- 生活習慣病の薬に不安を感じるのは、当たり前です。
- 薬にはそれぞれ役割があり、体重への影響も一律ではありません。
- 副作用はゼロにはできませんが、気をつける点を知っておくことで対応しやすくなります。
- 血糖・血圧・脂質の薬は、将来の合併症を防ぐために使われることがあります。
- 複数の薬を使うこと自体は、生活習慣病では珍しいことではありません。
- ダイエットで数値が改善すれば、薬を調整できる場合もあります。
- ただし、薬の中止や減量は自分で決めず、医師と相談しながら進めることが大切です。
生活習慣病の薬を飲んでいる方が抱えやすい不安について
「太るのでは」「副作用が怖い」と感じてしまいますよね
医療機関で「薬を始めましょう」と言われたとき、素直に「わかりました」と言える方ばかりではないと思います。「本当に必要なのだろうか」「副作用が出たらどうしよう」「飲み続けたら太るのでは」——そういう気持ちが湧いてくるのは当たり前です。
薬に対して慎重になるのは、むしろ自分の体をきちんと考えているからこそです。ただ、インターネットで調べると「この薬は副作用がひどい」「飲み続けると依存する」「太った気がする」といった体験談が目に入りやすく、不安がふくらんでしまうこともあります。個別の体験はその人にとって本物の経験ですが、それがすべての人に当てはまるわけでもありません。
その不安を持っていること自体はまったくおかしくないのです。
薬を正しく知ることで、不安は整理できます
不安の多くは、情報が断片的だったり、全体像がつかめていないことから生まれます。「副作用がある」という事実は知っていても、「どのくらいの確率で」「どんな症状が」「どう対処すればよいか」まで見えていないと、なんとなく怖いままになってしまいます。
この記事では、生活習慣病の薬について「体重への影響」「副作用の考え方」「複数の薬を使う場合の注意点」「ダイエットとの向き合い方」という四つの軸で、順番に整理していきます。すべての不安が消えるわけではないかもしれませんが、「自分が何を気にしていたのか」「どこを確認すればよいのか」が少し見えやすくなれば、と思います。
この記事で扱う範囲と読み方
この記事では、血糖値を下げる薬、血圧を下げる薬、コレステロールや中性脂肪に使われる薬を主に扱います。すでに薬を飲んでいる方はもちろん、「これから薬を勧められそうで不安」という方にも読んでいただける内容にしています。
気になるところから読んでいただいてかまいません。ただ、「体重への影響」と「副作用の考え方」は密接につながっている部分もありますので、できれば両方に目を通していただけると、より全体像がつかみやすいと思います。
なぜ生活習慣病の治療に薬が必要になるのか
生活習慣だけでは限界があるケースがある
「食事や運動で改善できるなら、薬は飲みたくない」という気持ちはよくわかります。生活習慣の見直しは確かに大切で、数値の改善に結びつくこともあります。ただ、生活習慣だけでは対応しきれないケースも少なくありません。
たとえば、血圧や血糖値には遺伝的な背景が関わっていることがあります。家族全員が食事に気をつけているのに、自分だけ血圧が高い——という状況がその一例です。また、長年にわたって体への負担が積み重なってきた場合、膵臓や血管の機能がすでに落ちていることがあり、生活習慣の改善だけでは数値をコントロールしきれないこともあります。
薬はそうした「生活習慣改善の限界を補う手段」の一つです。薬を使うことが、食事や運動の努力を否定するわけではありません。
薬を使う目的は「症状を抑えること」だけではない
生活習慣病の薬を使う大きな理由の一つは、症状がないうちから数値を管理しておくことにあります。血圧が高くても、多くの場合は頭痛も動悸もなく、日常生活を普通に送れてしまいます。それが生活習慣病の難しいところです。
症状がないから大丈夫、ではなく、症状が出る前の段階から血管や臓器への負担が続いているのが、生活習慣病の実態です。薬はその負担を継続的に下げておくために使われます。
「飲まないと調子が悪くなる」のではなく、「飲むことで将来の大きなリスクを下げている」という使い方が、生活習慣病の薬の基本的な位置づけです。
合併症を防ぐ視点
生活習慣病の薬が長期的に目指しているのは、「数値を正常範囲に収める」ことと、その先にある「合併症を防ぐ」ことです。
血糖値が長期にわたって高い状態が続くと、目の奥の血管、腎臓、手足の神経などへの影響が出てくることがあります。血圧が高い状態が続けば、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がります。脂質の異常が続けば、動脈硬化が進む可能性があります。
