緩和ケアでモルヒネを使うと余命は縮まる?医療用麻薬の誤解と正しい知識

緩和ケアでモルヒネなどの医療用麻薬を使っても余命が縮まる、という医学的な根拠は見つかっていません。日本緩和医療学会は、複数の研究を並べたうえで生命予後を短縮する根拠はないと結論づけています。
それでも不安が消えないのは、痛みが強まる時期と薬を始める時期が重なりやすく、原因と結果が入れ替わって見えるためでしょう。中毒になる、呼吸が止まる、始めたら終わりだ、という心配も同じ根から生まれます。
国が示したガイダンスと学会の指針をたどりながら、家族が抱えやすい四つの不安を一つずつほどいていきます。あわせて、自宅で何を見て、どこへ連絡すればよいかも整理していきます。
緩和ケアでモルヒネを使っても余命が縮まる根拠は見当たらない
痛みの強さに応じて医療用麻薬を定期的に使った場合、投与量の多い群と少ない群とで生存期間に差は出なかったと複数の研究が報告しています。日本緩和医療学会は、これらをふまえて生命予後を短縮する根拠はないと述べています。
日本緩和医療学会が引いている三つのコホート研究
日本緩和医療学会がまとめた「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版」は、オピオイドの投与量と生存期間の関係を調べた三つのコホート研究を並べ、投与量が生命予後を左右しなかったと整理しています。
イスラエルの緩和ケア病棟で行われた調査では、モルヒネの経口換算で1日300mg以上を使った群と、それに満たない群のあいだで、入院から亡くなるまでの生存期間に有意な差はありませんでした。600mg以上を含む三つの群に分け直しても、結果は変わっていません。
日本の緩和ケア病棟を対象にした調査も、亡くなる前の48時間に使われた量で三つの群に分けて比べ、生存期間に差を見いだしていません。投与量を予後の予測式に加えても、予測の精度は良くなりませんでした。
| 調査の対象 | 比べ方 | 生存期間の結果 |
|---|---|---|
| イスラエルの緩和ケア病棟の終末期がん患者さん | モルヒネ経口換算で1日300mg以上の群と未満の群 | 有意な差はなかった |
| 日本の緩和ケア病棟の終末期がん患者さん | 死亡前48時間の使用量で三つの群に分けて比較 | 有意な差はなかった |
| 米国の在宅ホスピスでケアを受けた人 | モルヒネ静脈内投与換算で1日200mgを境に比較 | 多い群のほうが長かったが説明率は10%未満 |
三つ目の米国の調査だけは、量の多い群のほうが生存期間が長いという結果でした。ただし回帰分析の説明率はどのモデルでも10%に届かず、呼吸困難など薬を必要とした背景の要因が絡んでいた可能性が指摘されています。
厚生労働省は予後を投与開始の基準にしていない
厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課がまとめた「医療用麻薬適正使用ガイダンス」は、オピオイド鎮痛薬を始める判断について、中等度以上の痛みがあるときや非オピオイド鎮痛薬で十分な効果が得られない場合に検討すると記しています。
そのうえで、がんの進行度や生命予後は開始の基準ではないと言い切っています。残された時間の長短を物差しにして薬を出したり控えたりする考え方を、国のガイダンスははっきり退けているわけです。
必要な量にも同じ理屈が当てはまります。同じガイダンスは、投与量を腫瘍の進行度や転移部位、病期によって決めることはできず、十分な鎮痛に要する量は人によって大きく違うと説明しています。
日本肺癌学会が患者さん向けの冊子で明記している内容
日本肺癌学会が編んだ「患者さんと家族のための肺がんガイドブック」は、医療用麻薬を使ってもがん治療に悪い影響が及ぶことはなく、寿命が縮まりもしないと患者さんと家族に向けて明記しています。
