在宅ホスピスとは?自宅で受ける終末期ケアの仕組みと病棟ホスピスとの違い

自宅の居間で療養する高齢者のそばに家族が座り、訪問診療の医療者が静かに寄り添う在宅ホスピスのイメージ

「在宅ホスピス」は、法律や診療報酬に置かれた正式な呼び名ではありません。自宅で終末期ケアを受ける形をまとめて指す通称として、長く使われてきた言葉です。

自宅の側を実際に支えているのは、在宅療養支援診療所という届出の仕組みや、末期の悪性腫瘍の方を対象にした在宅がん医療総合診療料といった制度で、名前も条件もばらばらに定められています。

一方、病棟ホスピスと呼ばれる場所には緩和ケア病棟入院料という診療報酬の項目があり、対象となる病気も体制も施設基準に書かれています。両者の違いは、誰が関わり、どこまで対応でき、費用がどう積み上がるかに表れます。

目次

在宅ホスピスは制度の名前ではなく自宅で受ける終末期ケアの通称

在宅ホスピスという制度が別に用意されているわけではありません。自宅での終末期ケアは複数の診療報酬の仕組みを組み合わせて成り立っており、その全体をまとめて呼ぶための言葉が在宅ホスピスです。

よく使われる呼び方制度の側にある名称定めのある文書
在宅ホスピス在宅療養支援診療所、在宅がん医療総合診療料など特掲診療料の施設基準等、医科診療報酬点数表
病棟ホスピス緩和ケア病棟入院料医科診療報酬点数表、基本診療料の施設基準等
在宅緩和ケア在宅患者訪問診療料と訪問看護の組み合わせ医科診療報酬点数表

診療報酬の点数表に「在宅ホスピス」の項目は置かれていない

厚生労働省が告示している診療報酬の算定方法には医科診療報酬点数表という別表があり、医療機関が受け取る費用の項目がすべて並んでいます。この一覧のどこにも、在宅ホスピスという名前の項目はありません。

並んでいるのは往診料や在宅患者訪問診療料、在宅時医学総合管理料、そして在宅がん医療総合診療料といった名称で、いずれも自宅の医療を支える柱でありながら、ホスピスという語はどこにも使われていません。

つまり在宅ホスピスは、制度の外側で育った言い方です。医療者どうしの会話では自然に通じますが、実際に手続きを進める場面では、それぞれの制度の名前に置き換えながら話したほうが早く伝わります。

自宅の終末期ケアを支えるのは在宅療養支援診療所の届出

自宅での看取りまで見据えた医療の土台になるのが在宅療養支援診療所です。厚生労働省の告示「特掲診療料の施設基準等」に基準が定められており、地方厚生局長等へ届け出た診療所だけが名乗れます。

基準には、二十四時間連絡を受ける保険医または看護職員をあらかじめ指定し、その連絡先を文書で患家へ渡すという定めが含まれます。24時間の往診と訪問看護の体制、緊急時に入院できる病床の確保も並びます。

常勤の医師の人数や診療の実績で区分が分かれ、体制の手厚い類型は機能強化型と呼ばれています。どの類型に当たるかは診療所ごとに違うため、相談の段階で尋ねておくと見通しが立ちやすくなるでしょう。

末期がんでは在宅がん医療総合診療料が受け皿になる

末期の悪性腫瘍で通院が難しい方には、在宅がん医療総合診療料という枠組みが用意されています。点数表の条文は、在宅療養支援診療所または在宅療養支援病院に限って算定できると定めています。

算定は一週を単位として行い、本人の同意を得たうえで計画的な医学管理のもとに総合的な医療を提供した場合が対象です。訪問診療と訪問看護を組み合わせ、厚く関わる形があらかじめ想定されています。

施設基準として求められるのは、在宅がん医療を提供するために必要な体制と、緊急時の入院体制の整備です。自宅にいながら病院に近い密度の関わりを受けられる仕組みだといえます。

