訪問診療は介護保険の「区分支給限度基準額」に含まれる?ケアプランへの影響

訪問診療は介護保険の「区分支給限度基準額」に含まれる?ケアプランへの影響

「訪問診療を始めたいけれど、介護保険の限度額を圧迫してしまうのでは」と不安を感じていませんか。訪問診療の費用は医療保険から支払われるため、介護保険の区分支給限度基準額には含まれません。

つまり、訪問診療を受けても介護サービスの利用枠が減ることはなく、ケアプランを大幅に見直す必要もないのです。ただし訪問看護など一部のサービスは保険の区分が異なるケースがあり、正確な知識を持っておくと安心でしょう。

この記事では、区分支給限度基準額の仕組みから訪問診療との関係、ケアプランへの影響、費用面の備えまで、在宅療養を支えるために必要な情報をわかりやすく整理します。

目次

訪問診療は区分支給限度基準額に含まれない|介護サービスの枠を減らさず利用できる

訪問診療の費用は医療保険で賄われるため、介護保険の区分支給限度基準額にはカウントされません。介護サービスの利用枠を削ることなく、医師の定期的な訪問を受けられます。

訪問診療が医療保険の対象である根拠

訪問診療は、医師が患者さんの自宅へ定期的に出向いて診察や治療を行う医療行為です。健康保険法に基づく医療サービスに該当するため、費用は医療保険(健康保険や後期高齢者医療制度など)から給付されます。

介護保険の対象となるのは、訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタルといった介護サービスです。医師が行う診療行為はあくまで医療の領域であり、介護保険とは別の財源から支払われる仕組みになっています。

区分支給限度基準額を気にせず訪問診療を始められる

要介護度ごとに決められた区分支給限度基準額は、介護サービスの利用上限を示すものです。訪問診療は医療保険の範囲なので、この上限額に影響を及ぼしません。

たとえば要介護3の方が限度額いっぱいまで介護サービスを使っていたとしても、訪問診療を追加で受けることは問題なく可能です。「介護サービスを減らさなければ訪問診療を受けられないのでは」という心配は不要です。

訪問診療と介護保険サービスの費用区分

サービス適用される保険区分支給限度基準額
訪問診療医療保険含まれない
訪問介護介護保険含まれる
デイサービス介護保険含まれる
福祉用具レンタル介護保険含まれる
訪問リハビリ介護保険含まれる

医療保険と介護保険の「二重払い」にはならない

「両方の保険を使うと自己負担が倍になるのでは」と心配する方もいらっしゃるかもしれません。しかし医療保険と介護保険はそれぞれ独立した制度として運営されており、同じ費用を二重に請求される仕組みにはなっていません。

訪問診療の自己負担は医療保険の負担割合(1割〜3割)で計算され、介護サービスの自己負担とは別に発生します。合算して高額になった場合には「高額医療・高額介護合算療養費制度」を利用できることも覚えておくと安心です。

区分支給限度基準額の仕組みを正しく押さえれば介護費用の不安は軽くなる

区分支給限度基準額とは、要介護度ごとに1か月あたり利用できる介護サービスの上限金額です。この仕組みを正しく理解しておくと、ケアプランの組み立てがぐっと楽になります。

要介護度別に決まる月ごとの上限額

介護保険では、要支援1から要介護5までの区分ごとに、1か月に使える介護サービスの限度額が設定されています。要介護度が重くなるほど限度額は高くなり、より多くのサービスを利用できます。

限度額は「単位」で表され、1単位あたりの金額は地域やサービスの種類で異なります。都市部ほど人件費が高いため、同じ単位数でも実際の金額には地域差がある点を覚えておきましょう。

限度額の範囲内なら自己負担は1割〜3割で済む

区分支給限度基準額の範囲内であれば、利用者の自己負担は所得に応じて1割・2割・3割のいずれかです。限度額を超えた分は全額自己負担になるため、ケアマネジャーと相談しながら優先順位をつけてサービスを組み合わせましょう

