認知症の周辺症状とは? – 介護者が知っておくべき基本知識

認知症の周辺症状とは? - 介護者が知っておくべき基本知識

在宅での介護を続けるかたは、認知症の周辺症状がいつからどのように現れるかを知りたいと感じることが多いようです。

特に自宅での看取りを考えると、困難な症状への対処方法や訪問診療の必要性を含め、多角的に情報を得ることが大切です。

この記事では、認知症の周辺症状の基本から具体的なケア、予防・緩和に役立つヒントまで詳しく紹介します。判断材料の1つにしていただき、在宅生活を安心して継続するための参考にしていただければ幸いです。

目次

認知症の周辺症状とは?全体像と重要性

認知症には記憶障害や判断力の低下などの中核症状がある一方、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれる周辺症状が生じることがあります。

周辺症状には、攻撃性、幻覚、徘徊、睡眠障害など多彩なものが含まれます。これらの症状を適切に理解し、早めに対処できるようになると、在宅での生活を落ち着いて維持しやすくなります。

ここでは、周辺症状の定義や身体症状との違い、発症ステージとの関連性などを把握し、介護者が意識すべき初期サインに目を向けます。

周辺症状の定義を押さえる

認知症の周辺症状は、単なる物忘れや認知機能低下だけではありません。気分や行動、心理面に関わる幅広い症状を含みます。代表的には、下記のような症状が挙げられます。

  • 感情面の変化(不安、抑うつ、興奮など)
  • 行動面の変化(徘徊、無断外出、攻撃的行動など)
  • 認知面の変化(幻覚や妄想、せん妄など)

こうした症状は、生活環境や本人の身体的・精神的な状態と深く関係しています。単に病気の症状として見るのではなく、本人がどのような心理状態にあるかを含めて総合的に理解する姿勢が重要です。

中核症状と周辺症状の主な違い

分類内容
中核症状記憶障害や判断力の低下など、脳の器質的変化によるもの物忘れ、見当識障害、失行など
周辺症状行動面・心理面での変化幻覚、妄想、興奮、徘徊、抑うつなど

認知症の診断名がついても、周辺症状の程度や現れ方は人によって違いがあります。定義だけでなく、それぞれが発生する背景や誘因も多岐にわたるため、総合的なアプローチが欠かせません。

身体症状との違いを理解する

認知症の方は、筋力低下や寝たきり状態になるなど身体的な症状も抱えやすくなります。たとえば、肺炎や尿路感染症のように高齢者に多い身体疾患によって周辺症状が悪化するケースも少なくありません。

ただし、身体症状と周辺症状は同じカテゴリーとは考えにくい側面があります。

身体症状は身体的疾患が主たる原因で、客観的な検査から状態を把握しやすいことが多いです。一方で周辺症状は、認知機能低下に伴う混乱や不安感が行動や心理面に表出したもので、客観的な検査だけでは把握が難しいことがあります。

そのため、身体症状と周辺症状を見分けつつ、両方に同時に対応していく姿勢が重要になります。

身体症状と周辺症状を見極めるヒント

  • 感情の変化や幻覚など、言葉では説明しにくい症状があるか
  • 発熱や血圧変動など、明確な身体的サインがあるか
  • 急性期の疾病(感染症など)が疑われるか
  • 本人の訴えや普段の様子に大きなギャップがあるか

身体症状の治療と同時並行で、周辺症状をケアする必要があり、家族や介護者だけで抱え込むのは難しい面があります。

訪問診療を依頼すると、医師や看護師、リハビリスタッフが定期的に自宅に来てくれるため、身体面と心理・行動面の双方からサポートを受けやすくなります。

発症ステージとの関連性

認知症には、軽度・中等度・重度といったステージがあります。周辺症状の発生や重症度は人によって異なりますが、初期にはうつ傾向や不安感が増すことが多く、中期になると妄想や幻覚、徘徊などが見られやすくなります。

重度期では言葉によるコミュニケーションが難しくなり、意思疎通がうまくいかないストレスから興奮行動が起こることもあります。

発症ステージと周辺症状の例

ステージ周辺症状の特徴
軽度物忘れへの不安、抑うつ気分、イライラ感など
中等度徘徊、妄想、幻覚、興奮行動、昼夜逆転など
重度意思疎通の困難からくる攻撃性、拒食、声かけに対する強い抵抗、対人トラブルなど

