在宅看取りで後悔しないために|よくある後悔の理由と事前に家族ができる備え

自宅で家族を見送った人が悔やむのは、自宅という場所を選んだ判断そのものではなく、決めておけたはずの事柄が空白のまま最期の時間へ入った点に集まります。
厚生労働省が令和4年度に行った意識調査では、人生の最終段階で受けたい医療やケアを家族などと話し合った経験がないと答えた一般国民が68.6%を占めていました。迷いの土台の多くは、この空白から生まれています。
よくある後悔を型ごとに整理したうえで、話し合いの持ち方、急変したときの連絡の順番、介護の分け方、見送ったあとの気持ちの置き場まで、家族が前もって手を打てる部分を並べていきます。
在宅看取りの後悔は選んだ結果より準備の空白から生まれる
後になって悔やまれるのは、自宅を選んだ判断そのものよりも、決められたはずの事柄を決めないまま最期の時間へ入った点です。後悔の型が見えると、前もって手を打てる場所もはっきりしてきます。
| よく聞かれる後悔 | 背景にあるもの | 前もって手を打てる部分 |
|---|---|---|
| 本人の望みを聞かないまま決めてしまった | 話題にする機会を先延ばしにしていた | 体調の落ち着いている時期に希望を聞き、書き留めておく |
| とっさに救急車を呼んでしまった | 呼吸が止まったときの連絡先が決まっていなかった | 夜間と休日の連絡先を紙に書いて電話のそばへ置く |
| 苦しそうな様子に何もできなかった | これから起きうる変化を聞いていなかった | 経過の見通しと、そのときに取れる手当てを主治医へ確かめる |
| 一人で抱え込んで余裕を失った | 役割を分けないまま介護が始まった | 訪問看護や介護サービス、親族の役割を先に割り振る |
| もっと話しておけばよかった | 介助や家事に追われて会話が後回しになった | 調子のよい時間帯を、日常の会話のために空けておく |
自宅を選んだ判断そのものを悔やむ家族は多くない
訪問診療の現場で家族から聞く言葉は、「自宅にしなければよかった」よりも「もっとこうしておけばよかった」に寄っています。悔いの向き先は場所の選択ではなく、そこで過ごした時間の中身です。
自宅は、本人が慣れた寝床で眠り、家族が台所からその寝息を聞ける環境を残してくれます。その良さを味わえたかどうかが、後から振り返ったときの手ざわりを大きく左右するでしょう。
一方で、家の中には当直の看護師も監視の機械もありません。何が起きうるかを知らないまま過ごせば、同じ時間が心細さに置き換わってしまいます。
決めなかった時間の分だけ後悔は積み上がる
見通しが変わった時点で話し合いを始めた家庭と、体調が落ち着いているあいだ話題を避けた家庭とでは、最期の一週間の慌ただしさがまるで違ってきます。
決めていない事柄は、いちばん余裕のない場面で一度に押し寄せてきます。呼吸が変わった夜に、どこへ電話し、何を望み、誰を呼ぶのかを同時に判断するのは、誰にとっても重すぎる作業でしょう。
逆に、前もって決めた事柄は当日の判断を確実に減らしてくれます。減った判断の分だけ、そばにいる時間が手元に残ります。
正解は家族ごとに違う
在宅看取りに唯一の正しい形はありません。仕事や住まいの造り、介護に加われる人数、本人の性格によって、無理のない形はそれぞれ違ってきます。
最期まで自宅で過ごした家庭もあれば、途中で入院に切り替えて穏やかな時間を持てた家庭もあります。どちらが上という話ではなく、その家族が納得できたかどうかだけが残ります。
よその家庭のやり方をそのまま当てはめると、かえって無理が出ます。自分たちが何を大事にしたいのかを言葉にしておく作業のほうが、後から効いてくるでしょう。
途中で方針を変えてもかまわない
一度自宅で看取ると決めたら最後まで貫かなければならない、という決まりはどこにもありません。方針を変える余地を残しておくほうが、かえって落ち着いて過ごせます。
