居宅療養管理指導費とは?訪問診療の一部に介護保険が適用される理由と単位数

居宅療養管理指導費とは?訪問診療の一部に介護保険が適用される理由と単位数

訪問診療を受けているのに、明細に「介護保険」の記載があって戸惑った経験はないでしょうか。実は訪問診療の費用はすべて医療保険で賄われるわけではありません。

医師や薬剤師が自宅を訪れて行う療養上の管理や指導には、介護保険の「居宅療養管理指導費」が適用されます。この制度を知っておけば、毎月届く請求書の内訳を正しく読み解けるようになるでしょう。

本記事では居宅療養管理指導費の仕組みや単位数、訪問診療との違い、自己負担額までをわかりやすく解説します。

目次

居宅療養管理指導費とは訪問診療に付随する介護保険の報酬である

居宅療養管理指導費とは、通院が難しい要介護者の自宅に医療専門職が訪問し、療養上の管理・指導を行ったときに算定される介護保険上の報酬です。

訪問診療そのものの費用とは別に発生するため、両者を正しく区別しておくことが大切になります。

医師・歯科医師・薬剤師などが行う療養上の「指導」に対する費用

居宅療養管理指導を行える職種は、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士です。医師であれば、服薬の注意点や療養生活全般に関する助言を行い、その内容をケアマネジャーに共有します。

薬剤師は処方薬の飲み合わせや保管方法の指導を、管理栄養士は栄養バランスに配慮した食事の助言を担当します。歯科衛生士は口腔ケアや嚥下(えんげ=飲み込み)機能に関する実地指導を行います。

訪問診療の「医療行為」とはまったく別の制度として位置づけられている

訪問診療で医師が行う診察・検査・処方といった医療行為には、医療保険が適用されます。一方、療養上の管理や生活指導は直接的な治療行為ではないため、介護保険の居宅療養管理指導費で算定される仕組みです。

つまり、同じ医師が同じ日に訪問しても「治療」部分は医療保険、「指導」部分は介護保険という形で保険が分かれます。患者さんの請求書に2つの保険が並ぶのは、このためです。

居宅療養管理指導と訪問診療の比較

項目居宅療養管理指導訪問診療
適用保険介護保険医療保険
主な内容療養上の管理・指導診察・検査・処方
対象者要介護認定を受けた方通院困難な方

要介護認定を受けた方だけが対象になる

居宅療養管理指導を利用できるのは、要介護1~5の認定を受けている方です。65歳以上の方が中心ですが、40歳~64歳でもパーキンソン病などの特定疾病で要介護認定を受けていれば対象に含まれます。

要支援1・2の方には「介護予防居宅療養管理指導」という別の区分が適用され、報酬単価が異なる点に注意しましょう。要介護認定を受けていない方は、たとえ訪問診療を受けていてもこの制度を利用できません。

訪問診療の一部に介護保険が適用される理由は「指導」と「治療」の線引きにある

訪問診療で介護保険が使われるのは、提供されるサービスの中身が「治療」ではなく「指導・管理」に該当するからです。日本の社会保障制度では、医療行為と介護サービスを明確に区分し、それぞれ別の保険で費用をまかなう構造になっています。

医療保険がカバーするのは診察・検査・処方などの医療行為

医療保険は、病気やけがの治療に直接かかわるサービスに適用されます。訪問診療であれば、血圧測定や採血などの検査、注射や点滴、処方箋の発行といった一連の行為が対象です。

費用は患者さんの年齢や所得によって1割~3割の自己負担となり、残りは公的医療保険から支払われます。在宅患者訪問診療料や在宅時医学総合管理料(在医総管)なども医療保険で算定される報酬です。

介護保険がカバーするのは療養生活を支える管理・助言

介護保険がカバーする範囲は、療養生活を円滑に送るための管理や助言に限られます。たとえば、医師が「この薬は食後に飲んでください」「水分をもう少し多くとりましょう」と生活面の指導を行った場合、その部分は介護保険で算定されます。

介護保険サービスとして扱われる以上、ケアマネジャーへの情報提供が算定の条件です。医師が患者の状態をケアマネジャーと共有し、ケアプランに反映させることで初めて報酬が発生します。

同じ医師の訪問でも保険が分かれる仕組みは制度設計上の必然である

2000年に介護保険制度が始まったとき、在宅で療養する高齢者を医療と介護の両面から支える枠組みが整えられました。治療は医療保険、生活支援は介護保険という役割分担を設けることで、それぞれの保険財源を適正に使う狙いがあります。

