訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導の違いとは?保険区分・費用・対象を比較

「訪問薬剤管理指導」と「居宅療養管理指導」は、どちらも薬剤師がご自宅を訪問して薬の管理や服薬指導を行うサービスです。名前も内容もよく似ているため、違いがわからず戸惑う方が少なくありません。
両者を分ける最大のポイントは、適用される保険制度の違いにあります。訪問薬剤管理指導は医療保険、居宅療養管理指導は介護保険で運用され、対象となる方の条件や費用体系も異なります。
この記事では、保険区分・費用・対象者の3つの軸から両制度をわかりやすく比較し、ご自身やご家族に合ったサービスを選べるよう丁寧に解説します。
訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導は「保険の種類」で分かれる
両制度の根本的な違いは、医療保険と介護保険という異なる保険制度に基づいている点です。提供される服薬指導の中身はほぼ同じでも、どちらの保険を使うかによって算定の仕組みや手続きが変わります。
訪問薬剤管理指導は医療保険に基づく制度
訪問薬剤管理指導の正式名称は「在宅患者訪問薬剤管理指導料」といい、医療保険(健康保険)で算定されます。通院が難しく自宅で療養している患者さんに対して、薬剤師が医師の指示のもと訪問し、薬の管理や服薬の指導を行った場合に算定できる仕組みです。
対象となるのは、要介護・要支援の認定を受けていない方が基本となります。つまり、介護保険の対象外である方が医療保険を通じて利用するサービスといえるでしょう。
居宅療養管理指導は介護保険で運用される
居宅療養管理指導は、介護保険に基づく制度です。要介護1以上の認定を受けた方が対象で、65歳以上の高齢者だけでなく、40歳以上65歳未満でも16種類の特定疾病に該当すれば利用できます。
介護保険では「単位」という独自の報酬体系を使い、1単位あたり約10円で費用を計算します。医療保険の「点数」とは計算方法が異なるため、請求の仕方にも違いが生まれるわけです。
訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導の保険区分比較
| 項目 | 訪問薬剤管理指導 | 居宅療養管理指導 |
|---|---|---|
| 保険の種類 | 医療保険 | 介護保険 |
| 報酬の単位 | 点数(1点=10円) | 単位(1単位≒10円) |
| 根拠法令 | 健康保険法 | 介護保険法 |
介護保険と医療保険の二重算定はできない
同一の患者さんに対して、訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導を同じ月に二重で算定することは認められていません。介護保険被保険者証に要介護度が記載されている場合は、介護保険を優先して居宅療養管理指導を算定するルールが設けられています。
この優先ルールを知らずに医療保険で請求してしまうと、後から返還を求められるケースもあります。訪問前に患者さんの保険証をしっかり確認しておくことが大切です。
訪問薬剤管理指導の対象者と利用条件を押さえておこう
訪問薬剤管理指導を利用できるのは、通院が困難で自宅や施設で療養している方です。算定には医師の指示が必要であり、薬剤師が自主的に訪問するだけでは認められません。
通院困難な在宅療養中の患者さんが主な対象
対象となるのは、身体的な理由や認知機能の低下などにより通院が難しい方です。寝たきりの方や重度の障害をお持ちの方だけでなく、一人暮らしで服薬の見守りが困難な高齢者も含まれます。
ただし、医師や薬剤師の配置義務がある介護老人保健施設に入所している方は、原則として算定の対象外となります。すでに施設内で専門的な薬学管理が行われているためです。
月4回まで算定でき、末期がんなどは月8回まで
訪問薬剤管理指導の算定回数は、1人の患者さんにつき月4回が上限です。ただし、末期の悪性腫瘍の方や中心静脈栄養法を受けている方、注射による麻薬投与が必要な方については、週2回かつ月8回まで算定が認められています。
回数制限があるからこそ、限られた訪問の中で的確な指導を行う計画性が求められます。
薬局から患者さん宅までの距離にも制限がある
