在宅患者訪問診療料1と2の違いとは?算定要件・点数・対象を比較表で解説

在宅患者訪問診療料1と2の違いとは?算定要件・点数・対象を比較表で解説

在宅患者訪問診療料には「1」と「2」があり、どちらを算定するかは「主治医自身が訪問するのか、主治医からの依頼で別の医療機関が訪問するのか」で決まります。

点数は訪問診療料1が888点(同一建物居住者以外)、訪問診療料2が884点(同一建物居住者以外)で、わずかな差に見えますが、算定回数や期間制限に大きな違いがあります。

この記事では、訪問診療料1と2それぞれの算定要件・点数・対象者を比較表とともにわかりやすく整理します。ご自身やご家族の在宅医療にかかる費用を把握するための参考になれば幸いです。

目次

在宅患者訪問診療料の「1」と「2」は何が違うのか

在宅患者訪問診療料(I)の「1」と「2」の最大の違いは、訪問する医師が「主治医」なのか「主治医から依頼を受けた別の医療機関の医師」なのかという点にあります。

点数だけを比較するとほぼ同額ですが、算定できる回数や期間の制限がまったく異なるため、実際の医療費にも影響が出てきます。

訪問診療料1は「主治医」が訪問したときに算定する

訪問診療料1は、1つの医療機関の医師が主治医として継続的に患者さんのご自宅を訪問し、計画的な医学管理のもとで定期的に診療を行った場合に算定します。いわば在宅医療の基本となる報酬です。

算定には患者さん本人の同意が必要で、署名付きの同意書を作成しなければなりません。通院が困難な方が対象となり、独歩で通院できる方は原則として対象外です。

訪問診療料2は「主治医から依頼を受けた別の医師」が算定する

訪問診療料2は、主治医のいる医療機関が在宅時医学総合管理料(在医総管)などの算定要件を満たしている場合に、その主治医からの依頼を受けて別の医療機関の医師が訪問診療を行ったときに算定します。

たとえば「内科のかかりつけ医が主治医だが、皮膚科の専門的な処置が必要」「眼科の経過観察を別の医師にお願いしたい」といった場面で活用される仕組みです。平成30年(2018年)の診療報酬改定で新設されました。

訪問診療料1と2の基本的な違い

比較項目訪問診療料1訪問診療料2
訪問する医師主治医主治医から依頼を受けた別の医療機関の医師
算定回数週3回まで(原則)月1回まで
期間制限制限なし6ヶ月まで(原則)
主治医からの依頼不要必要

「訪問診療料(I)」と「訪問診療料(II)」は別の区分である

混同しやすいのが、ローマ数字の「(I)」と「(II)」の区分です。訪問診療料(I)は主に自宅で生活している患者さんを対象とし、その中に「1」と「2」があります。

一方、訪問診療料(II)は有料老人ホーム等に併設された医療機関が、その施設の入居者を診療した場合に算定する150点の報酬です。

今回の記事では訪問診療料(I)の「1」と「2」に焦点を当てて解説していますので、「(I)」と「(II)」の違いとは異なる話である点にご注意ください。

在宅患者訪問診療料1の算定要件を満たすために確認すべきこと

訪問診療料1を算定するには、患者さんが「通院困難」であること、主治医による計画的な医学管理が行われていること、そして患者さん本人の同意があることの3つが基本要件です。これらを1つでも欠くと算定できません。

「通院困難」の判断基準は厳密に定められている

在宅患者訪問診療料を算定できるのは、疾病や傷病のために通院による療養が困難な患者さんに限られます。

厚生労働省の通知では、少なくとも独歩で家族や介助者の助けを借りずに通院できる方は「通院が容易」と判断され、対象外になるとされています。

ただし、認知症や精神疾患によって外出自体が困難な場合も「通院困難」に含まれることがあります。判断に迷うケースでは、主治医が医学的な根拠をもってカルテに記載することが求められます。