こうした合併症は、すぐには現れませんが、年単位で静かに進みます。薬はその進行を遅らせるための手段の一つです。
体重管理と生活習慣病の治療は、実は同じ方向を向いています。体重が適切に管理されることで、血糖・血圧・脂質の数値が改善し、合併症リスクが下がる——というのは、多くの研究で示されていることです。
薬の体重への影響をどう考えればよいか
体重が増えやすい薬・変わりにくい薬・減りやすい薬という整理
「薬を飲んでから太った気がする」という声は珍しくありません。一方で、「薬を飲んでいるのに体重が変わらない」という方もいます。この違いはどこから来るのでしょうか。
薬と体重の関係は、一言では言い切れません。薬の種類によって、体重が増えやすいもの、ほとんど影響しないもの、むしろ体重が減る方向に働くものと、傾向が異なります。加えて、同じ薬でも、食事の内容や活動量、もともとの体の状態によって影響の出方は変わります。
「○○は太る薬」「○○は痩せる薬」という単純な分類は、実際にはあまり正確ではありません。ただ、どの薬がどんな傾向を持っているかを大まかに知っておくことは、不安を整理するうえで助けになります。
血糖の薬は体重に影響しやすいものが多い
血糖を下げる薬の中には、体重と関わりが深いものがいくつかあります。
インスリン製剤やインスリンの分泌を直接促すタイプの薬(スルホニル尿素薬と呼ばれる分類など)は、体重が増えやすい方向に働くことがあります。インスリンには体にエネルギーを蓄える働きがあるため、それが体重増加につながることがあるのです。
一方、腎臓から糖を尿中に排泄することで血糖値を下げるタイプの薬(SGLT2阻害薬)は、体重が減少する方向に働くことが多いとされています。また、食欲の調整や消化のスピードに関わる仕組みを使って血糖を下げる薬(GLP-1受容体作動薬)も、体重が減る方向に働くことがあります。
どの薬が使われるかは、血糖コントロールの状態、腎臓や肝臓の機能、年齢、体重、生活スタイルなど、多くの要素を考慮したうえで担当医が判断します。「体重に影響が少ない薬にしてほしい」という希望があれば、それを医師に伝えてみることは一つの選択肢です。
血圧の薬と体重の関係
血圧の薬は、一般的に体重への直接的な影響が少ないものが多いとされています。
ただし、一部の薬については注意が必要です。β遮断薬と呼ばれる分類の薬は、心臓の働きに直接関わる薬で、エネルギー代謝に影響を与える可能性があると言われることがあります。また、利尿薬と呼ばれる種類の薬は、体内の水分を尿として出すことで血圧を下げますが、これによって体重がやや下がることがあります。ただしこれは脂肪が減るわけではなく、水分の変動によるものです。
血圧の薬を飲み始めてから体重が変わったと感じる場合、薬の直接的な影響によるものかどうかは、食事・活動量・季節変化なども含めて考える必要があります。気になる変化があれば、自己判断せず担当医に伝えてみることが大切です。
実際に患者さんを診ていると感じることですが、薬で血圧を落としても体重は減らないのですが、体重を落とすと自然と血圧が下がる人はよく見かけます。考えてみると不思議ですね。
脂質異常症の薬は体重にどう影響するか
コレステロールや中性脂肪の治療に使われる薬は、体重への直接的な影響は基本的に少ないとされています。
ただし、「薬を飲んでいるから食事は気にしなくていい」というわけにはいきません。特に中性脂肪が高い場合、その背景には糖質・脂質の過剰摂取や飲酒習慣がある場合も多く、薬だけでコントロールするには限界があります。生活習慣の見直しと薬の効果を組み合わせることで、より安定した管理につながります。
脂質異常症の薬を飲んでいて「体重が増えた」と感じる場合、薬の影響というよりは、食事の内容や活動量の変化が関係していることが多いと考えられます。
これも血圧の薬と同じで、薬でコレステロールや中性脂肪を正常化しても体重は減りませんが、体重を落とすことでこれらの数値が正常化することはよくあります。
血糖・血圧・脂質、それぞれの薬の特徴と違い
血糖を下げる薬の種類と働き方の違い
血糖を下げる薬にはいくつかの分類があり、それぞれ働き方が異なります。
膵臓に働きかけてインスリンの分泌を促すタイプ、インスリンが効きやすい体内環境を整えるタイプ、食事から吸収される糖の量を減らすタイプ、腎臓から糖を尿中に出すタイプ、食欲や消化のスピードに関わる仕組みを使うタイプ——大まかにこのような分類があります。
インスリン自体を外から補充する「インスリン療法」は、膵臓の機能が低下している方や、経口薬だけでは十分な効果が得られない場合に使われます。
