褥瘡のステージ分類とは?深さ別の症状・見分け方・在宅での対応

褥瘡のステージ分類とは?深さ別の症状・見分け方・在宅での対応

褥瘡(じょくそう)は、いわゆる「床ずれ」のことです。寝たきりの方や車いすを長時間使う方に起こりやすく、皮膚の深さによって4つのステージに分けられます。

在宅で介護をするご家族にとって、褥瘡のステージを見分ける力は早期発見と適切な対応に直結する大切なスキルです。軽度のうちに気づければ自宅でのケアだけで治せる場合もありますが、進行すると入院や手術が必要になることもあります。

この記事では、各ステージの症状と見分け方をわかりやすく解説しながら、在宅でできる具体的な対応策をお伝えします。

目次

褥瘡のステージ分類は「深さ」で4段階に分かれる

褥瘡は、皮膚の損傷がどの層まで達しているかによって4つのステージに分類されます。分類の基準は傷の広さではなく「深さ」であり、ステージごとに治療やケアの方針が大きく異なります。

褥瘡が発生する原因は圧迫による血流不足にある

褥瘡は、体の一部が長時間にわたって圧迫され続けることで発生します。圧迫を受けた部位の血流が途絶え、皮膚や皮下の組織に酸素や栄養が届かなくなるためです。

とくに仙骨部(おしりの中央)、かかと、肩甲骨の周辺など、骨が突出している部位に起こりやすい傾向があります。寝たきりの方だけでなく、車いすに長時間座る方にも注意が必要でしょう。

世界標準のNPUAP分類で深達度を判定する

褥瘡のステージ分類として世界的に広く採用されているのが、NPUAP(米国褥瘡諮問委員会)が定めた分類法です。この分類では、皮膚の損傷がどの組織層まで及んでいるかを基準に、ステージ1からステージ4までの4段階で評価します。

日本の医療現場でもこのNPUAP分類が標準的に使われており、訪問診療の場面でも医師や看護師がこの基準をもとに褥瘡の状態を判断しています。

NPUAP分類によるステージの概要

ステージ損傷の深さ主な特徴
ステージ1表皮まで押しても消えない発赤
ステージ2真皮まで水ぶくれやびらん
ステージ3皮下脂肪まで深い潰瘍の形成
ステージ4筋肉・骨まで組織の広範な壊死

ステージ分類を活用すれば在宅ケアの判断に役立つ

褥瘡のステージがわかると、「自宅で様子を見てよいのか」「すぐに医師に連絡すべきか」という判断がしやすくなります。たとえばステージ1であれば、体位変換の頻度を増やし除圧を徹底することで改善が見込めるケースが多いです。

一方、ステージ3以上では専門的な処置が必要となるため、訪問診療の医師や看護師に早めに相談するのが賢明です。ステージを共通言語として家族と医療者が情報を共有すれば、在宅でのケアがぐっと円滑になるでしょう。

褥瘡ステージ1は「赤みが消えない」が最初の警告サイン

ステージ1は褥瘡のなかで最も軽度な段階ですが、見逃してしまうと短期間で進行する恐れがあります。日常の観察で早期に気づくことが、悪化を防ぐ第一歩になります。

指で押しても白くならない発赤がステージ1の目印

健康な皮膚は指で押すと一瞬白くなり、離すと元の色に戻ります。しかしステージ1の褥瘡では、発赤部分を指で押しても白く変化しません。

これを「消退しない発赤(はっせき)」と呼び、皮膚の奥で血流障害が始まっているサインです。

肌の色が濃い方の場合は赤みが目立ちにくいため、周囲の皮膚と比べて温度が高い部位や、触ると硬く感じる部位がないか確認してみてください。

ステージ1の段階で発見できれば回復は早い

ステージ1はまだ皮膚の表面が破れていない状態です。そのため圧迫を取り除き、血流を回復させれば数日から1週間程度で改善するケースがほとんどです。

逆にいえば、この段階を見逃して圧迫が続くと、あっという間にステージ2以降へ進行してしまいます。毎日の入浴やおむつ交換のタイミングで皮膚を観察する習慣をつけておくと安心でしょう。

在宅でできるステージ1の初期対応

発赤を見つけたら、まずはその部位への圧迫をすぐに解除してください。体位変換で圧迫部位を変えるほか、クッションやタオルを使って除圧するのも有効な方法です。

皮膚を清潔に保つことも大切ですが、発赤部分をゴシゴシこすったりマッサージしたりするのは逆効果です。血管がすでにダメージを受けているため、摩擦が加わるとかえって症状を悪化させてしまいます。

ステージ1で実践したい在宅ケアの要点

対応項目具体的な方法注意点
除圧体位変換やクッションの使用発赤部位に直接圧をかけない
皮膚の保護保湿剤の塗布強くこすらず優しく塗る
観察1日2回以上の皮膚チェック色・温度・硬さを確認

褥瘡ステージ2では水ぶくれやびらんが皮膚表面に現れる

ステージ2に進むと、表皮の下にある真皮(しんぴ)まで損傷が及びます。肉眼でわかる傷が生じるため、ご家族が見て「これはただの赤みではない」とはっきり気づける段階です。