患者さんから見ると「同じ先生が同じ日に来ているのに保険が2種類ある」と感じるかもしれません。しかし、これは在宅療養を支える制度が重層的に整備されている証拠です。

医療保険と介護保険の負担割合の目安

区分医療保険介護保険
70歳未満3割1~3割
70~74歳2割(現役並み3割)1~3割
75歳以上1割(現役並み3割)1~3割

居宅療養管理指導費の単位数は職種・人数・算定区分で変わる

居宅療養管理指導費の単位数は一律ではなく、訪問する職種、対象となる建物内の利用者数(単一建物居住者数)、そして算定区分(ⅠかⅡか)によって細かく設定されています。

2024年6月の介護報酬改定で各単位数が1単位ずつ引き上げられました。

医師が行う居宅療養管理指導費(Ⅰ)と(Ⅱ)の単位数

医師が行う場合、居宅療養管理指導費にはⅠとⅡの2種類があります。Ⅰは在宅時医学総合管理料(在医総管)を算定しないケースに適用され、Ⅱは在医総管を算定するケースに適用されます。

Ⅱのほうが単位数は低く設定されています。在医総管を算定すると医療保険側で一定の報酬を受け取るため、介護保険側の単位数が抑えられる仕組みです。

歯科医師が行う場合の単位数

歯科医師による居宅療養管理指導は、訪問歯科診療を行った際に療養上の助言を行ったときに算定されます。月2回が上限で、単一建物居住者が1人の場合は516単位、2~9人で486単位、10人以上で440単位です。

口腔ケアの指導だけでなく、義歯の管理方法や摂食・嚥下に関する助言も含まれます。虫歯の治療や義歯の調整といった医療行為は医療保険で算定されるため、混同しないよう注意が必要です。

職種別の居宅療養管理指導費(単一建物居住者1人の場合・2024年6月改定後)

職種単位数月の上限回数
医師(Ⅰ)515単位月2回
医師(Ⅱ)299単位月2回
歯科医師516単位月2回
薬剤師(医療機関)565単位月2回
薬剤師(薬局)517単位月4回
管理栄養士544単位月2回
歯科衛生士361単位月4回

薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士が行う場合の単位数

薬剤師は医療機関に所属する場合と薬局に所属する場合で単位数が異なります。薬局の薬剤師は月4回まで算定でき、がん末期の方や中心静脈栄養を受けている方に対しては週2回かつ月8回まで算定できる特例もあります。

管理栄養士は医師の指示に基づいて栄養ケア計画を作成し、月2回まで算定が可能です。歯科衛生士は歯科医師の指示のもとで口腔内の清掃指導などを行い、月4回が上限となります。がん末期の方に対しては月6回まで拡大されています。

居宅療養管理指導費(Ⅰ)と(Ⅱ)で単位数が異なる理由は在医総管の有無にある

居宅療養管理指導費のⅠとⅡは、医師が行う場合にのみ区別される算定区分です。両者を分けるカギは、医療保険側で「在宅時医学総合管理料(在医総管)」を算定しているかどうかにあります。

在宅時医学総合管理料を算定しない場合は(Ⅰ)が適用される

在医総管を算定していないケースでは、居宅療養管理指導費(Ⅰ)が適用されます。たとえば月1回だけ往診を行っている場合や、在医総管の施設基準を満たしていない医療機関が訪問するケースが該当します。

Ⅰの単位数は単一建物居住者1人の場合で515単位と、Ⅱの299単位と比べて200単位以上高く設定されています。医療保険側での管理料を受け取っていない分、介護保険側の報酬が手厚くなっているわけです。

在宅時医学総合管理料を算定する場合は(Ⅱ)で低い単位数になる

月2回以上の定期的な訪問診療を行い、24時間対応が可能な体制を整えている医療機関が在医総管を算定すると、居宅療養管理指導費は(Ⅱ)が適用されます。

Ⅱの単位数が低い理由は、医療保険の管理料と介護保険の指導費が二重に高額にならないよう調整されているからです。

在医総管の点数は医療保険側で数千点に及ぶこともあるため、介護保険側はⅠの6割程度に抑えられています。患者さんの合計負担が過度に膨らまないための配慮といえるでしょう。

