退院時に揃えるべき在宅医療の準備物品リスト|ベッド・吸引器・衛生材料

退院時に揃えるべき在宅医療の準備物品リスト|ベッド・吸引器・衛生材料

退院後の在宅医療をスムーズに始めるには、入院中の早い段階から準備物品の手配に着手することが大切です。ベッドや吸引器など大型の医療機器は納品までに数日かかるため、後回しにすると退院日に間に合わないおそれがあります。

ガーゼ・消毒液・おむつといった衛生材料は毎日消費する消耗品です。初回は2週間分を目安にまとめて確保し、補充ルートもあらかじめ確認しておくと安心でしょう。

退院前に揃えておきたい物品を分野ごとに整理し、手配先やレンタル・購入の判断基準まで具体的にまとめました。

目次

退院前に在宅医療の準備物品を手配する段取りと優先順位

在宅医療の準備物品は、退院日が決まったらすぐに手配を始めるのが原則です。手配先や納品日数は品目ごとに異なるため、優先順位を決めて動くと退院日までに無理なく揃えられます。

退院前カンファレンスで物品リストをまとめておく

退院前カンファレンスは、主治医・看護師・ソーシャルワーカー・ケアマネジャーが集まり、退院後に必要な物品やサービスを確認する場です。この場で作った物品リストが、手配の出発点になります。

カンファレンスに参加する際は、自宅の間取りや段差の有無、エレベーターの有無などをメモしておくとよいでしょう。ベッドの搬入経路や酸素濃縮器の設置場所を検討するとき、住宅の情報があると担当者がスムーズに手配を進められます。

退院前カンファレンスが開かれない場合でも、担当看護師や医療ソーシャルワーカーに相談すれば個別に物品リストを作成してもらえます。遠慮せず声をかけてみてください。

介護保険と医療保険で手配できる物品を把握する

在宅医療で使う物品には、介護保険でレンタルできるもの、医療保険で支給されるもの、全額自費で購入するものがあります。区分を知っておくだけで費用の見通しが立ちやすくなるでしょう。

区分主な物品例
介護保険レンタル介護用ベッド、車いす、歩行器
医療保険で支給吸引カテーテル、ガーゼ、在宅酸素
自費購入おむつ、清拭シート、市販の消毒液

介護保険を利用するには要介護認定が必要です。入院中に認定を申請しておくと、退院後すぐにレンタルを開始できます。認定が間に合わない場合は暫定的にサービスを利用できることもあるため、ケアマネジャーに確認してみましょう。

手配先と納品日数を逆算して退院日に間に合わせる

物品の手配先は、福祉用具貸与事業所、医療機器メーカー、調剤薬局、ドラッグストアなど多岐にわたります。退院日から逆算し、納品に時間がかかるものから順に発注するのが手配の基本です。

介護用ベッドは注文から搬入・組み立てまでに3日から1週間ほどかかることが一般的です。吸引器や在宅酸素濃縮器も設置と操作説明を含めると数日を見込む必要があるでしょう。

一方、ガーゼやおむつなどの消耗品はドラッグストアや通信販売で当日から翌日には入手できるため、後回しでも問題ありません。

介護用ベッド選びが退院後の在宅療養を左右する

退院が近づくと「ベッドはどれを選べばいいのか」と悩むご家族は多いものです。介護用ベッドは療養生活の土台となるため、身体状態と介護のしやすさの両面から機種を決めることが大切でしょう。

モーター数動く部分向いている方
1モーター背上げのみ自分で起き上がれる方
2モーター背上げ+高さ調整介助が部分的に必要な方
3モーター背上げ+脚上げ+高さ全介助が必要な方

モーター数で変わるベッドの機能と使い勝手

1モーターのベッドは背上げ機能だけを備えたシンプルなタイプです。ご自分で寝返りや起き上がりができる方に向いており、レンタル費用も比較的抑えられます。

2モーターになると背上げに加えて高さ調整が可能になり、介助者の腰への負担が軽くなります。車いすへの移乗が頻繁な方にとっては、高さ調整の有無が日々の介護負担を大きく変えるでしょう。

3モーターは背上げ・脚上げ・高さ調整のすべてを独立して操作できる仕様です。下肢のむくみがある方や、体位変換を細かく行う必要がある方に適しています。

褥瘡を防ぐマットレス選びで見落としがちな点は?

