健診で「脂肪肝」と言われた。でも、お酒はほとんど飲まない
健診の結果を見て、「脂肪肝」という文字に目が止まった方もいるかと思います。でも、お酒はほとんど飲まない。飲み会でビールを一杯、年に数回——そんな程度なのに、なぜ?
こういう疑問を持って検索した方は、多いのではないでしょうか。脂肪肝というと、お酒を大量に飲む人の話だと思っている人がいると思います。実際にはそうではなく、お酒をほとんど飲まない人が脂肪肝と診断されるケースは、現在の日本においてむしろ主流になっています。
もう一つ、よくある固定観念があります。「数値が少し高いだけで、症状もないし、そんなに深刻に考えなくていいのでは」というものです。それが当てはまる場合もありますが、そうでない場合もあります。ただ、「症状がないから大丈夫」という判断の根拠は、脂肪肝については成立しません。その理由は、この記事を読んでいくとわかります。
この記事では、脂肪肝とはどういう状態なのか、なぜお酒と関係なく起きるのか、体重との関係はどのくらい深いのか、放置するとどうなりうるのか、そして何をすれば改善に向かうのかを、健診で指摘された方に順を追って説明していきます。
じつは、脂肪肝の原因の多くはお酒ではない
脂肪肝とは、肝臓の細胞の中に中性脂肪が過剰にたまった状態のことをいいます。肝細胞全体の5%以上に脂肪沈着が見られると、医学的に脂肪肝と診断されます。
肝臓に脂肪がたまる原因は、大きく二つに分けられます。一つは、アルコールの過剰摂取によるもの(アルコール性肝障害)。もう一つは、アルコールとは無関係に起きるもの——こちらが「非アルコール性脂肪性肝疾患」と呼ばれてきたものです。
日本人を対象とした調査では、成人の約2〜3割が脂肪肝を持つとされており、その多くはお酒が原因ではありません。原因として主に挙げられるのは、内臓脂肪の蓄積、過食、糖質・脂質の取りすぎ、運動不足、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」といった代謝の問題です。
つまり、お酒を飲まなくても、食生活や体重の変化、代謝の状態によって、肝臓には脂肪がたまりえます。「お酒を飲まないのになぜ」という疑問の答えは、「原因はお酒以外にある」ということです。
なお、アルコール性の肝障害と混同しないためにも、診断の際には飲酒習慣の確認が行われます。医師に「どれくらい飲みますか」と聞かれるのはそのためで、少量飲酒であれば通常はアルコール性ではなく代謝性の脂肪肝として扱われます。
「自覚症状がない」のは当たり前——それが脂肪肝のやっかいなところ
「症状がないから大丈夫」という判断が通用しない理由は、脂肪肝という病態の性質そのものにあります。
脂肪肝の段階では、ほとんどの方に自覚症状はありません。右わき腹の重さや軽い倦怠感が出ることはありますが、それも稀で、多くの方は何も感じないまま健診の数値に異常が出る、という流れをたどります。
自覚症状がないから悪化しないわけではなく、症状がないまま静かに進行していくケースがあります。これが脂肪肝のやっかいな点です。健診で「脂肪肝」「ALT高め」「AST高め」などと書かれていても、体の感覚としては何も変わらないため、「まあいいか」と後回しにされがちになります。
肝機能の数値——ALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTP——は、肝細胞がダメージを受けているときに上昇します。これらが基準値を超えていた場合、肝臓で何らかの変化が起きているサインと考えるのが自然です。ただし、これらの数値が正常範囲内でも、超音波検査では脂肪肝と判断されることもあります。数値だけで安心し切ってはいけないのです。
症状がないこと自体は悪いことではありませんが、「症状がないから何もしなくていい」とはなりません。健診でひっかかったという事実を、まず率直に受け止めることが出発点になります。
NAFLD・NASHという名前が変わった理由