算定にあたっては、薬局の所在地と患者さんのご自宅が原則16キロメートル以内であることも条件のひとつです。16キロメートルを超える場合は、近隣に対応可能な薬局がないなど特殊な事情がなければ算定できません。
訪問にかかる交通費は患者さんの自己負担となるため、距離が遠い場合は事前に費用面も含めて相談しておくとよいでしょう。
訪問薬剤管理指導の対象・回数の要点
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 通院困難な在宅療養中の方(要介護認定なし) |
| 算定回数 | 月4回(末期がん等は月8回) |
| 距離制限 | 薬局から16km以内が原則 |
| 医師の指示 | 必須 |
居宅療養管理指導を受けられるのは介護認定を持つ方に限られる
居宅療養管理指導は、介護保険の認定を受けた方だけが利用できるサービスです。薬剤師に限らず、医師・歯科医師・管理栄養士・歯科衛生士など多職種が関わる点でも訪問薬剤管理指導と異なります。
要介護1〜5の認定が必要になる
居宅療養管理指導の対象となるのは、要介護1から5までの認定を受けている65歳以上の方が基本です。40歳以上65歳未満でも、がんや関節リウマチなど16種類の特定疾病により要介護認定を受けていれば利用できます。
なお、要支援1・2の認定を受けた方は「介護予防居宅療養管理指導」として別の項目で算定される仕組みとなっています。
ケアマネジャーへの情報提供も算定の条件
居宅療養管理指導を算定するには、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)に対して、ケアプラン作成に必要な情報を提供することが求められます。
医療保険の訪問薬剤管理指導では医師への報告が中心でしたが、介護保険ではケアマネジャーとの連携が加わる点に注意してください。
ケアマネジャーが付いていない利用者の場合でも、居宅療養管理指導自体の算定は可能です。
居宅療養管理指導で関わる職種と回数
| 職種 | 算定回数の上限 |
|---|---|
| 医師 | 月2回 |
| 歯科医師 | 月2回 |
| 薬局の薬剤師 | 月4回(末期がん等は月8回) |
| 管理栄養士 | 月2回 |
| 歯科衛生士等 | 月4回 |
施設入所者でも利用できるケースがある
居宅療養管理指導は自宅だけでなく、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、グループホームなどの施設入居者も対象となることがあります。
施設の種類や入居者の状態によって算定の可否が決まるため、事前に薬局や施設に確認しておくと安心です。
特別養護老人ホームでは原則として算定できませんが、末期の悪性腫瘍と診断された方に限り例外的に認められています。
訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導の費用はどれくらい違う?
訪問薬剤管理指導は「点数」、居宅療養管理指導は「単位」で報酬が設定されており、金額にすると大きな差はありませんが、計算方法や自己負担の割合に違いがあります。
訪問薬剤管理指導の費用は1回あたり650点が基本
薬局の薬剤師が訪問薬剤管理指導を行った場合の報酬は、同一建物の対象患者数によって変わります。患者さんが1人の場合は650点(6,500円)、2人以上9人以下なら320点(3,200円)、10人以上であれば290点(2,900円)です。
自己負担は通常1割から3割となり、650点の場合は650円から1,950円程度が患者さんの窓口負担になります。
居宅療養管理指導は518単位が基本の報酬
居宅療養管理指導の場合、薬局の薬剤師が単一建物居住者1人に対して行うと518単位(約5,180円)、2人以上9人以下で379単位(約3,790円)、10人以上で342単位(約3,420円)です。
介護保険の自己負担割合は原則1割ですが、所得によっては2割または3割となる場合もあります。訪問薬剤管理指導と比べると基本報酬がやや低めに設定されていることがわかるでしょう。
加算項目にも両制度で共通点がある
麻薬管理指導加算や在宅中心静脈栄養法加算などは、訪問薬剤管理指導にも居宅療養管理指導にも設けられています。
2024年度の介護報酬改定では、医療用麻薬持続注射療法加算(250単位)と在宅中心静脈栄養法加算(150単位)が新たに介護保険側にも新設されました。