それぞれの薬には、低血糖を起こしやすいもの・起こしにくいもの、体重に影響しやすいもの・しにくいもの、腎機能が低下していると使いにくいものなど、様々な特性があります。どの薬を選ぶかは、血糖コントロールの状況だけでなく、その方の体全体の状態に合わせて判断されます。
血圧を下げる薬の種類と特徴
降圧薬と呼ばれる血圧を下げる薬にも、複数の分類があります。
血管を収縮させる物質の働きをブロックする薬(ACE阻害薬・ARBなど)、血管を拡げることで血圧を下げる薬(カルシウム拮抗薬など)、余分な水分を体外に出すことで血圧を下げる薬(利尿薬)、心臓の負担を減らすことで血圧を調整する薬(β遮断薬)などがあります。
副作用の傾向もそれぞれ異なります。たとえば、ACE阻害薬では空咳が出る方がいることが知られており、その場合は同じ系統でも咳が出にくいARBに変更できることがあります。カルシウム拮抗薬ではむくみが出ることがある方もいます。
副作用の出方は個人差があるため、「この薬は自分には合わない」と感じた場合は、勝手にやめるのではなく、担当医に相談することが重要です。別の種類に変えることで解決することも少なくありません。
コレステロール・中性脂肪に使われる薬の種類
脂質異常症の薬も、何を下げたいかによって使われる薬の種類が変わります。
LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を下げることを主な目的とする薬として、スタチンと呼ばれる分類があります。肝臓でのコレステロール合成を抑える働きをします。副作用として、一部の方に筋肉の痛みやこわばりが現れることがあり、気になる症状があれば早めに受診しましょう。
中性脂肪が高い場合には、フィブラートと呼ばれる分類の薬や、EPA・DHAを主成分とする薬が使われることがあります。
LDLと中性脂肪の両方が高い場合は、複数の薬を組み合わせることもあります。
薬の「種類の多さ」には理由があります
「なぜこんなにたくさんの種類があるのか」と感じる方もいるかもしれません。血糖の薬だけでも十種類以上の分類があり、把握するのが難しいのです。しかも新製品が次々に出るので、私たち医師も情報をキャッチアップする必要があるくらいです。
種類が多い理由の一つは、人によって体の状態が異なるからです。腎機能が低下している方には使えない薬がある、肝臓への負担が少ないものを選びたい、低血糖のリスクを下げたい、体重への影響を最小限にしたい——こうした個別の事情に合わせるために、選択肢が増えてきました。
「種類が多い=複雑でよくわからない」ではなく、「一人ひとりに合わせた選択ができる」ということでもあります。自分の薬についてわからないことがあれば、処方した医師や薬剤師に確認するのが確実です。
副作用の基本的な考え方
副作用はゼロにはできないが、リスクは管理できる
どんな薬にも、副作用の可能性があります。これは事実です。ただし、「副作用の可能性がある」ということは、「必ず副作用が出る」とは違います。
薬の添付文書には副作用として様々な症状が記載されていますが、その多くは発生頻度とともに示されています。「1%未満」と書かれていれば、100人が飲んで1人未満に起きる可能性、という意味です。0%ではないけれど、多くの方には起きないということでもあります。
また、定期的な診察や血液検査によって、副作用の兆候を早期に発見・対処できる体制を作ることが、生活習慣病の治療では一般的に行われています。副作用を「怖いもの」として遠ざけるよりも、「何が起きたら連絡すればよいか」を知っておくほうが、安全に薬を使い続けるうえで役に立ちます。
よくある副作用と、注意が必要なサイン
生活習慣病の薬で、日常的に気をつけておきたい副作用をいくつか挙げます。
血糖の薬では、「低血糖」に注意が必要なことがあります。空腹感、手の震え、冷や汗、動悸、ぼーっとする感覚——これらは低血糖のサインとして知られています。特にインスリン製剤やインスリン分泌を強く促す薬を使っている方は、こうしたサインを覚えておくと安心です。
腎臓から糖を排泄するタイプの薬(SGLT2阻害薬)では、尿量が増えることから脱水になりやすい場合があります。夏場や発熱時など、水分が失われやすいときには注意が必要です。また、尿路感染症のリスクが上がることも知られています。
血圧の薬では、立ち上がったときの立ちくらみ(起立性低血圧)が出ることがあります。急に立ち上がる動作のあとにふらつく場合は、担当医に伝えるとよいでしょう。