脂肪肝について調べていると、「NAFLD(ナッフルディー)」「NASH(ナッシュ)」という言葉が出てくることがあります。少し前まで広く使われていた用語ですが、2023年前後から「MASLD(マスルド)」「MASH(マッシュ)」という新しい名称が使われるようになってきました。「これは別の病気なのか」と思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。
「MASLD」「MASH」——新しい名前に変わったのは、病気の「見方」が変わったから
NAFLDは「Non-Alcoholic Fatty Liver Disease」の略で、日本語にすると「非アルコール性脂肪性肝疾患」。文字どおり、アルコールが原因ではない脂肪肝という意味です。
この名前には、一つ問題がありました。「非アルコール性」という言葉は、「アルコールが原因ではない」という否定形で定義されており、では何が原因なのかを積極的に示していませんでした。また、「何も飲んでいないのに脂肪肝」というスティグマ(負のイメージ)につながりやすいという指摘もありました。
そこで2023年、世界消化器病学会などの主要学会が中心となり、この疾患群の名称を改める国際的な合意がなされました。新しい名称が「MASLD」——「Metabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease」、日本語では「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」と訳されます。
「代謝機能障害と関連した」という表現が加わったことで、この病気が内臓脂肪・糖代謝の異常・血圧・脂質といった代謝の問題と密接に関係していることが、名称の中に明示されるようになりました。これは単なる言い換えではなく、「この疾患を代謝異常の文脈で捉えましょう」という医学的な考え方のアップデートを反映しています。
MASHはNASHと同じ病態。名前より、進行リスクに注目すること
NASHは「Non-Alcoholic SteatoHepatitis」——非アルコール性脂肪性肝炎の略で、単なる脂肪の蓄積だけでなく、肝臓に炎症や細胞障害が加わった状態を指します。脂肪肝の中でも、より進行したステージにあたります。
これが新しい名称では「MASH(Metabolic dysfunction-Associated SteatoHepatitis)」となりました。内容はNASHと同じ病態で、名前だけが変わった形です。
ここで覚えておいていただきたいのは、MASLDの中でも「ただ脂肪がたまっているだけ」の段階と、「炎症・細胞障害が加わっているMASH」の段階では、その後の経過が異なるということです。MASHになっているかどうかは、外から見ただけではわからず、厳密には肝生検(肝臓の組織を採取して調べる検査)が必要になる場面もあります。
この記事で名称の話を詳しく書いたのは、「NAFLD・NASHという言葉で調べていた方が、MASLD・MASHという新しい言葉を見て混乱しないように」という理由からです。本質的な話は、名前が変わった後も変わっていません。脂肪肝を代謝の問題として捉え、体重・内臓脂肪・生活習慣と合わせて考えることが、この疾患の管理において核心になります。
脂肪肝は「肝臓だけの問題」ではなかった
ここが、脂肪肝を「お酒も飲まないし、症状もないし、肝臓だけの話でしょ」と思っている方に特に読んでいただきたい部分です。脂肪肝——正確にはMASLD——は、肝臓の病気であると同時に、全身の代謝異常のサインでもあります。
内臓脂肪・糖尿病・高血圧・脂質異常症、これらはすべてつながっている
MASLDと診断される条件として、体重の増加やBMIの基準値超えに加えて、以下のいずれかの代謝異常を持っていることが含まれます(2023年の国際基準による)。
- 血糖値の異常(空腹時血糖高め、HbA1c高め、または2型糖尿病)
- 血圧の異常(高血圧、または降圧薬を服用中)
- 脂質の異常(中性脂肪高め、HDLコレステロール低め)
- ウエスト周囲径の増大(腹部肥満)
これらは「メタボリックシンドロームの診断基準」とも大きく重なります。つまり、MASLDとメタボはほぼ同じ土壌から生まれます。