ステージが進むにつれて、周辺症状も複雑化しやすいです。日々の観察から小さな変化を見逃さず、必要なときに専門家の力を借りることが重要です。

介護者が注意すべき初期サイン

認知症の初期サインとして、普段は行わないようなイライラや不安の増幅、忘れ物が増えたことを強く責められるような言動などが挙げられます。

本人が「自分はしっかりしている」という思いを強く持っている場合、小さな失敗が引き金となり、感情のコントロールが難しくなることもあるでしょう。

初期の段階で周辺症状に気づけば、訪問診療などの専門家のサポートを早期に導入しやすくなります。受診機会を逃さないためにも、家族や周りの人が「おかしい」と思ったタイミングで相談しやすい体制を整えることをおすすめします。

周辺症状が生じる主な要因

周辺症状は、多くの場合、複数の要因が絡み合って発生します。脳の変性や身体疾患、環境の変化など、さまざまな背景を理解することで、効果的なケアや環境調整が実現しやすくなります。

ここでは、脳の変性や心理的な影響、生活習慣や持病との関係などに注目します。

脳の変性と生理的な背景

認知症は、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、血管性認知症などいくつかのタイプに分類されます。アルツハイマー型では記憶を司る海馬の変性が進行しやすく、レビー小体型では幻視や幻覚を引き起こしやすい点が特徴です。

血管性認知症では、脳梗塞などにより部分的な脳機能の低下が見られ、発症部位に応じて症状の出方が異なります。

これらの脳の変性は生理的にも複雑な要素を含んでおり、神経伝達物質のバランスが乱れることで、気分や行動面に影響が及ぶことがあります。

たとえば、セロトニンやドーパミン、アセチルコリンなどの神経伝達物質が正常に働きにくくなると、攻撃性や興奮、幻覚などが出現しやすくなると報告されています。

環境刺激と心理的な影響

周辺症状の一部は、環境からの刺激や心理状態に深く関係しています。たとえば、明るさや音の大きさ、食事の時間が不規則であることなどが原因で混乱や不安感を引き起こし、興奮行動や攻撃性が表れることがあります。

また、家族の介護体制が急に変化したときや、慣れない施設に入所した直後など、環境の変化に適応しづらい場合にも周辺症状が強くなるケースが見受けられます。

心理的な要因も見逃せません。自分でできていたことができなくなる焦りや、周囲から叱責を受ける恐れを感じると、孤立感や不安感が高まります。

このような感情が蓄積すると、周辺症状として表に出てくることがあるため、本人の心のケアも大切です。

環境や心理面での影響を考慮した調整例

  • 部屋の照明を調整して夜間は落ち着いた照度にする
  • 食事や入浴の時間をできるだけ一定に保つ
  • できる範囲で本人の希望を尊重した生活リズムを作る
  • コミュニケーションの際は高圧的な口調を避ける

生活習慣や持病との関係

認知症の背景には、長年の生活習慣が大きく関係している可能性があります。運動不足や偏った食生活は、脳血流の低下や生活習慣病のリスクを高め、認知症の発症や周辺症状の悪化に影響することがあります。

さらに糖尿病や高血圧、脂質異常症などの持病がある場合、血管性認知症のリスクが上がり、結果として周辺症状も複雑になりやすいです。

生活習慣・持病と周辺症状の関連例

要因具体的影響
運動不足脳への血流量が減り、認知機能低下のリスクが上昇する
偏った食生活必要な栄養素の不足や生活習慣病の進行を招きやすい
高血圧・糖尿病脳血管障害のリスク増加で脳機能の低下を助長
睡眠障害昼夜逆転や不安感の増幅を通じて周辺症状が強まる

こうした持病のコントロールや適度な運動習慣、バランスの良い食生活などを心がけることで、周辺症状の予防・緩和につながる可能性があります。

代表的な周辺症状と対策例

周辺症状と一口に言っても、実際には様々なタイプがあります。ここでは、夜間せん妄や興奮行動、幻覚や妄想、食行動異常、排泄のトラブルなど、在宅介護の現場でよく見受けられる症状への具体的なアプローチを示します。

