- ロトリガ・エパデールは、体重を直接減らす「痩せ薬」ではありません
- 主な目的は、血液中の中性脂肪を減らすことです
- 中性脂肪が下がることと、体重・体脂肪が減ることは別の話です
- 「血液サラサラ」「HDLを補う」という表現は医学的に正確ではなく、注意が必要です
- 市販サプリと処方薬は目的・成分量・管理体制が異なり、自己判断での切り替えはお勧めしません
- 気になる場合は、血液検査を含めて専門家と一緒に確認することが大切です
「ロトリガやエパデールを飲めば痩せるのでしょうか?」
ダイエット中に中性脂肪のことが気になり始めた方や、健診でこれらの薬を勧められた方から、そのような疑問をお聞きすることがあります。
結論から申し上げると、ロトリガ・エパデールはどちらも体重を直接減らすための薬ではありません。ただし、「だから関係ない」という訳でもありません。ダイエット中の方が中性脂肪の高さを同時に抱えていることは珍しくなく、体重管理と血液データを合わせて考えることが大切な場面もあります。
この記事では、EPA・DHA製剤について「痩せ薬かどうか」という疑問に正直に答えながら、中性脂肪・血液サラサラ・HDL・サプリとの違いについて、一つずつ丁寧に整理します。
ロトリガ・エパデールで痩せる?まず結論からお伝えします
「体重を直接減らす」薬ではありません
ロトリガもエパデールも、日本で承認されている処方薬です。しかしどちらも、体重や体脂肪を減らすことを目的として承認されているわけではありません。
これらはオメガ3系の脂肪酸を主成分とした「脂質異常症治療薬」に分類されます。主な目的は、血液中の中性脂肪(トリグリセリド)値を下げることです。
「飲み始めてから体重が減った」という話を聞くことがあるかもしれません。しかし、それは食事の改善や生活習慣の変化など、他の要因によるものと考えるのが自然です。EPA・DHA製剤自体に、体脂肪を燃焼させる作用があるわけではありません。
ダイエット薬全体の考え方については、別記事でも整理していますので、あわせてご覧ください。
では、なぜダイエット外来で話題になるのか
肥満や体重超過の状態にある方は、中性脂肪が高くなりやすい傾向があります。体重増加、内臓脂肪、食事内容、飲酒量、血糖値などが重なって、中性脂肪が高くなることがあります。もちろん生まれつきの体質も影響するので、かなりの個人差があります。
ダイエット外来では、体重の数字だけでなく、血液検査のデータも含めて体の状態を確認します。そのため、ロトリガやエパデールのようなEPA・DHA製剤が話題になることがあります。
生活習慣病の薬と体重の関係については、別記事でまとめています。ダイエットと血液データの関係が気になる方は、そちらもご参照ください。
そもそもEPA・DHA製剤とは何をする薬なのか
主な目的は「中性脂肪を減らすこと」
EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、どちらもオメガ3脂肪酸の一種です。青魚に多く含まれており、健康への効果を示す研究が多く報告されています。
処方薬として使われる場合、主な目的は高トリグリセリド血症(血液中の中性脂肪が高い状態)の改善です。肝臓での中性脂肪の合成を抑えたり、血液中への放出を減らしたりすることで、中性脂肪値を下げる効果があるとされています。
血管への影響についても研究が進んでいますが、動脈硬化や心筋梗塞を予防できると断言できるものではなく、医師の判断のもとで使われる薬です。
ロトリガとエパデール、何が違うのか
どちらもオメガ3脂肪酸を含む薬ですが、成分と特徴に違いがあります。代表的な点を以下の表で整理します。
| 項目 | ロトリガ | エパデール |
|---|---|---|
| 主な成分 | EPA+DHA(オメガ3脂肪酸エチル) | EPA(イコサペント酸エチル)のみ |
| DHAの有無 | 含む | 含まない |
| 主な適応 | 高脂血症(中性脂肪が高い状態) | 高脂血症、閉塞性動脈硬化症に伴う症状など |
| 服用の目安 | 1日1回(食直後) | 1日2回または1日3回(食直後) |
| 注意点 | 出血傾向に注意、LDL値の上昇があるか要確認 | 出血傾向に注意、他の薬との相互作用に注意 |
※スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧いただけます。
※用法・用量は個人の状態や医師の判断によって異なります。最新の添付文書や処方時の指示に従ってください。
「どちらの薬が優れている」ということではなく、患者さんの検査値の状態、他に服用している薬、体質などを踏まえて医師が判断します。