「メタボと言われたことがある」「血糖が少し高めと言われている」「中性脂肪が高い」「血圧が気になっている」——こうした状態にある方が健診で脂肪肝も指摘された場合、それはそれぞれ別々の問題が偶然重なったのではなく、同じ代謝の異常が複数の形で出ているということです。
なかでも、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなっている状態)は、肝臓への脂肪蓄積を促進し、MASLDの進行にも深く関与しています。内臓脂肪が増えると、脂肪細胞から遊離脂肪酸が過剰に放出され、それが肝臓に流れ込んで蓄積しやすくなります。この流れは、体重増加が続いている方ほど加速しやすい傾向があります。
健診の結果に、脂肪肝と合わせて血糖・血圧・脂質の異常がいくつか並んでいる場合は、肝臓の問題として単独で対処するより、代謝全体を整えるという視点が必要になります。
脂肪肝がある人に心臓病リスクが高い理由
「脂肪肝→肝硬変→肝がん」という進行経路はよく知られていますが、実はMASLD患者の死亡原因として最も多いのは、肝臓の病気ではなく心血管疾患(心臓病・脳卒中)だというデータがあります。
なぜ脂肪肝があると心臓病リスクが上がるのか。これは、脂肪肝が単独で存在することはほとんどなく、動脈硬化を促進するリスク要因——高血糖、高血圧、脂質異常症、内臓肥満——と同時に存在していることが多いからです。
内臓脂肪が過剰にある状態では、炎症を促すサイトカインと呼ばれる物質が血中に増え、血管の壁にダメージを与え続けます。これが動脈硬化を進め、結果として心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。
「脂肪肝があると言われたけど、心臓のことまで心配しないといけないの?」と思われるかもしれません。ただ、これは脅しではなく、「脂肪肝は肝臓の警報であると同時に、全身の代謝の異常を示すサインでもある」という意味でお伝えしています。逆に言えば、体重を落とし、血糖・血圧・脂質を整えることは、肝臓の改善と心血管リスクの低減の両方に同時に働きます。
放置したらどうなる? 全員が重症化するわけではないが
「放置したら肝硬変になりますよ」と言われると怖くなりますが、現実はもう少し複雑です。全員が重症化するわけではありません——ただし、一部の方では確実に進行します。この両方が事実であり、どちらかだけを強調すると正確ではありません。
脂肪肝→MASH→肝線維化→肝硬変→肝がん、という可能性のある道筋
MASLDの進行は、一般的に以下のような段階をたどることがあります。
まず「単純性脂肪肝(MASL)」の段階。肝臓に脂肪がたまっているだけで、炎症は目立ちません。多くの方がこの段階にあり、生活習慣の改善によって比較的回復しやすい状態です。
次に「MASH」の段階。脂肪蓄積に加えて炎症や肝細胞の障害が加わります。このステージになると、肝細胞が傷ついて再生を繰り返すことで、少しずつ繊維組織が蓄積し始めます(線維化)。
線維化が進行すると、最終的に「肝硬変」になりえます。肝硬変では、肝臓が硬くなり、正常な細胞が少なくなるため、肝機能が大きく低下します。肝硬変から「肝細胞がん(肝がん)」が発生するリスクも高まります。
ただし、このすべてを順に経過する方ばかりではありません。単純性脂肪肝の段階にとどまり続ける方も多く、MASLDがあっても肝硬変まで至るのは全体の中では一部です。一方で、何年もかけてゆっくり進行するため、「今は大丈夫」が5年後・10年後も大丈夫である保証にはなりません。
進行しやすい人・しにくい人——リスクを左右する要因とは
では、どういう方がより進行しやすいのでしょうか。現在知られているリスク要因をいくつか挙げると、以下のものがあります。
進行リスクが高まりやすい要因
- 2型糖尿病または高血糖がある
- 体重増加が続いている、または高度肥満がある
- すでにある程度の肝線維化が確認されている
- 高血圧・脂質異常症が合併している
- 中高年以降(特に50代以上)
- 遺伝的な素因(一部の遺伝子多型が関与することが知られています)
逆に言えば、体重を管理し、血糖・血圧・脂質を適切にコントロールできている方では、進行が抑えられやすいということでもあります。
