75歳で医療費割合が変わる?後期高齢者医療制度の訪問診療負担と判定基準

75歳の誕生日を迎えると、医療保険は自動的に後期高齢者医療制度へ切り替わり、窓口で支払う医療費の割合が変わります。訪問診療を利用している方やご家族にとって、毎月の自己負担がいくらになるのかは切実な問題です。
負担割合は所得に応じて1割・2割・3割の3段階で判定され、2025年9月には2割負担者への配慮措置も終了しました。
本記事では、判定基準の具体的な仕組みから訪問診療にかかる費用の目安、高額療養費制度の活用法まで丁寧に解説します。
75歳を迎えたら保険が自動で切り替わる|後期高齢者医療制度の仕組み
75歳になると、それまで加入していた国民健康保険や会社の健康保険から離れ、全員が後期高齢者医療制度へ移行します。手続きは原則不要で、誕生日の前月までに新しい被保険者証が届く流れです。
75歳の誕生日を境に自動的に切り替わる保険制度
後期高齢者医療制度は、75歳以上のすべての方が加入する公的医療保険です。勤務先の健保組合に入っていた方も、国民健康保険に加入していた方も、75歳の誕生日当日から自動的にこの制度の被保険者になります。
扶養家族として配偶者の健康保険に入っていた方も同様です。75歳を迎えた時点で扶養から外れ、個人単位でこの制度に加入します。保険証は市区町村から郵送されるため、届いたらすぐに内容を確認しましょう。
国保や健保と後期高齢者医療制度はどこが違うのか
もっとも大きな違いは、運営主体と財源構成にあります。国保は市区町村、健保は企業が運営しますが、後期高齢者医療制度は都道府県ごとの「広域連合」が運営しています。
財源の内訳も独特で、約5割を国・都道府県・市区町村の公費が負担し、約4割を現役世代からの支援金でまかないます。残りの約1割が被保険者本人の保険料です。高齢者が安心して医療を受けられるよう、社会全体で支える構造になっています。
後期高齢者医療制度と他の公的医療保険の比較
| 項目 | 国民健康保険 | 後期高齢者医療制度 |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 75歳未満 | 原則75歳以上 |
| 運営主体 | 市区町村 | 広域連合 |
| 窓口負担 | 原則3割 | 1割・2割・3割 |
| 財源構成 | 保険料+公費 | 公費5割+支援金4割+保険料1割 |
65歳から74歳でも加入できるケースがある
原則75歳以上が対象の制度ですが、65歳から74歳の方でも一定の障害がある場合は加入が認められます。障害年金1級・2級の受給者や、身体障害者手帳1級から3級をお持ちの方などが該当します。
加入を希望する場合はお住まいの市区町村窓口で申請が必要です。認定を受ければ、75歳未満であっても後期高齢者医療制度の被保険者となり、負担割合の判定も同じ基準で行われます。
医療費の負担割合は所得で決まる|1割・2割・3割の判定基準
後期高齢者医療制度の窓口負担は、所得に応じて1割・2割・3割の3段階に分かれます。2022年10月の制度改正で、それまで1割だった一定所得層に2割負担が新設されました。
所得に応じて負担割合が変わる基本ルール
窓口負担の基本は1割です。住民税の課税所得が28万円未満の方や、非課税世帯の方は1割負担のまま変わりません。
課税所得が28万円以上で、かつ年収が単身世帯200万円以上(複数世帯で合計320万円以上)の方は2割負担となります。さらに課税所得が145万円以上の方は「現役並み所得者」として3割を負担します。
2割負担の対象者はどう判定されるか
2割負担の判定は、世帯単位で行われる点に注意が必要です。世帯内の後期高齢者全員の課税所得と年金収入を合算した結果で、1割か2割かが決まります。
たとえば夫婦二人とも75歳以上の世帯では、二人の年金収入やその他の所得を合計して判断されます。配偶者が亡くなって単身世帯になると、判定基準が変わり負担割合が下がるケースもあるでしょう。
現役並み所得者と判定されると3割負担になる
住民税の課税所得が145万円以上の方は「現役並み所得者」に該当し、現役世代と同じ3割負担になります。
ただし、収入の合計が単身世帯で約383万円未満、二人以上世帯で約520万円未満であれば、申請により1割または2割に変更できる場合があります。
この「基準収入額適用申請」は自動的には適用されないため、該当する可能性がある方は広域連合や市区町村の窓口に相談することが大切です。
後期高齢者医療制度の負担割合と判定基準
| 負担割合 | 課税所得 | 年収の目安 |
|---|---|---|
| 1割 | 28万円未満 | 単身:200万円未満 |
