チェーンストークス呼吸とは?看取り期の呼吸変化と家族が知っておくべきこと

チェーンストークス呼吸は、浅く小さな呼吸がしだいに深く大きくなり、そこからまた小さくなって、最後に呼吸の止まる時間がはさまる、波のような呼吸です。
看取りが近い時期に見られますが、心不全や脳卒中のある方にも現れるため、この呼吸が出た時期だけで残された時間を測れるわけではありません。
波の形と起こる仕組み、そばにいる家族が慌てずに過ごすための手がかりを、学会や国の資料に示されている内容にそって順にたどります。秒数を数えながら過ごさずにすむ受け止め方も、あわせてお伝えします。
呼吸の変化は、ご本人が今どんな状態にあるかを示す手がかりの一つであり、家族が何かを失敗した結果として現れるものではありません。
チェーンストークス呼吸は浅い呼吸と深い呼吸が波のように入れ替わる呼吸
チェーンストークス呼吸は、呼吸の深さが波のように増えては減る動きを繰り返し、その谷にあたる部分でいったん止まる呼吸です。日本救急医学会が公開している医学用語解説集では、周期性呼吸の代表例として説明されています。
| 波の位置 | 呼吸の様子 | そばで見える動き |
|---|---|---|
| 立ち上がり | 小さく浅い呼吸から少しずつ深さが増す | 胸の動きが小さく、音も静か |
| 山 | 深く大きな呼吸がしばらく続く | 胸や肩が大きく上下し、音が強まる |
| 下り坂 | 深さが少しずつ減っていく | 音が静まり、動きが小さくなる |
| 谷 | 呼吸がいったん止まる | 胸の動きが見えなくなる |
小さな呼吸から大きな呼吸へ、そして止まる時間へ
日本救急医学会の医学用語解説集では、一度に吸い込む空気の量が少しずつ増えて大きな呼吸になり、そこから今度は少しずつ減って呼吸が止まり、また同じ周期を繰り返す呼吸だと説明されています。
一回換気量という言葉は、一度の呼吸で肺に出入りする空気の量を指します。この量が波のように増減するため、そばで見ていると呼吸が強くなったり弱くなったりを繰り返すように映ります。
波はご本人の意思とは関わりなく生まれ、力を入れて息を吸おうとしている動きでもありません。呼吸を調節している脳のはたらきが、時間差をともないながら強弱をつけている状態だと考えられています。
波の長さや強さには個人差があり、同じ方でも日によって形が変わります。図で描かれるようなくっきりした波ばかりではなく、山と谷の差が小さくて、注意して見なければ気づかない場合もあるでしょう。
1周期は30秒から2分、止まる時間は10秒から20秒ほど
同じ解説集は、波のひとめぐりにあたる1周期が30秒から2分くらいである場合が多いとし、その途中にはさまる呼吸の停止を10秒から20秒程度の無呼吸として示しています。
この目安を知っておくと、止まっている時間の長さそのものは珍しい出来事ではないと分かります。多くの場合は数十秒のうちにまた呼吸が戻り、次の波が始まります。
ただし、そばにいる家族が秒数を測り続ける必要はありません。時計を見つめる時間が長くなるほど緊張は高まり、声をかける余裕まで細くなってしまいます。
止まっている時間を初めて目にすると、そのまま戻らないのではないかと身構えてしまうものです。戻る前提で見守れるよう、あらかじめこの形を知っておくと、最初の驚きが小さくてすみます。
いびきや息切れとはどこが違うのか
いびきは、のどの奥が狭くなって空気が通るときに鳴る音であり、呼吸の深さが波のように変わる動きとは別のものです。チェーンストークス呼吸では、音の有無よりも深さの変化と停止の繰り返しが目印になります。
坂道や階段でつらくなる息切れは、体が必要とする酸素の量が増えたときに起こります。一方、波のような呼吸は安静にしていても現れ、眠っている間に目立つ場合も少なくありません。
見分けに迷ったときは、胸の動きが完全に止まる時間があるかどうかを手がかりにすると整理しやすいです。判断に自信が持てないときは、訪問看護師や主治医に様子をそのまま伝えましょう。
チェーンストークス呼吸が起こるのは呼吸の調節が鈍るから
波が生まれる背景には、血液中の二酸化炭素の量を感じ取って指令を出す、脳のはたらきの変化があります。日本救急医学会の解説集も、中枢神経系が障害されて呼吸中枢の感受性が低下した場合や、脳が低酸素の状態にある際に見られると述べています。
二酸化炭素を感じ取る力が下がると波ができる