通称と制度の言葉がすれ違う背景

ホスピスという語はもともと施設の名前として広まり、日本では緩和ケア病棟がその役目を担ってきました。自宅でも同じ質のケアを届けようという動きが広がるにつれ、在宅ホスピスという呼び方が定着していきます。

制度の側は医療機関の体制や本人の状態に応じて項目を細かく分ける設計を取っており、場所そのものに名前を付けていません。呼び名と制度が一対一で対応しないのは、この設計の違いによるものでしょう。

窓口で「在宅ホスピスをお願いしたい」と伝えても、その名前の申込書が出てくるわけではありません。伝わりやすいのは、自宅で最期まで過ごしたいという希望と、いま困っている症状の二つです。

病棟ホスピスとの違いは緩和ケア病棟入院料の定めに表れる

病棟ホスピスの側には、緩和ケア病棟入院料という診療報酬の項目がはっきり置かれています。届け出た病棟だけが算定でき、対象となる病気から人員の配置まで施設基準に書き込まれている点が、自宅の側との大きな違いです。

届出をした病棟だけが緩和ケア病棟入院料を算定できる

緩和ケア病棟入院料は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合するものとして地方厚生局長等へ届け出た病棟に入院した場合に算定します。看板にホスピスと掲げてあっても、この届出がなければ別の入院料になります。

届出は病院ごとではなく病棟の単位で行い、基準を満たせなくなれば取り下げが必要です。緩和ケア病棟という語が建物や理念ではなく制度上の区分を指しているのは、この仕組みによります。

見学に行くと理念や内装に目が向きますが、届出の有無で受けられる医療の枠組みが変わります。気になる病院があれば、緩和ケア病棟入院料の届出をしているかどうかを最初に確かめておくと安心です。

主として悪性腫瘍と後天性免疫不全症候群の患者さんが対象

施設基準の条文は、主として悪性腫瘍の患者さんや後天性免疫不全症候群にかかっている患者さんを入院させ、緩和ケアを病棟の単位で行うものと定めています。対象の範囲は改定のたびに見直されるため、検討の時点で病院へ確かめるのが確実です。

この定めがあるため、老衰や心不全、神経の病気で終末期を迎えた方にとって、緩和ケア病棟へ入る道はがんの方に比べると狭くなります。自宅での終末期ケアに相談が集まりやすいのは、対象の差も一つの理由でしょう。

もっとも、緩和ケアそのものはがんに限られた医療ではありません。病棟の入り口が狭いだけで、痛みや息苦しさを和らげる医療は、病名にかかわらず自宅でも受けられます。

看護師の配置と緩和ケアの研修を受けた医師

看護師の数は、常時、入院患者さん7人またはその端数を増すごとに一人以上と定められています。一般の病棟より手厚く、痛みや息苦しさの訴えにすぐ人手を割ける設計になっています。

医師についても、緩和ケアに関する研修を受けた医師を配置するという定めが基準に含まれます。加えて、入退棟を判定する体制や、連携する医療機関の医師・看護師へ研修を実施していることも求められます。

入院の希望に速やかに応える体制を持つか、在宅の緩和ケアで相当の実績を持つか、いずれかを満たすことも条件に挙げられています。緩和ケア病棟が自宅とつながる窓口としても想定されている表れだといえるでしょう。

入院が長引くと一日あたりの入院料はどうなる?

