和ケアを受けることができ、その費用は高額療養費制度の対象となります。

看取り加算など

ご自宅で最期を迎えられた場合、訪問診療を行っていた医療機関に対して「在宅ターミナルケア加算」や「看取り加算」などが算定されることがあります。これらも医療保険の範囲内です。

障害者医療費助成制度の活用法

心身に障害のある方が医療機関を受診した場合、医療費の自己負担分を助成する制度が各自治体で設けられています。

これを障害者医療費助成制度(マル障などと呼ばれることもあります)といいます。

対象者と助成内容

対象となる障害の程度や所得制限、助成内容は自治体によって異なります。一般的には、身体障害者手帳、療育手帳(愛の手帳)、精神障害者保健福祉手帳などをお持ちの方が対象となります。

助成内容は、医療費の自己負担分の一部または全部を助成するものが多いです。

申請方法

お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で申請手続きを行います。申請には、障害者手帳、健康保険証、所得を証明する書類などが必要となる場合があります。

この制度を利用することで、訪問診療を含む医療費の自己負担をさらに軽減できる可能性があります。

主な医療費助成制度

制度名対象となりうる方(例)主な内容
高額療養費制度医療費の自己負担が高額になった方自己負担限度額を超えた分を払い戻し
特定医療費(指定難病)助成制度指定難病の患者さん医療費の自己負担上限額を設定
障害者医療費助成制度身体障害者手帳などをお持ちの方医療費の自己負担分を助成(自治体による)
ひとり親家庭等医療費助成制度ひとり親家庭の親と子など医療費の自己負担分を助成(自治体による)
子ども医療費助成制度一定年齢までの子ども医療費の自己負担分を助成(自治体による)