脂質の薬(スタチン)では、筋肉の痛みやこわばりが出ることがあります。全身がだるく筋肉が痛む感覚が続く場合は、早めに相談してください。
これらのサインは、あくまで「気づくべきこと」として知っておくためのものです。すべての方に起きるわけではなく、起きたとしても適切に対処できることがほとんどです。
副作用が出たときにやってはいけないこと
副作用らしい症状が出たとき、一番避けてほしいのは「勝手に自分で薬をやめる」ことです。
血圧の薬を急に中止すると、血圧が跳ね上がってしまうことがあります。血糖の薬も、急にやめることで数値が大きく乱れることがあります。薬は体の中で一定のバランスを保つために働いているため、急な中断はそのバランスを崩す原因になりえます。
「副作用が怖いから飲む量を半分にした」という自己調整も同様です。量を変えることで効果が不十分になったり、別の問題が起きることがあります。
副作用と思われる症状が出た場合は、まず処方した医療機関か薬剤師に連絡・相談することが基本です。「副作用かどうかわからない」という段階でも、相談して構いません。専門職がその判断を一緒に考えることができます。
複数の薬を一緒に使う場合の考え方
生活習慣病では複数の薬を使うことが珍しくない
生活習慣病の治療を続けていると、薬が一種類だけという方のほうが少ないかもしれません。高血圧と脂質異常症を同時に持っている方、糖尿病に加えて血圧の薬も必要な方——複数の異常が重なることは、生活習慣病ではよくあることです。
それぞれの問題に対してそれぞれの薬が必要になるため、薬の数が増えるのは「治療がうまくいっていない」からではなく、「それだけ複数の問題に対処している」からです。
複数の薬を飲むことへの不安は自然ですが、それぞれの薬には役割があります。種類と目的を大まかに把握しておくだけでも、飲み忘れの防止や、気になる変化への気づきにつながります。
飲み合わせで気をつけたいケース
複数の薬を使う場合、「飲み合わせ」を気にする方もいます。処方薬同士の飲み合わせについては、担当医や調剤薬局で確認・管理されていることがほとんどですが、注意が必要なのは、処方薬と市販薬・サプリメントの組み合わせです。
よく知られているのはグレープフルーツと一部のスタチン系の薬の関係です。グレープフルーツに含まれる成分が薬の分解に影響することで、薬の血中濃度が上がりすぎることがあります。一部のスタチンを服用中の方は、グレープフルーツの摂取量について担当医か薬剤師に確認しておくとよいでしょう。
また、市販の風邪薬や痛み止め(NSAIDsと呼ばれる成分)は、腎臓の機能に影響することがあり、一部の降圧薬や血糖の薬との組み合わせで注意が必要なケースがあります。
サプリメントについても、処方薬と全く無関係とは言い切れないものがあります。「自然のものだから大丈夫」とは限りません。新たにサプリメントや市販薬を追加する際は、一言、処方医や薬剤師に確認することを習慣にしておくと安心です。
薬の数が増えることへの不安とその対処
「薬が増えるたびに不安になる」という方はいます。なぜ増えたのか、どれがどの目的で使われているのかがわからないと、なおさらそう感じるかもしれません。
疑問に感じることがあれば、担当医や薬剤師に「この薬は何のために使っているのですか」と聞いてみることは、遠慮しないでください。疑問を放置されて信頼関係が揺らぐことで、薬を勝手にやめたり、ドクターショッピングを始める方が私たち医師も困るのです。
また、体重が改善したり、生活習慣の見直しによって数値が安定してきた場合、薬を整理・減らす方向で検討できることがあります。体重が減って血圧の薬が一種類不要になった、というケースも実際にあります。ただしこれは医師が数値の変化を確認したうえで行う判断ですので、自己判断で減らすことは避けてください。
ダイエット中の薬の使い方と注意点
体重が減ってきたとき、薬の量や種類はどうなるか
体重を減らすことで、血糖値・血圧・脂質の数値が改善することがあります。これは多くの研究でも確認されており、「体重管理が生活習慣病の治療に効果的」と言われる理由の一つです。
体重が一定程度減少し、数値が安定してきた場合、医師の判断で薬を減量したり、種類を整理することがあります。「痩せれば薬が必ずゼロになる」とは言い切れませんが、減らせる可能性があることは確かです。
ただし、この調整は担当医が血液検査や血圧測定などの結果を確認したうえで行うものです。「体重が減ってきたから自分で薬を減らしてみよう」という判断は避けてください。数値が改善しているように見えていても、薬の効果で保たれている状態である場合があるからです。