緩和ケア病棟入院料は一日につき算定する形をとり、入院期間が三十日以内、三十一日以上六十日以内、六十一日以上という区分で点数が分かれています。期間が延びるほど、一日あたりの点数は低くなります。

実際の金額は改定のたびに変わるため、具体的な数字は入院を決める時点で病院の相談窓口へ確かめるのが確実でしょう。押さえておきたいのは、長期の療養の場ではなく、症状を和らげて次の場へつなぐ役目が想定されている点です。

実際に、緩和ケア病棟へ入ったあとで自宅へ戻る方も珍しくありません。病棟と自宅は二者択一ではなく、行き来しながら使う場として組み立てられています。

定められている事項緩和ケア病棟入院料の施設基準在宅療養支援診療所の施設基準
届出の相手地方厚生局長等地方厚生局長等
対象となる方主として悪性腫瘍や後天性免疫不全症候群の患者さん在宅で療養していて通院が難しい方
夜間・休日の体制病棟に看護師が常時配置される二十四時間の連絡・往診・訪問看護の体制
緊急時の入院病棟がそのまま入院の場になる入院できる病床をあらかじめ確保しておく

在宅ホスピスで家に来る顔ぶれとそれぞれの持ち場

自宅にいると医療から遠ざかってしまう、という心配はよく聞かれます。実際には医師・看護師・薬剤師・介護の担当者が役割を分けて出入りしており、在宅ホスピスは複数の職種の組み合わせで成り立っています。

関わる人主に担うところ家族が相談しやすい場面
訪問診療の医師診察、痛みを和らげる薬の調整、看取りの判断今後の見通しや薬を増減するかどうか
訪問看護師体の観察、処置、清潔の保持、介護のこつの助言体位の変え方や食べられないときの対応
薬剤師薬の準備と自宅への届け、飲み方や貼り方の説明飲み残しや、痛いときに足す薬の使い方
ケアマネジャー介護保険のサービスの組み立てと連絡調整介護用ベッドや入浴の手配、費用の相談

二十四時間の連絡先を持つ訪問診療の医師

在宅療養支援診療所の施設基準では、24時間連絡を受ける保険医または看護職員をあらかじめ指定し、その連絡先を文書で患家へ提供すると定められています。夜中に様子が変わっても、電話をかける先が決まっている状態です。

この文書は、家族にとって心の支えにもなります。冷蔵庫や電話のそばなど、家族の誰もがすぐ手に取れる場所に貼っておけば、いざというときに探し回らずに済むはずです。

  • 連絡を受ける医師や看護職員の名前
  • 昼夜を問わずつながる電話番号
  • 担当する曜日や時間帯の割り振り
  • 急に様子が変わったときにまず取る手順
  • 医師の訪問は定期の日を決めて回りますが、状態が変われば臨時の往診も加わります。訪問の間隔は病状によって変わるため、初回の相談で家族の生活と折り合う形を一緒に決めていきます。

    訪問看護師が痛みと暮らしの両方を見る

    訪問看護師は、痛みや息苦しさの程度を確かめながら、体を拭いたり床ずれを防いだりと生活の側面まで手を伸ばします。医療と介護の境目にいる人と考えると、役割の広さが分かりやすいでしょう。

    家族が一番助けられるのは、日々のこつを教わる時間かもしれません。体の向きを変える手順や、口の中を潤す方法を目の前で見せてもらえると、次の日から家族だけでも手が動くようになります。

    看護師が気づいた変化は医師へ伝わり、薬の調整につながります。家族が「気のせいかもしれない」と感じた小さな変化ほど、遠慮せずに伝えておきたいところでしょう。

    薬剤師とケアマネジャーが生活の側をつなぐ

    薬剤師は自宅へ薬を届け、飲み方や貼り薬の使い方を説明します。飲み込みが難しくなってきた場合には、飲み薬から貼り薬や坐薬へ形を替える相談も、医師と薬剤師のあいだで進みます。

    ケアマネジャーは介護保険の側の窓口で、介護用ベッドや車いすの手配、ヘルパーの訪問回数の調整を担います。医療の予定と介護の予定がぶつからないよう、全体を組み直してくれる存在です。

    家族がすべての職種へ別々に連絡する必要はありません。窓口を一つに絞って伝えれば、そこから残りへ情報が回る形が整っているかどうかを、開始の時点で確かめておくと負担が軽くなります。