夜間せん妄や興奮行動へのアプローチ

夜間せん妄とは、夕方から深夜にかけて意識が混濁し、幻覚や錯覚を伴うような状態を指します。周囲が寝静まったころに大声を出してしまったり、興奮して家の中を歩き回るケースもあります。

本人は混乱しているため、力づくで止めようとすると逆に興奮が増幅することが少なくありません。

夜間せん妄や興奮行動への対策としては、日中にできるだけ活動量を増やしてもらうことや、夜間の室温や照明を調整して安眠を促す工夫が必要です。

場合によっては医師に相談し、睡眠のリズムを整えるための薬剤などを組み合わせてサポートする方法も検討すると安心です。

夜間せん妄・興奮行動の対策例

対策内容
環境調整部屋の温度を快適に保つ、ライトを控えめにする
日中の活動量UP軽い運動や散歩などで昼間の覚醒度を高める
専門家への相談訪問診療医に睡眠導入剤や軽い安定剤の使用を相談する

幻覚・妄想にどう向き合うか

レビー小体型認知症を中心に、幻覚や妄想が顕著になるケースが多いです。特に「誰かが家に侵入してきた」「お金を盗まれた」などの被害妄想や、実在しない人が見える幻視が生じると、本人の不安感が極度に高まります。

頭ごなしに否定すると、感情がこじれたり、怒りを買ってしまう可能性があります。

妄想や幻覚を訴えたときは、まず「怖かったんだね」「心配なんだね」といった気持ちの部分に寄り添います。そして、可能な限り「誰もいないこと」「失くしていないこと」などを確認し安心感を高めましょう。

症状が重い場合は医師に相談して、薬物療法や他の専門的ケアを併用することも考えられます。

幻覚・妄想を鎮めるための声かけ例

  • 「一緒に見に行って安心できるといいね」
  • 「あなたが心配なのはわかったよ」
  • 「何かあったらすぐに呼んでね。そばにいるから」

食行動異常の具体的な対処法

食行動異常とは、食欲不振や過食、同じ食べ物ばかりを食べたがる偏食、食事をするタイミングが理解できなくなるなどの変化を指します。

食事の量が極端に増減したり、同じ食事を何度も欲しがったりすることで、栄養面や健康面に大きな影響を及ぼすことがあります。

食行動異常への対処法としては、食器や盛り付けなどを工夫して食欲を刺激したり、小分けの食事を複数回に分けて提供したりする方法があります。

過食傾向がある場合は、低カロリーのスープや野菜中心の小皿料理を活用するなどの工夫も有効です。水分補給もしっかり行うように促し、便秘や脱水症状など二次的なトラブルを防ぐ配慮も忘れずに行いましょう。

食行動異常によくある困りごとと対処例

パターン困りごと対処例
偏食特定の食品だけを食べ続ける小皿で複数のメニューを一口ずつ試してもらう
過食食べすぎによる体重増加や胃の不調野菜や果物中心の低カロリーメニューで満足感を得る
食欲不振栄養不足・体力低下好みをリサーチして、味付けや温度に工夫する
食事時間の混乱食べるタイミングがわからなくなる1回の食事を小分けにしてこまめに提供する

排泄トラブルを軽減するポイント

排泄のタイミングを忘れたり、トイレの場所がわからなくなって失敗するなど、排泄トラブルは本人に大きなストレスを与えます。同時に介護者側にも負担が大きいので、あらかじめ防げる工夫があると心強いでしょう。

  • トイレの場所をわかりやすくする(ドアに大きな絵や文字を書く)
  • 生活リズムに合わせて声かけを行い、定期的にトイレを促す
  • 排泄に失敗してしまった場合は、叱責せず、温かくフォローする

失禁や頻尿などの問題が見られる場合は、基礎疾患の有無や感染症の兆候がないか、訪問診療の医師や看護師と連携して確認することが大切です。

適切な紙オムツの選び方や使用方法の指導を受けると、本人の不快感や介護者の負担も軽減しやすくなります。

介護者が知っておくべき実践的ケア

周辺症状への対応は、単に薬だけに頼るのではなく、生活環境の見直しやコミュニケーションの工夫が大切です。

実際にどのようなケアを行うかを具体的に考えることで、介護に対する不安が和らぎ、本人も過ごしやすい環境を作り出しやすくなります。

ここでは、コミュニケーション技法や住環境の整備、多職種との連携といったポイントを取り上げます。

コミュニケーション技法と声かけのコツ

認知症の周辺症状が出ている方とのコミュニケーションでは、感情面に配慮したアプローチが役立ちます。たとえば、言葉での説明が通じにくい場合は、視線や表情、ジェスチャーを意識すると伝わりやすくなります。

