居宅療養管理指導は介護保険で利用できる?自己負担額と利用限度額への影響を解説

居宅療養管理指導は介護保険で利用でき、自己負担は原則1割から3割です。
しかも、このサービスは介護保険の利用限度額(区分支給限度基準額)の対象外なので、他の介護サービスを限度額いっぱいまで使っていても別枠で利用できます。
「通院が難しくなった家族のために、自宅で医療の専門家に相談したい」「介護保険の枠を圧迫しないか心配」という方に向けて、費用や手続き、訪問診療との違いまで丁寧に解説します。
居宅療養管理指導は介護保険の対象サービスだから安心して利用できる
居宅療養管理指導は介護保険法で定められた居宅サービスの一つであり、要介護・要支援の認定を受けた方が対象です。通院が困難な方の自宅に医師や薬剤師などの専門職が訪問し、療養上の管理と指導を行います。
居宅療養管理指導とは何をしてくれるサービスなのか
居宅療養管理指導は、医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士といった医療の専門家が、通院が難しい方のご自宅を訪問して健康管理や療養に関する助言を行うサービスです。
たとえば、薬の飲み方の指導、口腔ケアの助言、栄養管理の計画作成などが含まれます。
あくまで療養上の「管理・指導」が目的であり、注射や処置といった医療行為そのものは含まれません。医療行為が必要な場合は、訪問診療や訪問看護など別のサービスと組み合わせて利用する形になります。
介護保険で居宅療養管理指導を利用するための対象者
このサービスを介護保険で利用できるのは、要介護1から要介護5の認定を受けた方です。要支援1・要支援2の方は「介護予防居宅療養管理指導」という名称になりますが、サービスの中身はほぼ同じと考えて問題ありません。
いずれも「通院が困難であること」が利用の前提条件となっています。一人で通院できる方や、家族の送迎で定期通院を続けられる方は、原則として対象になりにくい点にご注意ください。
居宅療養管理指導の対象者と認定区分
| 介護認定 | 利用できるサービス名 | 利用条件 |
|---|---|---|
| 要介護1〜5 | 居宅療養管理指導 | 通院が困難な方 |
| 要支援1〜2 | 介護予防居宅療養管理指導 | 通院が困難な方 |
| 認定なし | 利用不可 | 要介護認定の申請が必要 |
居宅療養管理指導と訪問看護・往診はどう違うのか
似たサービスとして混同されやすいのが訪問看護や往診です。訪問看護は看護師が自宅で点滴や傷の処置などの医療行為を行うサービスであり、往診は急な体調変化のときに医師が臨時で駆けつける診療行為を指します。
一方、居宅療養管理指導はあくまで療養上の管理と指導に特化しています。
処置そのものは含みませんが、ケアマネジャーへの情報提供やケアプラン作成への助言も含まれるため、在宅介護チーム全体の質を底上げする役割を担っているといえます。
居宅療養管理指導の介護保険における自己負担額はいくらかかるのか
居宅療養管理指導の自己負担額は、介護保険の自己負担割合に応じて1割・2割・3割のいずれかになります。1割負担の方であれば、1回あたりおよそ300円から560円程度で利用可能です。
自己負担割合は所得によって1割・2割・3割に分かれる
介護保険の自己負担割合は、利用者ご本人の所得に応じて決まります。多くの方は1割負担ですが、一定以上の所得がある方は2割、さらに高所得の方は3割となります。
自分の負担割合がわからない場合は、介護保険被保険者証や負担割合証を確認するのがもっとも確実です。市区町村の窓口やケアマネジャーに相談すれば、すぐに教えてもらえるでしょう。
訪問する専門職と建物の居住者数で費用が変わる
居宅療養管理指導の報酬単価は、訪問する職種(医師・歯科医師・薬剤師など)と、同一建物内で同じ月に指導を受ける利用者の人数によって細かく設定されています。
たとえば、単一建物居住者が1人の場合と10人以上の場合では、1回あたりの単価が異なります。
一般的な戸建て住宅にお住まいの方は「単一建物居住者1人」に該当するケースがほとんどです。
集合住宅や高齢者向け住宅に入居されている場合は、同じ建物内に他の利用者がいるかどうかで単価が変わるため、事前に確認しておくと安心でしょう。
費用を少しでも抑えるために活用したい制度
居宅療養管理指導の自己負担額は、高額介護サービス費の対象となります。1か月の介護サービスの自己負担額が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される仕組みです。
さらに、居宅療養管理指導の自己負担額は医療費控除の対象にもなります。確定申告のときに領収書を添付すれば、所得税の還付を受けられる可能性があるため、領収書は必ず保管しておきましょう。