「中性脂肪が下がる」と「体重が減る」は別の話
中性脂肪が高いと、なぜ問題なのか
中性脂肪(トリグリセリド)は、血液中に含まれる脂質の一種です。食事から摂ったエネルギーが使われずに余ると、中性脂肪として血液中に増えます。
中性脂肪は、空腹時で150mg/dL以上、随時採血では175mg/dL以上が脂質異常症の目安とされています。ただし、検査条件や他のリスクによって判断は変わるため、数値だけで自己判断しないことが大切です。中性脂肪が高い状態が続くと、脂質代謝の乱れが生じ、他の脂質異常や血管への影響が懸念されることがあります。
ただし、「中性脂肪=体脂肪」ではありません。血液検査で測る中性脂肪の値と、体脂肪計や体組成計で測る体脂肪は、別のものを指しています。
中性脂肪と体重減少の関係については、別記事でも詳しく整理しています。LDL・HDL・中性脂肪と体重の関係についても、あわせてご参照ください。
体重・体脂肪を減らすには別のアプローチが必要
EPA・DHA製剤で中性脂肪値が改善されても、それによって体重や体脂肪が自動的に減るわけではありません。
体重・体脂肪を減らすためには、食事内容の見直し、身体活動の増加、睡眠や生活習慣の改善など、エネルギー収支を整えるアプローチが必要です。必要に応じて、肥満症治療薬などを医師の判断のもとで使うことも選択肢のひとつです。
ダイエット薬全体の考え方については、別記事で整理しています。EPA・DHA製剤は、体重を直接コントロールする薬ではなく、血液データを改善するための薬として位置づけてください。
「血液サラサラ」という言葉の正しい意味
サラサラは「血液が薄い」ことではありません
EPA・DHAというと、「血液サラサラ」というイメージを持っている方も多いと思います。テレビや健康番組でよく使われる表現ですが、「血液サラサラ」は医学用語ではありません。
「サラサラ」というと、水のように薄くなった血液が流れやすくなるイメージがあるかもしれません。しかし、血液の流れやすさは、粘度・血小板の働き・血管の状態など複数の要素が関わっており、「血液が薄くなる」「血液がきれいになる」とは異なります。
血管や血小板に関わる作用はありますが、万能ではありません
EPA・DHA製剤には、血小板の凝集(かたまりやすさ)を抑える作用があることが知られています。これが「血液サラサラ」と表現される背景にあると考えられます。
ただし、この作用があるがゆえに注意も必要です。抗凝固薬(血液が固まりにくくする薬)や抗血小板薬(血小板の働きを抑える薬)と同時に服用している場合、出血しやすくなるリスクが高まることがあります。
「血液サラサラだから安全」「飲めば飲むほどよい」ということはなく、処方された量・方法を守ることが大前提です。また、EPA・DHA製剤が心筋梗塞や脳梗塞を確実に予防できるという断言はできません。血管リスクを考えるうえで重要な薬ではありますが、万能薬ではないことをご理解ください。
血液サラサラ系の薬への注意については、ダイエット外来での安全管理についての記事でも触れています。
「善玉コレステロール(HDL)を補う薬」というイメージは正確ではありません
健康に関する情報で「善玉コレステロール(HDL)を増やすとよい」という表現を見ることがあります。EPA・DHAがHDLを「補う」「増やす」ものだと思っている方もいるかもしれません。
しかし、これは正確ではありません。
HDLは、血液検査で測定する脂質代謝の指標のひとつです。ビタミンやミネラルのように、外から摂取して補充できるものではありません。EPA・DHA製剤はHDLを外から補う薬ではなく、中性脂肪の改善を通じて脂質代謝全体に関わるものです。
HDL値を改善するために効果があるとされているのは、禁煙・有酸素運動・適切な体重管理・食事の見直しなどの生活習慣改善です。「善玉コレステロールを補えば安心」という考え方は、状況を正確に反映していません。
LDL・HDL・中性脂肪と体重の関係については、別記事でより詳しく解説しています。
サプリのEPA・DHAと処方薬は同じではありません
目的・成分量・医師の管理が異なります
「サプリでEPA・DHAを摂ればよいのでは?」というご質問もよくいただきます。どちらもEPA・DHAを含む点は同じですが、目的・成分量・管理体制に大きな違いがあります。
| 項目 | 市販サプリ | 処方薬(ロトリガ・エパデール等) |
|---|---|---|
| 分類 | 食品(機能性表示食品を含む) | 医薬品 |
| 目的 | 健康維持・栄養補給など | 脂質異常症(高中性脂肪血症など)の治療 |
