グループホームで訪問看護は利用できる?医療保険・介護保険別の条件と制限

グループホームに入居しているご家族が体調を崩したとき、「訪問看護に来てもらえないだろうか」と不安を感じる方は少なくありません。結論から言えば、グループホームでも訪問看護は利用できます。
ただし、介護保険での利用は原則としてできず、医療保険による利用が基本となります。対象になるのは、主治医から特別訪問看護指示書が交付された方や、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する方です。
この記事では、グループホームで訪問看護を利用するための条件や費用、介護職員との連携のポイントまでを、在宅診療に長く携わってきた立場からわかりやすく解説します。
グループホームの入居者が訪問看護を受けるには「医療保険」がカギになる
グループホームの入居者が訪問看護を利用する場合、原則として医療保険での対応となります。グループホーム自体が介護保険サービスとして運営されているため、介護保険の訪問看護との併用には制限があるからです。
そもそもグループホームとは認知症の方が少人数で暮らす住まい
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは、認知症の診断を受けた要支援2以上の方が、5人から9人程度の少人数で共同生活を送る介護施設です。利用者はスタッフの支援を受けながら家事を分担し、家庭に近い環境で暮らします。
入居条件は65歳以上で、要支援2または要介護1以上の認知症の方が対象です。地域密着型の施設のため、施設と同じ市区町村に住民票があることも求められます。
介護保険の訪問看護はグループホーム入居中だと原則として使えない
グループホームそのものが介護保険のサービスに位置づけられています。そのため、他の介護保険サービスである訪問看護を同時に利用することには制限がかかります。
| 保険の種類 | グループホームでの訪問看護 |
|---|---|
| 介護保険 | 原則として利用不可 |
| 医療保険 | 条件を満たせば利用可能 |
医療保険なら一定の条件を満たせば訪問看護を受けられる
グループホームに入居中でも、医療保険であれば訪問看護が認められるケースがあります。具体的には、主治医から「特別訪問看護指示書」が交付された場合と、「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当する場合の2つです。
どちらのケースにおいても、主治医の判断と指示書の交付が前提となります。訪問看護の利用を検討する際は、まずかかりつけの主治医に相談するところから始めましょう。
特別訪問看護指示書があればグループホームでも訪問看護は受けられる
グループホームの入居者が訪問看護を利用できる1つ目の条件は、主治医から特別訪問看護指示書が交付されている場合です。急な病状の変化や一時的に医療管理が必要になったときに、この指示書が発行されます。
特別訪問看護指示書は主治医が「緊急に必要」と判断したときだけ交付される
特別訪問看護指示書とは、入居者の病状が急に悪化したり、一時的に頻繁な医療的ケアが必要になった場合に、主治医が緊急性を判断して発行する書類です。
通常の訪問看護指示書とは異なり、急性増悪やがん末期など特別な状況に限って交付されるものとなっています。
この指示書があれば、グループホームに訪問看護師が訪問し、医師の指示に基づいた看護を提供できます。点滴や注射、創傷処置、痛みのコントロールなど、介護職員では対応が難しい医療行為も含まれるでしょう。
指示書の有効期間は原則14日間で月1回まで
特別訪問看護指示書には有効期間が定められており、交付日から14日間が上限です。また、交付は原則として月に1回までとなっています。
ただし、気管カニューレを使用している方や、真皮を越える褥瘡(床ずれ)がある方については、月2回まで交付が認められるケースもあります。
14日間を超えて訪問看護が必要な場合は、改めて主治医に相談して指示書の再交付を受ける必要があります。病状が安定すれば、指示書の交付なく訪問看護は終了となるため、あくまでも一時的な医療対応であることを押さえておきましょう。
特別訪問看護指示書が出ると1日複数回・毎日の訪問も可能になる
通常の医療保険による訪問看護では、週3回までという回数制限があります。しかし、特別訪問看護指示書が交付されると、この制限が外れ、1日に複数回の訪問や毎日の訪問も認められるようになります。
たとえば、がん末期で痛みのコントロールが必要な場合や、急性肺炎で頻回な観察が求められる場合など、集中的な看護が提供されます。
グループホームの介護職員だけでは対応しきれない医療的なケアを、訪問看護師が担うことで入居者の安心と安全が守られるのです。
- 急性増悪時は1日に2回から3回の訪問も可能
- 指示書の有効期間中は毎日の訪問が認められる
