- LDL・HDL・中性脂肪は同じ「脂質」の数値でも、意味も原因も異なります
- 中性脂肪は体重・内臓脂肪・糖質・飲酒の影響を受けやすく、体重管理で改善が期待しやすい数値です
- HDLは運動・禁煙・体重管理などで改善が期待できることがありますが、短期間では変化しにくい数値です
- LDLは体重だけでは説明しきれないことが多く、食事の内容・体質・年齢・閉経・遺伝的要因なども関係します
- 「痩せれば全部よくなる」とは言い切れません。数値の種類ごとに見方を変えていきましょう。
- 健診で脂質を指摘されたときは、体重だけでなく血圧・血糖・脂質をまとめて確認することが重要です
- 生活習慣の改善と医療的な管理は対立するものではなく、状況に応じて組み合わせることができます
健診の結果票を見て、「LDLコレステロールが高い」「HDLコレステロールが低い」「中性脂肪が高い」と指摘され、「体重を落とせば改善するのだろうか」と考えた経験はないでしょうか。体重と脂質の数値は確かに関係していますが、その関係の深さは、LDL・HDL・中性脂肪の種類によって大きく異なります。この記事では、それぞれの数値が体重とどう関係しているのかを整理し、生活習慣の見直しで何が変わりやすく、何が変わりにくいのかをわかりやすく解説します。
健診で「脂質の数値」を指摘されたとき、何から考えればいいか
健診でLDLコレステロールや中性脂肪の数値に印がついていると、「コレステロールが高い=食べすぎ=痩せれば治る」という図式がまず頭に浮かぶ方は少なくありません。体重と脂質の関係は確かに存在しますが、LDL・HDL・中性脂肪のそれぞれで、体重との関係の深さは異なります。まずは「どの数値が問題なのか」を整理することが、対策を考えるうえでの第一歩です。
LDL・HDL・中性脂肪、どれが問題かによって対策は変わる
LDLコレステロールが高い場合、HDLコレステロールが低い場合、中性脂肪が高い場合では、原因として考えられることも、有効な対策も異なります。LDLの高さは食事の内容や体質・遺伝的要因が大きく関係していることがあります。中性脂肪の高さには体重や糖質・飲酒が関わりやすく、HDLの低さには運動不足や喫煙が影響していることがあります。健診結果を見るときは、「何の数値がどの程度異常なのか」を分けて考えましょう。
「痩せれば全部よくなる」とは言い切れない理由
体重を落とすことで脂質の数値が改善するケースは確かにあります。特に中性脂肪やHDLは、体重管理や生活習慣の改善によって変化が期待しやすい数値です。一方でLDLコレステロールは、体重を減らしても大きく変わらないことがあります。これは、LDLが体重よりも食事に含まれる脂肪の種類・体質・年齢・ホルモン変化・遺伝的背景などの影響を受けやすいためです。「痩せれば全部よくなる」という単純な考え方ではなく、数値ごとに見方を変えることが重要です。
LDL・HDL・中性脂肪はそれぞれ何が違うのか
3つの数値はいずれも「脂質」に関連しますが、体内での役割もリスクの意味も異なります。それぞれの特徴を整理しておくことで、自分の健診結果を正しく理解する助けになります。
LDLコレステロール——動脈硬化との関係が注目される数値
LDLコレステロールは、肝臓で合成されたコレステロールを全身の細胞に運ぶ役割を持つリポタンパクの一種です。「悪玉コレステロール」と呼ばれることがありますが、コレステロール自体はホルモンや細胞膜の材料としても必要な成分であり、LDLそのものが体に不要なわけではありません。ただし、LDLが過剰になると動脈の壁に蓄積しやすくなり、動脈硬化の進行に関係することが知られています。日本動脈硬化学会の基準では、LDLコレステロール140mg/dL以上が高LDLコレステロール血症の目安とされていますが、薬を使うかどうかの判断はこの数値だけでは決まりません。
HDLコレステロール——「善玉」と呼ばれており、低いとリスクになる
HDLコレステロールは、血管や末梢組織の余分なコレステロールを回収して肝臓へ戻す「逆転送」の働きに関わります。この役割から「善玉コレステロール」と呼ばれることがありますが、「HDLが高ければ高いほどよい」とは一概には言えません。問題になるのは主に「HDLが低いこと」で、40mg/dL未満が低HDLコレステロール血症の目安とされています。HDL低値は動脈硬化リスクと関連することが報告されており、運動不足・喫煙・肥満・中性脂肪高値などとも関係します。