褥瘡(じょくそう=床ずれ)の予防には、ベッド本体よりもマットレスの選択が大きく影響します。体圧を分散する機能を持つマットレスを選ぶことで、長時間同じ姿勢でいても皮膚への負担を軽減できるでしょう。

マットレスには大きく分けてウレタンフォームタイプとエアマットレスタイプの2種類があります。ウレタンフォームは静かで操作も簡単ですが、自力で寝返りが打てない方にはエアマットレスのほうが体圧分散効果が高い傾向です。

見落としがちなのはマットレスの厚みとベッド柵の高さの関係です。厚いマットレスを載せると柵が相対的に低くなり、転落の危険が増す場合があります。購入やレンタルの前に、柵の高さとの組み合わせを必ず確認してください。

サイドレールや介助バーなどベッド周辺の付属品

ベッド本体とあわせて検討したいのが、サイドレール・介助バー・オーバーテーブルなどの周辺付属品です。転落防止や起き上がり動作の補助、食事・読書の利便性を高めるために活用します。

サイドレールは全長タイプと半分の長さのタイプがあり、利用者の動きやすさと安全性のバランスを考えて選びましょう。介助バーは立ち上がりの際に体重をかけて使うため、ベッドのフレームにしっかり固定できるものを選ぶことが重要です。

レンタルと購入はどちらが家計の負担を抑えられるか

介護用ベッドは介護保険の福祉用具貸与サービスを利用すれば、月額数百円から数千円の自己負担でレンタルできます。要介護2以上であればほとんどの介護用ベッドが対象となるため、多くの方にとってレンタルが費用面で有利といえます。

ただし長期間にわたって使う見込みがある場合や、介護保険の対象外となるケースでは購入を検討したほうがよいかもしれません。レンタルは身体状態の変化に応じて機種を交換しやすいという利点があるので、迷ったらまずレンタルから始めるのが無難でしょう。

吸引器と消耗品の準備で退院後の痰トラブルを防ぐ

在宅で痰の吸引が必要になる方は決して珍しくなく、高齢者や神経疾患のある方を中心に多くのご家庭で吸引器が使われています。退院前に吸引器と消耗品を一式揃えておけば、退院直後のトラブルを未然に防げるでしょう。

在宅で使いやすい吸引器の種類と選び方

在宅で使う吸引器には、据え置き型とポータブル型(携帯型)の2種類があります。据え置き型は吸引力が安定しており、自宅での据え付け使用に向いたタイプです。ポータブル型は外出先やベッドサイドの移動が多い場面で活躍するでしょう。

購入する際は、吸引圧の調整範囲・騒音レベル・お手入れのしやすさを比較するとよいでしょう。医療機器販売店で実際に音を確認してから決めると、夜間の使用時にも安心です。

吸引カテーテル・精製水・接続チューブなど消耗品の揃え方

吸引器本体とあわせて準備したいのが消耗品です。吸引カテーテルは使い捨てが基本で、1日に複数回使用するため退院時にはまとまった本数を用意しておく必要があります。

品目目安数量(2週間分)
吸引カテーテル30〜50本
精製水500ml × 4〜6本
接続チューブ2〜3本
アルコール綿1箱(100枚入)

消耗品は調剤薬局や医療機器販売店のほか、インターネット通販でも入手できます。初回の注文先を決めておくと、補充の際にもスムーズに対応できるでしょう。

家族が身につけておきたい吸引の基本手順と注意点

在宅での痰吸引は、医師や看護師から指導を受けたご家族が行う場合があります。退院前に病棟で実技指導を受け、実際にカテーテルを扱う練習をしておくと自信を持って対応できるでしょう。

吸引時はカテーテルを挿入する深さと吸引する時間に注意が必要です。深く入れすぎると粘膜を傷つけるおそれがあり、長時間の吸引は酸素不足を招く場合もあります。1回の吸引は10〜15秒を目安にし、利用者の表情や呼吸の様子を観察しながら行ってください。

不安がある場合は訪問看護師に立ち会いを依頼し、自宅環境での手技を確認してもらう方法もあります。1人で抱え込まず、専門職のサポートを活用しましょう。

衛生材料・消耗品は退院直後から毎日必要になる

衛生材料は療養生活のなかで最も消費量が多い物品です。退院当日から使い始めるものばかりなので、入院中に必要な種類と数量を確認しまとめて手配しておきましょう。

ガーゼ・テープ・消毒液など創傷ケアに使う衛生材料

褥瘡や手術後の傷がある方は、毎日の処置にガーゼ・医療用テープ・消毒液を使います。処置の内容は主治医や訪問看護師の指示に沿って行うため、退院前にどの種類をどれくらいの頻度で使うか確認しておきましょう。

ガーゼは滅菌済みの個包装タイプを選ぶと衛生的です。テープは肌質によってかぶれやすいものとそうでないものがあるため、入院中に使っていた製品と同じものを購入するのが安全でしょう。消毒液も種類が複数あるので、自己判断で別の製品に変えないよう注意してください。