「自分はどのくらいのリスクにいるのか」が気になる場合は、健診の数値(ALT、AST、γ-GTP、血糖、HbA1c、中性脂肪、HDLコレステロール、血圧、ウエスト周囲径)を合わせて確認し、気になる点があれば医療機関での精査を考える流れが自然です。肝臓専門の観点からは、線維化の程度をより詳しく調べる非侵襲的な検査(血液検査や超音波エラストグラフィなど)も選択肢にあります。
体重と脂肪肝は、どれくらい直結しているのか
「体重と関係があるのはわかったけど、自分はそこまで太っていない」と感じる方もいるかもしれません。ここで少し詳しく見てください。体重と脂肪肝の関係は、「高度肥満でないと関係ない」という話ではありません。
「少し太ってきた」が、肝臓にとっては大きな変化である理由
内臓脂肪は、皮下脂肪と比べて代謝的に活発です。単純に「量が多い」だけでなく、蓄積された内臓脂肪は炎症性のサイトカインや遊離脂肪酸を放出し続け、これが肝臓への脂肪流入と炎症反応の引き金になります。
体重が「5kgくらい増えた」「ズボンのウエストがきつくなってきた」程度の変化でも、内臓脂肪の蓄積は皮下脂肪よりも先に進んでいることがあります。見た目にはそれほど変化を感じなくても、肝臓の中では脂肪蓄積が始まっていることがあるのです。
また、日本人を含むアジア人は、欧米人と比べてBMIが比較的低い段階でもインスリン抵抗性が生じやすく、内臓脂肪がたまりやすい体質的な傾向があるとされています。「自分はそこまで太っていないのに脂肪肝と言われた」という話には、こうした背景もあります。
健診でウエスト周囲径を測るのは、まさにこの内臓脂肪の蓄積を簡易的に確認するためです。BMIが正常範囲内でも、ウエスト周囲径が男性85cm・女性90cmを超えていれば、内臓脂肪が多い状態と判断されます。
では、「やせれば治る」は本当か
結論から言うと、「やせれば改善しやすい」は本当です。ただし、「やせれば必ず治る」とも、「完全に痩せないと意味がない」とも言い切れません。
複数の研究から得られているのは、「体重を5〜10%程度減らすことで、肝臓の脂肪量が減り、肝機能の数値が改善し、炎症や線維化の程度が改善する例がある」という事実です。これは、まず5kgか10kg痩せないといけない、というハードルの高い話ではありません。体重70kgの方なら3.5〜7kg程度の減量が、肝臓に意味のある変化をもたらしえます。
ただし、やせれば全員が完全に正常化するわけではなく、特にすでに線維化が進んでいる段階では、体重管理だけで元に戻すことには限界があります。早い段階で気づいて対処するほど、改善の余地が大きいということです。
「やせれば治る」という言葉を楽観的に解釈して「いつかやせれば」と先延ばしにするのと、「体重を管理することが肝臓の改善に直結する」として今から動くのでは、5年後・10年後の状態が変わってくる可能性があります。
体重を5〜10%減らすと、肝臓に何が起きるか
これまでの研究では、体重を5%以上減らすと肝臓の脂肪量(肝脂肪量)が減少することが示されており、7〜10%以上の減量では肝臓の炎症の改善、さらには線維化の改善を認める例もあるとされています。
この数字の意味を実感しやすくするために、具体的に考えてみましょう。
体重80kgの方なら、5%減は4kg、10%減は8kgです。「4kg痩せるだけで肝臓に変化が起きるの?」と思われるかもしれませんが、その通りです。それは、「痩せることが全身の代謝に与える影響が、肝臓にも現れる」ということの現れでもあります。
減量によって何が起きるかを整理すると、おおよそ以下のような流れになります。
内臓脂肪が減る → 肝臓への遊離脂肪酸の流入が減る → 肝臓内の脂肪蓄積が減る → 炎症反応が落ち着く → ALT・ASTなどの数値が改善する
加えて、インスリン感受性が改善することで血糖コントロールが良くなり、コレステロールや中性脂肪も改善しやすくなります。脂肪肝の改善が、糖尿病・高血圧・脂質異常症の管理にも好影響を与えるという循環が生まれます。