医療保険と介護保険で加算の内容を揃える方向に改定が進んでおり、在宅での薬学管理をより充実させる狙いが見てとれます。
- 麻薬管理指導加算(医療保険100点 / 介護保険100単位)
- 在宅中心静脈栄養法加算(医療保険150点 / 介護保険150単位)
- 医療用麻薬持続注射療法加算(医療保険250点 / 介護保険250単位)
- 乳幼児加算(医療保険100点 / 介護保険には該当なし)
介護保険が優先される仕組みと医療保険の使い分けを整理
要介護・要支援の認定を受けている患者さんは、原則として介護保険の居宅療養管理指導を使います。医療保険の訪問薬剤管理指導は、介護認定を受けていない方のための制度だと覚えておきましょう。
介護保険被保険者証の確認が欠かせない
在宅での服薬指導を開始する前に、患者さんが介護保険被保険者証を持っているか、そこに要介護度が記載されているかを必ず確認します。記載がなければ医療保険で算定し、記載があれば介護保険を優先しなければなりません。
この判断を誤ると、保険請求が返戻(へんれい)される原因となるため注意が必要です。
同一月に両方の保険で請求することはできない
訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導は、同一の患者さんに対して同じ月に併算定ができません。
ただし、薬学的管理指導計画に関係しない別の疾病や負傷で臨時の処方箋が出た場合に限り、服薬管理指導料など一部の算定が例外的に認められています。
制度をまたいだ請求ミスを防ぐためにも、患者さんごとの保険情報を薬歴に正確に記録しておくことが大切です。
介護保険と医療保険の優先ルール
| 患者さんの状態 | 使用する保険 | 算定する項目 |
|---|---|---|
| 要介護1〜5の認定あり | 介護保険 | 居宅療養管理指導費 |
| 要支援1・2の認定あり | 介護保険 | 介護予防居宅療養管理指導費 |
| 介護認定なし | 医療保険 | 在宅患者訪問薬剤管理指導料 |
医療保険でしか算定できない加算も存在する
たとえば小児特定加算(450点)や乳幼児加算(100点)は医療保険独自の加算項目であり、介護保険側にはありません。
小児の在宅患者への訪問指導は医療保険で算定するケースが多く、制度ごとの加算の有無を把握しておくとスムーズに対応できます。
逆に介護保険にしか存在しない加算もあるため、両制度の報酬体系は似ているようで細部に違いがあります。
薬剤師が自宅で行う服薬指導の内容と訪問の流れ
訪問薬剤管理指導であっても居宅療養管理指導であっても、薬剤師が実際にご自宅で行う業務の内容は基本的に共通しています。ただし、報告先や計画書の扱いに細かな違いがあるため、制度ごとの流れを把握しておくと安心です。
まず医師の指示を受けて管理指導計画を作成する
在宅での服薬指導は、すべて医師の指示からスタートします。薬剤師は医師からの診療情報提供を受け、それをもとに薬学的管理指導計画書を作成してから患者さんのご自宅を訪問するのが原則です。
初回訪問の場合は急を要することもあり、計画策定が訪問と同時になる場合も認められています。
訪問先で確認する内容と指導のポイント
訪問時には、薬の保管状況、飲み残しの有無、副作用の症状、服薬の理解度などを一つひとつチェックします。
複数の医療機関から薬が出ている場合は重複投薬や相互作用の確認も行い、問題があれば処方医に報告して処方内容の見直しを提案することもあります。
服薬カレンダーの活用や一包化の提案など、患者さん一人ひとりの生活環境に合わせた工夫も薬剤師の腕の見せどころでしょう。
訪問後は医師やケアマネジャーに結果を報告する
訪問が終わったら、その結果を文書で医師に報告します。居宅療養管理指導の場合はケアマネジャーへの情報提供も必要になるため、介護保険の利用者には二方向への報告が欠かせません。
報告内容は薬歴に記録し、次回の訪問計画に反映させていきます。こうした継続的な管理が、在宅療養を支える土台となります。
- 薬の保管場所と保管方法の確認
- 飲み残し(残薬)の数量チェック
- 副作用の兆候や体調変化のヒアリング
- 複数処方による重複投薬・相互作用の精査
- 患者さん・ご家族への服薬方法の説明と指導