    在宅ホスピスと病棟ホスピスで対応できる範囲の違い

    対応できる範囲は、医療者との距離と、そばにいる時間の長さで分かれます。病棟では医療者が同じ建物にいるのに対し、自宅では連絡してから到着するまでに時間がかかる、という差が土台にあります。

    急に苦しくなったときの距離

    病棟なら、ナースコールを押せば数分で看護師が来てくれるはずです。自宅の場合は電話をかけてから訪問看護師や医師が到着するまでに時間が空くので、その間をしのぐ備えを先に用意しておく形になります。

    備えとして多いのは、痛みや息苦しさが強まったときに使える薬を自宅へ置いておく方法です。使う目安と量をあらかじめ決めておけば、電話で相談しながら家族の手で対応できます。

    「距離がある」と聞くと不安に感じるかもしれません。ただ、慣れてくると多くの場面は電話の助言で落ち着き、駆けつけが必要な場面は限られてくるのが実際のところです。

    夜の付き添いを誰が担うのか?

    ここが在宅と病棟でもっとも差の出るところです。病棟では夜勤の看護師が見守りますが、自宅では夜の時間帯を家族が引き受ける場面が増えます。

    負担を一人に集めない工夫として、きょうだいや親族で泊まる日を分ける、夜間対応のある訪問看護を組み合わせる、日中にヘルパーを入れて介護者が眠る時間を作る、といった方法が使われます。

    体力が限界に近づいてきたと感じたら、その時点で担当へ伝えるのが大切です。介護保険の短期入所や、緩和ケア病棟への入院という選択肢を挟みながら在宅を続ける形も珍しくありません。

    使える医療機器と処置の幅

    点滴や酸素、痛みを和らげる薬を持続的に注入する機器は、自宅へ持ち込んで使えます。一方で、緊急の検査や輸血、専門の機器を要する処置は病院でなければ難しく、その線引きは残ります。

    終末期に近づくと、検査で得られる情報より、目の前の苦しさを和らげる手当てのほうが役に立つ場面が増えていきます。何をどこまで行うかは、本人の希望を軸に医師と話し合いながら決めていきます。

    • 自宅で続けやすいもの……酸素、点滴、痛みを和らげる薬の持続注入
    • 病院のほうが向くもの……緊急の検査、輸血、大がかりな処置
    • どちらでも行えるもの……口の中の手入れ、床ずれの手当て、薬の調整
    • 途中で場所を移してもかまわない

      いったん自宅で始めたら最後まで自宅で、と決める必要はありません。症状が強まったときや家族が疲れたときに病棟へ移り、落ち着いてからまた自宅へ戻る流れも、制度の上で想定されています。

      緩和ケア病棟の施設基準に、入院希望への速やかな対応か在宅緩和ケアの実績のいずれかが挙げられているのも、その表れといえるでしょう。病棟と自宅を行き来する前提で設計されています。

      家族が「決めた場所を変えるのは負けだ」と感じる必要はどこにもありません。本人が穏やかに過ごせる場所は状態とともに動くもので、途中で変えても選択が間違っていたわけではないのです。

      起こりやすい場面在宅ホスピス緩和ケア病棟
      強い痛みが出た電話で相談し、自宅に置いた薬で対応してから往診その場で看護師が対応し、医師の指示で調整
      夜間の見守り家族が中心となり、訪問看護や介護の手を組み合わせる夜勤の看護師が担う
      食事が取れなくなった訪問時に相談し、点滴や口の手入れで対応病棟内で速やかに方針を決める
      介護する家族が疲れた短期入所や入院を挟んで休む付き添いの負担そのものが軽い

      在宅ホスピスを始めるときの条件と手続きの進め方

      特別な認定や資格がなければ始められない、というものではありません。通院が難しい状態であれば、本人と家族の希望をもとに、訪問診療の相談から入っていけます。

      入る条件は病名よりも通院が難しいかどうか

      訪問診療の対象は、通院が困難な方と定められています。歩けるかどうかだけでなく、外出そのものが体に大きな負担となる状態も含まれ、病名で線を引く仕組みにはなっていません。