同じ項目では、痛みが和らぐことで食欲が戻り眠れるようになり、生活の質が改善してがん治療に良い影響をもたらすといわれる、とも書かれています。痛みを抑える行為は、闘う姿勢をやめることとは別のものだという整理でしょう。
専門家向けの指針と患者さん向けの冊子で、書きぶりは違っても向いている方向は同じです。学会も国も、寿命への懸念を理由に鎮痛を先延ばしにするのは妥当ではないという立場を取っています。
痛みを我慢し続けたときに失われるもの
強い痛みが続くと、食事の量が落ち、夜も眠れず、体を起こすのもおっくうになります。米国の代表的ながん診療ガイドラインは、痛みを含む症状の緩和が生活の質の向上を通じて生存期間にも影響すると述べ、日本緩和医療学会の指針もその一節を引いています。
薬を使わずに耐えることが、体を守る行為とはかぎりません。眠れない夜が続けばせん妄も起きやすくなり、家族と穏やかに話す時間まで削られてしまいます。
痛みが軽くなって最初に戻ってくるのは、多くの場合「したかったこと」です。日本緩和医療学会も、鎮痛の目標を単なる楽さではなく、今できない何かができるようになる点に置いて共有するとよい、と勧めています。
モルヒネが死を早めると思われてきた背景
この印象は、かつての医療の進め方が残した記憶に由来します。痛みが耐えられなくなるまで待ってから注射を行う時代が長く、その光景が「モルヒネは死を早める」という言い伝えを一般の人にも医療者にも植えつけました。
限界まで待ってから始めていた時代の記憶
日本緩和医療学会の指針によれば、世界保健機関の方式が広まる前は、痛みに対してオピオイドを定期的に投与する発想そのものが乏しく、全身状態の悪化した人へ最後に注射を行う場面が多かったとされます。
そのやり方では血中の濃度が急に上がり、副作用が出る場合もあったと推測されています。亡くなる直前の記憶と薬の名前が結びついてしまえば、因果が逆に見えるのも無理はないでしょう。
いまの考え方は正反対です。痛みの強さに応じて必要な量を定期的に使えば予後に影響しない、というのが三つの研究をふまえた学会の結論でした。
看取りの時期と重なるから因果が入れ替わって見える
医療用麻薬が増える時期は、病気そのものが進んで痛みが強まる時期と重なります。同じころに食事量が減り、眠っている時間が延びていくため、変化の原因を薬に求めたくなる気持ちが生まれやすいのです。
こうした重なりをほどく手がかりは、増量した時点と変化が出た時点を並べて振り返るところにあります。訪問診療や訪問看護の記録には日々の様子が残っているので、遠慮なく確かめてみてほしいところです。
世論調査に残る医療用麻薬への印象
日本緩和医療学会の指針は、内閣府が行ったがん対策に関する世論調査を引いて、一般の人がオピオイドに抱く印象を紹介しています。約30%が「最後の手段だと思う」「だんだん効かなくなると思う」と答え、約10%が「寿命を縮めると思う」と答えていました。
| 世論調査に現れた印象 | 回答の目安 | 指針や国のガイダンスの記述 |
|---|---|---|
| 最後の手段だと思う | 約30% | 開始の基準は痛みの強さで、進行度や生命予後では決めない |
| だんだん効かなくなると思う | 約30% | 痛みを評価して適切な量を使えば耐性が問題になることは少ない |
| 寿命を縮めると思う | 約10% | 生命予後を短縮するという根拠はない |
同じ調査では約50%から「正しく使用すればがんの痛みに効果的だと思う」「正しく使用すれば安全だと思う」という理解も得られていました。誤解と理解が同じ社会のなかに同居している、という姿が見えてきます。
家族のためらいが痛みの訴えを遅らせる
不安を抱えているのは本人だけではありません。海外で開発された調査票を使った研究では、在宅でがん患者さんを介護する家族も「病気の進行への心配」「習慣性の心配」「副作用の心配」を抱いていたと報告されています。