呼吸が動く目的は、酸素を取り込む点だけではありません。体にたまった二酸化炭素を吐き出す役目もあり、脳の呼吸中枢はこの濃度を見張って、増えれば深く速く、減れば浅くゆっくりと指令を切り替えます。
見張る力が鈍ると、指令の切り替えが遅れて行き過ぎが生まれます。吐き出しすぎて二酸化炭素が減れば呼吸は止まり、たまってくると今度は大きな呼吸が続く、という往復が波の形を作っているのです。
心臓から脳へ血液が届くまでの時間が延びると、この行き過ぎはさらに大きくなります。指令が届くころには体の状態が先へ進んでおり、ずれがずれを呼ぶ形で強弱の差が広がっていきます。
脳が酸素不足に傾いたときにも現れる
脳梗塞や脳出血のあと、あるいは脳へ届く酸素が不足した状態でも、この呼吸は現れます。日本救急医学会の解説集が挙げている条件は、まさにこうした中枢神経系のはたらきの低下です。
看取りが近づく時期には、全身の血液の巡りが穏やかになり、脳へ届く酸素も少なくなっていきます。呼吸の調節が緩やかになる下地がそろうため、波のような呼吸が現れやすくなります。
つまり、この呼吸は突然の異常ではなく、体の変化に呼吸の調節が寄り添った結果として立ち上がります。何かを取り違えた結果でも、介護の仕方が足りなかった結果でもありません。
呼吸の調節が緩む変化は、意識がぼんやりする、眠っている時間が延びるといった様子と重なって現れる場合が多くなります。呼吸だけが単独で変わるわけではないと知っておけば、全体の様子を落ち着いて見渡せるでしょう。
眠りが深い時間帯に目立ちやすい
目が覚めている間は、体を動かしたり話したりする刺激が呼吸の指令を後押しします。眠りに入るとその後押しが弱まるぶん、二酸化炭素の濃度に頼る調節の比重が高まります。
そのため夜間や、うとうとしている時間帯に波がはっきりする場合が多くなります。日中は落ち着いて見えたのに夜になって強く見えた、という食い違いも、この差から生まれるのでしょう。
眠りの深さで見え方が変わる以上、朝と夜で様子が違っても悪化と決めつけずにすみます。気になる変化があれば、時間帯もあわせて訪問看護師へ伝えると、状況が正しく伝わります。
看取り期以外でもチェーンストークス呼吸は現れる
この呼吸は看取りの時期だけに起こるものではありません。
日本呼吸器学会などが監修した睡眠時無呼吸症候群の診療ガイドライン2020について、日本内科学会雑誌に掲載された解説は、心不全や脳卒中のある方に見られる場合が多いと述べています。
心不全の方が眠っている間に見られる場合
同じ解説では、この呼吸は無呼吸の間に息をしようとする努力を伴わない、中枢性睡眠時無呼吸という一群のなかの一つの病態として整理されています。心不全のある方では、眠っている間にこの形が確かめられる場合があります。
心臓の送り出す力が落ちると、血液が体を一巡する時間が延び、呼吸の指令のずれが大きくなります。日中は目立たなくても、睡眠中の検査をして初めて分かる場合も少なくありません。
この場合は看取りとは別の話であり、心臓の治療や睡眠中の呼吸を助ける治療が検討されます。かかりつけの医師が状態を見ながら判断するため、家族の側で結論を出す必要はありません。
眠っている間の呼吸は、ご本人にも家族にも気づきにくいものです。日中の息切れやむくみで受診したときに、夜の様子をあわせて伝えておくと、医師が検査を考えるうえでの手がかりになります。
脳卒中のあとに現れる場合
脳卒中のあとにも、この呼吸が見られる場合があります。呼吸の指令を出す部分やその周辺が傷を受けると、二酸化炭素への反応がふだんとは違う形になるためです。
回復の途中で目立っていた波が、状態の落ち着きとともに薄れていく場合もあります。呼吸の形は固定されたものではなく、体の状態に合わせて日ごとに移り変わります。
在宅で療養している方であれば、訪問診療の医師が定期的に胸の音や脈、手足の温かさを確かめながら全体を見ています。呼吸の形だけを切り離して受け取らずにすみます。
高い山で起こる周期性の呼吸
同じ診療ガイドラインの解説が挙げる中枢性睡眠時無呼吸の一覧には、高い山の環境で起こる周期性の呼吸も並んでいます。空気の薄い場所では、健康な人でも呼吸の調節が揺れます。
呼吸が波を描く動きそのものは、体が置かれた条件に応じて誰にでも起こりうる反応です。看取りの時期に見られる波も、同じ調節の仕組みの上に現れています。
だからこそ、この呼吸を目にしたという事実だけを取り出して、残された時間を言い当てる材料にはできません。判断は、全身の状態をあわせて見ている医療者に委ねるほうが確かです。
| 現れる場面 | 背景にあるもの | 家族が取る動き |