| 2割 | 28万円以上145万円未満 | 単身:200万円以上 |
| 3割 | 145万円以上 | 単身:383万円以上 |
訪問診療を受けたときの月額費用と自己負担の目安
訪問診療の費用は、「在宅患者訪問診療料」と「在宅時医学総合管理料」を中心に算定されます。負担割合によって毎月の支払額は大きく異なるため、事前に目安を把握しておくと安心です。
在宅患者訪問診療料と在宅時医学総合管理料の内訳
訪問診療では、医師が月2回定期的に自宅を訪問する「在宅患者訪問診療料」が基本になります。これに加えて、24時間対応の体制を含む「在宅時医学総合管理料(在医総管)」が毎月算定されます。
在医総管は、患者さんの状態や訪問先が自宅か施設かによって点数が異なります。在宅療養支援診療所の届出をしている医療機関では、緊急時の往診体制を含めた管理料が加算されるため、やや高めに設定されています。
1割負担の方と2割・3割負担の方で月額費用はこれだけ変わる
月2回の定期訪問を前提とした場合、1割負担の方の月額自己負担は約6,000円から7,000円が目安です。重症度の高い患者さんや、在宅酸素療法を行っている方はさらに加算があります。
2割負担の方は約12,000円から14,000円、3割負担の方は約19,000円から21,000円が月額の目安となります。検査や処置が追加された月は、これに上乗せされるかたちです。
訪問診療の月額自己負担額の目安(月2回訪問の場合)
- 1割負担の場合:約6,000円〜7,000円/月
- 2割負担の場合:約12,000円〜14,000円/月
- 3割負担の場合:約19,000円〜21,000円/月
- 検査・処置を行った月は追加費用が発生する
- 院外処方の薬代は別途薬局で支払いが必要
検査や処置が加わると追加費用が発生する
訪問診療では、血液検査や心電図検査、点滴や注射などを自宅で受けることもあります。これらは追加の診療報酬として算定され、その月の自己負担額が通常より高くなるでしょう。
薬の処方は院外処方箋が一般的で、調剤薬局での薬代は訪問診療の費用とは別に発生します。ただし、高額療養費制度を利用すれば、医療機関と薬局の支払いを合算して上限を超えた分が戻ってきます。
2025年9月に終了した2割負担の配慮措置|その後どう変わったか
2022年10月の2割負担導入にあわせて設けられた配慮措置は、2025年9月30日をもって終了しました。この措置がなくなったことで、2割負担の方の外来医療費は従来より増えるケースが出ています。
外来の負担増を月3,000円に抑えていた経過措置
配慮措置とは、2割負担に変更された方の外来医療費について、負担増加額を1か月あたり3,000円までに抑える仕組みでした。上限を超えた分は高額療養費として自動的に払い戻されていたのです。
この措置は法改正時に「施行後3年間の時限措置」として設けられたもので、当初から2025年9月で終了する予定でした。訪問診療も外来扱いのため、在宅患者にも適用されていた制度です。
配慮措置の終了後に窓口負担はどう変わったか
2025年10月以降、2割負担の方は配慮措置なしの本来の2割をそのまま支払うことになりました。ただし、高額療養費制度の外来上限額(一般区分で月18,000円、年間144,000円)は引き続き適用されます。
そのため、毎月の外来費用が18,000円を超えることはありません。訪問診療の費用が月12,000円から14,000円程度であれば、上限の範囲内に収まるケースが多いでしょう。
訪問診療の患者さんが受ける影響と今からできる対策
配慮措置が終了しても、訪問診療だけで月18,000円の上限を超える方は限られています。ただし、複数の医療機関を受診している方や、検査が重なった月は注意が必要です。
高額療養費の払い戻し口座を事前に登録しておくと、上限を超えた分が自動的に振り込まれます。初回のみ申請が必要なので、まだの方は早めに手続きを済ませておくと安心でしょう。
配慮措置の終了前後の変化
| 時期 | 2割負担の外来上限 | 備考 |
|---|---|---|
| 2025年9月まで | 負担増は月3,000円まで | 配慮措置あり |
| 2025年10月以降 | 月18,000円(年144,000円) | 高額療養費の通常ルール |
高額療養費制度で訪問診療の自己負担にも上限がつく
後期高齢者医療制度には高額療養費制度があり、月ごとの自己負担額に上限が設けられています。訪問診療の費用も対象となるため、医療費が膨らんでも家計への影響を一定範囲に抑えられます。
後期高齢者の高額療養費制度と自己負担限度額
