訪問診療・訪問歯科診療併用 – 高齢者医療の新しいアプローチ

訪問診療・訪問歯科診療併用 - 高齢者医療の新しいアプローチ

ご自宅で療養生活を送る上で、お体の健康だけでなく、お口の健康も非常に重要です。しかし、通院が難しい状況では、両方のケアを維持するのは簡単ではありません。

この記事では、医師による「訪問診療」と、歯科医師・歯科衛生士による「訪問歯科診療」を併用する新しい医療の形について解説します。

二つの専門的なサービスを組み合わせることで、より包括的な健康管理がご自宅で可能になります。その意義やメリット、具体的な進め方などを詳しく見ていきましょう。

目次

訪問診療・訪問歯科診療併用の意義と背景

近年、高齢化が進む中で、医療の提供体制も大きく変化しています。これまでは病院で受けるのが当たり前だった医療を、住み慣れたご自宅で継続したいと望む方が増えてきました。

この要望に応える形で、訪問診療と訪問歯科診療の重要性が高まっています。

ここでは、なぜこの二つのサービスを併用することが大切なのか、その背景にある社会的な状況や制度との関わりを解説します。

高齢化社会における在宅医療の重要性

日本は世界でも類を見ない速さで高齢化が進行しており、総人口に占める65歳以上の割合は増加の一途をたどっています。

多くの方が、介護が必要な状態になっても、可能な限り住み慣れた地域や自宅で暮らし続けたいと願っています。

この思いを実現するためには、医療機関への通院が困難な方々へ、ご自宅に直接医療を届ける「在宅医療」の仕組みが欠かせません。

在宅医療は、単に病気の治療を行うだけでなく、患者さんやご家族が安心して療養生活を送れるように支える、生活に密着した医療です。

その中心的な役割を担うのが、訪問診療や訪問歯科診療なのです。

訪問診療と訪問歯科診療の定義と役割

訪問診療と訪問歯科診療は、どちらもご自宅へ医療専門職が訪問するサービスですが、その目的と役割には明確な違いがあります。

訪問診療は、医師が定期的に訪問し、全身の健康状態の管理、病気の治療、薬の処方など、内科や外科といった「医科」領域のケアを総合的に行います。

一方、訪問歯科診療は、歯科医師や歯科衛生士が訪問し、虫歯や歯周病の治療、入れ歯の作製・調整、お口の清掃といった「歯科」領域の専門的なケアを提供します。

この二つは車の両輪のような関係であり、全身の健康とお口の健康は密接に関連しているため、両面からのアプローチが重要になります。

訪問診療と訪問歯科診療の比較

項目訪問診療(医科)訪問歯科診療(歯科)
担当職種医師、看護師など歯科医師、歯科衛生士など
主な内容全身の健康管理、診察、投薬、点滴など虫歯治療、入れ歯調整、口腔ケアなど
目的病気の治療と療養生活の支援摂食嚥下機能の維持・改善、口腔疾患の予防・治療

併用が求められる社会的背景

高齢になると、複数の慢性疾患を抱える方が多くなります。例えば、糖尿病や高血圧といった全身の病気は、歯周病を悪化させることが知られています。

逆に、重度の歯周病が糖尿病のコントロールを難しくすることもあります。また、お口の状態が悪化して十分に栄養を摂取できなくなると、体力が低下し、免疫力も落ちてしまいます。

特に注意が必要なのが「誤嚥性肺炎」です。これは、食べ物や唾液が誤って気管に入り、お口の中の細菌と共に肺に流れ込むことで発症する肺炎で、高齢者の命に関わる重大な病気です。

誤嚥性肺炎を予防するためには、飲み込む力を維持するリハビリ(医科領域)と、お口の中を清潔に保つ口腔ケア(歯科領域)の両方が必要です。

このように、医科と歯科の連携は、特定の病気の予防や治療において極めて重要であり、併用が強く求められる社会的な背景があります。

地域包括ケアシステムとの関係

国は、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。

これは、医療、介護、予防、住まい、生活支援が一体的に提供される体制のことです。

このシステムの中で、訪問診療と訪問歯科診療は、在宅での療養生活を支える中核的な医療サービスとして位置づけられています。

医師や歯科医師だけでなく、ケアマネジャー、訪問看護師、薬剤師、ヘルパーなど、多くの専門職が情報を共有し、連携しながら一人の患者さんを支えていきます。

訪問診療と訪問歯科診療の併用は、まさにこの地域包括ケアシステムの理念を具現化するものであり、多職種が協力して質の高い在宅療養を支援する上で、欠かせない要素となっています。

