在宅看取り後のエンゼルケアの流れ|訪問看護師が行う手順と家族の役割

在宅で看取ったあとのエンゼルケアは、医師による死亡確認を終え、訪問看護師が体の状態と家族の希望を確かめてから進めます。家族が先に取りかかるのは、着せたい服やタオルをそろえ、看護師に希望を伝える準備です。点滴や酸素の機器が残っていても、電源や接続は自分で変更せず、看護師に任せてください。
何から手をつければよいか分からず、身の回りの準備まで気が回らないときもあるでしょう。必要な物をすべてそろえて待とうとせず、今ある物を看護師に伝えれば、足りない分の対応を一緒に決められます。
この記事では、在宅看取り後のエンゼルケアの手順、家族が用意する物、ベッドや医療機器の扱い、葬儀社への引き継ぎを解説します。
訪問看護師が来るまでに確かめる連絡先と予定
自宅で看取りを予定しているなら、訪問看護へ連絡するタイミングと、夜間に看護師が来るまでの待ち方を前もって相談しておけます。連絡先と訪問の段取りを記したメモは、亡くなった直後に予定を決め直す負担を減らすための備えです。
利用中の訪問看護に夜間の連絡方法を尋ねる
訪問看護を利用している家族は、看取りが近づいた段階で、亡くなったあとの処置を依頼できるか担当看護師に尋ねます。訪問看護は、看護師が自宅を訪ねて療養を支えるサービスで、夜間の連絡方法や訪問の予定は利用先との取り決めによります。
確認したいのは、連絡する時刻の目安、夜間につながる電話番号、看護師が到着するまでの過ごし方です。普段の事業所の番号と夜間の番号が分かれているなら、家族の誰が電話しても迷わないよう、連絡用の紙に両方を記しておきましょう。
在宅サービスを使っていないときの相談の始め方
これから自宅での看取りに備える場合は、現在診療を受けている医師に、訪問診療と訪問看護につないでほしいと伝えるところから始めます。訪問診療は、医師が自宅を定期的に訪ねて診療する仕組みです。
入院中なら、退院後の療養を調整する病院の退院支援窓口も相談先になります。自宅で過ごしたい希望に加え、看取り後の処置を頼める看護師がいるかまで尋ねると、退院前に必要な連絡先を整理できます。
日々の介護を手伝う介護サービスを使っていても、亡くなったあとの医療的な処置を誰が担うかは確認が必要です。
到着が遅れる夜は電話で待ち方を確認する
予定された在宅看取りでは事前に決めた医師・訪問看護への連絡方法に従って死亡確認後に処置を依頼し、予期しない呼吸停止では119番へ連絡し、事件や事故の疑いで警察が関わる場合はエンゼルケアより警察の検視が先になります。
死亡確認後、夜間で訪問まで時間が空くときは、到着の見込みと待っている間の対応を訪問看護師に電話で尋ねます。検視は、警察が遺体や周囲の状況を調べる手続きで、必要とされたときは体や周囲を動かさず指示を受ける段階です。
通常の待ち時間は、看護師から伝えられた室内の環境を保ち、服やタオルを取り出して過ごせます。家族だけで処置を始める必要はなく、訪問の予定が変わったときに連絡を受けられるよう電話を手元に置いておけば十分です。
エンゼルケアに使う物は自宅の物からそろえる
準備の中心は、着替えと清潔なタオル、体を拭くための洗面器です。訪問看護師が持参する物を先に聞けば、家族がそろえる範囲が分かり、直前の買い物も減らせます。
着替えと清拭の道具をひとまとめにする
家族が用意する候補をまとめておくと、到着した看護師に物の場所を何度も説明せずに済みます。清拭とは、湯で湿らせたタオルで皮膚の汚れを拭き取るケアです。
| 用意する物 | 用途 | 先に確かめる点 |
|---|---|---|
| 着替え・下着 | 体を整えたあとの衣服 | 着せたい服と予備の有無 |
| バスタオル・タオル | 体を覆う、拭く、水分を取る | 必要な枚数と看護師の持参分 |
| 洗面器・お湯 | 清拭の準備 | お湯を用意するタイミング |
| 紙おむつ | 排泄物や体液への対応 | 自宅にある物の種類と大きさ |
| ふだん使っていた化粧品 | 希望に沿った顔の仕上げ | 使いたい物と使わない物 |
不足している物があっても、家族が自宅を離れて買いに行く前に、訪問看護師へ代用できる物を尋ねましょう。
着せたい服は本人の好みを優先して選ぶ
着替えは、本人が大切にしていた服や普段好んでいた服を候補にできます。前が開く衣服は着替えを進めやすい形ですが、かぶって着る服しかないときも、まず実物を看護師に見せて相談する方法があります。