- 夜間・早朝の緊急訪問にも対応できる場合がある
厚生労働大臣が定める疾病等に該当すれば週4日以上の訪問看護も利用できる
グループホームで訪問看護を受けられるもう1つの条件は、「厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)」に該当する場合です。
この対象疾病に当てはまる方は、介護保険の認定を受けていても医療保険での訪問看護が優先され、回数の制限も大幅に緩和されます。
別表第7に記載された19疾病と1つの状態が対象になる
厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)には、末期の悪性腫瘍をはじめ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病関連疾患など、19種類の疾病と「人工呼吸器を使用している状態」が含まれます。
注意したいのは、難病と診断されたすべての方が自動的に対象になるわけではない点です。別表第7に記載されている疾病に限られるため、主治医や訪問看護ステーションに確認することが大切です。
訪問看護指示書の「主たる傷病名」に該当疾病の記載が必要になる
別表第7に該当する疾病があっても、訪問看護指示書の「主たる傷病名」の欄にその疾病名が記載されていなければ、医療保険の訪問看護は利用できません。
たとえばパーキンソン病であれば、ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であること、かつ生活機能障害度がII度またはIII度であることが条件となります。
| 区分 | 疾病名の例 |
|---|---|
| 悪性腫瘍 | 末期の悪性腫瘍(がん) |
| 神経系疾患 | ALS、多発性硬化症、脊髄小脳変性症 |
| 筋疾患 | 進行性筋ジストロフィー症 |
| その他 | 後天性免疫不全症候群、頸髄損傷 |
| 状態 | 人工呼吸器を使用している状態 |
回数制限が緩和され複数の訪問看護ステーションも利用できる
別表第7に該当する疾病の方は、通常の「週3回まで」「1日1回まで」という制限が外れます。週4日以上の訪問が可能となり、1日に2回から3回の複数回訪問も認められます。
さらに、2か所の訪問看護ステーションからサービスを受けることもできます。週7日の訪問看護が計画されている場合は、3か所のステーションの利用も可能です。
病状に応じた手厚い看護体制を組めるため、グループホームで暮らしながらでも安心して療養を続けられるでしょう。
医療連携体制加算でグループホームと訪問看護ステーションはつながれる
グループホームが訪問看護ステーションと業務委託契約を結ぶことで、「医療連携体制加算」を算定し、入居者に看護サービスを提供する方法もあります。この仕組みは、グループホーム側の医療対応力を底上げするうえで大きな役割を果たしています。
医療連携体制加算にはI・II・IIIの3つの区分がある
医療連携体制加算は、グループホームが看護体制を整備していることを評価する加算です。区分は3段階に分かれており、それぞれ算定要件と単位数が異なります。
加算Iは、看護師を職員として常勤換算1名以上配置し、24時間の連絡体制を確保している場合に算定できます。
加算IIとIIIは看護体制や医療ニーズへの対応度合いに応じて設定されており、グループホームが提供できる医療的ケアの範囲によって区分が変わります。
グループホームと訪問看護ステーションの業務委託契約で看護師を確保できる
グループホーム自体に看護師が常勤していない場合でも、外部の訪問看護ステーションと業務委託契約を結ぶことで看護師を確保する方法があります。
この契約により、訪問看護ステーションの看護師がグループホームに定期的に訪問し、入居者の健康管理やバイタルチェック、服薬管理などを行います。
ただし、業務委託の場合は看護師としての職務に専従する必要があり、介護業務との兼務はできません。契約内容やスケジュールについては、グループホームと訪問看護ステーションの間で事前に取り決めておきましょう。
加算の自己負担額は月額で数百円から数千円程度
医療連携体制加算にかかる費用は、グループホームの月額利用料に上乗せされる形で利用者が負担します。たとえば、医療連携体制加算(I-イ)の場合、1単位を10円として計算すると、1割負担の方で月額1,710円程度の負担となります。
加算の区分や利用者の負担割合(1割から3割)によって実際の金額は変動しますので、入居前にグループホームの担当者へ確認しておくと安心でしょう。
| 加算区分 | 内容の概要 | 自己負担の目安(1割) |
|---|---|---|
| 加算I-イ | 看護師配置+24時間連絡体制 | 約1,710円/月 |
| 加算I-ロ | 看護師配置(日中のみ) | 約1,200円/月 |
| 加算II・III | 医療ニーズへの高度な対応体制 | 加算Iより高額 |