なお、介護保険施設の居住費や食費は区分支給限度基準額の対象外です。在宅サービスと施設サービスでは計算の考え方が異なるため、混同しないよう注意してください。

限度額に含まれるサービスと含まれないサービスの見分け方

介護保険サービスのすべてが区分支給限度基準額に含まれるわけではありません。訪問介護やデイサービス、ショートステイなどは限度額の対象ですが、居宅療養管理指導や特定福祉用具の購入費は枠外で別途支給されます。

どのサービスが限度額に含まれるかは制度上細かく分かれているため、担当のケアマネジャーに確認するのが確実です。枠外サービスを上手に活用すると、ケアプラン全体にゆとりが生まれます。

区分支給限度基準額の要介護度別一覧(2024年度)

要介護度限度額(月額・単位)金額目安
要支援15,032単位約50,320円
要支援210,531単位約105,310円
要介護116,765単位約167,650円
要介護219,705単位約197,050円
要介護327,048単位約270,480円
要介護430,938単位約309,380円
要介護536,217単位約362,170円

訪問診療と訪問看護では介護保険の扱いがまったく違う

訪問診療は医療保険のみで請求されますが、訪問看護は状況によって介護保険と医療保険のどちらかで提供されます。この違いを知っておかないと、ケアプランの枠を予想以上に消費してしまうことがあります。

訪問看護が介護保険の対象になるケース

要介護認定を受けている方が訪問看護を利用する場合、原則として介護保険が優先されます。看護師が自宅を訪問して健康チェックや医療処置を行いますが、この費用は区分支給限度基準額に含まれます。

訪問看護の回数が増えると他の介護サービスの利用枠が圧迫されるため、ケアマネジャーと優先順位を相談しながらプランを組み立ててください。

訪問看護が医療保険に切り替わる特別な場合

  • 厚生労働大臣が定める疾病等(末期がん、パーキンソン病関連疾患、多発性硬化症など)に該当する場合
  • 急性増悪により主治医から特別訪問看護指示書が交付された場合
  • 精神科訪問看護の対象となる場合

訪問診療と訪問看護を併用するときの注意点

在宅療養では訪問診療と訪問看護を組み合わせて利用するケースが多くあります。訪問診療は区分支給限度基準額に影響しませんが、訪問看護は原則として限度額の枠内で管理しなくてはなりません。

医師の訪問診療と看護師の訪問看護が別々の保険から支払われるという構造を理解しておくと、「思ったよりも介護保険の枠が足りない」という事態を防ぎやすくなります。

主治医とケアマネジャーの双方に、利用中のサービス内容を共有しておくとスムーズでしょう。

ケアプランに訪問診療を組み込むとき、ケアマネジャーに伝えるべきこと

訪問診療は区分支給限度基準額に含まれませんが、ケアマネジャーにはサービス利用状況を伝えておく必要があります。情報共有がケアプランの精度を高め、在宅療養の質を大きく左右します。

訪問診療の開始時期と頻度を共有する

訪問診療を始めるタイミングや月に何回訪問を受けるかは、ケアマネジャーにとって重要な情報です。医療面でのケアがどの程度カバーされているかが分かれば、介護サービスの配分を調整しやすくなります。

たとえば、訪問診療で定期的にバイタルチェック(血圧・脈拍・体温などの測定)を受けているなら、訪問看護での健康観察の頻度を減らせるかもしれません。

結果として区分支給限度基準額の枠に余裕が生まれ、他の介護サービスに回すことも可能です。

処方薬や医療機器の情報も忘れずに伝える

訪問診療を受けると、処方薬の変更や在宅酸素療法といった医療機器の導入が行われる場合があります。こうした情報をケアマネジャーに伝えておけば、服薬管理を含むケアプランをより的確に組み立てられます。

特に認知症の方の場合、服薬の見守りをヘルパーにお願いするかどうかでケアプランが変わってきます。医療と介護の情報を橋渡しするのは、ご家族やご本人の大切な役割といえるでしょう。

急変時の対応方針もケアプランに反映しておく

訪問診療の主治医と事前に話し合っておいた急変時の対応方針(救急搬送の希望や看取りに関する意思など)は、ケアマネジャーにも伝えてください。介護スタッフ全員が同じ方針を共有していれば、いざというとき迷わず行動できます。

とりわけ夜間や休日にトラブルが起きた場合、対応方針が明確になっていると本人も家族も心強いものです。ケアプランの「緊急時の連絡先・対応手順」に訪問診療クリニックの連絡先を記載しておくことを忘れないようにしましょう。