厚生労働省のガイドラインも、本人の意思は時間の経過や心身の状態の変化に応じて変わりうるものとして扱い、そのつど話し合いを繰り返すよう求めています。
家族の側の事情が変わる場合もあります。介護する人が体調を崩したときに入院へ切り替える判断は、逃げではなく現実に合わせた選び直しです。
話し合っていなかったという在宅看取りの後悔がいちばん多い
厚生労働省が令和4年度に実施した意識調査では、人生の最終段階で受けたい医療やケアについて家族などと「話し合ったことはない」と答えた一般国民が68.6%にのぼりました。備えの出発点は、この空白を埋める話し合いに置かれます。
話し合った経験のある人は3割に届かない
同じ調査で「詳しく話し合っている」と答えた一般国民は1.5%、「一応話し合っている」は28.4%でした。合わせても3割ほどにとどまります。
話し合った経験がないと答えた人に理由をたずねると、「話し合うきっかけがなかったから」が62.8%で最も多く、「話し合う必要性を感じていないから」が21.8%と続きました。
話したくないから避けているというより、入り口が見つからないまま時間だけが過ぎている家庭が大半だと読み取れます。切り出す口実さえあれば、話は動き出すのでしょう。
厚生労働省が示す決め方の順番
厚生労働省は、人生の最終段階における医療やケアの方針をどう決めるかについてガイドラインを示しています。本人が医療・ケアチームと十分に話し合い、本人による意思決定を基本とするのが最も重要な原則だと書かれています。
同じ指針は、本人の意思が変わりうる前提に立ち、本人が自らの意思をそのつど示して伝えられるよう支え、話し合いを繰り返す大切さを説いています。一度書いて終わりにする仕組みではありません。
厚生労働省はこの取り組みに「人生会議」という愛称を付け、もしものときのために望む医療やケアを前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合って共有する取り組みだと説明しています。
もっとも、令和4年度の調査で人生会議を「知らない」と答えた一般国民は72.1%でした。名前を知らなくても、中身は家庭の食卓から始められます。
- 最期の時間を過ごしたい場所
- 受けたい手当てと、望まない処置
- 食事がとれなくなったときの望み
- 自分の代わりに決めてほしい人
- 最期に呼んでほしい人と、その順番
自分の代わりに決める人をあらかじめ選ぶ
ガイドラインは、本人が意思を伝えられなくなる場合に備えて、特定の家族等を自らの意思を推定する人として前もって定めておく大切さにも触れています。
本人の意思が確認できないとき、家族等が意思を推定できるなら、その推定意思を尊重して本人にとって最善の方針をとるのが基本です。推定できない場合には、本人に代わる者として家族等と十分に話し合い、最善の方針を探ります。
決める人を先に定めておくと、いざというときに親族のあいだで意見が割れにくくなります。選ばれた人の重荷を軽くするためにも、なぜその人なのかまで共有しておくと安心でしょう。
話した内容を医療と介護の側にも渡しておく
家庭の中だけで話が完結すると、肝心の場面で現場へ届きません。同じ調査では、話し合った内容を医療・介護従事者と「共有している」と答えた一般国民は15.8%にとどまりました。
話し合った相手も家族・親族が93.3%と大半で、医療や介護の担い手が加わる場面は多くありません。主治医や訪問看護師、ケアマネジャーへ内容を伝えておけば、夜中の電話でも話が早く進みます。
ガイドラインは、話し合った内容をそのつど文書にまとめておくよう求めています。手書きのメモでも、日付と同席した人の名前を添えておけば十分に役に立ちます。
救急車を呼ぶかどうかの迷いが後悔として長く残る
救急車を呼んだ家族が責められる筋合いはありません。ただ、呼ぶかどうかをその瞬間に初めて考えると迷いが長く残るため、連絡の順番だけは前もって決めておくと後悔がやわらぎます。
蘇生を望まない意思があっても救急隊はまず蘇生を始める