地域包括ケアシステムにおける主な担い手

領域主な担い手役割
医療かかりつけ医、歯科医師、訪問看護師、薬剤師診察、治療、服薬管理、健康相談
介護ケアマネジャー、ヘルパー、福祉用具専門相談員ケアプラン作成、身体介護、生活援助
地域地域包括支援センター、民生委員、ボランティア総合相談、権利擁護、地域の見守り

訪問診療・訪問歯科診療併用のメリット

医師による訪問診療と、歯科医師による訪問歯科診療を一緒に利用することには、多くの利点があります。

それは、患者さんご本人やご家族の負担を軽くするだけでなく、医療や介護を提供する側にとっても良い効果をもたらします。

最終的には、患者さんの生活全体の質を高めることにつながります。ここでは、併用によって得られる具体的なメリットを、様々な視点から詳しく見ていきます。

患者・家族にとっての利点

最大の利点は、通院に伴う心身の負担が大幅に軽減されることです。体調が優れない中での外出準備や、病院での長い待ち時間は、患者さんにとってもご家族にとっても大きなストレスです。

ご自宅で医療を受けられることで、時間的にも精神的にもゆとりが生まれます。また、医科と歯科の専門家が定期的に訪問することで、健康状態の変化に早く気づき、すぐに対応してもらえます。

この安心感は、療養生活を送る上で何物にも代えがたいものです。さらに、口からしっかり食事を摂れるようになると、全身の栄養状態が改善し、体力の維持・向上にもつながります。

併用による患者・家族の主な利点

利点具体的な内容
負担軽減通院の必要がなく、移動や待ち時間から解放される
安心感の向上定期的な訪問により、健康状態を継続的に見守ってもらえる
健康状態の改善口腔ケアと全身管理により、栄養状態や体力の改善が期待できる

医療・介護現場におけるメリット

医療や介護を提供する側にとっても、併用は大きなメリットがあります。

医師と歯科医師が連携し、それぞれの専門的な視点から得た情報を共有することで、患者さんの状態をより多角的に、深く理解できます。

例えば、訪問診療の医師が「最近、食事量が減っている」という情報を得た際、すぐに訪問歯科診療の歯科医師に共有すれば、「入れ歯が合っていないのかもしれない」「お口の中に痛みがあるのかもしれない」といった原因究明がスムーズに進みます。

このような連携により、問題の早期発見と迅速な対応が可能になり、より質の高いケアを提供できるのです。

連携による医療・介護現場のメリット

  • 情報共有の円滑化
  • 問題の早期発見・早期対応
  • 専門性の相互補完
  • 治療計画の質の向上

生活の質(QOL)向上への寄与

「食べる」という行為は、単に栄養を摂るだけでなく、人生における大きな楽しみの一つです。しかし、お口のトラブルを抱えていると、食事を心から楽しむことができなくなります。

訪問歯科診療によって入れ歯がぴったり合うようになったり、お口の中が清潔で快適になったりすることで、「食事がおいしくなった」「家族と同じものを食べられるようになった」という喜びを取り戻すことができます。

また、はっきりと話せるようになると、ご家族やご友人との会話も弾みます。

このように、お口の健康を取り戻すことは、食事や会話といった日常の楽しみを支え、患者さんの生活の質(QOL)を直接的に向上させる上で非常に大きな意味を持ちます。

口腔ケアによるQOL向上の具体例

改善点生活の変化QOLへの影響
咀嚼機能の回復好きなものを食べられるようになる食事の楽しみ、満足度の向上
発音の明瞭化会話がスムーズになる他者との交流意欲の向上
口臭の軽減自信を持って人と話せるようになる精神的な快適さ、尊厳の維持