家族がためらうと、本人も痛みを言い出しにくくなります。痛みを訴えない人が「良い患者さん」だと考えてしまう心理も、同じ調査票が拾い上げた障壁のひとつでした。
日本緩和医療学会は、薬の説明だけでなく、その人が薬に抱いているイメージを確かめ、ためらう背景を理解する姿勢が大切だと記しています。訪問診療の場で率直に不安を口にすることは、治療を妨げるどころか助けになります。
医療用麻薬で麻薬中毒になる不安への医学的な答え
痛みの治療として処方どおりに使っているかぎり、いわゆる麻薬中毒が生じることはまれだと複数の指針が述べています。混同されやすい三つの言葉を分けて眺めると、心配の輪郭がはっきりしてきます。
精神依存と身体依存と耐性は別のもの
日本緩和医療学会は米国の三つの学会と共通の定義を採り、精神依存・身体依存・耐性を明確に分けています。世間で「中毒」と呼ばれている状態に当たるのは、このうち精神依存だけです。
| 用語 | どのような状態か | がんの痛みの治療での位置づけ |
|---|---|---|
| 精神依存(いわゆる麻薬中毒) | 自己制御できずに使う、痛みがないのに強迫的に使う | コホート研究で該当したのは550例中1例(0.2%) |
| 身体依存 | 急に中止したり大幅に減らしたときに離脱症候が出る生理的な反応 | 痛みのために使い続けている限り不利益にならない |
| 耐性 | 長く使ううちに同じ量では効きにくくなる状態 | 適切な量を保っていれば問題になることは少ない |
身体依存と耐性は、オピオイドに限らず長く薬にさらされた体が示す生理的な順応にすぎません。アルコールやニコチンでも起こる現象であって、人格が変わるような話とは別の次元にあります。
550例中1例という追跡調査の数字
日本緩和医療学会の指針は、オピオイドを使ったがん患者さんを追跡したコホート研究を引き、550例のうち精神依存の基準を満たしたのは1例(0.2%)だけだったと紹介しています。
厚生労働省のガイダンスも、痛みの治療のために適切な投与計画に従って続けるかぎり、精神依存が問題となることは少ないと記しています。国と学会がそろって同じ方向の記述を置いているわけです。
報道で目にする依存の問題は、痛みがない人が医療の外で乱用した場面を指しています。痛みを抱えた人が医師の管理のもとで使う状況とは、条件がまるで違うといえます。
やめられなくなるのではと心配なときは
身体依存があるため、急に中断すると下痢や鼻水、発汗、身震いといった離脱症候が出ることがあります。逆にいえば、量を徐々に減らしていけば、こうした症状は避けられると考えられています。
厚生労働省のガイダンスは、がん治療や神経ブロック、放射線治療で痛みが軽くなった場合には減量も中止もできると明記しています。始めたら一生続けるという性質の薬ではありません。
日本緩和医療学会も、いったん始めても具合が悪ければ相談してやめてよい、痛みが軽減すれば量を減らし終了することもある、と本人へ伝えるよう勧めています。この一言で肩の力が抜ける人は少なくありません。
だんだん効かなくなるのが怖いときは
耐性は確かに起こりうる現象ですが、日本緩和医療学会は、痛みの評価を十分に行い適切な量を使っていれば鎮痛耐性が問題になることは少ないとしています。悪心や眠気には耐性ができる一方、便秘には耐性ができない点も知られています。
量を増やす必要が出てきたとき、その多くは薬が効かなくなったからではなく、痛みの原因そのものが変わったためです。増量に見合う効果がないときは、別のオピオイドへの変更や他の鎮痛手段を検討します。
「今使ってしまうと、いざというときに効かない」という考え方は、痛みを長く放置する方向にしか働きません。将来のために温存する薬ではない、と受け止めておくほうが現実に合っています。