ケアマネジャーに伝えたい訪問診療の情報

伝える内容伝えるタイミング期待できる効果
訪問診療の開始日・頻度開始前または開始直後介護サービスの配分を調整しやすくなる
処方薬・医療機器の変更変更があった都度服薬管理や生活環境の調整に反映できる
急変時の対応方針方針を決めたときチーム全体で一貫した対応が可能になる
主治医の連絡先初回緊急時に迅速な連絡体制がとれる

区分支給限度基準額を超えそうなときに活用したい自己負担の軽減策

介護サービスの利用が増え、区分支給限度基準額の上限に近づくと全額自己負担の発生が心配になります。負担を和らげるための公的な制度がいくつか用意されているので、使えるものは積極的に活用してください。

高額介護サービス費で月々の上限を抑えられる

高額介護サービス費制度は、1か月の介護サービス自己負担額が一定の上限を超えた場合に、超過分が払い戻される仕組みです。所得区分に応じて上限額が設定されており、住民税非課税世帯であれば月額15,000円〜24,600円程度が目安になります。

申請は市区町村の介護保険窓口で行います。一度申請すれば、以降は自動的に支給されるため手続きの負担も少なく済みます。

高額医療・高額介護合算療養費制度で年間の負担を抑える

所得区分70歳以上の合算上限(年額)
現役並み所得者(課税所得690万円以上)212万円
現役並み所得者(課税所得380万円以上)141万円
現役並み所得者(課税所得145万円以上)67万円
一般所得者56万円
住民税非課税世帯31万円
住民税非課税世帯(年金収入80万円以下等)19万円

介護保険の負担限度額認定で施設利用時の食費・居住費を抑える

在宅サービスが中心の方には馴染みが薄いかもしれませんが、ショートステイなどを利用する場合には「負担限度額認定」の申請が役立ちます。所得や預貯金の条件を満たせば、食費や居住費が軽減されます。

訪問診療と並行してショートステイを利用するケースでは、この認定で年間数万円の差が出ることもあります。担当のケアマネジャーに対象かどうか確認してみてください。

自治体独自の助成制度も見逃さない

国の制度に加えて、自治体ごとに独自の助成制度を設けている場合があります。おむつ代の助成や配食サービスの補助など、介護保険外のサポートが充実している地域も少なくありません。

こうした制度は広報誌やホームページに掲載されていても、自分から申請しなければ利用できないものがほとんどです。地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談すると、該当する制度を案内してもらえます。

訪問診療とケアプランの連携で在宅生活はもっと安定する

訪問診療は区分支給限度基準額の枠外ですが、ケアプランと連携させると在宅生活全体の質が高まります。医療と介護がばらばらに動くのではなく、一つのチームとして機能する体制を目指しましょう。

サービス担当者会議に主治医が参加すると医療と介護の溝が埋まる

ケアプランを作成・見直す際に開かれるサービス担当者会議には、可能であれば訪問診療の主治医にも参加してもらいましょう。医師が介護スタッフに医療上の注意点を直接伝えると、日常のケアに医学的な視点が加わります。

多忙な医師が毎回参加するのは難しいケースもあるでしょう。書面での意見提供やオンラインでの短時間参加など、柔軟な方法を検討してみてください。

居宅療養管理指導を活用してケアマネジャーと医師をつなぐ

居宅療養管理指導とは、医師や薬剤師、歯科医師などが利用者の自宅を訪問し、療養上の管理や指導を行うサービスです。介護保険の給付対象ですが、区分支給限度基準額には含まれない枠外のサービスとなっています。

訪問診療の主治医がこの制度を利用してケアマネジャーに情報提供を行えば、医療面とケアプランの整合性がぐっと高まります。ご家族が間に入って情報を伝える負担も軽減されるため、積極的に活用したいサービスです。

医療と介護の情報をひとつにまとめる「連携ノート」のすすめ

訪問診療の内容、訪問看護の記録、ヘルパーの活動報告などを一冊のノートにまとめておくと、関係者全員が同じ情報を共有しやすくなります。紙のノートでもアプリでも構いません。