      末期の悪性腫瘍で在宅がん医療総合診療料の対象となる方は、訪問診療と訪問看護を密に組み合わせる形になります。がん以外の病気でも、訪問診療と訪問看護を受けながら自宅で最期まで過ごす道は開かれています。

      迷いやすいのは、まだ通院を続けられている時期でしょう。通院が難しくなってから慌てて探すより、外来に通いながら早めに相談しておくほうが、選べる幅は広がります。

      主治医からの紹介と情報提供の文書

      これまで通っていた病院の主治医から、経過や治療の内容をまとめた文書を受け取り、訪問診療の医師へ渡す流れが一般的です。在宅療養支援診療所の基準にも、必要な情報を文書で提供できる体制という定めがあります。

      紹介の話を橋渡しするのは、病院の地域連携室や退院支援の担当者です。家族から切り出しにくければ、「自宅で過ごす方法を知りたい」と伝えるだけでも話が動き始めます。

      • これまでの経過と治療の内容が分かる書類
      • いま飲んでいる薬の一覧(お薬手帳)
      • 介護保険の被保険者証と、認定を受けていれば結果の通知
      • 家の間取りと、寝室からトイレまでの動線のメモ
      • 介護保険の申請を同時に進める

        自宅での療養は、医療と介護の両輪で回ります。介護用ベッドや車いす、ヘルパーの訪問は介護保険の側から用意されるため、医療の相談と並行して申請を進めておくと立ち上がりが早くなります。

        申請の窓口は市区町村で、認定が下りるまでには日数がかかるでしょう。急を要する場合の扱いもあるため、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターへ状況を率直に伝えておくと段取りが進みます。

        介護保険の認定が出るまで何もできない、というわけではありません。医療の側の訪問診療と訪問看護は先に始められるので、必要な手当てが遅れる心配は少ないでしょう。

        家の中を整える順番

        家を大がかりに改造する必要はありません。先に整えたいのは寝る場所で、家族の気配が届く部屋に介護用ベッドを置くだけでも、介護する側もされる側も楽になります。

        次に手をつけたいのが、トイレや洗面までの動線です。段差や敷物を減らし、夜に足元を照らす明かりを足しておくと、転倒の心配が減っていきます。

        訪問看護師やケアマネジャーは、家の様子を見ながら具体的な助言をくれます。写真を撮って相談すれば、実際に物を動かす前に見当がつけられるでしょう。

        在宅ホスピスと病棟ホスピスでは費用の組み立てが変わる

        費用の見え方はまったく違います。病棟では一日あたりの入院料に多くが含まれ、自宅では訪問のたびの費用と介護の費用が積み上がっていく形になるためです。

        病棟は一日あたりの入院料に多くが含まれる

        緩和ケア病棟入院料は、診療に係る費用の多くを含んだ形で算定される入院料です。検査や処置ごとに費用が積み上がる一般の入院とは、金額の見え方が違ってきます。

        ただし、食事にかかる自己負担や、個室を希望した場合の差額の室料は別に必要です。医療の費用だけを見て予算を立てると、あとで見込みが狂う場面が出てきます。

        点数は改定のたびに見直されるため、金額の目安は入院を検討する時点で病院へ尋ねるのが確実でしょう。相談窓口では、自己負担の上限を抑える手続きも合わせて案内してもらえます。

        在宅は訪問診療と訪問看護の積み上げ

        自宅の側で積み上がるのは、訪問診療の費用、訪問看護の費用、そして薬の費用です。末期の悪性腫瘍で在宅がん医療総合診療料を算定する場合には、一週を単位として診療の費用がまとめて扱われます。

        これに加えて、介護保険から利用するベッドやヘルパーの自己負担が重なります。医療と介護で自己負担の数え方が別々なので、合計の見当をつけるにはケアマネジャーの試算が頼りになります。