|---|---|---|
| 心不全のある方の睡眠中 | 血液が体を巡る時間の延び | 主治医へ伝え、検査や治療の判断を仰ぐ |
| 脳卒中のあと | 呼吸を調節する部分のはたらきの変化 | 経過のなかで気づいた様子を伝える |
| 高い山などの環境 | 空気の薄さによる調節の揺れ | 標高を下げるなど環境を整える |
| 看取りが近い時期 | 全身の巡りと脳へ届く酸素の減り | 慌てずに見守り、訪問看護師へ連絡する |
看取りが近い時期に家族が目にするチェーンストークス呼吸
看取りが近づくと、呼吸のリズムが不規則になり、途中で止まる時間がはさまる形が見られます。
山形県のサイトで公開されている三友堂病院地域緩和ケアサポートセンターの家族向け冊子も、お別れが近づいた時期に起こる呼吸として、この変化を挙げています。
| 目にする変化 | 体に起きていること | そばでの受け止め |
|---|---|---|
| 呼吸が深く大きくなる | 二酸化炭素がたまり指令が強まる | 音や動きの大きさに驚かなくてよい |
| 呼吸が浅く静かになる | 指令が弱まり深さが減る | 顔色や表情をあわせて見る |
| 止まる時間がはさまる | 調節の行き過ぎで指令が途切れる | 秒数は数えずに次の波を待つ |
| 波の強さが日ごとに変わる | 全身の状態に合わせて揺れる | 変化の様子を訪問看護師へ伝える |
リズムが不規則になり止まる時間がはさまる
そばで見ていると、深く大きな呼吸が続いたあとに音が静まり、胸の動きが見えない時間が訪れます。次の波が始まると、また深い呼吸が戻ってきます。
この形は一晩のうちに何度も繰り返され、日によって強く見えたり弱く見えたりします。同じ日のなかでも、時間帯によって印象が変わる場合があります。
呼吸が止まっている間に、体を揺すったり口元に何かを近づけたりする必要はありません。目を離せないと感じるときは、手を握るなど触れていられる方法を選ぶと、待つ時間が過ごしやすくなります。
出たり消えたりを繰り返しながら移り変わる
一度この呼吸が現れたからといって、そのまま同じ形が続くとは限りません。しばらくすると落ち着いた呼吸に戻り、翌日また波が現れる、という行きつ戻りつがよく見られます。
三友堂病院の冊子も、こうした身体の変化の多くは自然の経過のなかで現れると記しています。慌てずに見守るという姿勢が、家族に向けた案内として書かれています。
変化の見え方は、部屋の静かさや寝ている姿勢によっても違います。夜の静けさのなかでは呼吸の音がよく届くため、昼間よりも強く感じられる場合が少なくありません。
行きつ戻りつがあるぶん、家族の気持ちも上下しやすくなります。落ち着いた時間に少し体を休め、次に備える過ごし方が、結果として長くそばにいられる道につながります。
現れた時期から残り時間は割り出せない
この呼吸が始まってから何日、という数え方はできません。看取りの時期に見られる一方で、心不全や脳卒中のある方でも現れるため、時間の物差しとして使える性質のものではないからです。
医療者は、呼吸の形だけでなく、脈の触れ方や手足の温かさ、尿の量など複数の手がかりをあわせて状態を見ています。心電図モニターは使わず、こうした身体の様子から判断します。
数字で示されないぶん心細く感じるかもしれませんが、身近な変化を伝えてもらえるほど、医療者は状態をつかみやすいです。気づいた様子を短い言葉で書き留めておくと、次の訪問のときに役立ちます。
家族が秒数を数えずにそばで過ごすために
呼吸の止まる時間を数え続ける必要はありません。時計から目を離し、部屋の様子を整えたり声をかけたりするほうが、ご本人にとっても家族にとっても穏やかな時間になります。
数字を追うより部屋の空気と声かけへ
呼吸の波は、家族が見ているかどうかとは関わりなく現れたり消えたりします。見張る役目を引き受けようとするほど、そばにいる時間が緊張だけで埋まってしまいます。
手を握る、好きだった音楽を小さくかける、季節の話をするなど、負担の少ない関わりで十分です。こうした過ごし方は、ご本人の安心につながるだけでなく、家族自身の気持ちも支えます。
口の渇きを湿らせる手当てや、やさしく手足をさする関わりが、家族にできる方法です。特別な技術は要りません。
声をかけても返事がないと、届いていないのではないかと迷いが生まれます。返事の有無で判断せず、いつもどおりの調子で話しかけるほうが、部屋の空気はやわらぐでしょう。
測定器の値を見続けない