体の動かしやすさや管の状態によっては、そのまま袖を通しにくい服もあるため、予備があれば近くに置いておくと選び直せます。大切な服を切ったり加工したりしてよいかは、看護師が扱う前に家族の希望を共有する項目です。
服がまだ決まっていないなら、候補を無理に1着へ絞らず、着替えに移る前に選べるよう並べておけます。
お湯と作業場所は到着に合わせて整える
お湯は早く用意しすぎると冷めるため、準備する時刻を看護師に尋ねてから用意します。温度の調整は看護師に任せ、家族が体に直接かけたり、湯を入れた容器をベッドの上へ置いたりするのは避けてください。
看護師が物を置ける小さな台や、ベッドの脇に立てる空間があると、家の中で処置を進めやすくなります。先に空けたいのは、玄関から寝室までの通り道。重い家具を家族だけで動かす必要はなく、移動が難しい場所を到着前に伝えておけば配置を相談できます。
到着した看護師に希望と家の状況を伝える
訪問看護師が到着したら、処置を始める前に、着せたい服や仕上がりの希望、自宅で使っている機器を伝えます。希望の聞き取りと体の状態の確認を済ませてから、看護師が実際の順番を説明します。
服と顔の仕上がりは実物を見せて伝える
希望は、用意した服や化粧品を見せながら伝えると具体的になります。普段の様子が分かる写真は、言葉で説明しにくい髪形や化粧の好みを看護師と共有する手がかりです。
| 伝える内容 | 手元に置く物・情報 | 伝えるタイミング |
|---|---|---|
| 着せたい服 | 候補の衣服と下着 | 処置を始める前 |
| 顔や髪の仕上がり | ふだんの化粧品や写真 | 最初の聞き取り |
| 避けてほしい扱い | 本人が残した希望 | 体に触れる前 |
| 葬儀社の到着予定 | 連絡済みの時刻や担当者名 | 予定が分かった時点 |
複数の家族で希望が違うときは、本人が生前に話していた内容を先に看護師へ伝えると、選ぶ基準を共有しやすくなります。
体の状態と家族が把握している変化を共有する
看護師は、皮膚や口元の状態、付いている管、体液が漏れている場所を確かめてから処置を組み立てます。訪問の間に寝具が湿った、貼ってある物がずれたといった変化は、家族が気づいた範囲で伝えれば十分です。
傷のある場所や、触れると皮膚がはがれやすかった場所が分かれば、その情報も役立ちます。家族が覆いを外して詳しく調べる必要はなく、見えている変化と、療養中に注意していた部位を言葉で知らせる形で構いません。
順番と終了の見込みを聞いてから始める
処置の順番は体の状態に合わせて調整されるため、開始前に、どこから手をつけるかと終了の見込みを看護師に尋ねます。管の取り外しや漏れへの対応が必要なとき、着替えに工夫が要るときは、その分の時間を見込む必要があります。
そのため、葬儀社の到着時刻が決まっていても、その時刻から逆算して家族が処置を急がせるより、看護師に予定を伝えて調整を頼むほうが進めやすくなります。
家族は看護師と一緒に体を拭いたり着替えを手伝ったりする形も、別の部屋で待つ形も選べるので、始める前に希望をひと言伝えられます。
自宅で進めるエンゼルケアの手順
基本の流れは、医療器具の扱いを決め、体を拭き、口の中を清め、体液の漏れに対応してから、着替えと顔の仕上げへ進む順です。実際には漏れや皮膚の状態に応じて前後するため、看護師の説明をその場の目安にします。
医療器具を確認して体を拭く
初めに看護師が、点滴や尿の管といった医療器具を確認し、医師の指示や器具の種類に応じて取り外しなどの対応を行います。外したあとの部位も確かめながら進めるため、家族は先にテープをはがしたり、管を引き抜いたりしないでください。
体を拭く段階では、衣服や寝具を必要な範囲で動かし、タオルで体を覆いながら皮膚の汚れを落としていきます。看護師が体の向きを変えるときは、ベッドの周りに人や物が集まりすぎないよう、必要な場所を空けておけます。
皮膚が弱くなっている部位や傷がある部位は、同じ力で一律に拭かず、その状態に合わせた扱いが必要です。
口の中を清めて体液の漏れに対応する
続いて、看護師が口の中の汚れや分泌物を確かめ、口元を整えます。口が開きにくいときや義歯があるときは、無理に動かさず、口の状態に合わせて扱いを決めます。
体液は口元や管を外した部位からにじむ場合があり、看護師が出ている場所に合わせて吸収材や覆いを使います。紙おむつも含めて必要な物を選ぶ段階であり、家族が口や鼻の奥へ綿や紙を詰める処置は避けてください。