グループホームで訪問看護を利用するときの費用負担は年齢と所得で異なる
グループホームで医療保険の訪問看護を利用した場合、自己負担額は利用者の年齢と所得に応じて1割から3割の範囲で決まります。全額を自分で支払うわけではないため、経済的な不安を過度に抱える必要はありません。
医療保険を使った訪問看護の自己負担は年齢・所得で1割から3割に分かれる
医療保険の自己負担割合は、年齢と所得によって異なります。75歳以上の方は原則1割負担ですが、現役並みの所得がある方は3割負担となります。70歳から74歳の方は原則2割で、こちらも現役並み所得者は3割です。
69歳以下の方は原則3割負担となりますが、グループホームの入居者は65歳以上の認知症の方が大半を占めるため、多くの場合は1割または2割の負担に収まるでしょう。
訪問看護基本療養費を基準にした料金のしくみ
訪問看護の料金は、国が定めた診療報酬に基づいて計算されます。基本となるのは「訪問看護基本療養費」で、訪問1回あたりの時間や訪問する職種によって金額が変わります。
| 年齢区分 | 自己負担割合 |
|---|---|
| 75歳以上 | 原則1割(現役並み所得者は3割) |
| 70歳〜74歳 | 原則2割(現役並み所得者は3割) |
| 69歳以下 | 原則3割 |
高額療養費制度や公費負担医療制度で負担をさらに抑えられる
ひと月の医療費が一定額を超えた場合は、「高額療養費制度」を利用して自己負担額に上限を設けられます。上限額は年齢と所得区分によって決まっており、申請することで超過分が払い戻されます。
また、指定難病の認定を受けている方は、「特定医療費助成制度」によって自己負担がさらに軽減される場合があります。
このほか、生活保護を受けている方は医療費の自己負担が免除となるケースもあるため、利用できる制度がないかケアマネジャーや市区町村の窓口で確認してみてください。
グループホームの介護職員と訪問看護師がうまく連携するために押さえたいこと
グループホームで訪問看護を導入する際は、施設の介護職員と訪問看護師の連携が欠かせません。お互いの役割を明確にし、日常的な情報共有を丁寧に行うと、入居者に質の高いケアを届けられます。
ケアマネジャーを中心にした情報共有の体制づくり
訪問看護師がグループホームに入るとき、介護職員との間で「誰が・何を・いつ行うのか」を明確にしておくことが大切です。調整役を担うケアマネジャーがケアプランのなかで訪問看護の位置づけを明記しておくと、現場の混乱を防げます。
訪問看護師が不在の時間帯における入居者の食事量や睡眠の質、気分の変動などを介護職員が記録し共有することも、看護師にとって貴重な判断材料となります。
介護職員と訪問看護師で担当する業務の線引きをはっきり決めておく
介護と看護の役割分担があいまいなままだと、サービスの重複や抜け漏れが生じかねません。
たとえば、入浴介助はグループホームの介護職員が行い、入浴後の軟膏塗布や創傷の処置は訪問看護師が行うといった具体的な線引きが求められます。
また、バイタルサイン(血圧・体温・脈拍など)の測定を日々行うのは誰か、異常値が出たときに誰に連絡するのかといった手順も、あらかじめ決めておくと緊急時にも慌てずに済みます。
看取り期の訪問看護では家族との密な連絡が欠かせない
多くのグループホームでは、入居者が人生の最期をその場所で迎えられるよう「看取りケア」にも対応しています。終末期に入ると、訪問看護師の訪問頻度は増え、痛みの緩和や呼吸管理など専門的なケアが中心となります。
この時期は、入居者のご家族に対して病状の変化や今後の見通しを丁寧に伝えることが大切です。訪問看護師と介護職員がそれぞれの立場からご家族を支え、チーム全体で寄り添う姿勢が問われます。
- 訪問看護師の訪問時間と介護職員のシフトをすり合わせる
- 日々のバイタル記録や食事量を共有ノートやICTツールで管理する
- 緊急時の連絡フローを全スタッフに周知しておく
グループホーム以外で訪問看護を受けられる介護施設も選択肢に入れておこう
グループホームでの訪問看護には制限が多いため、医療的なケアが日常的に必要になった場合は、他の施設への移行も視野に入れておくと安心です。訪問看護の利用条件は施設の種類によって大きく異なります。
介護付き有料老人ホームは施設内の看護師がケアを担当する
介護付き有料老人ホームは介護保険上の「特定施設」に指定されているため、介護保険による外部の訪問看護は原則として利用できません。
そのかわり、施設の人員基準として看護師の配置が義務づけられており、日中帯は看護師が常駐して入居者の健康管理や医療的ケアを提供します。
| 施設の種類 | 訪問看護の利用可否 | 備考 |
|---|---|---|
| グループホーム | 医療保険のみ(条件あり) | 特別指示書または指定疾病が必要 |