医療連携による包括的サポート

訪問診療と訪問歯科診療の併用は、文字通り「頭のてっぺんから足の先まで」の包括的な健康サポートを実現します。

例えば、糖尿病の患者さんに対して、訪問診療の医師は血糖コントロールを行い、訪問歯科診療の歯科医師は歯周病の管理を行います。

この二つの管理が連携することで、相乗効果が生まれ、より良い治療結果が期待できます。

また、脳梗塞後の後遺症で飲み込みに問題がある患者さんに対しては、医師が栄養管理やリハビリの指示を出し、歯科医師や歯科衛生士が安全な食事形態の提案や嚥下訓練を行います。

このように、それぞれの専門性を活かしながら一つのチームとして患者さんを支えることで、切れ目のない、手厚いサポート体制を築くことができます。

経営・運営面での効果

医療機関の視点から見ると、他科との連携体制を構築することは、提供する医療の質を高め、専門性を強化することにつながります。

医科と歯科が協力することで、これまで単独では対応が難しかった複雑な症例にも対応できるようになります。

また、地域のケアマネジャーや他の医療機関からの信頼も厚くなり、紹介が増えるといった効果も期待できます。

効率的な情報共有は、スタッフの業務負担を軽減し、より患者さん一人ひとりに向き合う時間を確保することにもつながるでしょう。これらの効果は、長期的に見て安定した医療機関の運営に寄与します。

併用体制構築のポイントと実践例

訪問診療と訪問歯科診療の併用を実際に機能させるためには、しっかりとした連携体制を築くことが重要です。

単にそれぞれのサービスを提供するだけでなく、関係者が円滑に協力し合える仕組みづくりが必要です。

ここでは、効果的な併用体制を構築するための具体的なポイントや、実際の連携の流れについて解説します。

多職種連携の体制づくり

併用体制の核となるのは、関わる専門職同士の連携です。中心となる医師、歯科医師のほか、訪問看護師、歯科衛生士、薬剤師、ケアマネジャー、理学療法士、管理栄養士など、多くの職種が関わります。

大切なのは、それぞれの専門職が自分の役割を果たすだけでなく、お互いの専門性を尊重し、患者さんの情報を共有することです。

定期的にカンファレンス(担当者会議)を開き、患者さんの状態や治療方針について意見交換する場を設けることが、質の高いチーム医療を実現する鍵となります。

多職種連携における主な役割分担

職種主な役割
医師全身状態の管理、治療方針の決定、他職種への指示
歯科医師口腔内の診断と治療、摂食嚥下機能の評価
ケアマネジャーケアプランの作成、サービス間の調整、家族との連絡

訪問診療・訪問歯科診療の連携フロー

実際の連携は、どのような流れで進むのでしょうか。一般的には、まず患者さんやご家族、あるいはケアマネジャーから、どちらかのサービスに相談が入ることから始まります。

1. 相談と情報収集

例えば、訪問診療を受けている患者さんが「最近、食事が摂りにくそうだ」という場合、医師や看護師がその情報を察知し、歯科受診の必要性を検討します。

そして、患者さんやご家族の同意を得た上で、連携している訪問歯科診療所に情報を提供し、診察を依頼します。

2. 初回訪問とアセスメント

依頼を受けた歯科医師や歯科衛生士がご自宅を訪問し、お口の中の状態や摂食嚥下機能の評価(アセスメント)を行います。

その結果は、診療情報提供書などの文書で、依頼元の医師に速やかに報告します。

3. 治療計画の共有と実施

報告を受けた医師は、歯科の治療計画を把握し、医科の治療計画とすり合わせます。

例えば、血液をサラサラにする薬を服用している患者さんの抜歯を行う際には、事前に医師と歯科医師が相談し、薬の調整などについて検討します。

このように計画を共有した上で、それぞれの治療を進めていきます。

4. 定期的な情報交換

治療が始まった後も、電話や連絡ノート、ICTツールなどを活用して、日々の変化や気づいたことを密に情報交換します。

定期的なカンファレンスで顔を合わせて話し合うことも、円滑な連携には大切です。

スタッフ教育と役割分担

円滑な連携のためには、スタッフ一人ひとりが連携の重要性を理解し、他職種の役割についてもある程度の知識を持つことが必要です。

合同で勉強会を開催し、医科のスタッフが口腔ケアについて学んだり、歯科のスタッフが全身疾患について学んだりする機会を設けることは非常に有益です。

また、誰が何を担当し、誰に報告・相談するのか、といった役割分担と情報伝達のルールを明確に定めておくことで、現場での混乱を防ぎ、スムーズな連携を促進します。

地域医療機関・介護施設との協力

連携の輪は、訪問診療と訪問歯科診療の間だけでなく、さらに広く地域全体に広げていくことが理想です。

入院が必要になった際には病院と、リハビリが必要になれば回復期病院や介護老人保健施設と、そして日々の生活を支える地域の介護事業所と、緊密な協力関係を築いておくことが重要です。