処置を終えたあとも、体を動かした拍子に漏れが見られる場合があります。どの部位に対応したかを聞いておくと、後から寝具が湿ったときに、看護師や葬儀社へ状況を伝えやすくなります。
着替えと顔の仕上げを終えて状態を確かめる
体を清潔に整えたら、用意した服へ着替え、髪や顔を希望に沿って整えます。服の襟元や袖が整った段階で、家族が見て希望と合っているかを伝えると、看護師がいる間に調整を相談できます。
| 流れ | 看護師が行う内容 | 家族が伝える情報 |
|---|---|---|
| 医療器具の確認 | 取り外しの判断と外した部位への対応 | 使用していた機器と管の場所 |
| 体と口の清潔 | 皮膚や口の状態に応じた清拭・清掃 | 傷や義歯について把握している点 |
| 漏れへの対応 | 必要な吸収材や覆いの調整 | 寝具の湿りや口元の変化 |
| 着替えと仕上げ | 衣服を着せて髪や顔を整える処置 | 服と仕上がりの希望 |
仕上げのあとに服を直したくなったときは、覆っている部位や管に触れない方法を看護師へ尋ねてから動かすと安心です。
ベッドと医療機器は動かす前に看護師へ相談する
介護用ベッドや医療機器がある部屋では、電源を切る順番や移動の判断を看護師に任せます。処置のために寝具を変える必要があるか、今の姿勢を保てるかを先に確かめると、家族だけで体を動かさずに済みます。
介護用ベッドから布団へ移すかを決める
介護用ベッドは、高さや背もたれを調整して介護を助ける寝台で、使っているからといって処置前に布団へ移すとは限りません。看護師が周囲の広さや体の状態を見て、そのまま使うか、移動の準備が要るかを判断します。
布団へ移したい希望があるときは、置く場所と移動を手伝える人を看護師に伝え、葬儀社が到着してからの移動も含めて相談できます。家族だけで抱き上げると体を支えきれないおそれがあるため、人数がそろっていても先に方法を確かめる段階です。
エアマットの電源を切る時期を確認する
エアマットは、空気で体を支え、皮膚の同じ場所に圧力がかかり続けるのを和らげる寝具です。電源を切ったあとの空気の保ち方は機種で違うため、看護師に製品と現在の状態を見てもらってから扱いを決めます。
電源だけでなく、空気の管や栓を外す操作も体を支える状態に影響するため、音が気になっても自己判断で変更しないでください。看護師が訪問する前に警報が鳴ったときは、表示や音の様子を電話で伝えると、触れてよい部分を確認できます。
葬儀社が体を移すまで使用する予定なら、その時点まで電源を保つのか、誰が切るのかも決めておくと引き継ぎが明確になります。
在宅酸素や点滴の接続を家族だけで外さない
在宅酸素は、機器本体と鼻へつながる管を使い、自宅で酸素を吸う療養方法です。点滴や尿を排出する管も含め、停止や取り外しは看護師に任せ、家族は使っている機器の場所を知らせます。
| 自宅にある物 | 看護師へ確かめる点 | 家族が伝える情報 |
|---|---|---|
| 在宅酸素の機器 | 電源と接続を扱う時期 | 本体の場所と使用中の状態 |
| 点滴・注入用の機器 | 停止と管の取り外し | 作動音や表示の変化 |
| 尿の管と袋 | 取り外しとその後の覆い | 管の位置と漏れの有無 |
| エアマット | 移動までの電源と空気の管理 | 機種が分かる表示や説明書 |
機器の返却を急ぐより、体を支える寝具と処置に必要な物を残すのが先なので、回収の相談は使用終了の判断を聞いてから進めます。
エンゼルケア後は室温と寝具を整えて待つ
処置が済んだら、葬儀社の到着まで、看護師に教わった室内環境と体の状態を保って待ちます。家族が担うのは、室温や日差しを調整し、気づいた変化を伝える範囲です。
部屋の温度を下げて直射日光を避ける
部屋の温度は看護師の助言に沿って下げ、日が当たる窓のカーテンを閉めて直射日光を避けます。日中と夜間で室内の暖まり方が違うため、到着までの時間帯を伝えて、暖房や冷房の扱いを聞いておくと対応しやすくなります。
冷房を使っていても、体の保冷をどう行うかは別途確認が必要です。保冷に使う物を家族で買い足したり、置く場所を決めたりする前に、葬儀社へ到着までに必要な対応を尋ねましょう。
看護師が帰る前に部屋の状態を一緒に見てもらえば、電話で室内環境を説明し直す負担も減らせます。
漏れや寝具の湿りに気づいたときの対応
口元や衣服、寝具の湿りに気づいたら、処置をした訪問看護師へ場所と広がりを伝えます。看護師の訪問が終わっている場合も、先に聞いておいた連絡先へ電話し、家族が触れてよい範囲を確かめられます。