家庭用の測定器で酸素の値を測り続けると、波の谷にあたる時間に数字が下がり、山にあたる時間に戻る動きが見えます。上下そのものは波の形をなぞっているだけなので、そのたびに慌てずにすみます。
三友堂病院の冊子は、心電図モニターを使わず、脈の触れ方や手足の温かさ、呼吸の仕方から状態を判断すると記しています。在宅の療養でも、同じ見方が土台になります。
測る回数を減らすと、画面ではなくご本人の顔を見る時間が増えます。表情がやわらいでいるか、眉間にしわが寄っていないかという手がかりのほうが、そばにいる家族には拾いやすいものです。
交代でそばにつき、眠る時間を確保する
波のような呼吸は数日にわたって続く場合があり、家族が寝ずに見守り続けると体力が持ちません。誰かが休み、誰かがそばにつく形をあらかじめ決めておくと、無理なく続けられます。
短い時間でも横になれば、判断する力も気持ちの余裕も戻ります。眠っている間に変化があったとしても、それは見落としではなく、交代で支える形を選んだ結果にすぎません。
遠方の親族がいる場合は、来られる日をあらかじめ相談しておくと動きやすくなります。会っておきたい方への連絡は、話ができる時期のうちに済ませておくと、後悔が残りにくくなります。
チェーンストークス呼吸に気づいた家族が連絡する先
様子がふだんと違うと感じたら、まず訪問看護ステーションへ電話をかける流れが基本になります。
沖縄県と沖縄県医師会が作成した冊子も、看取りのケアには24時間対応できる看護師の関与と、往診をする医師の支援が必要だと述べています。
| 連絡先 | 使う場面 | 伝えること |
|---|---|---|
| 訪問看護ステーション | 呼吸の形が変わった、様子が気にかかる | いつから、どのように見えるか |
| 訪問診療の医師 | 看護師から折り返しがあり、診察が要る場合 | 看護師へ伝えた内容の続き |
| ケアマネジャー | 介護の体制を組み直したいとき | 家族の疲れや人手の状況 |
24時間つながる連絡先を手元に置く
在宅で療養している場合、契約している訪問看護ステーションには夜間や休日にもつながる電話番号があります。冷蔵庫の扉など、家族の誰もがすぐ見られる場所に貼っておくと迷いません。
番号を探すところから始めると、それだけで気持ちが急いてしまいます。あらかじめ携帯電話に登録し、かける人を決めておけば、いざというときの動きが軽くなります。
呼吸の変化は夜間に目立つ場合が多く、深夜の電話をためらう家族は少なくありません。24時間の対応はそのために用意されているため、遠慮せずに使って差し支えありません。
連絡先を貼るときは、事業所の名前と番号に加えて、夜間や休日の窓口が別なら、その番号もあわせて書き添えておきます。担当者の名前まで分かっていると、電話口での説明が短くすみます。
電話で伝わりやすい内容
電話では専門の言葉を使う必要はなく、見えたままを順に話せば、聞き取る側の看護師が足りない点を尋ねてくれます。慌てて全部を伝えようとせず、気づいた順に話して差し支えありません。
伝えた内容は、そのまま医師への引き継ぎに使われます。同じ話を何度もし直さずにすむよう、電話のそばに簡単な覚え書きを置いておく方法も役に立ちます。
救急車を呼ぶ前に主治医へ
在宅での看取りを選んでいる場合、呼吸の変化に驚いて救急車を呼ぶと、望んでいた過ごし方とは違う流れに進んでしまう場合があります。あわてて救急車を呼んだり警察へ連絡したりするのは望ましくないです。
まず訪問看護ステーションか主治医へ連絡し、指示を受ける順番を家族のあいだで共有しておくと、迷いが減ります。誰がどこへかけるかまで決めておけば、さらに動きやすくなります。
事前に医師や看護師と話し合っておけば、夜間に変化が起きたときどう動くかの見取り図ができます。話し合った内容は紙に残し、家族の誰もが見られるようにしておくと安心です。
呼吸が変わる前に家族で話し合っておきたいこと
ご本人の望みを確かめられるのは、まだ言葉を交わせる時期のうちです。
厚生労働省が示している、人生の最終段階の医療・ケアの方針を決めるための指針は、本人の意思は変わりうるものだとしたうえで、話し合いを繰り返す姿勢を求めています。
本人の望みは繰り返し確かめてよい
同じ指針は、医療や介護の担当者から十分な情報の提供と説明を受けたうえで、本人による意思決定を基本に方針を進めるのが最も重要な原則だとしています。一度決めた内容を守り続けなければならない、という決まりではありません。