中性脂肪(トリグリセリド)——エネルギー貯蔵と内臓脂肪のかかわり
中性脂肪(トリグリセリド)は、食事から摂ったエネルギーのうち使われなかった分が変換されて蓄積される形態です。内臓脂肪や皮下脂肪の主成分でもあります。空腹時の血中中性脂肪が150mg/dL以上(一部の基準では非空腹時175mg/dL以上)を高トリグリセリド血症の目安としています。中性脂肪は食事・飲酒・運動量・体重の変化に比較的敏感に反応する指標で、生活習慣の改善で変化が出やすい数値の一つです。
「脂質異常症」とはどういう状態を指すのか
脂質異常症とは、血中のLDL・HDL・中性脂肪のいずれかが基準から外れた状態をまとめて指す言葉です。以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、HDLが低い場合のように数値が高くない場合も含まれるため、現在はこの名称が使われています。脂質異常症の診断や治療の必要性は、数値だけでなく年齢・喫煙歴・血圧・血糖値・家族歴・既往歴などを含めて総合的に判断されるものです。
以下の表に3指標の違いをまとめます。
表1:LDL・HDL・中性脂肪の違い一覧
| 項目 | LDLコレステロール | HDLコレステロール | 中性脂肪(トリグリセリド) |
|---|---|---|---|
| 主な役割 | コレステロールを全身の細胞へ運ぶ | 余分なコレステロールを肝臓へ回収する | エネルギーを蓄える。内臓脂肪・皮下脂肪の主成分 |
| 問題になりやすい状態 | 高値 目安:140mg/dL以上 |
低値 目安:40mg/dL未満 |
高値 目安:空腹時150mg/dL以上 |
| 動脈硬化リスクとの関係 | 高値が関連する | 低値がリスクと関連する | 高値がリスクと関連することがある |
| 体重との関係 | 体重だけでは説明しにくいことがある | 体重管理で改善が期待できることがある | 体重・内臓脂肪の影響を受けやすい |
| 主な関連要因 | 食事の脂肪の質・体質・年齢・閉経・遺伝 | 運動不足・喫煙・肥満・中性脂肪高値 | 糖質・飲酒・運動不足・体重・内臓脂肪 |
※数値はあくまで目安です。診断や治療の必要性は、医師が個々の状況を総合的に判断します。スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。
上記の数値はあくまで目安です。診断や治療の必要性は、医師が個々の状況を総合的に判断します。
体重と関係しやすい数値・関係しにくい数値を整理する
体重を落とすことで脂質の数値に変化が期待できるかどうかは、LDL・HDL・中性脂肪によって異なります。この点を整理することが、生活習慣改善の優先順位を考えるうえで役立ちます。
中性脂肪は体重・内臓脂肪の影響を受けやすい
中性脂肪は、LDLやHDLに比べて体重・内臓脂肪・食事内容・飲酒量の影響を受けやすい指標です。肥満、特に内臓脂肪が多い状態では中性脂肪が上昇しやすく、逆に体重が減って内臓脂肪が減ると中性脂肪も改善することがあります。糖質やアルコールのとりすぎも中性脂肪を上げる要因として知られており、体重管理と食事内容の見直しを組み合わせることが効果的なアプローチになることが多いです。
HDLは生活習慣の改善で変化が期待できることがある
HDLは運動習慣、禁煙、体重管理、そして中性脂肪の改善などを通じて変化が期待できることがあります。ただし、HDLは中性脂肪のように短期間で大きく変化しにくい数値です。「何かをすればすぐにHDLが上がる」という性質のものではなく、生活習慣全体を継続的に整えた結果として改善が見られることが多いとされています。
LDLは体重だけでは説明できないケースが少なくない
LDLコレステロールは、体重や体脂肪量との関連が中性脂肪ほど強くありません。体重を減らしてもLDLが変わらない方や、反対に標準体重でも高いLDLが続く方は珍しくありません。LDLには食事に含まれる飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の量、体質、年齢、ホルモン環境、甲状腺機能、遺伝的要因などが関係することがあります。このため、「痩せればLDLは必ず下がる」と考えるのは注意が必要です。
表2:体重との関係が強い数値・弱い数値
| 数値 | 体重との関係 | 体重以外の主な要因 | 体重管理で期待できる変化 |