医療用麻薬と呼吸抑制のほんとうの関係
呼吸が止まる恐れは、過量投与の場面と混ざって語り継がれてきたものです。日本緩和医療学会は、がんの痛みに対して適切に使うなら呼吸数は下がらず、下がっても低酸素血症に至るのはまれだと説明しています。
痛みそのものが呼吸抑制を打ち消している
オピオイドによる呼吸抑制は、延髄の呼吸中枢へ直接働いて二酸化炭素への反応を鈍らせ、呼吸回数を減らす作用です。ところが痛みそのものがこの作用と拮抗するとされており、痛みがある状態では抑制が現れにくくなります。
実際に問題となるのは、急速に静脈へ注射して血中濃度を一気に上げた場合や、痛みの治療に必要な量を大きく上回る量を使った場合です。少しずつ増やしながら効果と副作用を確かめる進め方は、まさにこの事態を避けるためにあります。
この拮抗の裏返しとして、痛みが急に軽くなった場面では注意が要ります。神経ブロックや放射線治療で痛みが大幅に減ると、同じ量が相対的に多すぎる状態になり、呼吸抑制が現れる場合があるからです。
眠気は呼吸の変化より先に現れる
厚生労働省のガイダンスは、傾眠がみられる場合を呼吸抑制の初期症状ととらえ、投与量の減量などを検討するよう促しています。呼吸がいきなり止まるのではなく、眠気という分かりやすい合図が先に立つわけです。
同じガイダンスは、家庭で家族が気づける過量の兆候として次のような観察の目安を挙げています。数字で覚えておけば、迷ったときの判断がぶれにくくなります。
眠気そのものは、痛みで眠れなかった反動として数日のあいだ現れることもあります。痛みがないのに強い眠気が続く場合には量が多すぎる可能性を考える、というのがガイダンスの整理です。
眠っているときに呼吸が浅くなったら
オピオイド鎮痛薬を使っていると、睡眠中に呼吸数が下がる場合があります。厚生労働省のガイダンスは、声かけなどの刺激で目を覚まし呼吸数が戻るのであれば、臨床上問題となる可能性は低いと記しています。
逆に、呼びかけても目を開けず、呼吸の回数が戻らないときは連絡が必要な場面です。夜中でも判断を先送りせず、あらかじめ決めておいた窓口へ電話をかけましょう。
重い呼吸抑制に対しては、気道を確保したうえで拮抗薬を使う手立てが用意されています。在宅であっても、対応の道筋そのものは病院と変わりません。
腎臓の働きが落ちているときの注意点
モルヒネは体内で代謝された物質が腎臓から出ていくため、腎機能が落ちていると活性代謝物がたまり、眠気や呼吸抑制が起こりやすくなると厚生労働省のガイダンスは注意を促しています。
そのため実際の現場では、腎機能に応じて薬の種類を選び分けたり、量や間隔を調整したりします。同じ「医療用麻薬」でも中身は一つではなく、状態に合わせた選択肢が複数あるのです。
療養が長くなるうちに腎機能が変わることもあります。血液検査の結果が話題に上ったときは、痛み止めの調整と関係するのかを尋ねておくと、その後のやり取りがなめらかになります。
緩和ケアの医療用麻薬は最後の手段ではない
薬を始める判断は、残された時間ではなく痛みの強さで決まります。厚生労働省のガイダンスは、がんの進行度や生命予後は開始の基準ではないと明記しており、抗がん治療と並行して痛みの治療を行う考え方も示されています。
開始を決めるのは痛みの強さだけ
国内の指針では、軽度の痛みに非オピオイド鎮痛薬を、中等度から高度の痛みには中等度から高度の痛みに用いるオピオイド鎮痛薬を使う流れが示されています。判断の軸は、はじめから終わりまで痛みの強さに置かれたままです。
| 痛みの強さ | 中心になる薬 | 医療用麻薬の位置づけ |
|---|---|---|
| 軽度 | 非オピオイド鎮痛薬 | 通常は使わない |
| 中等度 | 中等度から高度の痛みに用いるオピオイド鎮痛薬 | 非オピオイド鎮痛薬で足りなければ検討する |