| 成分量 | 製品によってばらつきがある | 規格が定められており、一定量が保証される |
| 品質管理 | 製品によって異なる | 医薬品としての基準を満たす |
| 医師の確認 | 基本的にない | 血液検査を通じて効果・副作用を確認する |
| 注意点 | 大量摂取しても処方薬と同じ効果が得られるとは限らない | 用法・用量を守り、他の薬との相互作用に注意する |
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サプリが「悪いもの」というわけではありません。ただし、高中性脂肪血症の治療を目的として処方薬を服用している場合、サプリで代替できるかどうかは別の話です。
自己判断でサプリに切り替えることのリスク
処方された薬を自己判断で中止し、市販サプリへ切り替えることはお勧めしません。
薬を中止することで、血液中の中性脂肪が再び上昇することがあります。また、サプリを大量に摂取したとしても、処方薬と同等の成分量・品質管理が保証されているわけではありません。
服用している薬を変えたい場合や、サプリとの併用を考える場合は、必ず処方してもらった医師に相談してください。
体重だけでなく、血液検査や生活習慣病リスクも含めて考えましょう
ダイエットというと、体重計の数字だけに注目してしまいがちです。しかし、体の状態はその数字だけで表せるものではありません。
たとえば、体重が少し落ちても、中性脂肪・血糖値・肝機能・血圧などが改善されていないケースがあります。逆に、体重の変化が小さくても、血液データが着実に改善されているケースもあります。
体重とあわせて血液検査を定期的に確認することで、「どの部分がよくなっているのか」「何がまだ課題として残っているのか」が見えやすくなります。
特に、中性脂肪・血糖・血圧・内臓脂肪が重なる状態は、生活習慣病のリスクが段階的に積み重なる「メタボリックドミノの考え方」からも注意が必要です。体重だけに集中するのではなく、複数の指標を合わせて確認する視点が大切です。
フィブラートと中性脂肪の関係やスタチンと体重の関係など、脂質異常症に使われる薬は複数ありますが、それぞれ別記事で解説しています。
中性脂肪や体重が気になる方へ——ダイエット外来で確認できること
「自分の中性脂肪や体重は、どの程度問題なのだろう?」と思いながら、自己判断でサプリを試したり、情報を探し続けたりしている方もいると思います。
ダイエット外来では、体重の数字だけでなく、血液検査(中性脂肪・血糖値・肝機能・尿酸など)の結果も含めて、体の状態を確認することができます。
「薬を勧められるのでは」と心配される方もいるかもしれませんが、まず「今の状態で何が問題なのか」「生活習慣のどこを整えれば改善できるのか」を一緒に確認する場として活用していただくことができます。
当院のダイエット外来でも、体重だけでなく、中性脂肪・血糖・肝機能・尿酸などを確認しながら、無理のない方法を一緒に考えています。
自己判断で薬やサプリを選ぶ前に、一度血液検査を含めて現状を把握することが、安心できる出発点になります。
【参考文献】
- ロトリガ粒状カプセル2g 添付文書(マイランEPD合同会社)
- エパデールS600・S900 添付文書(持田製薬株式会社)
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版」
- 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
- 日本内科学会「高トリグリセライド血症の診断と治療」
- Bhatt DL, et al. Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia. N Engl J Med. 2019;380(1):11-22.
- Yokoyama M, et al. Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS). Lancet. 2007;369(9567):1090-1098.
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」
- 農林水産省「食事バランスガイドにおける脂質・脂肪酸の考え方」
- 消費者庁「機能性表示食品制度について」
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)ロトリガ審査報告書
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)エパデール審査報告書
よくある質問(FAQ)