|---|---|---|---|
| 中性脂肪 | 影響を受けやすい | 糖質・飲酒・運動不足・内臓脂肪 | 改善が期待しやすい ※個人差あり |
| HDL | 一定の関連がある | 運動不足・喫煙・中性脂肪高値 | 改善する可能性がある ※時間がかかりやすい |
| LDL | 体重だけでは説明しにくいことがある | 食事の脂肪の質・体質・年齢・閉経・遺伝 | 変化しないこともある |
※個人差があります。体重管理は有益ですが、数値の変化には食事内容・体質・その他の要因も関係します。スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。
中性脂肪と体重・内臓脂肪・生活習慣の関係
中性脂肪は、脂質の3指標の中で体重や生活習慣との関係が最も直接的な数値の一つです。なぜ内臓脂肪が増えると中性脂肪が上がりやすいのか、糖質や飲酒がなぜ関係するのかを理解すると、日々の生活習慣を見直すヒントになります。
内臓脂肪が増えると中性脂肪はなぜ上がりやすいのか
内臓脂肪(腹腔内に蓄積する脂肪)が増えると、脂肪組織から遊離脂肪酸が血中に多く放出されるようになります。これが肝臓に運ばれると、肝臓が中性脂肪を多く含むリポタンパク(VLDL)を合成・分泌しやすくなり、結果として血中の中性脂肪が上がりやすくなると考えられています。また、内臓脂肪の蓄積はインスリンの働きが低下した状態(インスリン抵抗性)とも関連しており、これが中性脂肪の代謝にも影響することがあります。インスリン抵抗性と血圧・体重の関係については、関連記事「ARB・ACE阻害薬とインスリン抵抗性」でも整理しています。
糖質・アルコール・運動不足が中性脂肪に与える影響
中性脂肪が高い原因として見落とされがちなのが、糖質とアルコールの影響です。白米・パン・麺類・砂糖・清涼飲料水などの糖質を過剰に摂ると、使われなかったグルコースが肝臓で中性脂肪に変換されやすくなります。アルコールも肝臓での中性脂肪合成を促進し、分解を妨げることがあります。「脂っこいものを食べていないのに中性脂肪が高い」という方の場合、糖質や飲酒量が関係していることも少なくありません。加えて、運動不足は中性脂肪の消費を減らすため、身体活動量も重要な要因の一つです。
メタボリックシンドロームと中性脂肪・HDLの組み合わせ
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積を背景に、高血圧・高血糖・脂質異常が重なりやすい病態です。日本のメタボリックシンドロームの診断基準では、ウエスト周囲径の基準に加えて、中性脂肪150mg/dL以上、またはHDLコレステロール40mg/dL未満が評価項目に含まれます。「中性脂肪が高くてHDLが低い」という組み合わせは、インスリン抵抗性や動脈硬化リスクの指標として注目されています。なお、LDLコレステロールはメタボリックシンドロームの診断項目そのものではありませんが、動脈硬化リスクとして別途重要な意味を持ちます。SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬が体重と血糖・脂質の両方に影響する仕組みについては、関連記事「SGLT2阻害薬・GLP-1薬が痩せる理由」でも解説しています。
HDLが低い原因と、改善が期待できる生活習慣
HDLコレステロールが低い原因は一つではなく、複数の生活習慣要因が重なっていることが多いです。改善できる要因と、時間がかかるものとを区別して考えることが大切です。
HDL低下に関係する要因——運動不足、喫煙、肥満、中性脂肪高値
HDLが低い状態には、主に以下のような要因が関係することがあります。
- 運動不足:有酸素運動の習慣がないとHDLが低下しやすいとされています
- 喫煙:喫煙はHDLの代謝に影響することが知られています
- 肥満(特に内臓脂肪型肥満):内臓脂肪の増加に伴いHDLが低下しやすい傾向があります
- 中性脂肪高値:中性脂肪とHDLは相互に関係しており、中性脂肪が高い状態ではHDLが低くなりやすいことがあります
これらの要因は生活習慣の改善によってアプローチできる可能性があるものです。
体重管理・有酸素運動・禁煙がHDLに与える影響