自分で詰め物を足したり、覆いをすべてはがしたりすると、どこから漏れていたかが分かりにくくなります。体を動かして下を調べるより、目に見える部位を伝え、教わった方法で寝具の汚れに対応する順です。
葬儀社の到着が近いときは、電話した内容と看護師から受けた指示も、到着後の担当者へ一緒に伝えます。
処置した部分を保ち、家族も座って待つ
待っている間は、看護師が整えた姿勢や覆いをむやみに変えず、そばで静かに過ごせます。顔や手に触れたいときに気をつける部位があれば、退室前に看護師から具体的に聞いておくと迷いが減ります。
また、家族がずっと立ったまま見守る必要はなく、連絡を受ける電話の音が届く場所で座って待つ形でも構いません。自宅に複数人いるなら、電話を受ける人を決めておくと、ほかの家族が水分を取ったり短く休んだりしやすくなります。
葬儀社への引き継ぎは処置した場所まで具体的に
葬儀社には、エンゼルケアを終えた事実に加え、処置をした部位と漏れに注意する場所を伝えます。別の家族が応対する可能性もあるなら、看護師から聞いた説明を短く書き残しておく方法が有用です。
看護師が帰る前に引き継ぐ内容を聞く
引き継ぎに必要な内容は、看護師が帰る前に一緒に整理します。家族が処置名を覚えるより、体のどの場所に何をしたか、移動時に何へ気をつけるかを聞くほうが、葬儀社の担当者に伝わりやすくなります。
| 伝える項目 | 残す情報 | 伝える相手 |
|---|---|---|
| 管を外した場所 | 部位と覆いの状態 | 体の移動を担当する葬儀社職員 |
| 体液が漏れた場所 | 看護師が行った対応と注意点 | 保冷や安置を担当する葬儀社職員 |
| 処置後の変化 | 気づいた時刻と看護師の指示 | 到着した葬儀社の担当者 |
| ベッドとエアマット | 電源を切る時期と移動の予定 | 移動を担当する職員と看護師 |
書き留めた表現が曖昧なら、看護師がいる間に読み上げ、葬儀社へそのまま伝えてよいか確かめる方法もあります。
葬儀社の到着時に移動と保冷の予定を聞く
葬儀社が到着したら、体を動かす前に、看護師から聞いた注意点を担当者へ渡します。葬儀社は引き継いだ状態を確かめ、保冷と安置、必要な搬送を進める担当です。
安置とは、葬儀まで体を休ませておく扱いを指し、自宅で続けるのか、葬儀社の安置施設へ移すのかで家族の予定も変わります。行き先がまだ決まっていなければ、担当者に受け入れ場所を聞き、移動前に家族が行き先を共有しておくと連絡の行き違いを減らせます。
体を移したあとに寝具や機器を片づける場合も、葬儀社が使う物が残っていないかを確かめてから取りかかります。
引き継ぎ後に尋ねる相手を分けておく
処置した部位の説明は訪問看護師、保冷や移動の予定は葬儀社へ尋ねると、担当する相手から具体的な返答を受けられます。医師の判断を要する点が残れば、訪問看護師を通じるか事前に決めた連絡方法で訪問医に確認し、必要な判断を受けます。
最後に手元へ残しておきたいのは、担当者の名前と連絡先、次に連絡を受ける予定。家族の誰が窓口になるかも伝えておけば、到着時刻の変更や追加の確認が必要になったときに話がつながります。
よくある質問
終了の見込みは、訪問看護師が体の状態と必要な処置を確かめてから相談できます。管の取り外しや漏れへの対応、着替えの難しさによって所要時間が変わるため、すべての自宅に共通する終了時刻を決めるのは困難です。
葬儀社の到着予定がある場合は、看護師へその時刻を伝え、処置の見込みを聞いてから葬儀社と調整しましょう。
服は先に切らず、実物を看護師へ見せて、着せ方や別の服に替える方法を相談してください。体の状態に合わせて扱う必要があるため、大切な服へ手を加えてよいかも、処置前に家族の希望として伝えておくと行き違いを防げます。
エアマットの電源は、看護師に扱いを確認してから変更します。空気で体を支える寝具なので、機種や空気の状態によって、停止後の支え方が変わります。
音が気になる、警報が鳴っているときは、表示と音の様子を訪問看護師へ電話で伝えてください。葬儀社が移動を担当する予定なら、電源を切る担当と時期まで合わせて確認できます。
処置をした訪問看護師に、湿っている場所と広がりを電話で伝え、対応を確認してください。覆いを外したり体を大きく動かしたりする前に相談すると、処置した部位に合った方法を聞けます。
葬儀社には、気づいた時刻と看護師から受けた指示を伝えます。看護師へすぐにつながらない場合は、事前に案内された連絡方法を使い、到着予定の葬儀社にも状況を知らせて対応を確かめられます。