総務省消防庁の検討部会に提出された消防局の手順書には、心肺停止を確認したら、蘇生を希望しない旨の提示があるかどうかにかかわらず心肺蘇生を開始すると書かれています。
判断に迷うことがあれば心肺蘇生の継続を優先し、蘇生の中止はあくまで処置の中止であって死亡診断を意味しない、とも記されています。救急隊は救命のために呼ばれた立場だからです。
東京消防庁は、家族などが本人の意思を示した場合、かかりつけ医等に直接または訪問看護師等を経由して連絡すると公表しています。連絡先の医師が確認するのは、人生の最終段階にあるか、本人が蘇生を望まないか、想定された症状と現在の症状が合うかの3点です。
消防庁の資料は、心肺蘇生を望まない意思を表明した傷病者への対応が消防本部ごとに異なる点にも触れています。住んでいる地域でどう運用されているかを、主治医に一度たずねておくとよいでしょう。
呼吸が止まったと気づいたとき最初にかける先
在宅療養支援診療所には、患者さんの求めに応じて24時間往診できる体制と、24時間訪問看護を提供できる体制の確保を、厚生労働省の施設基準が求めています。夜中でもつながる番号が用意されています。
呼吸が止まったと気づいたときは、まずその番号にかけます。医師や看護師が状況を聞き取り、駆けつける段取りを組んでくれます。
ただし、その番号を家族全員が知っているとは限りません。冷蔵庫の扉や電話台など、誰の目にも入る場所へ貼っておけば、夜間に探し回らずに済みます。
| 気づいた場面 | 最初に連絡する先 | 伝えたいこと |
|---|---|---|
| 呼吸が止まっている | 訪問診療所(夜間は当直の番号) | いつ気づいたか、直前の様子、いま誰がそばにいるか |
| 息苦しさや痛みが強い | 訪問看護ステーションの24時間対応の窓口 | 症状の始まった時刻、いつもとの違い、使った薬 |
| 意識がはっきりしない | 訪問診療所か訪問看護ステーション | 呼びかけへの反応、食事や水分の量、体温 |
| 介護に手が回らなくなった | ケアマネジャー | 困っている時間帯、家族の勤務や体調 |
救急車を呼んだあとに起きること
救急隊が到着すると蘇生が始まり、搬送先の病院でも処置が続きます。本人が望んでいなかった手当てであっても、その場で家族が止めるのは簡単ではありません。
東京消防庁は、蘇生を中止する場合に家族等から同意書へ署名をもらうと説明しています。現場での確認事項は少なくなく、そのぶん時間もかかります。
だからといって、呼んでしまった判断を悔やみ続ける必要はありません。決めていなかったから呼んだのであって、決めておけば次は迷わずに済む、というだけの話です。
痛みや息苦しさへの備えが在宅看取りの不安をやわらげる
起こりうる変化と、そのときに取れる手当てを先に聞いておけば、付き添う時間の不安はずいぶん軽くなります。苦痛をやわらげる手当ては自宅でも受けられ、痛みや息苦しさを我慢して過ごす前提ではありません。
これから起こりうる変化を先に聞いておく
厚生労働省のガイドラインは、医療・ケアチームが可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、本人と家族等への精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療・ケアを行う必要があると述べています。
痛み、息苦しさ、眠っている時間の増え方、食欲の落ち方など、これから起きうる姿を主治医から聞いておけば、実際に起きたときに慌てずに済みます。
知らないまま迎えると、家族は「何か悪い扱いをしてしまったのでは」と自分を責めがちです。予測されていた変化だと分かっているだけで、受け止め方が変わります。
| 終わりが近づくと見られる変化 | 家族が見ておくとよいこと | 相談の目安 |
|---|---|---|
| 眠っている時間が長くなる | 呼びかけへの反応、目を開ける回数 | 丸一日ほとんど反応がないとき |