継続的な有酸素運動は、脂質代謝に関わる酵素の活性を高め、HDLが増えやすくなる方向に働くことがあると考えられています。体重が5〜10%程度減少することでHDLが改善するという報告もありますが、個人差があります。禁煙後にHDLが改善するという報告もあります。ただし、HDLの変化は中性脂肪に比べてゆっくりであることが多く、「短期間で数値が大きく動く」ことは期待しにくい指標です。
HDLはすぐには上がりにくい——継続的な生活習慣改善が土台になる
HDLを改善するうえで重要なのは、「HDLだけを上げようとする」発想ではなく、「生活習慣全体を整えた結果としてHDLも変化する」という視点です。有酸素運動の継続、禁煙、適切な体重管理、そして中性脂肪を下げることが、結果的にHDL改善につながることがあります。数週間で大きな変化を期待するのではなく、数ヶ月単位での継続的な取り組みが土台になります。
LDLが体重だけでは下がりにくい理由
LDLコレステロールは、体重との関係が3指標の中で最も複雑です。体重を減らしてもLDLが変わらない理由、食事の内容・年齢・遺伝的要因がどのように関係するかを整理します。
食事の内容(飽和脂肪酸・トランス脂肪酸)がLDLに与える影響
LDLコレステロールに影響する食事の要因として重要なのは、食べる量より「何を食べているか」です。飽和脂肪酸(牛・豚の脂身、バター、生クリーム、ヤシ油・ヤシ核油など)は、肝臓のLDL受容体の発現を低下させる方向に働き、血中LDLが上がりやすくなると考えられています。トランス脂肪酸(一部のマーガリン・ショートニング・加工食品に含まれる)は、LDLを上げ、HDLを下げる方向に作用することが知られています。一方、野菜・豆類・海藻・果物などに含まれる食物繊維は、腸管でのコレステロール吸収を抑制し、LDLを下げる方向に働くことがあります。
年齢・閉経・甲状腺機能低下症とLDL上昇の関係
LDLコレステロールは加齢とともに上昇する傾向があり、女性では閉経後に著しく上昇することがあります。女性では閉経後にエストロゲンが低下することで、LDL受容体の働きや脂質代謝に変化が起こり、LDLコレステロールが上がりやすくなる傾向にあります。また、甲状腺機能低下症でもLDLが上昇することがあります。甲状腺ホルモンはLDL受容体の発現や胆汁酸合成に関与しており、機能が低下するとLDLが蓄積しやすくなるためです。「痩せたのにLDLが変わらない」「年齢とともにLDLが上がってきた」という場合、甲状腺機能の確認はしておいた方が良いでしょう。
家族性高コレステロール血症など遺伝的な要因が関係することもある
若い頃からLDLが高い傾向があり、親や兄弟にもLDL高値や若年での心筋梗塞の家族歴がある場合、家族性高コレステロール血症(FH)が背景にある可能性があります。FHはLDL受容体などの遺伝子変異により、肝臓でのLDL処理が低下する病態で、生活習慣の改善だけでは十分に対応しきれないことがあります。このような場合は自己判断せず、医療機関での評価を受けるようにしてください。なお、FHの確定診断・遺伝子検査・治療の詳細については、専門医との相談が必要です。
「体重は減ったのにLDLが下がらない」とき、何を考えるか
体重が減ったにもかかわらずLDLが下がらない場合、まず考えたいのは食事の「量」より「質」の問題です。揚げ物やバター、加工肉、乳脂肪の多い食品を多くとっている場合、体重が減っても飽和脂肪酸の摂取量が多ければLDLは変わりにくいことがあります。また、甲状腺機能の低下が隠れている可能性、閉経後のホルモン変化、FHなどの遺伝的背景も念頭に置く必要があります。「ダイエットを続けているのにLDLだけ変わらない」という状況が続く場合は、医療機関で一度確認することをお勧めします。スタチンが体重に与える影響については、関連記事「スタチンと体重」でも整理しています。
ダイエットで脂質の数値が改善しやすい人・しにくい人
体重管理が脂質の数値に与える影響は一様ではなく、どのタイプの脂質異常が主体かによって見通しが異なります。
改善が期待しやすいケース——肥満・内臓脂肪型・中性脂肪高値が主体の場合
内臓脂肪型肥満(ウエスト周囲径が基準以上・BMI25以上など)を背景に、中性脂肪が高くHDLが低い状態は、生活習慣の改善で変化が期待しやすいケースです。体重を適切に管理し、糖質・アルコールを見直し、有酸素運動を継続することで、中性脂肪が下がり、連動してHDLが改善する方向に向かうことがあります。このタイプの脂質異常は、メタボリックシンドロームとも重なりやすく、体重管理の効果が比較的出やすいタイプと考えられます。