創傷ケアに使う主な衛生材料

品目用途入手先
滅菌ガーゼ傷の保護・吸収薬局・通販
医療用テープガーゼの固定薬局・通販
消毒液創部の洗浄薬局
使い捨て手袋感染予防薬局・通販

おむつ・清拭シート・口腔ケア用品は日常生活の必需品

排泄ケアに使うおむつやパッドは、体格・吸収量・交換頻度に応じてサイズと種類を選びます。入院中に使っていたメーカーと品番を控えておくと、退院後も同じ使用感で継続できるでしょう。

清拭シートは入浴が難しい方の身体の清潔を保つために欠かせないアイテムです。温めて使えるタイプを選ぶと、利用者の快適さが高まるでしょう。口腔ケア用品はスポンジブラシや保湿ジェルなどがあり、誤嚥性肺炎の予防にも大きく寄与します。

おむつは自治体によって助成制度を設けている場合があります。要介護度や所得に応じて支給を受けられることもあるため、お住まいの市区町村の窓口に確認しておくとよいでしょう。

在宅医療で意外と見落としやすい衛生材料とは?

退院前の準備では、ガーゼやおむつのような主要品に目が向きがちです。しかし実際に在宅療養を始めると「あれも足りない」と気づく細かな消耗品が少なくありません。

たとえば体温計の予備電池、使い捨てエプロン、防水シーツ、ゴミ袋(医療廃棄物用)などは意外と盲点になりやすい物品です。退院直後に慌てて買い足す手間を省くためにも、看護師やケアマネジャーに「見落としがちなものはありませんか」と一言たずねてみてください。

在宅酸素や点滴関連など医療機器の手配と日常管理

在宅酸素療法や持続点滴が必要な場合は、専門の医療機器を退院日までに手配しなければなりません。いずれも医師の処方に基づいて業者が設置・説明を行うため、退院日の数日前には手配を完了させておくと安心です。

在宅酸素濃縮器の設置条件と業者への依頼方法

在宅酸素療法(HOT)を受ける方には、酸素濃縮器またはボンベが自宅に届けられます。酸素濃縮器は電源が必要なため、設置場所のコンセントの位置と電気容量を事前に確認しておくことが大切です。

業者への依頼は、病院の主治医が処方箋を出し、医療機器メーカーが搬入と操作説明を行う流れが一般的です。外出用の携帯ボンベもあわせて手配する場合は、その旨を早めに伝えておきましょう。

酸素濃縮器は運転中にわずかながら熱を発するため、壁や家具から10cm以上離して設置するようにしましょう。火気の近くには絶対に置かないよう、家族全員で共有しておいてください。

輸液ポンプや点滴スタンドは訪問看護と連携して準備する

持続点滴や栄養輸液を在宅で行う場合、輸液ポンプ・点滴スタンド・輸液セットなどの機材が必要です。病院から持ち帰るケースと、訪問看護ステーション経由で手配するケースがあります。

輸液ポンプのアラーム音の意味や電池交換の方法は、退院前に習っておくとトラブルを減らせます。操作が難しいと感じたら、訪問看護師に手順を書面にまとめてもらうと心強いでしょう。

点滴スタンドはキャスター付きが便利ですが、床にコードや段差があると転倒の原因になります。設置場所からトイレや居室への動線上に障害物がないか、退院前にチェックしておくことをおすすめします。

パルスオキシメーターや血圧計などモニタリング機器を揃える

在宅療養中は、日々のバイタルサイン(体温・血圧・脈拍・血中酸素飽和度)の測定が欠かせません。体温計と血圧計は多くのご家庭にありますが、パルスオキシメーター(SpO2測定器)は新たに用意する必要がある場合が多い機器です。

  • パルスオキシメーター(指先で血中酸素濃度を測定)
  • 家庭用血圧計(上腕式が精度の面で推奨)
  • 体温計(予測式なら短時間で測定可能)
  • 体重計(栄養状態や浮腫の評価に活用)

測定値を毎日記録しておくと、訪問診療時に医師が状態の変化を把握しやすくなります。記録用のノートやアプリもあわせて準備しておくと、日々の体調管理に役立つでしょう。

退院後の在宅医療を支える住環境の整備と連携体制

「物品さえ揃えれば在宅医療は始められる」と思われがちですが、住環境の調整と支援チームとの連携体制づくりも同じくらい大切です。退院日までに居室の準備と情報共有の仕組みを整えておきましょう。

居室のバリアフリー化と動線を確保する工夫

ベッドを設置する部屋は、介助者が両側から近づける広さを確保することが基本です。ベッドの片側を壁に寄せると省スペースにはなりますが、体位変換やシーツ交換の際に介助者の体に負担がかかりやすくなります。