どちらに該当するかは医療機関の算定内容で自動的に決まる

患者さんやご家族がⅠかⅡかを自分で選ぶ必要はありません。担当の医療機関がどの診療報酬を算定しているかによって自動的に区分が決まります。

ただし、ⅠとⅡのどちらが適用されているかは請求明細書で確認できます。気になる場合は、医療機関の事務担当者やケアマネジャーに尋ねてみるとよいでしょう。

居宅療養管理指導費(Ⅰ)と(Ⅱ)を分けるポイント

  • 在医総管を算定している → Ⅱ(低い単位数)が適用
  • 在医総管を算定していない → Ⅰ(高い単位数)が適用
  • 判定は医療機関側で行われ、患者さんが手続きする必要はない

居宅療養管理指導費の自己負担額は1割~3割で区分支給限度額の枠外になる

居宅療養管理指導費の自己負担は、利用者の所得に応じて1割・2割・3割のいずれかが適用されます。

さらに、通常の介護保険サービスに設けられている区分支給限度額の対象外であるため、ほかの介護サービスの利用枠を圧迫しないという大きな特徴があります。

所得に応じて1割・2割・3割の負担割合が適用される

介護保険の自己負担割合は、本人の合計所得金額に基づいて決まります。一般的な所得の方は1割、一定以上の所得がある方は2割、現役世代並みの所得がある方は3割です。

たとえば医師による居宅療養管理指導費(Ⅰ)が515単位のとき、1単位を約10円として計算すると1回あたりの費用はおよそ5,150円となります。自己負担が1割であれば約515円です。

介護保険の区分支給限度額には含まれない

訪問介護やデイサービスなど一般的な介護保険サービスには、要介護度ごとに月の利用上限額(区分支給限度額)が定められています。しかし、居宅療養管理指導費はこの限度額の対象外です。

つまり、居宅療養管理指導を利用しても、訪問介護やデイサービスの利用枠が減ることはありません。在宅療養に必要なサービスを幅広く組み合わせやすい点は、利用者にとって大きな安心材料です。

自己負担額の目安(医師による指導・単一建物居住者1人の場合)

算定区分単位数1割負担の目安
居宅療養管理指導費(Ⅰ)515単位約515円/回
居宅療養管理指導費(Ⅱ)299単位約299円/回

月ごとの算定回数には上限がある

区分支給限度額の枠外とはいえ、無制限に利用できるわけではありません。職種ごとに月あたりの算定回数上限が定められており、医師と歯科医師は月2回、薬局の薬剤師と歯科衛生士は月4回、管理栄養士は月2回が原則です。

がん末期の方や中心静脈栄養を受けている方など、頻回な管理が必要なケースでは算定回数が拡大される特例が設けられています。主治医やケアマネジャーに確認すれば、自分が月に何回まで利用できるかがわかります。

居宅療養管理指導を受けるにはケアマネジャーとの連携が欠かせない

居宅療養管理指導は、医師の指示とケアマネジャーへの情報提供がそろって初めて算定できる制度です。利用を検討している方は、まず担当のケアマネジャーに相談しましょう。

医師の指示が出発点になる

居宅療養管理指導を開始するには、主治医からの指示が必要です。薬剤師や管理栄養士、歯科衛生士が指導を行う場合も、必ず医師または歯科医師の指示に基づいて実施されます。

指示の内容は文書や処方箋に記載され、指導の期間や目的が明確にされます。指示のないまま漫然と指導が継続されることを防ぐため、定期的に指示内容を更新する運用が求められています。

ケアプランへの情報提供が算定の条件

医師は居宅療養管理指導を行った際、ケアマネジャーに対して患者さんの病状や生活上の留意点などを情報提供する義務があります。この情報がケアプランに反映されることで、介護サービス全体の質が高まります

情報提供を行わなかった場合、算定が認められないことがあるため要注意です。医療機関側もこの点は十分に把握しているはずですが、不安があれば担当のケアマネジャーに確認しておくと安心です。

利用開始から算定までの一連の流れ

まず主治医が訪問診療や往診の際に「居宅療養管理指導が必要」と判断し、指示を出します。次に、指示に基づいて医師や薬剤師などが療養上の管理・指導を実施します。

実施後は速やかにケアマネジャーへ情報提供を行い、必要に応じてケアプランが見直されます。報酬の請求は医療機関や薬局が国保連合会に直接行うため、利用者が自分で手続きする場面はありません。

居宅療養管理指導に関わる職種と連携先

  • 主治医(指示・情報提供)
  • 薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士(指示に基づく実施)
  • ケアマネジャー(ケアプランへの反映・調整)