        一方、入院で必要になる食事の負担や差額の室料はかかりません。総額がどちらに寄るかは、訪問の回数や介護サービスの使い方によって変わるため、一律には決まらないのが実際です。

        交通費は患家の負担と定められている

        点数表の在宅がん医療総合診療料の条文には、在宅がん医療総合診療に要した交通費は患家の負担とすると書かれています。訪問にかかる移動の費用が、診療の費用とは別枠になっている点は押さえておきたいところです。

        実際にいくら請求されるかは、診療所からの距離や取り決めによって変わります。契約を交わす前に、交通費の扱いを書面で確かめておくと、あとから食い違う心配がありません。

        費用の話は切り出しにくいものですが、遠慮したまま始めるほうが後々つらくなります。訪問の回数を決める段階で率直に尋ねておけば、家計に合わせた組み立てを一緒に考えてもらえます。

        費用の項目緩和ケア病棟在宅ホスピス
        医療の費用一日あたりの入院料に多くが含まれる訪問診療・訪問看護・薬が積み上がる
        食事自己負担が別に必要これまでどおりの家計から
        部屋個室を選ぶと差額の室料かからない
        介護のサービス病棟の中で完結する介護保険の自己負担が加わる
        移動面会する家族の交通費訪問の交通費は患家の負担

        よくある質問

        在宅ホスピスと緩和ケア病棟は、両方に相談しておいてもよいのでしょうか?

        両方に相談しておいて差し支えありません。緩和ケア病棟は申し込みから入院までに面談や順番待ちを挟むため、自宅で過ごしながら登録だけ先に済ませておく方も多くいます。

        相談したからといって、どちらかを選ぶ約束をしたことにはなりません。状態が変わってから慌てて動くより、二つの窓口を開いたまま様子を見るほうが、選べる余地を残せます。

        在宅ホスピスは、がん以外の病気でも受けられますか?

        受けられます。訪問診療の対象は通院が困難かどうかで判断されるため、老衰や心不全、神経の病気で終末期を迎えた方も、自宅で医療を受けながら過ごせます。

        ただし、在宅がん医療総合診療料のように末期の悪性腫瘍を対象と定めた枠組みは使えません。訪問診療と訪問看護を組み合わせる形が中心になり、訪問の回数は状態に応じて決めていきます。

        在宅ホスピスを選ぶと、もう入院はできなくなるのですか?

        入院の道が閉じるわけではありません。在宅療養支援診療所の基準には、緊急時に入院できる病床をあらかじめ確保しておくという定めが含まれています。

        症状が強まったときや、介護する家族が休む必要が出たときに入院を挟み、落ち着いてから自宅へ戻る流れもよくあります。行き来を前提に組み立てておくと、途中で行き詰まりにくくなります。

        在宅ホスピスの相談は、どの段階で始めればよいですか?

        通院がつらくなってきたと感じた時点が一つの目安です。まだ外来へ通えているうちに相談しておくと、診療所を選ぶ時間も、家の中を整える時間も確保できます。

        相談の入り口は、通っている病院の地域連携室や退院支援の担当者、地域包括支援センターなどです。家族だけで抱え込まず、早い段階で顔の見える相手を作っておくと後が楽になります。

        在宅ホスピスでは、家族が医療の手技を担うことになりますか?

        専門の手技を家族が引き受ける形ではありません。処置は訪問看護師と医師が行い、家族に頼まれるのは、口を潤す、体の向きを変える、薬を決められた時間に渡すといった日常の手当てが中心です。

        やり方は訪問のたびに目の前で教えてもらえますし、難しいと感じたら遠慮なく伝えて差し支えありません。できる範囲を医療者と分け合いながら進めるのが、在宅を続けるこつです。

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        この記事を書いた人

        新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

        医師
        医療法人社団あしたば会 理事長
        富士在宅診療所 院長
        順天堂大学医学部卒業(2001)
        スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
        USMLE/ECFMG取得(2005)
        富士在宅診療所開業(2016)

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