高額療養費制度では、月ごとに支払った医療費の自己負担が上限額を超えた場合、超過分が後日払い戻されます。上限額は所得区分ごとに異なり、一般的な所得の方(1割・2割負担)は外来が個人単位で月18,000円です。
入院を含む世帯合算の上限額は、2025年8月から2026年7月までの期間で月60,600円に設定されています。住民税非課税世帯であれば、さらに低い上限額が適用されるため負担は軽くなるでしょう。
限度額適用認定証やマイナ保険証で窓口払いを軽減できる
高額療養費は原則として事後払い戻しですが、事前に手続きをしておけば窓口での支払い自体を上限額までに抑えられます。住民税非課税世帯の方は「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付を受けましょう。
マイナ保険証を利用している方は、医療機関の窓口で「限度額情報の表示」に同意するだけで、認定証がなくても自動的に上限額が適用されます。窓口での立替払いを避けられるので便利です。
後期高齢者の高額療養費自己負担限度額(月額)
| 所得区分 | 外来(個人) | 外来+入院(世帯) |
|---|---|---|
| 現役並み所得III | 252,600円+α | 252,600円+α |
| 現役並み所得II | 167,400円+α | 167,400円+α |
| 現役並み所得I | 80,100円+α | 80,100円+α |
| 一般(1割・2割) | 18,000円 | 57,600円〜60,600円 |
| 住民税非課税II | 8,000円 | 24,600円 |
| 住民税非課税I | 8,000円 | 15,000円 |
訪問診療と外来・入院を合算して上限が適用される
高額療養費の計算では、同一月内のすべての医療費を合算できます。訪問診療の費用に加えて、歯科受診や薬局での薬代、入院費なども合わせて上限を超えた分が戻ってきます。
70歳以上の方は、金額にかかわらず同月のすべての自己負担を合算できるため、少額の通院費用も計算に含められます。
さらに「多数回該当」の仕組みがあり、過去12か月に3回以上上限に達すると、4回目からは上限額が下がる優遇措置も用意されています。
負担割合が変わるタイミングと家計を守るための備え
後期高齢者の負担割合は毎年8月に見直されます。前年の所得に基づいて再判定が行われるため、年金収入や不動産所得に変動があった年は翌年度の負担割合にも影響が出ます。
毎年の所得判定で負担割合は変動する
負担割合の判定は毎年8月1日に更新されます。前年1月から12月の所得をもとに計算されるため、退職や不動産の売却など大きな収入変動があった翌年は注意が必要です。
たとえば、前年に不動産を売却して一時的に所得が上がると、翌年度だけ3割負担に変わるケースがあります。一時的な収入増の場合は、翌々年度に元の負担割合に戻る可能性が高いです。
世帯構成や年金収入の変化が判定に影響する
配偶者が亡くなり単身世帯になった場合、判定基準の年収ラインが変わります。複数世帯の基準で2割だった方が、単身世帯では1割になるケースもあるため、世帯構成の変化があったら確認しましょう。
また、2026年度からは後期高齢者医療制度の保険料上限額が年間85万円に引き上げられる方針です。高所得の方は保険料自体の負担も増える見込みのため、総合的な家計管理が求められます。
負担割合に疑問を感じたら広域連合に確認する
「自分の負担割合が正しいのか分からない」「昨年より上がった理由が知りたい」という場合は、お住まいの市区町村の後期高齢者医療担当窓口に問い合わせるのが確実です。
収入要件を満たしているのに3割のまま据え置かれている場合、基準収入額適用申請をすれば負担割合を下げられる可能性もあります。
ご家族が代理で相談に行くこともできるため、訪問診療を受けている方は遠慮なく制度を活用しましょう。
- 毎年8月に負担割合が見直される(前年所得で判定)
- 世帯構成が変わったら判定基準も変動する
- 基準収入額適用申請で負担割合を下げられる場合がある
- 不明点は市区町村の窓口や広域連合に相談する
在宅医療と後期高齢者医療を上手に組み合わせて安心を手に入れる
訪問診療を継続しながら医療費の負担を適正に保つには、制度の仕組みを正しく理解し、利用できる軽減策を漏れなく活用することが大切です。
在宅医療で活用できる費用軽減制度を整理する
後期高齢者が在宅医療を利用する場合に活用できる制度は複数あります。高額療養費制度のほかに、医療費控除(確定申告による還付)や、高額医療・高額介護合算療養費制度が代表的です。
高額医療・高額介護合算療養費制度は、医療保険と介護保険の年間自己負担額を合算し、一定の上限を超えた分を払い戻す仕組みです。訪問診療と介護サービスを併用している方は年間の合算額を確認してみましょう。