顔の見える関係を平時から構築しておくことで、いざという時に迅速で適切な対応が可能になります。

主な連携先機関

  • 地域の病院・クリニック
  • 居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)
  • 訪問看護ステーション
  • 調剤薬局
  • 介護施設(特別養護老人ホームなど)

診療現場での課題とその解決策

訪問診療と訪問歯科診療の併用は多くのメリットをもたらしますが、その実践にはいくつかの課題も存在します。制度上の問題から、現場での細かな工夫が求められる点まで様々です。

しかし、これらの課題を正しく理解し、一つひとつ解決策を講じていくことで、より良い連携体制を築くことができます。

ここでは、現場で直面しがちな課題と、その乗り越え方について解説します。

制度・報酬に関する課題

現在の診療報酬制度では、医科と歯科の連携を評価する項目が設けられていますが、その算定要件が複雑であったり、連携にかかる手間や時間に見合った評価が十分でなかったりする場合があります。

また、同日に訪問診療と訪問歯科診療を行う際のルールなど、制度上の制約を正しく理解しておく必要があります。

これらの課題に対しては、制度の最新情報を常に把握し、算定可能な項目を漏れなく請求することが大切です。

また、地域の医師会や歯科医師会などを通じて、現場の声を国に届け、制度改善を働きかけていくことも、長期的な視点では重要になります。

医科歯科連携に関連する診療報酬

報酬項目算定する側概要
診療情報提供料(I)医科・歯科双方治療のため、他方の医療機関に患者情報を提供した場合に算定
歯科治療時医療管理料歯科全身的な管理が必要な患者の歯科治療時に医科と連携した場合に算定
退院時共同指導料医科・歯科双方病院退院時に在宅療養について多職種で共同指導した場合に算定

情報共有と工夫

医師と歯科医師、それぞれの事業所が異なり、訪問する曜日や時間も違う中で、いかにタイムリーで正確な情報共有を行うかは大きな課題です。

電話ではすれ違いが多く、連絡ノートは記入や確認に手間がかかります。

この解決策として、近年ではクラウド型の電子カルテや、医療介護専用のSNSといったICT(情報通信技術)ツールの活用が進んでいます。

これらのツールを使えば、スマートフォンやタブレットからいつでもどこでも安全に情報を確認・共有でき、多忙な専門職間の情報伝達を効率化できます。

アナログな方法とデジタルな方法をうまく組み合わせることが、効果的な情報共有の鍵です。

情報共有で活用されるツール

  • 医療介護専用SNS
  • クラウド型電子カルテ
  • 連絡ノート(申し送りノート)
  • 電話・FAX

訪問先での診療環境整備

病院や診療所と違い、ご自宅の療養環境は様々です。診療を行うための十分なスペースや明るさ、電源を確保することが難しい場合もあります。

特に歯科治療では、水を使い、歯などを削るため、ポータブルのユニットやバキューム、レントゲンといった機材が必要になります。

これらの機材を安全に設置し、衛生的な環境で治療を行うための工夫が求められます。

事前にご家族に協力をお願いし、診療に適した場所(例えば、ベッドサイドやリビングの一角など)を確保したり、床が汚れないようにシートを敷いたりといった準備が大切です。