| 高度 | 中等度から高度の痛みに用いるオピオイド鎮痛薬 | 痛みの強さに応じて必要な量を使う |
非オピオイド鎮痛薬との併用で足し算の効果が出る場合もありますが、単独で十分な効果が得られているのに漫然と併用を続けるべきではない、とも書かれています。薬を足すか引くかは、その時々の効き方を見て決まります。
三段階除痛ラダーは厳密な決まりではなくなった
1986年に世界保健機関が示した三段階の考え方は、弱い薬から順に上がっていく階段として広く知られてきました。2018年の改訂で、これは厳密な治療の手順ではなく、限られた薬を有効に使うための教育のための道具として位置づけ直されています。
いまの原則は、痛みの種類と場所を細かく評価し、その人が納得できるところまで痛みが取れる量を選ぶという形にまとまっています。「弱い薬を一巡してから」という順番待ちは、もう前提になっていません。
加えて、痛みの治療はがん治療の一部として計画に組み込むべきものだと整理されています。終末期であるかどうかに関係なく、痛みがあるなら同時に手当てするという立て付けです。
量が増えたのは病気が進んだ証拠ではない
必要な量には大きな個人差があり、厚生労働省のガイダンスも腫瘍の進行度や病期から量を決めることはできないと述べています。経口薬として1日にモルヒネで120mg以上を要する人がいる一方、少量で落ち着く人もいます。
そのため、処方の数字を見て残り時間を推し量る読み方には無理があります。量は痛みの大きさと体質を映した結果であって、余命の目盛りではありません。
不安になったときは、増量の理由をその場で尋ねてみるのがいちばん早い方法です。骨転移の痛みが増したのか、飲み薬から貼り薬へ変えた換算なのか、説明を聞けば数字の意味が違って見えてきます。
早めに使うほど暮らしの幅が保たれる
痛みを我慢している時間が長いほど、食事も睡眠も外出も削られていきます。厚生労働省のガイダンスがレスキュー薬について、痛みを我慢する必要がないように処方すると記しているのも、この考え方の表れでしょう。
国立がん研究センターのがん情報サービスも、痛みが出てきたら強くなるまで待たず早めに使うよう案内しています。我慢の量を競う場面ではない、と受け止めておくと気持ちが軽くなります。
自宅で過ごす時間を長く保ちたいという願いとも、この方針はよく合います。痛みが落ち着いていれば、庭を眺めたり孫と話したりする時間が戻ってくるからです。
在宅の緩和ケアで家族が見ておきたい医療用麻薬の副作用
自宅では医療者がいない時間が長いぶん、家族の観察が手がかりになります。開始のころに対策が要る代表は吐き気と便秘で、眠気とあわせて経過の目安を頭に入れておくと落ち着いて見ていられます。
便秘だけは慣れが起こらない
吐き気や眠気には耐性ができて薄れていく一方、便秘には耐性ができないため、使っているあいだ続きやすい副作用です。日本緩和医療学会も便秘と縮瞳を、耐性が形成されない例として挙げています。
| 主な副作用 | 経過の目安 | 自宅で気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 便秘 | 耐性ができないため続きやすい | 早めに伝える。水分と食物繊維、軽い運動、おなかのマッサージ |
| 吐き気 | 多くは1〜2週間でおさまる | 吐き気止めで乗り切れる時期がある。食べられる量の変化を伝える |
| 眠気 | 1週間ほどで軽くなることが多い | 呼びかけへの反応が鈍いときは連絡する |
この経過の目安は、国立がん研究センターのがん情報サービスが患者さんと家族向けに示している内容にもとづいています。便秘は日単位で確かめる項目だと厚生労働省のガイダンスも記しており、排便の記録は診療の材料になります。
吐き気と眠気は時間が味方する