ダイエットを始める前や途中で、「体重が変わってきたのですが薬の調整は必要ですか」と担当医に伝えることが、安全に進めるうえで大切なことの一つです。
食事制限や運動と薬の関係
ダイエットのために食事の量を大きく減らしたり、急に運動量を増やす場合、薬との関係で注意が必要なことがあります。
低血糖のリスクがある薬を使っている場合、食事の量が急に減ると低血糖が起きやすくなることがあります。特に食後の血糖上昇を抑えることを目的とした薬は、食事の内容・量との兼ね合いが重要です。
運動についても同様で、激しい運動の前後は血糖値が変動しやすいことがあります。どのくらいの運動量が自分の状態に適しているか、気になる場合は担当医に確認してみましょう。
腎臓から糖を排泄するタイプの薬(SGLT2阻害薬)を使っている場合は、水分補給を意識することが勧められています。運動による発汗が増える夏場や、暑い環境での運動後は特に気をつけてください。
また、血圧の薬を使っている場合、急な水分不足や激しい運動後に血圧が下がりすぎて、立ちくらみや気分不良が起きることがあります。無理のない範囲で体を動かすことが、長続きする観点からも大切です。
自己判断でやめるリスクについて
「副作用が心配だから」「痩せてきたから」「なんとなく合わない気がするから」という理由で、薬を自分の判断でやめてしまう方がいます。その気持ち自体は理解できますが、自己判断での中止にはリスクが伴います。
「この薬を続けることが不安」「別の方法を考えたい」という気持ちがあれば、まずそれを担当医に伝えてみてください。相談せずにやめることと、相談したうえで一緒に方法を考えることは、安全性の面で大きく違います。「やめたい」という気持ちを正直に伝えることは、治療の選択肢を広げる入口にもなりえます。
自分に合った治療の選び方と、相談したほうがよいケース
薬の選択は状態によって異なります
「どの薬が良いか」という問いに対する答えは、一つではありません。年齢、体重、腎臓や肝臓の機能、他の病気の有無、今飲んでいる薬との関係、生活スタイル——これらすべてが薬の選択に影響します。
たとえば、腎機能が低下している方には使えない薬があります。心臓に持病がある方には、特定の薬が積極的に選ばれることもあります。体重が多い方には、体重に影響の少ない薬、または体重が減る方向に働く薬が候補になることがあります。
「ネットで調べたこの薬が自分にも良さそう」という情報が、その方の体の状態に当てはまるかどうかは、情報だけからは判断できません。薬の選択は医師との相談によって決まるものです。「こういう薬はどうか」という疑問や希望を伝えることは問題ありませんが、最終的な判断は体の状態を確認したうえで行われます。
「薬に頼りたくない」方へ
「できれば薬は飲みたくない」という気持ちは、多くの方が持っているものです。その感覚を否定するつもりはありません。
生活習慣病の数値が軽度の段階であれば、まず生活習慣の見直し(食事・運動・体重管理・禁煙など)を優先するというのが、多くの場面での基本的な考え方です。実際に、その取り組みで数値が改善し、薬を使わずに管理できるようになる方もいます。
ただし、数値が一定の基準を超えた場合や、心臓・腎臓・脳への負担がすでに出始めている場合は、生活習慣改善と並行して薬を使うほうが良いこともあります。
「薬を飲む=自分の努力が足りなかった」ではありません。薬を使うことで治療の余裕が生まれ、生活習慣の改善に取り組みやすくなるという側面もあります。「薬を飲む自分」を責めずに、治療と生活の両方に向き合えるようにすることのほうが、長い目で見て大切だと思います。
こんなときは一人で判断しないでください
以下のような状況は、一人で判断しようとせず、医療機関に相談できる環境があると安心です。
複数の薬を飲んでいる状態でダイエットを始めたいとき。体重が減ってきて、薬の量が今の自分に合っているか気になるとき。副作用らしい症状が出ていて、やめるべきかどうか迷っているとき。体重管理と生活習慣病の治療を同時に考えたいが、どこに相談すればよいかわからないとき。
こうした状況で「自分で調整してみよう」とするのは、リスクが高くなりがちです。薬の調整と体重管理の両方を視野に入れて相談できる場があれば、より安心して取り組めると思います。
体重管理と持病の治療は、対立するものではなく、むしろ同じ方向を向いているものです。「どちらを優先すればよいか」と一人で悩むよりも、両方を一緒に考えてくれる専門家に相談できる環境を持つことが、長く続けられる取り組みにつながるのではないかと思います。
【参考文献】
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