改善が限られやすいケース——LDLが主体、体質・遺伝的要因が強い場合
体重が標準範囲であってもLDLだけが高い場合、食事の脂肪の質や体質・遺伝的要因が主体のケースが少なくありません。このような場合、体重を落とすことで改善が期待しにくいことがあります。また、閉経後のホルモン変化や甲状腺機能低下症が背景にある場合も、体重管理だけでは対応しにくいことがあります。FHが疑われるケースでは、生活習慣改善に加えて薬物療法が必要になることがあります。
体重が減っても数値が追いつかないとき、どう考えるか
「体重は確実に落ちているのに、脂質の数値が思うように改善しない」という状況はあります。体重が減ることは、血圧・血糖・内臓脂肪・身体への負荷を減らす意味で確かに有益であり、ダイエットの取り組み自体に価値がないわけではありません。ただし、脂質の数値については追加の介入——食事の質の見直し、医療機関での評価、必要に応じた薬物療法——が必要になる場合もあります。「頑張っているのに数値が変わらない」という場合は、一人で悩まず医療機関に相談することが選択肢の一つです。
表3:ダイエットで改善しやすいケース・しにくいケース
| タイプ | 特徴 | 改善が期待しやすい数値 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 内臓脂肪型肥満+中性脂肪高値 | 腹囲大・BMI高め・中性脂肪↑・HDL↓ | 中性脂肪・HDL | 食事内容(糖質・飲酒)の見直しも重要 |
| 体重は標準でもLDL高値 | 食事の脂肪の質・体質・年齢が関係している可能性がある | LDLは体重管理だけでは変わりにくいことがある | 食事の質や医療機関での評価が重要 |
| 閉経後・甲状腺機能低下症などが背景にある可能性 | ホルモン変化・代謝疾患が関係していることがある | LDLは生活習慣改善だけでは対応しにくい場合がある | 医師への相談・検査が必要 |
| 若い頃からLDL高値・家族歴がある | 家族性高コレステロール血症が背景にある可能性 | 生活習慣改善だけでは限界がある場合がある | 専門医での評価が必要 |
| タイプ | 特徴 | 改善が期待できる数値 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 内臓脂肪型肥満+中性脂肪高値 | 腹囲大・BMI高め・中性脂肪高値・HDL低値が重なりやすい | 中性脂肪・HDL | 食事内容、特に糖質・飲酒の見直しも重要 |
| 体重は標準でもLDL高値 | 食事の脂肪の質・体質・年齢が関係している可能性がある | LDLは体重管理だけでは変わりにくいことがある | 食事の質や医療機関での評価が重要 |
| 閉経・甲状腺機能低下症などが背景にある可能性 | ホルモン変化・代謝疾患が関係していることがある | LDLは生活習慣改善だけでは対応しにくい | 医師への相談・検査が必要 |
| 若い頃からLDL高値・家族歴がある | 家族性高コレステロール血症が背景にある可能性 | 生活習慣改善だけでは限界がある場合がある | 専門医による評価が必要 |
※上記はあくまで参考です。個々の状況によって対応は異なります。スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。
食事・運動・飲酒——脂質の数値を整えるための生活習慣の見直し方
脂質の種類によって有効な生活習慣改善の内容が異なります。「全部を一度に変えなければならない」と考える必要はなく、自分の数値に合わせた優先順位で取り組むことが現実的です。
中性脂肪に効きやすい食事の変化——糖質・アルコールの量を見直す
中性脂肪が高い方に特に関係しやすいのが、糖質とアルコールの摂取量です。白米・パン・麺類・砂糖・清涼飲料水などの精製糖質を過剰に摂ることで、肝臓での中性脂肪合成が進みやすくなります。アルコールも中性脂肪を上げる要因として知られています。ただし、糖質を極端に制限する必要はなく、「全体のエネルギーバランスと糖質の種類を見直す」という方向が現実的です。完全な糖質制限は、医師の監督なしに行うことはお勧めしません。
LDLに関係しやすい食事——肉・乳製品・揚げ物・食物繊維の見直し方