医師が行う居宅療養管理指導の費用目安(1割負担の場合)
| 同一建物の利用者数 | 居宅療養管理指導(I) | 居宅療養管理指導(II) |
|---|---|---|
| 1人 | 約515円/回 | 約299円/回 |
| 2〜9人 | 約487円/回 | 約287円/回 |
| 10人以上 | 約446円/回 | 約260円/回 |
居宅療養管理指導は介護保険の利用限度額(区分支給限度基準額)に影響しない
居宅療養管理指導が介護保険の区分支給限度基準額の対象外であることは、多くの方にとって大きな安心材料です。他の介護サービスを限度額いっぱいまで利用していても、居宅療養管理指導は別枠で介護保険が適用されます。
区分支給限度基準額とは介護保険で使える月々の上限額のこと
区分支給限度基準額は、要介護度ごとに毎月利用できる介護サービスの上限を「単位」で示したものです。
この上限を超えた分は全額自己負担になるため、ケアマネジャーと相談しながら計画的にサービスを組み合わせる必要があります。
たとえば要介護1の方は月16,692単位、要介護5の方は月36,217単位が上限です。訪問介護や通所介護などの利用量を積み上げていくと、重度の方ほど限度額に近づきやすくなります。
居宅療養管理指導が限度額の対象外になっている理由
居宅療養管理指導は医師など専門職の医学的判断に基づいて実施されるサービスです。利用者の希望で回数を増減できるものではなく、医師が必要と判断した場合に行われます。
そのため、利用者が自由に組み合わせる他の介護サービスとは性質が異なり、区分支給限度基準額の枠外に位置づけられています。
この仕組みのおかげで、すでに多くの介護サービスを利用している方でも、居宅療養管理指導を追加で受けることが可能です。
要介護度別の区分支給限度基準額一覧
| 要介護度 | 月あたりの限度額(単位) | 金額の目安(1単位=10円) |
|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 | 約50,320円 |
| 要支援2 | 10,531単位 | 約105,310円 |
| 要介護1 | 16,692単位 | 約166,920円 |
| 要介護2 | 19,616単位 | 約196,160円 |
| 要介護3 | 26,931単位 | 約269,310円 |
| 要介護4 | 30,806単位 | 約308,060円 |
| 要介護5 | 36,217単位 | 約362,170円 |
限度額を気にせず居宅療養管理指導を追加できる安心感
訪問介護やデイサービスで限度額の大部分を使い切っている方にとって、「新しいサービスを追加すると限度額を超えてしまうのでは」という不安はつきものです。けれども、居宅療養管理指導ならその心配は要りません。
限度額に影響しないという特性は、特に要介護度が高く多くのサービスを併用している方にとって大きなメリットとなります。
ケアマネジャーに「居宅療養管理指導を追加しても限度額は変わりませんか」と確認すれば、安心してサービスの導入を進められるでしょう。
居宅療養管理指導を介護保険で受けるために必要な条件と手続き
居宅療養管理指導を介護保険で利用するには、要介護認定の取得と、医師からの指示という2つの条件を満たす必要があります。利用者側からケアマネジャーに相談し、主治医と連携する流れが一般的です。
まずは要介護認定を受けて介護保険サービスの対象になる
まだ要介護認定を受けていない場合は、お住まいの市区町村の窓口で申請を行いましょう。申請後、訪問調査と主治医の意見書をもとに認定審査が行われ、要支援1から要介護5までのいずれかの区分が決まります。
認定結果が出るまでには通常30日ほどかかります。ただし、認定申請中であっても暫定的にサービスを利用することは可能なので、急いでいる場合はケアマネジャーにその旨を伝えてください。
居宅療養管理指導は医師の指示がなければ利用できない
このサービスの大きな特徴は、利用者やケアマネジャーの判断だけでは開始できない点にあります。
必ず主治医(かかりつけ医)の指示が必要であり、医師が「この患者さんには居宅療養管理指導が必要だ」と判断して初めて、サービスが始まります。
- 要介護認定(要支援1〜要介護5)を受けていること
- 通院が困難な状態であること
- 主治医からの指示があること
- ケアマネジャーが作成するケアプランに組み込まれていること
ケアマネジャーと主治医が連携して進める手続きの流れ
実際の手続きとしては、まずケアマネジャーに居宅療養管理指導を利用したい旨を伝えます。
ケアマネジャーが主治医と連絡を取り、医師が必要性を判断します。医師から指示が出れば、ケアプランに反映されてサービスが始まるという流れです。