在宅医療に関連する主な費用軽減制度
| 制度名 | 対象 | 申請先 |
|---|---|---|
| 高額療養費制度 | 月の自己負担が上限超 | 広域連合・市区町村 |
| 高額医療・高額介護合算 | 年間の医療+介護費合算 | 広域連合・市区町村 |
| 医療費控除 | 年間医療費が一定額超 | 税務署(確定申告) |
家族が準備しておくべき書類と相談先
在宅で訪問診療を受ける場合、保険証(またはマイナ保険証)や限度額適用認定証はすぐ取り出せる場所に保管しておきましょう。緊急の往診時にも必要になるためです。
相談先としては、まず担当のケアマネジャーが頼りになります。医療費だけでなく介護サービスの調整も一括で行えるため、経済的な不安がある場合は早めに伝えておくと対応がスムーズです。
市区町村の地域包括支援センターも無料で相談を受け付けています。
ケアマネジャーとの連携で医療費負担を見通す
ケアマネジャーは介護保険だけでなく、医療費に関する制度にも精通しているケースが多いです。訪問診療の主治医やケアマネジャーと定期的に情報を共有すれば、月ごとの医療費の見通しが立てやすくなります。
とくに、年度の変わり目で負担割合が変更された場合や、新たに検査・処置が必要になった場合は、費用への影響について早めに確認しておくと不安を減らせるでしょう。
家族だけで抱え込まず、専門職の力を借りることが在宅医療を長く続ける秘訣です。

よくある質問
- 後期高齢者医療制度の負担割合はいつ・どのように決まるのか?
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後期高齢者医療制度の負担割合は、毎年8月1日に見直しが行われます。判定の基準となるのは前年(1月〜12月)の所得で、世帯内の後期高齢者全員の課税所得と年金収入をもとに広域連合が判定します。
判定結果は7月中に新しい被保険者証とともに郵送されるのが一般的です。届いたら負担割合の欄を必ず確認し、前年と変わっていないかチェックしてください。
- 後期高齢者医療制度で訪問診療を受けた場合の月額自己負担はいくらか?
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月2回の定期訪問を基本とした場合、1割負担の方で約6,000円〜7,000円、2割負担の方で約12,000円〜14,000円、3割負担の方で約19,000円〜21,000円が月額の目安です。
ただし、血液検査や点滴などの処置を行った月は追加で費用が発生します。また、薬の処方がある場合は調剤薬局での薬代も別途かかります。正確な金額は、担当の医療機関に事前に確認すると安心です。
- 後期高齢者医療制度の2割負担に対する配慮措置はまだ使えるのか?
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2022年10月の2割負担導入時に設けられた配慮措置は、2025年9月30日をもって終了しています。この措置は外来医療費の負担増加額を月3,000円に抑えるものでしたが、施行後3年間の時限的な制度でした。
終了後も高額療養費制度の上限(一般区分の外来は月18,000円)は引き続き適用されます。不明な点があれば厚生労働省のコールセンター(0120-117-571)に問い合わせることも可能です。
- 後期高齢者医療制度の高額療養費は訪問診療にも適用されるのか?
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高額療養費制度は訪問診療にも適用されます。訪問診療は医療保険の「外来」として扱われるため、同一月内に支払った自己負担額が上限を超えれば、超過分が後日払い戻されます。
さらに、訪問診療だけでなく、同月に通院した歯科の費用や調剤薬局の薬代も合算の対象です。初回のみ申請が必要ですので、まだ手続きをしていない方はお住まいの市区町村窓口に相談してください。
- 後期高齢者医療制度の負担割合を3割から下げる方法はあるのか?
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課税所得が145万円以上でも、収入の合計が単身世帯で約383万円未満、複数世帯で約520万円未満であれば「基準収入額適用申請」により負担割合を下げられる場合があります。
この申請は自分から行わない限り適用されません。対象となる可能性がある方は、市区町村の後期高齢者医療担当窓口に必要書類を確認のうえ申請してください。ご家族が代理で申請することもできます。