LDLを意識するうえで見直すと有効なことがあるのは、食べる「量」よりも「脂肪の種類」です。牛・豚の脂身、バター・生クリーム・チーズなどの乳製品に多く含まれる飽和脂肪酸、一部のマーガリンや加工食品に含まれるトランス脂肪酸はとりすぎに注意したいものです。一方、野菜・豆類・海藻・全粒穀物などに含まれる食物繊維はLDLを下げる方向に働くことがあります。「揚げ物を一切食べてはいけない」ということではなく、食事全体での脂肪の質と野菜・食物繊維のバランスを整えることが大切です。
有酸素運動が中性脂肪とHDLの両方に影響する理由
有酸素運動は、中性脂肪とHDLの両方に対して好ましい方向に働くことがある、生活習慣改善の中心的な取り組みの一つです。有酸素運動は中性脂肪の分解を促す酵素の活性を高め、中性脂肪を下げる方向に働くと考えられています。また継続的な有酸素運動はHDLが増える方向に働くことがあるという報告もあります。ウォーキング・水泳・自転車こぎなど、膝や腰への負担が少ない運動から、無理のない範囲で継続することが基本です。持病がある方、胸痛・息切れがある方は必ず医師に相談のうえで運動を始めてください。
飲酒量と中性脂肪の関係——適量の考え方
飲酒は中性脂肪に影響しやすい要因の一つです。アルコールは肝臓での中性脂肪合成を促し、分解を抑制することがあります。中性脂肪が高い方は、飲酒量の見直しが有効なことがあります。「お酒を一切やめなければならない」ということではありませんが、量と頻度を意識することは大切です。EPA・DHA製剤と体重・中性脂肪の関係については、関連記事「EPA・DHA製剤と体重」でも整理しています。
表4:脂質の種類別・生活習慣改善のポイント
| 取り組み | 中性脂肪への影響 | HDLへの影響 | LDLへの影響 |
|---|---|---|---|
| 体重を減らす・内臓脂肪を減らす | ◎ 改善が期待できる | ○ 改善が期待できることがある | △ 変化しないことも多い |
| 糖質・アルコールを見直す | ◎ 特に関係しやすい | ○ 間接的に関係することがある | △ 直接的な関係は限られる |
| 飽和脂肪酸・トランス脂肪酸をとりすぎない | △ | △ | ○ 関係することがある |
| 食物繊維を増やす | ○ | △ | ○ 関係することがある |
| 有酸素運動を続ける | ○ | ○ 改善が期待できる | △ |
| 禁煙する | △ | ○ 改善が期待できる | △ |
※◎:改善が期待しやすい、○:改善が期待できることがある、△:変化しにくいことが多い、という一般的な目安です。個人差があり、すべての方に同じ効果があるわけではありません。スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。
脂質異常症の薬を考える前に、生活習慣とリスク全体を確認する
脂質の数値が気になるとき、「薬を使うべきか」という疑問は自然に出てきます。薬は生活習慣改善と対立するものではなく、必要に応じて組み合わせるものです。
薬は「生活習慣改善で十分でない場合」に検討される選択肢
生活習慣改善で脂質の数値が十分に改善する場合、薬物療法は必要ないことも多くあります。一方、家族性高コレステロール血症が疑われる場合、心筋梗塞・脳卒中などの既往がある場合、複数の動脈硬化リスク因子が重なっている場合などは、生活習慣改善と並行して薬物療法が早めに検討されることがあります。「薬を使う=生活習慣改善を諦める」ということではなく、両方を組み合わせることが多くの場合の現実的なアプローチです。
スタチン・フィブラート・EPA/DHA製剤は、それぞれ目的が異なる
脂質異常症に使われる薬にはいくつかの種類があり、それぞれ主に作用する数値が異なります。スタチン系薬は主にLDLを下げる目的で広く使われます。フィブラート系薬は主に中性脂肪を下げる目的で使われることが多い薬です。EPA/DHA製剤は中性脂肪を下げる効果が知られており、使われることがあります。PCSK9阻害薬はFHなど特にLDLが高いリスクの高い場合に使われることがあります。フィブラート製剤と中性脂肪・体重の関係については関連記事「フィブラート製剤と中性脂肪と体重」でも詳しく整理しています。
薬を使うかどうかは、数値だけでなく動脈硬化リスク全体で判断される
脂質異常症の薬物療法を始めるかどうかは、脂質の数値だけで決まるものではありません。年齢・性別・喫煙歴・血圧・血糖・慢性腎臓病・家族歴・心筋梗塞や脳卒中の既往など、複数のリスク因子を合わせた「総合的な動脈硬化リスク」に基づいて判断されます。「LDLが130mg/dLだから薬が必要」「140mg/dLだから必要」というような数値だけによる判断は適切ではありません。薬の選択や開始時期は、医師が個別に判断するものです。