居宅療養管理指導では、訪問した専門職がケアマネジャーに対してケアプラン作成に必要な情報提供を行う義務があります。そのため、ケアマネジャーとの連携は欠かせないものとなっています。
要介護認定の申請先がわからないときの相談窓口
「どこに相談すればよいかわからない」という方は、お住まいの地域の地域包括支援センターに連絡してみてください。地域包括支援センターは各自治体に設置されており、高齢者の介護や医療に関する総合的な相談に無料で応じてくれます。
電話一本で相談でき、要介護認定の申請手続きの代行も引き受けてもらえるケースが多いため、最初の窓口としてぜひ活用しましょう。
居宅療養管理指導で訪問する専門職ごとの介護保険での費用と回数の上限
居宅療養管理指導は、訪問する専門職によって介護保険上の費用(介護報酬単価)と月あたりの訪問回数の上限が異なります。それぞれの職種がどのような指導を行い、どれくらいの費用がかかるのかを把握しておくことが大切です。
医師・歯科医師による居宅療養管理指導の費用と内容
医師が行う居宅療養管理指導は、月2回までが上限です。診断に基づく継続的な健康管理、使用する医療器具の管理指導、ケアプランに必要な情報のケアマネジャーへの提供などを行います。
歯科医師も同様に月2回まで訪問でき、口腔機能の維持に関する指導やアドバイスを提供してくれます。1割負担の場合、1回あたり約515円〜517円(単一建物居住者1人のとき)が目安です。
薬剤師による居宅療養管理指導は薬の管理が中心
薬剤師が行う居宅療養管理指導は、病院・診療所に勤務する薬剤師の場合は月2回まで、薬局に勤務する薬剤師の場合は月4回まで訪問できます。処方薬の管理方法や服薬指導、副作用の説明が主な内容です。
認知症で薬の飲み忘れが増えている方や、複数の薬を服用していて管理が難しい方にとって、薬剤師の訪問は非常に頼りになります。薬局の薬剤師であれば月4回まで訪問できるため、きめ細かなフォローを受けられるでしょう。
専門職ごとの訪問回数と費用目安(1割負担・単一建物居住者1人の場合)
| 訪問する専門職 | 月あたりの上限回数 | 1回あたりの目安(1割) |
|---|---|---|
| 医師(I) | 月2回 | 約515円 |
| 歯科医師 | 月2回 | 約517円 |
| 薬剤師(病院・診療所) | 月2回 | 約566円 |
| 薬剤師(薬局) | 月4回 | 約518円 |
| 管理栄養士(事業所所属) | 月2回 | 約545円 |
| 歯科衛生士 | 月4回 | 約362円 |
管理栄養士・歯科衛生士の訪問で在宅生活の質が上がる
管理栄養士による居宅療養管理指導は月2回まで利用でき、食事内容の改善や嚥下機能に合わせた調理方法の助言を受けられます。「最近食が細くなった」「好きなものしか食べない」といった悩みを抱えるご家族には心強い味方です。
歯科衛生士は月4回まで訪問し、口腔ケアの実地指導や義歯の管理に関する助言を行います。口の中の健康は全身の健康にも直結するため、とくに寝たきりの方にとっては誤嚥性肺炎の予防にもつながる大切なサービスといえます。
居宅療養管理指導と訪問診療は介護保険と医療保険で併用できる
居宅療養管理指導(介護保険)と訪問診療(医療保険)は別の制度に基づくサービスであり、併用が可能です。在宅で療養生活を送るうえで、この2つを組み合わせることで医療と介護の両面から支えてもらえます。
居宅療養管理指導と訪問診療の制度上の違いを知っておこう
居宅療養管理指導は介護保険のサービスであり、療養上の管理・指導・助言が中心です。一方、訪問診療は医療保険のサービスで、医師が定期的に自宅を訪問して診察や処方、処置を行います。
つまり、訪問診療では「治療」が行われ、居宅療養管理指導では「指導・助言・情報提供」が行われるという違いがあります。目的も適用される保険も異なるため、両方を同時に利用しても制度上の問題はありません。
併用するとどのようなメリットがあるのか
訪問診療で医師から治療を受けながら、居宅療養管理指導で薬剤師に薬の管理をしてもらったり、管理栄養士に栄養指導をしてもらったりすることで、在宅療養の質は大きく向上します。
特に慢性疾患を抱える方や、複数の薬を服用している方にとっては、医師と薬剤師が連携して薬物療法を支えてくれる体制は安心感につながるでしょう。
介護保険と医療保険の優先関係にも注意が必要
薬剤師の訪問指導に関しては、介護保険の被保険者証に要介護度の記載がある方は、医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料ではなく、介護保険の居宅療養管理指導費を優先して算定するルールがあります。
これは利用者側が選べるものではなく、制度上のルールとして定められています。そのため、「どちらの保険で請求されるのか」を気にする必要はほとんどなく、請求手続きは医療機関や薬局側で適切に処理されます。