※各制度には所得制限などの条件がある場合があります。詳細は各制度の窓口にご確認ください。

訪問診療と高額療養費制度の効果的な組み合わせ事例

訪問診療を受けながら高額療養費制度を活用することで、実際にどのように医療費負担が軽減されるのか、具体的なケースを想定してみましょう。

ただし、これらはあくまで一般的な例であり、個々の状況によって費用は異なります。

がん患者の在宅療養における費用軽減事例

がんの終末期にある患者さんが、ご自宅で痛みのコントロールを中心とした緩和ケアを訪問診療で受ける場合を考えます。

医療用麻薬の使用や頻回な訪問診療・訪問看護が必要となることがあります。

医療用麻薬の使用と費用

医療用麻薬は高価なものもありますが、医療保険が適用され、高額療養費制度の対象となります。

月々の医療費が自己負担限度額を超えた場合、超過分が払い戻されるため、安心して必要な治療を受けることができます。

訪問看護との連携

訪問診療と合わせて訪問看護を利用する場合、医療費の合計額が高額になることがあります。

この場合も、医療保険適用のサービスであれば合算して高額療養費制度の計算対象となるため、負担軽減につながります。

認知症患者の長期訪問診療と医療費管理

認知症が進行し、定期的な健康管理や薬の調整が必要な患者さんが訪問診療を利用するケースです。長期にわたる療養生活では、医療費の管理が重要になります。

定期的な受診の重要性

認知症の患者さんにとって、定期的な医師の診察は症状の安定や合併症の予防に繋がります。訪問診療により、通院の負担なく継続的な医療を受けることができます。

この際、高額療養費制度の多数回該当が適用されると、4ヶ月目以降の自己負担限度額が下がり、長期的な負担を軽減できます。

家族の負担軽減

訪問診療は、患者さんご本人のみならず、介護するご家族の負担軽減にもつながります。

医療費についても、高額療養費制度やその他の助成制度を理解し活用することで、経済的な不安を和らげることができます。

褥瘡治療を受ける患者の医療費負担軽減例

寝たきりの状態などで褥瘡(床ずれ)が発生し、専門的な処置が必要な患者さんが訪問診療を受ける場合です。

褥瘡の治療には、特殊な軟膏や創傷被覆材などを使用することがあり、材料費がかさむことがあります。

専門的な処置と材料費

医師や看護師による専門的な褥瘡処置は医療保険の対象です。使用する薬剤や特定保険医療材料も、保険適用のものであれば高額療養費制度の計算に含めることができます。

これにより、質の高い治療を受けながらも、自己負担を抑えることが可能です。

複数の慢性疾患を持つ患者の医療費最適化

高血圧、糖尿病、心臓病など、複数の慢性疾患を抱え、多くの種類の薬を服用している患者さんが訪問診療を利用するケースです。

複数の医療機関にかかるよりも、訪問診療医が一元的に管理することで、医療費の重複や不要な検査を避けられる可能性があります。

医療機関間の連携

訪問診療医が主治医となり、必要に応じて専門医と連携を取りながら治療計画を立てることで、総合的な医療管理が可能になります。

これにより、結果として医療費の適正化につながることも期待できます。

薬剤管理の重要性

多剤服用(ポリファーマシー)は、副作用のリスクを高めるだけでなく、薬剤費の増大にもつながります。

訪問診療医による薬剤の一元管理や定期的な見直しは、安全で効果的な薬物療法と薬剤費の抑制に貢献します。

よくある質問

訪問診療や医療費に関して、患者さんやご家族から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。

訪問診療を長く利用する場合、費用はどのくらいかかりますか?

訪問診療にかかる費用は、患者さんの病状、必要な医療処置の種類や頻度、利用する医療機関によって大きく異なります。

また、介護保険サービスの利用状況によっても総額は変わってきます。具体的な費用については、まず訪問診療を依頼する予定の医療機関に相談し、月々のおおよその費用や、利用できる公的制度について説明を受けることが大切です。

その上で、ケアマネジャーとも連携し、医療と介護を含めた全体の費用感を把握し、長期的な資金計画を立てることをお勧めします。

医療費のことで相談できる専門家はいますか?

病院や一部のクリニックには、医療ソーシャルワーカー(MSW)という専門職が配置されていることがあります。

医療ソーシャルワーカーは、患者さんやご家族が抱える経済的、社会的、心理的な問題について相談に乗り、解決のための支援を行います。

医療費の支払いに関する不安、高額療養費制度やその他の助成制度の利用方法、介護保険サービスとの連携など、幅広い相談に対応してくれます。

まずはかかりつけの医療機関に医療ソーシャルワーカーがいるか確認し、相談してみましょう。

自治体の支援制度はどこで調べられますか?

各自治体(市区町村)では、独自の医療費助成制度を設けている場合があります。例えば、子ども医療費助成、ひとり親家庭等医療費助成、障害者医療費助成などです。

これらの情報は、お住まいの市区町村の役所の担当窓口(福祉課、保険年金課など)や、公式ホームページで確認することができます。

また、民生委員や地域包括支援センターの職員も、地域の情報に詳しい場合があります。

  • 市区町村の役所の担当窓口(福祉課、子育て支援課、高齢福祉課、障害福祉課、保険年金課など)
  • 市区町村の公式ホームページ
  • 地域包括支援センター
  • 民生委員・児童委員
家族として医療費管理で気をつけることは?

ご家族が患者さんの医療費を管理する場合、いくつかのポイントがあります。まず、医療機関から発行される領収書や診療明細書は、必ず保管しておきましょう。

これらは高額療養費の申請や医療費控除の手続きに必要です。

また、加入している医療保険の種類や、利用できる可能性のある公的制度(高額療養費制度、各種助成制度など)について、事前に情報を集めて理解しておくことが大切です。

患者さんの状態によっては、成年後見制度の利用を検討することも一つの方法です。

不明な点や困ったことがあれば、医療機関の相談窓口やケアマネジャー、医療ソーシャルワーカーに早めに相談しましょう。

医療費の相談窓口は他にありますか?

医療費に関する不安や疑問は、一人で抱え込まずに専門機関に相談することが大切です。以下に主な相談窓口を挙げます。

医療費相談窓口例

相談窓口相談できる内容(例)連絡先・探し方
加入している医療保険の保険者(健康保険組合、協会けんぽ、市区町村国保、後期高齢者医療広域連合など)高額療養費制度の申請、自己負担限度額、保険給付全般保険証に記載、インターネットで検索
医療機関の相談窓口・医療連携室医療費の支払い相談、公的制度の案内、退院支援病院の受付やホームページで確認
市区町村の役所(福祉担当課、保険年金課など)国民健康保険、後期高齢者医療制度、各種医療費助成制度お住まいの市区町村役所に問い合わせ
地域包括支援センター高齢者の医療・介護に関する総合相談、制度案内お住まいの地域名と「地域包括支援センター」で検索
医療ソーシャルワーカー(MSW)医療費、療養生活、心理社会的問題全般医療機関に在籍確認

これらの情報を参考に、ご自身やご家族の状況に合わせて、適切な医療と支援を受けられるようにしましょう。

今回の内容が皆様のお役に立ちますように。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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