| 介護付き有料老人ホーム | 原則不可 | 施設内看護師が対応 |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 介護保険・医療保険とも可能 | 特定施設でない場合 |
| 小規模多機能型居宅介護 | 宿泊中は医療保険のみ | 自宅滞在時は両保険とも可能 |
サービス付き高齢者向け住宅なら介護保険でも医療保険でも訪問看護を利用できる
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のうち、特定施設の指定を受けていない施設なら、入居者は自宅と同じ扱いになります。介護保険でも医療保険でも訪問看護を利用できるのが大きな利点です。
医療ニーズが高まってきた段階でグループホームからサ高住への住み替えを検討する方も増えています。
ただし、サ高住は認知症ケアに特化した施設ではないため、認知症の症状が進んでいる場合は受け入れの可否を事前に確認しておく必要があるでしょう。
小規模多機能型居宅介護は宿泊中の訪問看護に制限がある
小規模多機能型居宅介護は、「通い」「泊まり」「訪問」を柔軟に組み合わせるサービスです。
自宅にいるときは介護保険・医療保険いずれの訪問看護も利用できますが、宿泊サービスを利用しているときは介護保険での訪問看護が認められていません。
宿泊中でも、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する方や、特別訪問看護指示書が交付されている方であれば、医療保険での訪問看護を受けることは可能です。
グループホームと同様の制限がある点を理解したうえで、どの施設が自分やご家族の状態に合っているかを検討しましょう。
よくある質問
- グループホームに入居中でも訪問看護を利用できる条件にはどのようなものがありますか?
-
グループホームに入居している方が訪問看護を利用するには、医療保険での対応が基本です。主治医から特別訪問看護指示書が交付されている場合と、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当する場合の2つが主な条件となります。
いずれのケースでも、まずかかりつけの主治医に相談し、訪問看護の必要性を判断してもらうことが出発点です。介護保険での訪問看護は原則利用できないため、適用される保険を事前に確認しておきましょう。
- グループホームでの訪問看護に介護保険が使えないのはなぜですか?
-
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、それ自体が介護保険のサービスとして運営されています。
介護保険では同種のサービスを重複して利用することに制限があるため、外部の介護保険サービスである訪問看護との併用が原則として認められていません。
ただし、グループホームが自らの費用負担で訪問看護ステーションと契約し、入居者に看護サービスを提供することは制度上認められています。この場合は「医療連携体制加算」として利用者の月額費用に反映される仕組みです。
- グループホームで訪問看護を受けた場合の費用はどのくらいかかりますか?
-
医療保険での訪問看護を利用した場合、自己負担額は利用者の年齢や所得に応じて1割から3割の範囲です。75歳以上の方は原則1割、70歳から74歳は原則2割となります。
訪問1回あたりの料金は、訪問看護基本療養費に加えて各種加算が発生するため、訪問時間や内容によって変わります。
ひと月の医療費が高額になった場合は高額療養費制度を利用できるほか、指定難病の認定を受けている方は特定医療費助成制度の対象となる場合もあるため、利用できる制度をケアマネジャーに確認してみましょう。
- グループホームから退去を求められるほど医療ニーズが高まったらどうすればよいですか?
-
グループホームは医療機関ではないため、継続的に高度な医療処置が必要になった場合、退去を勧告されることがあります。訪問看護の利用と並行して、他の施設への移行も選択肢として把握しておきましょう。
サービス付き高齢者向け住宅なら介護保険・医療保険の両方で訪問看護を利用でき、介護付き有料老人ホームなら施設内に看護師が常駐しています。ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しながら、早めに検討しておくと安心です。
- グループホームでの訪問看護ではどのようなサービスを受けられますか?
-
グループホームでの訪問看護は、主治医の指示に基づいて提供されます。バイタルサインの測定、点滴・注射などの医療処置、褥瘡(床ずれ)の予防と処置、服薬管理、痛みの緩和ケアなどが含まれます。
認知症に伴う不安や興奮への対応や、ご家族の介護相談に応じることも訪問看護師の役割です。終末期には痛みのコントロールや呼吸管理を中心とした看取りケアも提供されます。


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