表5:脂質異常症の薬の大まかな役割
| 薬の種類 | 主に作用する数値 | 大まかな役割 | 関連記事 |
|---|---|---|---|
| スタチン系 | LDL低下 | LDL受容体の発現を増やし、LDLを低下させる | スタチンと体重 |
| フィブラート系 | 中性脂肪低下・HDL上昇 | 中性脂肪が主体の脂質異常で使われることが多い | フィブラート製剤と中性脂肪と体重 |
| EPA/DHA製剤 | 中性脂肪低下 | 魚油由来の成分。中性脂肪を下げる効果がある | EPA・DHA製剤と体重 |
| PCSK9阻害薬 | LDL低下 | 家族性高コレステロール血症など、高リスク例に用いられることがある | 主治医にご相談ください |
※薬の選択・適応・用量は、医師が個々の状況を総合的に判断します。自己判断で服薬・中断することは避けてください。スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。
健診結果は体重だけで判断せず、血圧・血糖・脂質をまとめて見る
健診結果は、それぞれの数値を単独で見るよりも、体重・血圧・血糖・脂質をまとめて評価することで、より意味のある情報が得られます。
LDL・HDL・中性脂肪・血糖・血圧は互いに影響し合っている
内臓脂肪が増えると、中性脂肪が上がりやすく、HDLが下がりやすく、血糖の調節が乱れやすく(インスリン抵抗性)、血圧も上がりやすくなるという連鎖が起きやすくなります。これがメタボリックシンドロームの本質であり、「一つの数値だけが悪い」ではなく「複数が関連して動く」ことが多い状態です。体重を管理することがこれらの改善につながることがある一方、LDLのように体重との関係が弱い数値は別の対応が必要なこともあります。血圧と体重の関係については、関連記事「高血圧と体重減少」でも整理しています。
「どれか一つだけ改善すればいい」ではなく、全体のバランスで考える
「中性脂肪が高いから糖質制限だけすればいい」「HDLが低いから運動だけすればいい」という一点集中型の考え方では、見落としが出やすくなります。脂質・血糖・血圧・体重は互いに影響し合っているため、食事・運動・飲酒・禁煙・体重管理を組み合わせて全体として改善していく視点が大切です。生活習慣病全体と体重の関係については、関連記事「医療ダイエットと生活習慣病」でもまとめています。
生活習慣の改善と医療的な管理を組み合わせることが大切な場合もある
生活習慣の改善は、脂質・血糖・血圧の改善においていずれも重要な土台です。同時に、動脈硬化リスクが高い場合や生活習慣改善だけでは数値が十分に改善しない場合は、薬物療法を組み合わせることが大切な場合があります。インスリンやSU薬が体重に与える影響、ピオグリタゾンと体重増加については、関連記事「インスリン・SU薬で太る理由」「ピオグリタゾンと体重増加」でも解説しています。薬を「なるべく使いたくない」という気持ちは自然ですが、必要な場合に適切に使うことが、長期的な健康のためになることがあります。
ダイエット外来で体重と生活習慣病リスクをまとめて整理することの意義
健診結果をきっかけに、体重・血圧・血糖・脂質を一緒に見直したいと思っても、どこから手をつけるべきか整理しにくいことがあります。ダイエット外来では、体重を減らすことだけでなく、脂質・血糖・血圧などの生活習慣病リスク全体を視野に入れながら、個別の状況に合わせた方針を一緒に考えることができます。自己流のダイエットだけでは整理しにくい場合に、医療機関で一度確認してみることも選択肢の一つです。ダイエット外来と生活習慣病の関係については、関連記事「ダイエット外来と生活習慣病」でも整理しています。
脂質の数値は体重だけで決まるものではありません。健診結果に不安を感じたときは、一人で抱え込まず、血圧・血糖・脂質・体重をまとめて相談できる医療機関に確認することが、安心への一歩になることがあります。
本記事は一般向けの情報提供を目的としており、診断・治療を行うものではありません。健診結果や症状が気になる場合は、医師または医療機関にご相談ください。
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よくある質問(FAQ)