患者さんの署名付き同意書は算定の必須条件になる

訪問診療を開始するには、患者さんまたはご家族などの署名が入った同意書が必要です。

同意書の書式に厳密な規定はありませんが、訪問診療の計画内容や頻度、費用の目安などを記載し、患者さんに十分な説明を行ったうえで署名をいただくのが一般的です。

同意書はカルテに添付して保管します。後から監査で確認されることもあるため、作成日や説明内容の記録も合わせて残しておくことが大切です。

初診日の訪問では訪問診療料1を算定できない

意外と見落としがちなルールとして、初診料を算定する日に訪問して診療を行った場合は、訪問診療料1を算定できないという規定があります。

初回の訪問では往診料と初診料を算定し、2回目以降の計画的な訪問から訪問診療料1を算定する流れになります。

また、再診料や外来診療料との同時算定も認められていません。訪問診療料にはこれらの基本診療料が含まれている、と考えるとわかりやすいでしょう。

算定要件内容備考
通院困難疾病・傷病により自力通院が難しい独歩可能な場合は原則対象外
同意書患者さん本人または家族の署名が必要カルテに添付・保管
計画的管理訪問診療計画を作成し定期訪問訪問日・内容をカルテ記載
初診日の除外初診料算定日は訪問診療料を算定不可往診料+初診料で対応

在宅患者訪問診療料2はどんな場面で使われるのか

訪問診療料2は、主治医だけではカバーしきれない専門的な医療ニーズがある場合に、複数の医療機関が連携して在宅医療を提供するための報酬です。

2018年の改定で導入されたこの仕組みにより、在宅患者さんが受けられる医療の幅が大きく広がりました。

主治医からの「依頼」がなければ算定できない

訪問診療料2の算定で最も重要な条件は、主治医側の医療機関からの具体的な診療依頼があることです。患者さんや家族から直接依頼を受けて訪問した場合は、訪問診療料2ではなく往診料として算定することになります。

依頼元の主治医は、在宅時医学総合管理料(在医総管)、施設入居時等医学総合管理料(施設総管)、または在宅がん医療総合診療料のいずれかの算定要件を満たしている必要があります。

依頼を受けた医療機関の数に制限はない

主治医が複数の医療機関に訪問診療を依頼することは認められており、依頼先の数に上限はありません。たとえば皮膚科、眼科、歯科など、それぞれの専門医が1人の患者さんのもとを訪問することも可能です。

  • 皮膚科の褥瘡(じょくそう)ケアや慢性湿疹の治療
  • 眼科の白内障・緑内障の経過観察
  • 整形外科の関節拘縮に対するリハビリ評価
  • 精神科の認知症に伴う行動・心理症状への対応

診療内容の報告と情報共有は訪問後に速やかに行う

訪問診療料2を算定した医療機関は、診療内容を主治医側に速やかに報告しなければなりません。報告にはICT(情報通信技術)の活用も推奨されています。カルテには主治医から依頼された傷病名も記載する必要があります。

こうした連携のルールがあることで、複数の医師が関わっていても情報の抜け漏れを防ぎ、患者さんにとって安全な医療を維持できるようになっています。

6ヶ月の期間制限と例外になるケース

訪問診療料2は、原則として訪問開始月から6ヶ月までしか算定できません。

ただし例外があり、専門医でなければ困難な診療が継続的に必要な場合や、末期がん・神経難病など厚生労働大臣が定める疾病等の患者さんについては、6ヶ月を超えても算定が認められます。

6ヶ月を超えて算定する場合は、おおむね6ヶ月ごとに依頼元の医療機関に対して診療状況の情報提供を行い、レセプト(診療報酬明細書)の摘要欄にその旨を記載する必要があります。

在宅患者訪問診療料1と2の点数を比較表で一目瞭然に整理した

訪問診療料1と2の点数差は、同一建物居住者以外の場合でわずか4点です。しかし「同一建物居住者」に該当する場合は26点もの開きがあるため、患者さんの居住環境によって自己負担額に差が生まれます。

同一建物居住者以外の場合と同一建物居住者の場合の点数

令和6年度(2024年度)診療報酬改定後の点数は以下のとおりです。1点あたり10円で計算するため、888点は8,880円に相当します。自己負担割合が1割の方であれば、888円が1回あたりの訪問診療料の自己負担額となります。

2割負担の方なら1,776円、3割負担の方なら2,664円です。訪問診療料2の884点でも大きな差はありませんが、同一建物居住者の場合はかなり低い点数に設定されていることがわかります。

点数差はわずかでも算定回数で総額に差が出る

訪問診療料1は週3回まで算定できるため、月に最大12回前後の訪問が可能です。一方、訪問診療料2は月1回が上限です。仮にすべて同一建物居住者以外で算定した場合、訪問診療料だけで比較しても月額の差はかなり大きくなります。

もちろん実際の在宅医療では、訪問診療料に加えて在宅時医学総合管理料や各種検査料、処置料なども発生しますので、訪問診療料の点数だけで医療費全体を判断することはできません。あくまで費用構成の一部として参考にしてください。