体の状態が変われば、望みも変わります。以前は延命を望まないと話していた方が、家族と過ごす時間を増やしたいと考え直す場面もありますし、その逆の変化も起こります。
話し合いは、改まった場を作らなくてもかまいません。食事のあとやテレビを見ている合間に少しずつ触れていくほうが、本音が出やすい場合もあります。
誰が言葉を代わりに伝えるか決めておく
同じ指針は、本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性を踏まえ、信頼できる家族等を含めて話し合いを繰り返す重要さを挙げています。あわせて、意思を推定する人をあらかじめ定めておく点にも触れています。
決めておけば、いざというときに家族のあいだで意見が割れても、拠り所が残ります。役目を担う人が一人で背負い込まずにすむよう、決めた経緯まで共有しておくとよいでしょう。
呼吸の変化が現れてから慌てて話し合うと、その場の不安に引きずられた結論になりがちです。落ち着いている時期に触れておくほうが、ご本人の言葉をそのまま受け取れます。
気持ちが変わったら決め直してよい
話し合った内容は、書き残しても書き直せます。ご本人がやはり違うと言い出したときに、前の紙を理由に押し戻さずにすむよう、日付を入れて残しておくとよいでしょう。
厚生労働省の指針も、本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援を求めています。決め直しは方針の揺らぎではなく、もともと想定されている進め方です。
決め直した内容は、次の訪問のときに主治医や訪問看護師へも伝えておきます。家族のなかだけで共有していると、いざというときに現場の判断とのあいだにずれが生まれてしまいます。
呼吸の変化を前にした時間は、家族にとって長く感じられます。あらかじめ話し合いを重ねておけば、その時間を判断のためではなく、そばにいるための時間として使えます。
| 話し合っておく項目 | 確かめたい内容 | 一緒に決めておく相手 |
|---|---|---|
| 過ごす場所 | 自宅で最期まで過ごしたいか | 本人と同居する家族 |
| 医療の受け方 | 苦しさをやわらげる手当てをどこまで望むか | 主治医と訪問看護師 |
| 意思を代わりに伝える人 | 本人が話せないときに誰が伝えるか | 本人と家族全員 |
| 夜間の動き方 | 変化に気づいたときどこへ連絡するか | 訪問看護ステーション |
よくある質問
この呼吸が現れた時期から残りの時間を割り出す方法はありません。看取りが近い時期に見られる一方で、心不全や脳卒中のある方にも現れるため、時間の物差しとしては使えないからです。
状態の見立ては、脈の触れ方や手足の温かさ、尿の量など複数の手がかりをあわせて医療者が行います。気にかかるときは、そのまま主治医や訪問看護師に尋ねて差し支えありません。
体を揺すったり、口元に何かを近づけたりする必要はありません。日本救急医学会の医学用語解説集が示すとおり、止まっている時間は10秒から20秒程度とされ、多くはそのあと次の波が始まります。
手を握る、そっと声をかけるといった関わりで十分です。様子がふだんと違うと感じたときは、時計を見つめる前に訪問看護ステーションへ電話をかけてください。
日本呼吸器学会などが監修した睡眠時無呼吸症候群の診療ガイドライン2020について日本内科学会雑誌に載った解説は、この呼吸が心不全や脳卒中のある方に見られる場合が多いと述べています。
その場合は看取りとは別に、心臓の治療や睡眠中の呼吸を助ける治療が検討されます。判断はかかりつけの医師が行うため、家族の側で結論を出す必要はありません。
家族の判断で酸素の量や機器の設定を変えるのは避けたいところです。設定は医師の指示にもとづいて決められており、勝手に変えると状態の見立てまで難しくなります。
息づかいが気にかかるときは、まず訪問看護ステーションへ連絡し、指示を受けてから動く流れが確かです。上半身を少し起こすなど姿勢の工夫も、その場で相談できます。
反応が返らなくても、話しかける意味はあります。山形県のサイトで公開されている三友堂病院の冊子は、聞く力は最期まで残っていると言われていると記し、伝えたい言葉があれば話しかけるよう案内しています。
家族どうしがそばで交わす何気ない会話も、ご本人の安心につながります。声の大きさや話す内容を、特別に整える必要はありません。



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