特に体調の変化や食事量の増減、睡眠の状況などは、介護と医療の両面で判断材料になります。日々の小さな変化を記録しておくことが、適切なケアプランの見直しにつながるでしょう。

  • バイタル測定値(血圧・体温・脈拍・酸素飽和度)
  • 食事量・水分摂取量の記録
  • 排泄の回数や状態
  • 処方薬の変更内容と服薬状況
  • 本人の気分や体調の変化に関するメモ

訪問診療の費用は医療費控除の対象|確定申告で取り戻せるお金がある

訪問診療にかかった自己負担額は、所得税の医療費控除の対象です。確定申告の手続きを行えば、支払った税金の一部が還付される可能性があります。

介護サービスの一部も医療費控除の対象になる

訪問診療の費用だけでなく、一定の介護サービスの自己負担額も医療費控除の対象です。訪問看護や訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導の費用がその代表例となります。

訪問介護(身体介護中心型)やデイサービスの費用も、医療系サービスと併せて利用している場合は控除対象に含まれます。領収書は捨てずに保管しておいてください。

医療費控除の対象になる訪問診療の費用

費用の種類控除対象
訪問診療の診察料・検査費用対象
処方薬の薬代対象
訪問診療に伴う交通費(公共交通機関)対象
差額ベッド代(入院時)対象外
文書料(診断書作成費など)原則対象外

確定申告の手続きは難しくない|必要書類を早めに準備しておく

医療費控除の申告には、1年間に支払った医療費の領収書(または医療費通知)が必要です。訪問診療クリニックや薬局から届く領収書を月ごとにまとめておくと、申告時の負担が減ります。

年間の医療費が10万円(所得200万円未満の方は所得の5%)を超えた分が控除対象です。訪問診療を継続利用している方は年間10万円を超えるケースが多いため、忘れずに申告しましょう。

よくある質問

訪問診療の費用は介護保険の区分支給限度基準額に含まれる?

訪問診療の費用は医療保険から支払われるため、介護保険の区分支給限度基準額には含まれません。訪問診療を受けても、デイサービスや訪問介護など介護サービスの利用枠が減ることはないので安心してください。

医療保険と介護保険は別々の制度として運営されており、それぞれ独立した自己負担額になります。両方を利用しても二重請求にはなりません。

訪問診療を始めるとケアプランの変更は必要になる?

訪問診療は区分支給限度基準額の枠外なので、ケアプランの介護サービス配分を大幅に見直す必要はありません。ただし、ケアマネジャーには訪問診療を開始した旨を共有しておくことをおすすめします。

医療面のケアが加わると、訪問看護の回数を調整できるなど、ケアプラン全体の効率が上がる場合もあります。情報を共有しておけば、より良いプランに仕上がるでしょう。

訪問看護は区分支給限度基準額に含まれる?

要介護認定を受けている方が訪問看護を利用する場合、原則として介護保険が適用されるため、区分支給限度基準額に含まれます。限度額の残枠を確認しながらケアプランに組み込む必要があるでしょう。

ただし、末期がんや難病など厚生労働大臣が定める疾病に該当する場合や、特別訪問看護指示書が出ている場合は医療保険に切り替わり、限度額の対象外となります。

訪問診療と居宅療養管理指導は別のサービスなの?

訪問診療と居宅療養管理指導は異なるサービスです。訪問診療は医師が自宅で診察や治療を行う医療行為であり、費用は医療保険から支払われます。

一方、居宅療養管理指導は医師や薬剤師が療養上の管理・助言を行うサービスで、介護保険から給付されます。なお居宅療養管理指導は区分支給限度基準額の枠外であり、限度額を消費せずに利用できるのが特徴です。

訪問診療の自己負担額が高額になったときの救済制度はある?

訪問診療の自己負担額が高額になった場合、高額療養費制度を利用すれば月ごとの上限額を超えた分が払い戻されます。所得区分に応じた上限が設定されているため、負担が際限なく増える心配はありません。

さらに、医療費と介護費の年間合計が高額になった場合には「高額医療・高額介護合算療養費制度」で年間の負担にも上限が設けられています。市区町村の窓口で申請できるので、該当する方は早めに手続きを行ってください。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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