加算を含めた総点数も見落とさないようにしたい

訪問診療料には、乳幼児加算(400点)、患家診療時間加算(30分ごとに100点)、在宅ターミナルケア加算(3,500〜6,500点)などが上乗せされる場合があります。

特に在宅ターミナルケア加算は訪問診療料1を算定している場合にのみ加算できるため、訪問診療料2では算定できない点に注意が必要です。

区分訪問診療料1訪問診療料2
同一建物居住者以外888点884点
同一建物居住者213点187点
算定上限週3回まで月1回まで
ターミナルケア加算算定可算定不可

訪問診療料1と2で算定回数・期間がこれほど違う

訪問診療料1は「週3回まで・期間制限なし」、訪問診療料2は「月1回まで・原則6ヶ月」と、算定できる頻度と期間に大きな差があります。この違いは、主治医と依頼医という役割の違いに基づいています。

訪問診療料1が週3回までとされる理由

主治医として継続的に診療を行う訪問診療料1は、1日につき1回、週3回を上限として算定できます。たとえば月曜・水曜・金曜に定期訪問するケースが典型的です。

ただし、厚生労働大臣が定める疾病等(末期がん、神経難病、気管カニューレを使用している方など)に該当する場合は、週3回の制限を超えて算定できます。

急性増悪時には14日間の頻回訪問も認められる

患者さんの状態が急に悪化した場合、主治医が医学的に必要と判断すれば、月1回に限り、診療日から14日以内の訪問について14日を限度に頻回訪問加算を算定できます。

項目訪問診療料1訪問診療料2
算定頻度1日1回・週3回まで月1回まで
期間制限なし原則6ヶ月
頻回訪問急性増悪時に14日間可能規定なし
特定疾病の例外週3回制限の解除6ヶ月制限の解除

訪問診療料2の「6ヶ月ルール」を正しく押さえる

訪問診療料2は訪問開始月を含めて6ヶ月が算定期間の上限です。6ヶ月を過ぎると原則として算定できなくなりますが、先述のとおり専門医による診療が引き続き必要な場合や特定疾病の患者さんでは延長が認められます。

延長が認められた場合でも、再び6ヶ月ごとに主治医への情報提供が求められるため、連携体制の継続が大前提となります。

「同一建物居住者」かどうかで訪問診療料の点数がここまで変わる

訪問診療料1では同一建物居住者以外が888点であるのに対し、同一建物居住者は213点と、4分の1以下に下がります。この点数差は患者さんの自己負担にも直結するため、仕組みを正しく知っておきたいところです。

「同一建物居住者」とはどんな患者さんを指すのか

同一建物居住者とは、同一の建物に住む複数の患者さんに対して、同じ医療機関が同じ日に訪問診療を行った場合の「その患者さん」を指します。

たとえばマンションに住むAさんとBさんを同じ日に訪問すれば、AさんもBさんも同一建物居住者として扱われます。

ただし、同一世帯の2人以上に訪問診療を行った場合は、1人目は「同一建物居住者以外」として高い点数で算定し、2人目以降は初診料や再診料を算定する形になるなど、細かなルールが設けられています。

1人だけの訪問なら「同一建物居住者以外」で算定できる

たとえ集合住宅に住んでいても、その日にその建物で訪問診療を受ける患者さんが1人だけであれば、「同一建物居住者以外」として888点(訪問診療料1の場合)で算定します。

あくまでも「同日・同建物・複数人」のすべてが揃ったときに低い点数が適用されるわけです。

施設入居者への訪問で気をつけたいポイント

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの施設に入居する患者さんを訪問する場合は、同一建物居住者に該当しやすくなります。

施設側と訪問日程を調整する際には、この点数の仕組みを踏まえたうえで計画を立てるのが望ましいです。

なお、有料老人ホーム等に「併設」された医療機関がその施設の入居者を診療する場合は、訪問診療料(I)ではなく訪問診療料(II)の150点を算定する点も覚えておきましょう。

  • 同日・同建物・複数人への訪問で「同一建物居住者」に該当
  • 同一建物でも訪問が1人だけなら「同一建物居住者以外」で算定
  • 同一世帯内の2人目以降は初・再診料で算定
  • 併設医療機関による施設入居者への訪問は訪問診療料(II)150点