段差がある場合は、簡易スロープや手すりの設置を検討しましょう。介護保険の住宅改修費支給制度を利用すると、上限20万円までの改修工事費のうち7〜9割を保険でまかなえます。

電源タップの増設やコード類の整理も忘れずに行ってください。医療機器は複数の電源を同時に使うため、たこ足配線による過熱や転倒リスクを避ける配慮が必要です。

訪問診療チームや訪問看護との情報共有で物品管理を円滑にする

在宅医療では、訪問診療医・訪問看護師・薬剤師・ケアマネジャーなど複数の専門職がかかわります。物品の過不足を防ぐには、誰がどの物品を管理し、いつ補充するかを事前に決めておくことが重要です。

情報共有の方法としては、自宅に「連絡ノート」を1冊置き、訪問のたびに使用した物品や残量を記入してもらうやり方が実用的でしょう。デジタルツールに慣れている方は、クラウド型の共有メモやチャットアプリを使う方法もあります。

定期的にケアマネジャーと物品の棚卸しを行い、使用量の変化に応じてレンタル品の追加や消耗品の発注量を見直すと、無駄な在庫や不足を防げます。

緊急時の連絡先と消耗品の補充ルートをまとめておく

退院後に急な体調変化が起きたとき、どこに連絡すればよいかを一覧にしておくと落ち着いて対応できます。以下の情報をリスト化しておくことをおすすめします。

  • 訪問診療クリニックの代表番号と時間外対応番号
  • 訪問看護ステーションの連絡先
  • 医療機器メーカーの緊急窓口(吸引器・酸素濃縮器の故障時)
  • 救急車を呼ぶ判断基準の目安

この一覧をベッドサイドや冷蔵庫の扉など、家族全員の目に入る場所に貼っておくと安心でしょう。消耗品の補充ルートも同じ紙に書き加えておけば、在庫が減ったときにすぐ発注できます。

よくある質問

在宅医療の準備物品は退院の何日前から手配を始めればよいですか?

退院日の2週間前を目安に手配を始めるのが望ましいでしょう。介護用ベッドや吸引器などの大型機器は注文から設置まで3日〜1週間ほどかかる場合があり、搬入日程の調整も含めると早めに動いたほうが余裕を持てます。

ガーゼやおむつなどの消耗品は比較的すぐに入手できるため、退院の数日前でも間に合うことがほとんどです。まずは納品に時間がかかる大型機器から着手してください。

在宅医療の準備物品のうち介護保険でレンタルできるものはどれですか?

要介護2以上の認定を受けている方は、介護用ベッド・車いす・歩行器・手すりなどを月額の自己負担でレンタルできます。要支援や要介護1の場合は対象となる品目が限られますが、主治医の意見書によって例外的にレンタルが認められることもあります。

具体的にどの物品が対象になるかは身体状態やケアプランによって異なるため、ケアマネジャーに状況を伝えて確認してもらうのがもっとも確実な方法でしょう。

在宅医療で使う吸引器の購入費用はどのくらいかかりますか?

据え置き型の吸引器は3万〜5万円程度、ポータブル型は2万〜4万円程度が目安です。機種によっては身体障害者手帳の日常生活用具給付の対象となり、自治体からの助成を受けられる場合があります。

購入前に市区町村の障害福祉担当窓口に問い合わせてみると、費用を抑えられる可能性があるでしょう。医療機器販売店でも助成制度の案内を受けられることが多いため、あわせて相談してみてください。

在宅医療で使う衛生材料が足りなくなったときはどこに連絡すればよいですか?

まず訪問看護師またはケアマネジャーに相談するのがスムーズです。衛生材料の種類によっては医師の処方が必要なものもあるため、自己判断で別の製品に切り替えるのは避けたほうが安全でしょう。

日常的に使うおむつや清拭シートなどの消耗品は、ドラッグストアや通信販売で補充できます。在庫がなくなる前に余裕を持って発注する習慣をつけておくと、急な不足を防げます。

退院後に在宅医療の準備物品を追加で揃える必要が出た場合はどうすればよいですか?

退院後に身体の状態が変わり、新たな物品が必要になるケースは珍しくありません。訪問診療の医師や訪問看護師に状況を伝えると、追加で必要な物品や手配先を案内してもらえます。

介護保険の福祉用具は身体状態の変化に応じて機種の変更やレンタル品の追加が可能です。遠慮せずにケアマネジャーに申し出てください。状態に合った物品をそのつど見直すことで、安全で快適な療養生活を続けられるでしょう。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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