また、急かすような口調や難しい言葉を避けるだけでも、本人の混乱を和らげる効果が期待できます。

箇条書き:コミュニケーションで意識したいポイント

  • 短い言葉でゆっくり、はっきり話す
  • 相手の目線の高さに合わせる
  • 体に優しく触れて安心感を伝える
  • 相手の話を肯定しながら受けとめ、急に否定しない

本人がパニック状態になりかけた場合は、いったん少し距離を置いて落ち着ける空間を提供することも1つの方法です。

興奮しているときに近づきすぎると、かえって攻撃行動につながることもあるため、言葉だけでなく距離感の取り方にも注意が必要です。

住環境を整える安全対策

徘徊や転倒、火の不始末など、自宅内での事故リスクが高まると、介護者の不安も増します。本人が安心して過ごせるように住環境を整えるとともに、必要に応じて機器を導入し、安全対策を強化することが重要となります。

たとえば、夜間せん妄が疑われる場合は、床に転倒センサーを設置すると、徘徊の気配を早めに察知できます。

玄関や出入り口には簡単に外に出られない工夫をするのではなく、ドアの色を変える、鍵を本人には見えにくい位置に設けるなど、できるだけ精神的な負担を抑える対策を検討するとよいでしょう。

住環境整備の主な例

対策内容
転倒防止策段差解消、手すり設置、床材の滑り止め加工
徘徊対策ドアや窓に警報機をつける、GPS端末を活用して位置情報を把握する
火事予防コンロに安全装置を取り付ける、使用後は主電源を切るルーティンを作る
センサー導入トイレやベッド付近の動きを検知するセンサー、緊急ボタンなどを設置

訪問診療を利用している場合、医師や看護師が定期的に住環境の安全面もチェックしてくれるケースがあります。

自宅に来てもらうことで、玄関の段差や寝室のレイアウトなどを一緒に確認し、改善点を提案してもらいやすい点は大きなメリットです。

多職種連携と相談窓口の活用

周辺症状への対応には、医師や看護師、薬剤師、ケアマネジャー、ヘルパーなど、さまざまな専門職が関与することが望ましいです。

訪問診療を中心に据えて、多職種連携の輪を広げると、身体面・精神面を含めた総合的なケアが可能になります。

  • ケアマネジャーとの連携で、介護保険サービスの選択やプラン調整を行う
  • 薬剤師と相談し、服薬管理や副作用のモニタリングを強化する
  • リハビリスタッフとの連携で、日常生活動作を維持・改善するプログラムを組む

各地域には認知症の相談窓口や家族会などが設置されています。全国の市区町村が行っている地域包括支援センターのような公的機関にも、認知症について相談できる窓口があり、不安や疑問点を整理しやすくなります。

緊急時の対応チェックリスト

周辺症状が悪化して、深夜に異常行動が見られたり、突発的に体調不良が起きた場合の対処法をあらかじめ決めておくと、介護者の負担が軽減します。

電話で医師に連絡できる体制を作る、自宅に救急セットを用意しておくなど、いざというときに慌てずに対処するための準備が役立ちます。

緊急時の備えチェックリスト

チェック項目ポイント
緊急連絡先の明示かかりつけ医や訪問診療の連絡先をすぐに取り出せる場所に置く
服薬リストの作成現在飲んでいる薬剤の一覧を作成し、使用日時や量も記入しておく
救急セットの準備血圧計、体温計、常備薬、保険証コピー、バスタオルなどをまとめて保管
簡単な病歴メモの作成基礎疾患やアレルギーの有無を箇条書きでまとめ、複数部数用意する