在宅患者訪問診療料に上乗せできる主な加算はこれだけある

訪問診療料の基本点数だけでなく、患者さんの年齢や診療内容、看取りの有無などに応じてさまざまな加算が設けられています。加算の種類を把握しておくと、請求書の内容が理解しやすくなります。

乳幼児加算と患家診療時間加算

加算名点数条件
乳幼児加算400点6歳未満の患者への訪問診療
患家診療時間加算100点(30分ごと)診療時間が1時間を超えた場合
在宅ターミナルケア加算3,500〜6,500点在宅で死亡した患者(訪問診療料1のみ)
看取り加算3,000点死亡日に患家で看取った場合
死亡診断加算200点患家で死亡診断を行った場合

在宅ターミナルケア加算は訪問診療料1でのみ算定できる

在宅で最期を迎える患者さんに対して、死亡日および死亡日前14日以内に2回以上の往診や訪問診療を行った場合、在宅ターミナルケア加算を算定できます。

ただし、この加算は訪問診療料1を算定している場合に限られ、訪問診療料2では算定できません。

在宅療養支援診療所(在支診)や在宅療養支援病院(在支病)の場合は、さらに在宅緩和ケア充実診療所・病院加算(1,000点)や在宅療養実績加算(500〜750点)が上乗せされることもあります。

令和6年度改定で新設・見直しされた加算にも注目したい

2024年の診療報酬改定では、ICTを活用した連携体制に対する「在宅医療情報連携加算」(100点)や、在宅がん患者の急変時に関する「在宅がん患者緊急時医療情報連携指導料」(200点)が新設されました。

在支診・在支病以外の医療機関が往診を行った際の「往診時医療情報連携加算」(200点)も追加され、地域の医療機関同士がICTで情報を共有しながら在宅医療を支える体制が評価されるようになっています。

こうした動きは、患者さんにとっても安心材料の1つといえるでしょう。

よくある質問

在宅患者訪問診療料1と2では自己負担額にどれくらいの差が出ますか?

同一建物居住者以外の場合、訪問診療料1は888点(8,880円)、訪問診療料2は884点(8,840円)で、1回あたりの差額は40円です。1割負担の方であれば差はわずか4円にとどまります。

ただし訪問診療料1は週3回まで算定できるのに対し、訪問診療料2は月1回が上限です。そのため月間の合計額で比較すると、訪問頻度の違いによって大きな差が生まれます。

在宅患者訪問診療料2を6ヶ月以上続けて算定できるのはどんな場合ですか?

原則として訪問開始月から6ヶ月が上限ですが、例外が3つあります。

1つ目は、その診療科の専門医でなければ対応が難しい診療が必要な場合です。2つ目は、すでに診療していた傷病とは明らかに異なる新たな傷病への対応が求められる場合です。

3つ目は、末期がんや神経難病など厚生労働大臣が定める疾病等に該当する患者さんの場合です。延長時にはおおむね6ヶ月ごとに依頼元の主治医へ診療状況を報告する義務があります。

在宅患者訪問診療料1と往診料は同時に算定できますか?

同一日に訪問診療料と往診料を同時に算定することはできません。ただし、定期的な訪問診療を行った後にその日のうちに患者さんの状態が急変し、改めて往診を行った場合には、往診料を別途算定できるケースがあります。

逆に、往診を行った翌日に訪問診療を実施した場合は、原則として訪問診療料を算定できません。訪問診療と往診の区別は「計画的な訪問か、緊急の求めに応じた訪問か」で判断されます。

在宅患者訪問診療料の算定には距離の制限がありますか?

在宅患者訪問診療料と往診料に共通して、患者さんの居住地が医療機関から半径16km以内であることが原則的な条件です。16kmを超える場合は、その地域にほかに対応できる医療機関がないなどの「絶対的な理由」が必要とされます。

患者さんの希望だけでは16kmを超える訪問診療は認められないことがあるため、医療機関の選定にあたっては距離も1つの判断材料になります。

在宅患者訪問診療料2を算定する医療機関の数に上限はありますか?

訪問診療料2を算定する医療機関の数に上限はありません。主治医の医療機関が在宅時医学総合管理料などの要件を満たしていれば、皮膚科・眼科・整形外科など複数の専門医療機関に訪問診療を依頼できます。

それぞれの医療機関が月1回・原則6ヶ月の範囲で訪問診療料2を算定するかたちです。依頼先が増えても主治医との情報共有が適切に行われていれば、制度上の制限はかかりません。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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