居宅療養管理指導と訪問診療の比較
| 項目 | 居宅療養管理指導 | 訪問診療 |
|---|---|---|
| 適用保険 | 介護保険 | 医療保険 |
| 主な内容 | 療養上の指導・助言 | 診察・処方・処置 |
| 訪問者 | 医師・薬剤師・管理栄養士など | 医師・看護師 |
| 利用条件 | 要介護認定+医師の指示 | 通院困難+医師の判断 |
| 限度額への影響 | 対象外(影響なし) | 医療保険のため対象外 |
居宅療養管理指導の介護保険における医療費控除も見逃さないで
居宅療養管理指導にかかった自己負担額は、確定申告で医療費控除の対象として申請できます。介護保険サービスのすべてが医療費控除の対象になるわけではないため、この点は見逃せないポイントです。
居宅療養管理指導の自己負担額は医療費控除の対象になる
- 居宅療養管理指導の自己負担額(介護保険給付の対象外分を含む)
- 訪問看護の自己負担額
- 訪問リハビリテーションの自己負担額
- 通所リハビリテーションの自己負担額と食材料費の標準負担額
領収書は確定申告まで大切に保管しておく
医療費控除を受けるには、確定申告の際にサービスの領収書が必要です。
介護保険サービスの事業者は、領収書に医療費控除の対象となる金額を記載してくれるため、受け取ったらすぐにファイルなどにまとめておくと申告の際に慌てずに済みます。
1年間で支払った医療費の合計が10万円(所得200万円未満の方はその5%)を超えた場合に控除を受けられます。居宅療養管理指導の費用単独では10万円に届かなくても、他の医療費と合算すれば対象になるケースは珍しくありません。
医療費控除と高額介護サービス費の両方を活用して負担を軽くする
高額介護サービス費は、月々の介護保険サービスの自己負担が上限を超えた分を払い戻す制度です。一方、医療費控除は年間の医療費を所得から差し引くことで所得税を軽減するものであり、両方を同時に活用できます。
ただし注意が必要なのは、高額介護サービス費として払い戻された金額は、医療費控除の対象額から差し引く必要がある点です。二重の控除にならないよう、申告の際にはケアマネジャーや税務署に確認してみてください。
よくある質問
- 居宅療養管理指導を介護保険で利用するにはどのような手続きが必要ですか?
-
居宅療養管理指導を介護保険で利用するには、まず市区町村で要介護認定を受ける必要があります。認定後、担当のケアマネジャーに利用希望を伝え、主治医(かかりつけ医)から指示を受けるという流れです。
利用者自身が直接医療機関に申し込むのではなく、ケアマネジャーが主治医と連携して手配を進めます。ケアプランに居宅療養管理指導を組み込んでもらうことで、サービスが開始されます。
- 居宅療養管理指導の費用は介護保険の区分支給限度基準額に含まれますか?
-
居宅療養管理指導の費用は、介護保険の区分支給限度基準額には含まれません。つまり、訪問介護や通所介護などの他のサービスで限度額を使い切っていても、居宅療養管理指導は別枠で利用できます。
限度額を圧迫しないサービスであるため、すでに多くの介護サービスを併用している方でも安心して追加できるのが特徴です。
- 居宅療養管理指導は要支援の認定でも介護保険で利用できますか?
-
要支援1または要支援2の認定を受けた方でも、「介護予防居宅療養管理指導」という名称で同様のサービスを介護保険で利用できます。サービスの内容や訪問する専門職は要介護の方と基本的に同じです。
通院が困難であることが前提条件となる点は変わりません。主治医の指示を受けたうえで、地域包括支援センターの担当者を通じて手続きを進めます。
- 居宅療養管理指導の自己負担額は医療費控除の対象になりますか?
-
居宅療養管理指導にかかった自己負担額は、確定申告の際に医療費控除の対象として申請できます。医師や薬剤師などの医療専門職が行う療養上の管理・指導にあたるため、税制上も医療費として認められています。
控除を受けるには領収書の保管が必要です。介護保険サービスの領収書には医療費控除の対象額が記載されるため、年間分をまとめて保管しておくとよいでしょう。
- 居宅療養管理指導では医師以外にどのような専門職が訪問してくれますか?
-
居宅療養管理指導では、医師のほかに歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士が訪問します。それぞれ専門分野に応じた指導や助言を行い、たとえば薬剤師は服薬指導、管理栄養士は栄養管理の計画作成などを担当します。
どの専門職が訪問するかは主治医の指示によって決まり、利用者の状態やニーズに合わせて複数の職種を組み合わせることも可能です。それぞれの訪問回数には月ごとの上限が定められています。