限られた環境の中で、いかに安全で質の高い医療を提供できるか、スタッフの経験と創意工夫が試されます。

患者・家族との信頼関係構築

複数の専門職が入れ替わり立ち替わり自宅を訪問することは、患者さんやご家族にとって、時に負担や混乱の原因となる可能性もあります。

それぞれの専門職が何のために来て、何をしているのかが分からないと、不安を感じてしまいます。

これを防ぐためには、初めにチーム全体の体制や各職種の役割について丁寧に説明し、同意を得ることが重要です。

また、治療の進捗や方針の変更があった際には、必ずご本人やご家族に分かりやすく説明し、意向を確認する姿勢が信頼関係の基礎となります。

チームの窓口となる担当者(例えばケアマネジャーなど)を明確にしておくと、ご家族も相談しやすくなります。

トラブル・リスクマネジメント

在宅医療では、予期せぬ体調の急変や、治療中の偶発的な事故など、様々なリスクが考えられます。

特に、医科と歯科が連携する場面では、「この症状はどちらに相談すればいいのか」「緊急時の責任者は誰なのか」といった点で混乱が生じる可能性があります。

こうした事態に備え、あらかじめ緊急時の連絡体制や対応フローを文書で明確にし、関係者全員で共有しておくことが極めて重要です。

例えば、「夜間に急変があった場合の第一連絡先は訪問診療の窓口とする」といったルールを決めておけば、患者さんやご家族も迷わずに行動できます。

想定されるリスクと対策の例

リスク具体的な対策
患者の急変緊急連絡網の作成と共有、24時間対応体制の確保
情報伝達の齟齬報告・連絡・相談のルールの明確化、ICTツールの活用
治療に関する意見の対立定期的なカンファレンスの開催、中立的な立場からの調整役の設定

よくある質問

訪問診療と訪問歯科診療の併用について、多くの方が抱く疑問にお答えします。サービスを検討する際の参考にしてください。

訪問診療と訪問歯科診療は、必ず一緒に利用しないといけないのですか?

いいえ、必ずしも両方を同時に利用する必要はありません。訪問診療のみ、あるいは訪問歯科診療のみを利用することも可能です。

しかし、この記事で解説してきたように、全身の健康とお口の健康は密接に関連しているため、特に高齢の方や複数の疾患をお持ちの方にとっては、併用することで得られるメリットが非常に大きいと言えます。

どちらか一方のサービスを利用している中で、もう一方の必要性が出てきた際に、担当の医師や歯科医師、ケアマネジャーに相談してみるのが良いでしょう。

費用はどのくらいかかりますか?

訪問診療、訪問歯科診療ともに、各種医療保険および介護保険が適用されます。

自己負担額は、お持ちの保険証に記載されている負担割合(1割〜3割)や、所得、治療内容によって異なります。

また、医療保険と介護保険では、自己負担額の上限(高額療養費制度など)が定められています。

具体的な費用については、個々の状況によって大きく変わるため、サービスを依頼する前に、医療機関やケアマネジャーに見積もりや詳しい説明を求めることをお勧めします。

費用負担の概要

保険の種類対象となるサービス(例)自己負担
医療保険診察、治療、投薬、検査などかかった医療費の1〜3割
介護保険居宅療養管理指導(医師、歯科医師、薬剤師などによる)定められた単位数に応じた1〜3割
どのような人が併用の対象になりますか?

基本的には、病気や障害、高齢などの理由で、お一人で医療機関への通院が困難な方が対象となります。具体的には、以下のような方々が挙げられます。

  • 寝たきりの状態の方
  • 歩行が困難で、介助が必要な方
  • 認知症により、外出が難しい方
  • 医療機器(在宅酸素など)を常時使用している方

ご自身やご家族が対象になるかどうか分からない場合は、まずは

どうすれば併用サービスを始められますか?

お住まいの地域包括支援センターやかかりつけの医療機関、ケアマネジャーにご相談ください。

サービスを開始するための第一歩は、相談することです。現在、かかりつけの医師や歯科医師がいる場合は、まずその先生に訪問診療や訪問歯科診療が可能か尋ねてみてください。

また、介護保険サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーが最適な医療機関を探し、連携の調整を行ってくれます。

どこに相談して良いか分からない場合は、お住まいの市区町村に設置されている「地域包括支援センター」が総合的な相談窓口となります。

家族が準備することはありますか?

ご家族にご協力いただきたい点はいくつかあります。まず、診療を行うためのスペース(ベッドサイドなど)の確保と、手洗いの場所をお借りできると助かります。

また、患者さんご本人の日々の様子や、お薬手帳、これまでの病歴が分かるものなどをご準備いただくと、よりスムーズに診療を開始できます。

そして何より大切なのは、ご本人の療養に関するご希望や、ご家族が不安に思っていることを、遠慮なく医療スタッフに伝えていただくことです。

今回の内容が皆様のお役に立ちますように。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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