| 食事や水分の量が減る | 飲み込みにくさ、むせの有無 | 薬が飲みにくくなったとき |
| 呼吸の間隔が不規則になる | 苦しそうな表情、肩で息をしていないか | 本人がつらそうに見えるとき |
| 手足が冷たくなり色が変わる | 冷えの範囲、汗のかき方 | 変化が急に進んだと感じたとき |
食べられなくなる時期をどう受け止めるか
終わりが近づくと、食事や水分の量は自然に減っていきます。この時期に点滴をどうするかは、家族が最も迷う場面のひとつでしょう。
体が水分を処理しきれない時期には、点滴がむくみや痰の増加につながる場合もあります。反対に、脱水がやわらいで楽になる場合もあり、判断は本人の状態しだいで変わります。
大切なのは、家族だけで抱えずに主治医や訪問看護師と一緒に決める形を取る点です。あとから決め直せると分かっていれば、その場の判断が重くなりすぎません。
夜間や休日につながる先を確かめておく
不安が大きくなるのは、たいてい平日の昼間ではありません。夜中や連休に症状が変わったとき、誰に連絡してよいか分からない状態がいちばんこたえます。
訪問看護ステーションの多くは24時間の連絡体制を整えており、電話で相談したうえで、必要なら訪問してもらえます。導入の時点でその運用を確かめておくと安心です。
相談してよい範囲も一緒に聞いておくとよいでしょう。「これくらいで呼んでよいのか」と迷って我慢する時間が、家族にはいちばんつらい時間になります。
介護を一人で背負う形が在宅看取りのあとに後悔を残す
気づけば一人に用事が集まっている家庭は珍しくありません。分担を決めないまま始まった介護は、見送ったあとの「あれで良かったのか」を主に介護した人だけに残しがちです。
| 支えてくれる相手 | 頼めること | 相談の窓口 |
|---|---|---|
| 訪問診療の医師 | 定期的な診察、症状への手当て、方針の相談 | 診療所の受付や相談窓口 |
| 訪問看護師 | 体調の確認、痛みの手当ての調整、介護の手ほどき | 訪問看護ステーション |
| 訪問介護員 | 入浴や排せつの介助、身のまわりの家事の援助 | ケアマネジャー |
| 短期入所や通所の事業所 | 介護を離れて休む時間の確保 | ケアマネジャー、地域包括支援センター |
| 離れて暮らす家族 | 手続き、買い出し、電話での見守り、費用の分担 | 家族どうしの話し合い |
主に介護する人と、その人を支える人を決める
介護は、いちばん近くにいる人へ自然に集まります。集まり方が偏ったまま数か月が過ぎると、その人は自分の体調も予定も後回しにしてしまいます。
主に介護する人を決めるときは、同時にその人を支える人も決めておくとよいでしょう。買い物を引き受ける、週末だけ交代する、といった小さな役割でも、続くかどうかが変わってきます。
役割を口約束で終わらせず、曜日や時間帯まで決めて紙に残すと実行に移りやすくなります。誰が何を担うかがはっきりすれば、頼む側の遠慮も薄れます。
離れて暮らす家族にも役割を渡す
遠方の家族は、何もできないと思い込んで距離を置きがちです。実際には、手続きや買い出し、費用の分担、決めごとの相談相手など、離れていても担える仕事がいくつもあります。
毎日の電話を引き受けるだけでも、主に介護する人の孤立はやわらぎます。話し相手がいる状態と、報告する相手すらいない状態とでは、疲れ方がまるで違ってきます。
見送ったあとに親族のあいだで気持ちが行き違うのは、たいてい途中の経過を共有していなかった家庭です。写真や短いメモで様子を回しておくと、後の説明がずっと楽になります。
休む時間を先に予定へ入れておく
介護を休む時間は、余ったら取るものではなく、先に確保しておくものです。空いたら休もうと考えているうちは、いつまでも空きません。
短期入所や通所を組み込んでおけば、介護する側が眠り、体を整える時間が生まれます。ケアマネジャーに相談すると、本人の状態に合う使い方を一緒に組み立ててもらえます。