こうした準備を行うと、万が一のときにも落ち着いて行動できる確率が高まります。訪問診療の医師や看護師とも情報を共有しておくと、スムーズな連携が図れます。

介護者自身のメンタルヘルス管理

周辺症状が続くと、介護者にも大きなストレスがかかります。イライラや疲労感、睡眠不足が重なると、自身の体調を損ないやすくなり、介護に集中できなくなる恐れもあります。

心身のバランスを保つためにも、定期的にリフレッシュする時間を確保し、外部のサポートを得ることが重要です。

  • デイサービスやショートステイを活用し、介護者が休息を取る
  • 地域の家族会などで同じ悩みを抱える人たちと情報交換する
  • 訪問診療のタイミングなどで医師に自分の体調についても相談する

自分が疲れたときこそ、周辺症状のケアがうまくいかなくなることが多いです。介護者のメンタルヘルスも、継続的に気にかけていきましょう。

周辺症状の予防・緩和に役立つポイント

周辺症状を少しでも和らげるには、毎日の生活習慣を見直したり、薬の効果と副作用をバランスよく管理したりすることが大切です。

日常のなかで取り入れられるレクリエーションやリハビリも、気持ちを安定させる効果が期待できます。ここでは、規則正しい生活リズムの構築や服薬管理、レクリエーションの活用について考えてみましょう。

規則正しい生活リズムを作る

昼夜逆転や寝不足は、周辺症状を悪化させる要因の1つです。できるだけ毎日同じ時間に起床・就寝し、日中は適度に活動し、夕方には落ち着いた雰囲気を作るといった生活リズムの調整が重要となります。

本人が取り組みやすい範囲で構わないので、散歩や室内体操などを取り入れ、日光を浴びる機会を増やすこともおすすめです。

生活リズム改善のヒント

時間帯ポイント
規則正しい時間に起き、カーテンを開けて日光を浴びる
日中散歩や体操など軽い運動を定期的に行う
夕方〜夜食事後はリラックスできる時間を設け、就寝前に刺激を減らす

服薬管理と副作用チェック

認知症の治療薬や精神症状を抑える薬など、複数の薬を飲んでいる方は少なくありません。服薬管理が複雑になると、飲み忘れや誤服用、副作用の見落としが起こりやすいです。

薬剤師や訪問診療医と協力して、薬のリストを整理し、飲むタイミングや注意点を明確化しておきましょう。

副作用としては、眠気やふらつき、便秘などが代表的です。本人の状態をよく観察し、いつから副作用らしき症状が出始めたかを記録しておくと、医師に相談するときにスムーズです。

服薬管理で意識したいこと

  • 服薬カレンダーや薬ケースを活用する
  • 薬の副作用と効果をノートに記録する
  • 服薬タイミングを家族全員で共有する
  • 飲み忘れが続く場合は医師や薬剤師に報告し、調整を検討する

レクリエーションやリハビリの活用

認知症の周辺症状は、気分転換や自己肯定感の向上によって和らぐことがあります。レクリエーションやリハビリは、単なる運動だけでなく、ゲームや歌、手先を使った作業など、楽しみながら脳を刺激することができます。

本人の好みに合った活動を選ぶと、継続もしやすくなり意欲が高まるでしょう。

  • 音楽療法:懐かしい曲を流したり、一緒に口ずさんだりする
  • 工作:折り紙や手芸などで完成した作品を見て達成感を味わう
  • 軽い体操:座ったままできるラジオ体操やストレッチ
  • ゲーム:トランプやかるた、パズルなどで楽しみながら脳を刺激

リハビリ職(作業療法士や理学療法士)と連携すると、日常生活動作をサポートするプログラムを組んでもらえます。

訪問リハビリのサービスを利用すれば、自宅の環境に合わせた具体的な助言も受けられるため、周辺症状の緩和につながりやすいです。

在宅で認知症の方を介護する場合、周辺症状への対応が大きな課題になります。しかし、症状が進んでも、訪問診療や多職種との連携を活用しながら適切に対処すれば、住み慣れた自宅での生活を続けることも十分に可能です。

もし、「そろそろ専門家の力を借りた方が良いのではないか」と考えているならば、地域の医療機関やケアマネジャーに相談して訪問診療の導入を検討してみてください。

本人と介護者の負担を和らげ、心のゆとりを取り戻す大きな助けとなるでしょう。

以上

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 所長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 所長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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