ただし、急激なカロリー制限や短期間の断食は、逆に肝臓に負担をかける場合があるとも言われています。「少し痩せることに意味がある」という事実は、「急いで一気に痩せる必要はない」ということでもあります。ゆっくりでも継続できる方法で体重を落としていくことが、肝臓への効果という観点からも理にかなっています。
筋肉量を維持しながら脂肪を減らす「体組成の改善」という視点も、代謝の観点から意味があります。有酸素運動が肝脂肪の減少に寄与するという報告も複数あり、食事の改善と運動を組み合わせることが、より効果的なアプローチになるものです。
私の臨床的な実感
私が医学生だった20年以上前は、全ての臓器は繋がっていると考えられていましたが、その機序はあまり解明されていませんでした。最近の研究の成果が教えるところでは、例えば内臓脂肪、血管、筋肉などが様々な物質をやり取りしながら「臓器間クロストーク」をしていることが明確にわかってきました。脂肪はただの余分な組織の塊ではなく、ほかの臓器とのクロストークの発信者でもあったのです。
臨床的にも、例えば5%程度の減量をするだけでも肝機能の数値、血糖値、コレステロール、血圧と全て改善する例すらあります。脂肪がほかの臓器に発するシグナルの強さは私たちが以前想像していた以上だったのです。ダイエットをただの美容目的で行うのではなく、体重を減らすことの長期的な健康上のメリットを享受するため、という側面にもフィーチャーしていく必要があると強く思うようになってきました。
私がこの記事を書こうと思ったのも、論文や専門書のように一部のプロにしかわからない形ではなく、誰にでも分かる言葉での発信が必要だと感じたからでした。
健診の結果を持って、まず何をすればいいか
健診で脂肪肝、または肝機能異常を指摘された場合、どう動けばいいか。最後にここを整理しておきます。
まず、健診結果のどこを見るか
肝臓に関係する主な数値として、ALT(GPT)・AST(GOT)・γ-GTP があります。これらが基準値を大きく超えている場合、あるいは複数の値が繰り返し高めに出ている場合は、医療機関での再検査を考えるサインになります。
加えて、血糖(空腹時血糖・HbA1c)・中性脂肪・HDLコレステロール・血圧・ウエスト周囲径を合わせて確認することで、脂肪肝の背景にある代謝の状態が見えてきます。これらのどれかが引っかかっているなら、脂肪肝は「肝臓だけの問題」ではなく「代謝全体の問題」として捉える必要があります。
受診を考えたほうがよいのはどんなケースか
- 毎年健診で「肝機能異常」「脂肪肝」と続けて指摘されているが、未受診のまま
- ALTが継続して50〜60 U/L以上(基準値はやや施設により異なりますが、概ね30〜40 U/L程度が目安です)
- 血糖・脂質・血圧の異常も同時にある
- 体重が数年で5kg以上増えており、ウエスト周囲径も増えている
- 「精密検査を受けてください」という指示が健診結果に記載されている
これらに当てはまる場合は、内科や消化器内科を受診し、腹部超音波や血液検査での精査を受けることが一つの選択肢になります。
自分でできることから始める
受診の前に、自分でできることとして、食事の振り返りと体重測定の習慣化があります。毎日体重計に乗り、現在の体重を把握するだけでも、変化への意識が変わります。食事については、糖質の過多・揚げ物・清涼飲料水・夜遅い食事といった習慣が内臓脂肪の蓄積に直結しやすいです。特定の食品を排除するよりも、全体の摂取量と食事の時間帯を整えることが、現実的な入口になります。
体を動かすことも、肝脂肪の減少に効果があるという報告は多くあります。激しい運動でなくても、毎日30分程度のウォーキングを続けることが、代謝の改善につながりやすいです。
自己流で難しい場合の選択肢
「わかってはいるけど、なかなかできない」「何度試みても続かない」「何から手をつければいいのかわからない」——そういう状況は珍しくありません。知識があっても行動につながりにくいのは、意志の問題というよりも、環境・習慣・ストレス・生活スタイルといった要因が絡んでいることが多いからです。