休むと決めた日に罪悪感を覚える人は少なくありません。休んだ人のほうが最後まで付き添えるという事実を、家族全員で共有しておくと気が楽になります。
頼れる相手を早めに揃えておく
体調が大きく変わってから事業所を探し始めると、間に合わない場合があります。まだ余裕のある時期に、訪問看護や訪問介護を少しずつ入れておくほうが安全です。
顔なじみになっていれば、急な変化のときも状況が伝わりやすくなります。初対面の相手に一から説明する手間が省ける点は、夜間ほど大きく効いてきます。
介護する人が倒れたときにどうするかも、あらかじめ決めておきたい事柄です。代わりに動く人と、頼る事業所の連絡先を一緒に控えておきましょう。
在宅看取りの当日に慌てないための備え
亡くなった直後に警察へ連絡する必要はありません。かかりつけの医師に連絡し、診察を受けたうえで死亡診断書を書いてもらう流れを知っておくと、その場の慌ただしさが変わります。
医師法が定める死亡診断の決まり
厚生労働省は平成24年の通知で、医師法第20条ただし書の運用を整理しました。診療中の患者さんが受診後24時間以内に死亡した場合、改めて診察をせずに死亡診断書を交付し得ると示しています。
さらに、医師が死亡の際に立ち会っておらず、生前の診察後24時間を経過した場合であっても、死亡後に改めて診察を行い、生前に診療していた傷病に関連する死亡だと判定できるなら、死亡診断書を交付できると明記しています。
この通知は、24時間を超えたら警察へ届け出なければならないという誤った解釈のために、在宅などでの看取りが適切に行われない事例が生じている、という指摘を受けて出したものです。
かかりつけの医師が診てきた病気に関連する死亡であれば、警察を呼ばずに済みます。この一点を家族全員が知っているだけで、その日の混乱はかなり減ります。
連絡先を一枚の紙にまとめておく
当日に必要な情報は、電話帳やスマートフォンの中に散らばっていると探せません。一枚の紙に書き出し、家族が必ず通る場所へ貼っておくのが確実です。
- 訪問診療の診療所と、夜間や休日の連絡先
- 訪問看護ステーションの24時間対応の番号
- ケアマネジャーの氏名と携帯番号
- 駆けつけてほしい家族と、連絡する順番
- 本人が希望を書き残した紙のしまい場所
紙は一枚だけでなく、離れて暮らす家族にも同じものを渡しておきます。誰が最初に気づいても同じ順番で動けるようにしておくと、判断が家の中でぶれません。
気づいてから見送るまでの流れ
呼吸が止まったと気づいても、時計と競う場面ではありません。診療所へ連絡したあとは、医師や看護師が着くまで、そばで静かに待つ時間になります。
| 場面 | 連絡する先 | 覚えておきたいこと |
|---|---|---|
| 呼吸が止まったと気づいた | 訪問診療の診療所(夜間は当直の番号) | 気づいた時刻を控えておく |
| 医師の到着を待つあいだ | 必要なら訪問看護ステーション | 体を無理に動かさず、そばで過ごす |
| 医師の診察と死亡診断書の交付 | —— | 診断書は葬儀や届出で何度も使う |
| 家族や葬儀社への連絡 | あらかじめ決めておいた順番で | 誰が誰に連絡するかを分担する |
葬儀社をどこにするかまで決めておく家庭も増えています。当日に初めて探すと、疲れきった頭で大きな決めごとを重ねる形になってしまいます。
見送ったあとに残る気持ちを支える備え
悲しみやもどかしさが後から強く出てくるのは、珍しい反応ではありません。誰に話を聞いてもらうかを見送る前に決めておくと、その気持ちを一人で抱え込まずに済みます。
もっとできたのではという思いは自然に浮かぶ
十分に手を尽くした家族ほど、後から細かな場面を思い返して自分を責めがちです。あのとき水を飲ませていれば、あの夜に気づいていれば、という形で記憶が戻ってきます。
そうした思いは、身近な人を失ったあとに多くの人が通る道です。自分だけが特別に至らなかったわけではないと知っているだけでも、気持ちの重さは少し変わります。