訪問薬剤管理指導や居宅療養管理指導を利用したいときの始め方
「自宅に薬剤師が来てくれるサービスを使いたい」と思ったとき、まず何をすればよいのか、順を追って説明します。かかりつけ医への相談から始めるのが一番スムーズです。
かかりつけ医に「在宅での服薬指導を受けたい」と伝える
訪問による服薬指導を受けるには、まずかかりつけ医に相談してください。医師が在宅での薬学管理が必要と判断すれば、処方箋に訪問指示を記載してもらえます。
その処方箋を受けた薬局が、薬学的管理指導計画を立てたうえで訪問をスタートする流れです。
在宅服薬指導を始めるまでの流れ
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | かかりつけ医に在宅服薬指導の希望を伝える |
| 2 | 医師が処方箋に訪問指示を記載する |
| 3 | 対応可能な薬局が計画を立てて訪問を開始する |
| 4 | 定期的な訪問で服薬状況を管理・指導する |
介護認定を受けている場合はケアマネジャーにも相談を
要介護・要支援の認定を受けている方は、担当のケアマネジャーにも「薬剤師の訪問を利用したい」と伝えてください。ケアプランに居宅療養管理指導を組み込んでもらうことで、他の介護サービスとの調整もスムーズに進みます。
ケアマネジャーを通じて訪問対応可能な薬局を紹介してもらえるケースも多いため、遠慮せず相談してみましょう。
訪問薬剤管理指導に対応している薬局の探し方
すべての薬局が訪問薬剤管理指導に対応しているわけではありません。地方厚生局に届出を出している薬局だけが算定できるため、まずはかかりつけの薬局に対応の可否を確認するのが手軽です。
もし対応していない場合は、お住まいの地域の薬剤師会や地域包括支援センターに問い合わせると、近隣で対応できる薬局を案内してもらえます。
よくある質問
- 訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導は同じ月に両方使えますか?
-
同一の患者さんに対して、訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導を同じ月に併用することはできません。介護保険被保険者証に要介護度の記載がある場合は、介護保険の居宅療養管理指導費が優先されます。
要介護認定を受けていない方のみ、医療保険の訪問薬剤管理指導料を算定する形になります。どちらの保険を使うかは患者さんの介護認定の有無で自動的に決まるため、利用者が自由に選べるものではありません。
- 居宅療養管理指導の自己負担額はどれくらいかかりますか?
-
居宅療養管理指導の自己負担額は、介護保険の負担割合と単一建物居住者の人数によって変わります。1人の場合は518単位(約5,180円)が基本報酬となり、1割負担なら約520円、2割負担なら約1,040円程度です。
2人以上9人以下の場合は379単位、10人以上の場合は342単位と報酬が下がるため、施設にお住まいの方は自己負担も低くなる傾向にあります。
- 訪問薬剤管理指導は月に何回まで受けられますか?
-
訪問薬剤管理指導は、1人の患者さんにつき月4回まで算定できます。ただし、末期の悪性腫瘍の方や中心静脈栄養法の対象者、注射による麻薬投与が必要な方は、週2回かつ月8回まで認められています。
オンラインでの服薬指導も回数に含まれるため、対面とオンラインを合わせて月4回(または月8回)が上限となります。
- 居宅療養管理指導を受けるために介護認定は必ず必要ですか?
-
はい、居宅療養管理指導は介護保険に基づくサービスであるため、要介護1以上の認定が必要です。65歳未満の方でも、16種類の特定疾病に該当し要介護認定を受けていれば利用できます。
介護認定を受けていない方が在宅での薬剤師の訪問指導を希望する場合は、医療保険の訪問薬剤管理指導を利用する形になります。まずはかかりつけ医に相談してみてください。
- 訪問薬剤管理指導の交通費は誰が負担しますか?
-
訪問薬剤管理指導にかかる交通費は、患者さんの自己負担です。薬局から患者さんのご自宅までの移動にかかった実費を請求される仕組みとなっています。
金額は距離や交通手段によって異なりますので、訪問を開始する前に薬局へ費用の目安を確認しておくとよいでしょう。なお、居宅療養管理指導においても交通費の扱いは同様です。