吐き気は始めたころに出やすく、多くは1〜2週間でおさまっていきます。その期間を乗り切るために吐き気止めが処方されることもあり、つらさを我慢したまま自己判断で薬を飛ばすのは避けたい対応です。
眠気も1週間ほどで軽くなるのが一般的とされています。痛みで眠れない日が続いていた人では、痛みが和らいだ反動として数日眠り込むこともあり、これは体が休みを取り戻している姿と受け止められます。
ただし、痛みがないのに強い眠気が続くときは別です。量が多すぎる可能性のほか、高カルシウム血症や感染症など薬以外の原因も考えられるため、そのまま様子を見続けないほうが安全でしょう。
レスキュー薬は我慢せず早めに使う
定期的に飲む薬のあいだに出てくる痛みには、頓用のレスキュー薬を重ねます。厚生労働省のガイダンスは、本人が痛みを我慢しなくてよいように、そして家族が足りなくなる不安を抱かないように処方すると記しています。
使った回数は、次の定期薬の量を決める材料になります。1日に何回使ったかを書き留めておけば、訪問診療の場で調整の判断が早くなり、痛みの波も小さくなっていきます。
レスキュー薬を使う頻度が増えたときは、量が足りない合図かもしれません。我慢の記録ではなく、調整のための情報として遠慮なく伝えてよい数字です。
夜間と休日の連絡先をはっきりさせておく
厚生労働省のガイダンスは、薬に関する相談や緊急時の連絡ができるかかりつけ医、かかりつけ薬剤師、訪問看護師をはっきりさせておくよう求めています。夜間や休日の処方追加、入院を含む緊急の備えも含まれます。
紙に書いて電話のそばへ貼っておくと、慌てた場面でも迷いません。誰が何時まで対応するのかを一度確かめておけば、判断を先送りする理由が減っていきます。
過度の不安がその後の服薬行動に影響しないよう配慮する、という記述も同じガイダンスにあります。分からないまま抱え込まず、気になった時点で相談するのが在宅療養を続けるこつです。
よくある質問
厚生労働省のガイダンスは、がん治療や神経ブロック、放射線治療で痛みが軽くなった場合には減量も中止もできると明記しています。始めたら最後まで続ける薬ではありません。
ただし急に止めると離脱症候が出ることがあるため、減らすときは少しずつ調整します。合わないと感じたら、自己判断で中断せず担当の医師や薬剤師へ相談するのが安全な進め方です。
量から病気の進み具合を読み取ることはできません。厚生労働省のガイダンスは、投与量を腫瘍の進行度や転移部位、病期によって決めることはできず、必要量には大きな個人差があると述べています。
増量には、痛みの原因が変わった、投与経路を変えて換算した、といった具体的な理由があります。気になったときは、なぜ増えたのかをその場で尋ねてみると納得しやすくなります。
開始の基準は痛みの強さであり、厚生労働省のガイダンスはがんの進行度や生命予後を基準にしないと明記しています。あきらめの合図として使う薬ではありません。
世界保健機関の原則でも、痛みの治療は終末期かどうかに関係なくがん治療の計画へ組み込むべきものと整理されています。抗がん治療を続けながら痛みを抑える進め方も広く行われています。
眠気は始めたころや増やしたころに出やすい副作用ですが、多くは1週間ほどで軽くなると国立がん研究センターのがん情報サービスは案内しています。痛みで眠れずにいた反動が数日続く場合もあります。
痛みがないのに強い眠気が続くときは、量が多すぎる可能性を考えて減量を検討します。薬以外の原因が隠れていることもあるため、様子をそのまま伝えていただくのが役に立ちます。
厚生労働省のガイダンスは、過量の兆候として安静時の呼吸数が1分間に10回を下回る、瞳孔が小さく縮む、うとうとして目を開けにくい、といった観察の目安を挙げています。
眠っているあいだに呼吸数が下がっても、声かけで目を覚まし回復すれば問題になりにくいとされています。呼びかけても反応が戻らないときは、夜間でも決めておいた連絡先へ電話をかけましょう。