無理に忘れようとしたり、前向きにふるまおうとしたりする必要もありません。時間の経過とともにやわらぐ部分は、急がなくても薄れていきます。
支えてくれた人ともう一度話す
訪問診療の医師や訪問看護師は、最期までの経過を家族と同じ目で見てきた相手です。あの判断がどういう意味を持っていたのかを、後から説明してもらえます。
医学的に避けられない変化だったと分かるだけで、自分を責める材料がひとつ減ります。気になっている場面があるなら、遠慮せず口に出してみましょう。
ケアマネジャーや訪問介護員も、日々の様子を知る相手です。介護の記録を一緒に振り返ると、忘れていた穏やかな時間を思い出す場合もあります。
つらさが長く続くときの相談先
眠れない日や食欲の落ちた日が長く続くなら、家族だけで抱えずに専門の窓口へ相談するほうが安全です。悲しみの深さは、我慢の量では測れません。
国立がん研究センターのがん情報サービスは、悲しみなどのつらい気持ちの整理や、本人と家族の人生の意味を見つめ直す取り組みとしてグリーフケアを紹介しています。
同じサービスは、相談先としてがん相談支援センターやソーシャルワーカー、心療内科や精神科の医師、心理士、患者会を挙げています。
- 看取りに関わった診療所や訪問看護ステーション
- 地域包括支援センターの相談窓口
- がん相談支援センターなど公的な相談の場
- 同じ経験をした人が集まる会
- 心療内科や精神科の医師、心理士
相談は弱さの証しではなく、これからの暮らしを立て直すための手立てです。早い時期に一度つないでおくと、必要になったときの敷居が下がります。
よくある質問
- 在宅看取りで家族がいちばん後悔しやすいのはどんな場面ですか?
-
本人の望みを聞かないまま最期の時間を迎えた場面と、呼吸が止まったときにどこへ連絡すればよいか分からず慌てた場面が、後から悔いとして語られやすい場面です。
どちらも、前もって話し合い、連絡先を書き出しておけば減らせる部分です。自宅を選んだ判断そのものを悔やむ声は、それほど多くありません。
- 在宅看取りの話を本人が嫌がるときはどう切り出せばよいですか?
-
結論から迫らず、入院や通院の帰り道など、体調の話題が自然に出た場面を借りると切り出しやすくなります。厚生労働省の調査でも、話し合わない理由の最多は「きっかけがなかったから」で62.8%を占めていました。
一度で決めきる必要もありません。指針も、意思は変わりうる前提で話し合いを繰り返すよう求めています。
- 在宅看取りを選んだあとに入院へ切り替えてもよいのでしょうか?
-
切り替えてかまいません。本人の状態も家族の事情も途中で変わるため、方針を選び直す余地は最初から残されています。
介護する人が体調を崩したときや、症状の変化に自宅で対応しきれないと感じたときは、主治医へ早めに相談すると段取りが整いやすくなります。
- 在宅看取りで家族だけのときに呼吸が止まったらどうしますか?
-
あらかじめ決めておいた訪問診療の診療所へ、まず電話をかけます。夜間や休日でもつながる番号が用意されており、医師や看護師が状況を聞いて駆けつける段取りを組んでくれます。
気づいた時刻を控えておくと、その後の説明がなめらかに進みます。慌てて体を動かさず、そばで待つ時間で構いません。
- 在宅看取りのあと気持ちが落ち込み続けるときは誰に相談できますか?
-
看取りに関わった診療所や訪問看護ステーション、地域包括支援センターが身近な入り口になります。経過を知る相手に話すと、自分を責めていた場面の意味が整理されやすくなります。
国立がん研究センターのがん情報サービスは、がん相談支援センターやソーシャルワーカー、心療内科や精神科の医師、心理士、患者会を相談先として挙げています。眠れない日が続くようなら、早めに専門の窓口へつないでおくと安心です。


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