訪問診療と居宅療養管理指導を併用するときに押さえておきたい注意点

訪問診療と居宅療養管理指導は、医療保険と介護保険それぞれから費用が発生するため、併用が基本です。ただし、算定の要件やルールを正しく理解しておかないと、思わぬ負担やトラブルにつながるケースもあります。

医療保険と介護保険の請求は同時に発生する

訪問診療を行えば医療保険の請求が、居宅療養管理指導を行えば介護保険の請求が、同じ月に同時に発生します。患者さんの手元には医療費と介護費の両方の請求が届くため、初めて利用する方は驚くかもしれません。

合計の自己負担額が高額になる場合は、高額療養費制度や高額介護サービス費制度の対象になることがあります。さらに、医療と介護の合算が一定額を超えた場合には「高額医療・高額介護合算療養費制度」も利用できます。

訪問診療と居宅療養管理指導の併用時に発生する費用

費用項目適用保険請求先
訪問診療料・在医総管医療保険医療機関が請求
居宅療養管理指導費介護保険医療機関・薬局が請求
訪問薬剤管理指導介護保険(要介護者)薬局が請求

算定漏れを防ぐためにはケアマネジャーとの情報共有が大切

居宅療養管理指導費は、ケアマネジャーへの情報提供が行われていなければ算定要件を満たせません。

多忙な医療機関では、情報提供が遅れたり漏れたりするケースもゼロではないため、利用者やご家族の側でもケアマネジャーとの連絡を密にしておくのが望ましいです。

ケアマネジャーは訪問診療と介護保険サービスの両方を把握している調整役です。疑問があればケアマネジャーに声をかけると、スムーズに問題を解決できます。

要介護認定を受けていない方は居宅療養管理指導を利用できない

訪問診療を受けていても、要介護認定を受けていなければ居宅療養管理指導は利用できません。認定を受けるには市区町村の窓口で申請し、認定調査と主治医意見書をもとに審査を受ける必要があります。

訪問診療が必要な状態であれば、要介護認定の対象になる可能性は十分にあります。まだ申請していない方は、地域包括支援センターや担当医に相談してみてください。早めに動くと、利用できるサービスの幅が広がります。

よくある質問

居宅療養管理指導費は訪問診療を受けていなくても算定されるのか?

居宅療養管理指導費は、原則として月1回以上の訪問診療または往診を行っていることが算定の条件です。訪問診療を受けていない方に対して単独で算定されることは基本的にありません。

ただし、薬剤師による服薬指導など一部の職種では、医師の指示に基づいて訪問診療とは別の日に実施されるケースもあります。いずれの場合も医師の指示とケアマネジャーへの情報提供が必要です。

居宅療養管理指導費の単位数は全国どの地域でも同じなのか?

基本となる単位数は全国共通です。ただし、1単位あたりの金額は地域ごとに異なる「地域区分」によって変わります。都市部では1単位あたりの金額が高く、地方ではやや低い傾向です。

加えて、特別地域加算や中山間地域等の小規模事業所加算が適用される地域もあります。実際の自己負担額を正確に知りたい場合は、担当の医療機関やケアマネジャーに確認してみてください。

居宅療養管理指導費は介護保険の支給限度額に影響するのか?

居宅療養管理指導費は、介護保険の区分支給限度額の対象外です。訪問介護やデイサービスなど他の介護サービスの利用枠を消費することはありません。

そのため、すでに限度額いっぱいまで介護サービスを利用している方でも、居宅療養管理指導を追加で受けることが可能です。費用は所得に応じた1割~3割の自己負担で済みます。

居宅療養管理指導費の対象になる年齢に制限はあるのか?

65歳以上で要介護認定を受けている方が主な対象ですが、40歳~64歳の方でも特定疾病(がん末期、パーキンソン病関連疾患など16種類)によって要介護認定を受けていれば利用できます。

40歳未満の方や、特定疾病に該当しない40歳~64歳の方は介護保険の被保険者ではないため、居宅療養管理指導費の対象にはなりません。訪問診療自体は年齢に関係なく医療保険で受けられます。

居宅療養管理指導費を利用したいときはどこに相談すればよいのか?

まずは担当のケアマネジャーに相談するのが一番スムーズです。ケアマネジャーが主治医や医療機関と連絡を取り、居宅療養管理指導の開始に向けた調整を行ってくれます。

まだケアマネジャーがいない場合は、お住まいの地域の地域包括支援センターに問い合わせてみてください。要介護認定の申請手続きからケアマネジャーの紹介まで、一括してサポートを受けられます。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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