糖尿病や高血圧がすでにある場合、体重を落とすことの医療的な意味が大きいにもかかわらず、自己流の減量では代謝の管理が難しい場面も出てきます。そういうときに、医師のもとで食事・運動・体重変化を継続的にサポートしてもらえるダイエット外来(肥満外来・体重管理外来)を使うことは、「なんとなく受けるもの」ではなく、合理的な医療的選択肢です。
特に、「健診で毎年引っかかっているが、自分で体重を落とすのが難しい」「体重と一緒に血糖や脂質も管理したい」という方には、自己流と並行してプロの視点を入れることが、結果的に近道になる場合があります。
「脂肪肝と言われたけど、そんなに深刻な話?」と思って読み始めた方も、読み終えてみると、少し見え方が変わったでしょうか。
体重を5〜10%落とすことは、肝臓の脂肪を減らすだけでなく、血糖・血圧・脂質・心血管リスクをまとめて改善する可能性を持っています。「肝臓のために痩せる」と考えるより、「体重を整えることが、全身の代謝を立て直すことにつながる」という見方のほうが、長期的にはしっくりくるかもしれません。
今の自分が「どの段階にいるか」を把握することが、まずできることの第一歩です。健診結果を引き出しに閉まったままにせず、数値を見直すところから始めてみてください。
脂肪肝にならないために、ふだんの生活でできること
脂肪肝は、ある日突然できあがるものではありません。内臓脂肪が少しずつたまり、代謝の状態が少しずつ変化していく中で、気づいたときには健診で指摘される——そういう経緯をたどることがほとんどです。だからこそ、予防も「突然大きく変える」より「少しずつ悪化させない」という発想のほうが、現実に続けやすいです。
体重を増やさないことが、何より現実的な予防になる
「痩せなければ」と思うと、どうしてもハードルが高くなります。でも、「今の体重をこれ以上増やさない」というラインを意識するだけでも、内臓脂肪の蓄積を抑えることにつながります。健診のたびに体重が1〜2kgずつ増えている、ウエスト周囲径が毎年少しずつ増えている——こうした変化を「まだそんなに太っていないから大丈夫」と流さないことが、予防の出発点です。
すでに脂肪肝を指摘された方にとっても、この考え方は悪化予防として同じように当てはまります。
実際にダイエットをすることで、肝機能の数値(AST、ALT、γ-GTP)が大幅に下がる患者さんはよく見ます。
食事と運動は、完璧にやろうとしないこと
食事については、糖質や脂質を完全にやめる必要はありません。清涼飲料水や菓子類をふだんより少し減らす、夜遅い時間の食事を週に何回か前倒しにしてみる、といった小さな変化の積み重ねが、内臓脂肪のたまりにくい状態につながります。
運動も、ジムに通う必要はありません。毎日の移動に少し歩く時間を足す、エレベーターより階段を選ぶ——そういった習慣の積み重ねが、有酸素運動としての効果を持ちます。「週に数回、合計150分程度の中強度の有酸素運動」が目安としてよく挙げられますが、まず「今より少し動く」から始めることで十分です。
私個人も飽きっぽく、運動や食事療法が続かない性格なので、いかに自然に生活に組み込んで「やろうかな、やめておこうかな」という葛藤を感じない仕組みを作ることにしました。それが歯磨き中のスクワットであったり、YouTubeを観ながらのエアロバイクだったりするわけです。
まず今日から駅の階段を歩くところから始めればいいのです。
睡眠と生活リズムも、意外と関係している
睡眠不足や昼夜逆転の生活は、食欲を調整するホルモンのバランスを乱し、過食や糖代謝の悪化につながることが知られています。「食事と運動だけ気をつければいい」という話ではなく、睡眠の質や生活リズムも内臓脂肪のたまりやすさに影響します。完璧な規則正しさを目指す必要はありませんが、極端に睡眠が短い状態や、食事・睡眠の時間帯が毎日大きくずれる状態は、できる範囲で整えていく価値があります。
こうした生活習慣の調整は、知識があっても一人でなかなか続かないことも多いものです。体重管理に関して行き詰まりを感じている方や、生活習慣病が重なっていて自己流での対応が難しいと感じている方は、医療機関でのサポートを選択肢の一つとして考えてみてください。
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