表皮から真皮にかけて損傷が広がった状態

ステージ2の褥瘡は、浅い潰瘍(かいよう)や水ぶくれ、びらん(皮膚表面がただれた状態)として現れます。傷の底は赤みを帯びたピンク色をしており、黒や黄色の壊死組織は見られません。

深さとしては表皮と真皮の範囲にとどまっているため、適切にケアすれば比較的スムーズに回復が期待できます。ただし感染を起こすと一気に悪化するため、傷口の管理が非常に大切になります。

水ぶくれを自己判断で破るのは絶対にNG

水ぶくれ(水疱)ができている場合、つい潰したくなるかもしれませんが、自己判断で破るのは避けてください。水疱の膜は細菌の侵入を防ぐバリアの役割を果たしており、破ってしまうと感染リスクが跳ね上がります。

もし水ぶくれが大きくなって痛みが強い場合や、すでに破れてしまった場合は、訪問看護師や医師に連絡して適切な処置を受けるようにしてください。

ステージ2で使われる主な被覆材の種類

被覆材の種類特徴適した場面
ハイドロコロイド湿潤環境を保つ浅い潰瘍やびらん
フォーム材吸収力が高い浸出液が多い場合
フィルム材薄くて透明水ぶくれの保護

ステージ2の在宅ケアでは被覆材の選び方が鍵になる

ステージ2の褥瘡では、傷口を乾燥させずに湿った環境を保つ「湿潤療法(しつじゅんりょうほう)」が基本となります。市販の創傷被覆材を使って傷口を覆い、適度な湿度を維持すると皮膚の再生を促せます。

ただし被覆材にはさまざまな種類があり、傷の状態や浸出液の量によって使い分けが必要です。自己判断で選ぶのが難しい場合は、訪問看護師に相談すると安心でしょう。

褥瘡ステージ3は皮下脂肪層まで傷が達する深刻な段階

ステージ3になると損傷は皮膚の深い層、つまり皮下脂肪組織にまで到達します。傷が深く大きくなるため、家庭でのケアだけでは対応しきれないケースが増えてきます。

皮膚に深いくぼみやポケットができている

ステージ3の褥瘡は、皮膚に深いくぼみ(クレーター状の潰瘍)ができるのが特徴です。傷の底には黄色い壊死組織(スラフ)が付着していることもあり、見た目にも痛々しい状態といえます。

さらに、傷の入り口は小さいのに内部で広がっている「ポケット」と呼ばれる空洞ができる場合があります。ポケットの中に膿がたまると感染の原因になるため、定期的な洗浄と観察が必要です。

壊死組織があると治療方針が大きく変わる

壊死組織(えしそしき)とは、血流が途絶えて死んでしまった組織のことです。黄色いスラフや黒いエスカー(硬い痂皮)として傷の表面に現れます。

壊死組織が残ったままだと新しい皮膚が再生できないため、医師がメスや鉗子を使って除去する「デブリードマン」という処置を行う場合があります。

この処置は訪問診療でも実施できますが、範囲が広い場合は入院での治療を検討することもあるでしょう。

訪問診療との連携が回復への近道になる

ステージ3の褥瘡は、ご家族だけで管理するには負担が大きくなりがちです。訪問診療の医師による定期的な傷の評価と処置、訪問看護師によるケア指導を組み合わせると、在宅でも治療を継続できる可能性が広がります。

医師と看護師が連携して治療計画を立ててくれるため、ご家族は指示に従って日常の観察や清潔保持に集中すれば大丈夫です。遠慮なく専門家を頼ってください。

ステージ3で医療者に伝えたい情報

  • 傷のサイズ(縦・横・深さのおおよその目安)
  • 傷の底の色や壊死組織の有無
  • 浸出液の量・色・においの変化
  • 発熱や痛みなど全身症状の有無

褥瘡ステージ4になると筋肉・腱・骨まで露出してしまう

ステージ4は褥瘡のなかで最も重篤な段階であり、損傷が筋肉や腱、さらには骨にまで達しています。感染症のリスクが非常に高く、命にかかわる合併症を引き起こす危険があるため、迅速な医療介入が求められます。

感染症や敗血症など命にかかわる合併症のリスクが高まる

ステージ4の褥瘡は傷が非常に深いため、細菌が体の奥深くまで侵入しやすくなります。骨に感染が及ぶ骨髄炎(こつずいえん)や、血液を通じて全身に感染が広がる敗血症(はいけつしょう)を発症すると、命の危険が生じる場合もあります。

傷の周囲が赤く腫れてきた、悪臭がする、急な発熱があるといった兆候がみられたら、すぐに医師に連絡してください。

外科的な治療が必要になるケースも少なくない

ステージ4では、壊死組織の除去だけでなく、皮弁術(ひべんじゅつ)と呼ばれる手術で健康な皮膚や筋肉を移植して傷を閉じる治療を行う場合があります。

手術を行えるかどうかは患者さんの全身状態や栄養状態にもよるため、医師とよく相談して方針を決めることが大切です。

ステージ4で検討される治療法

治療法内容在宅での対応
デブリードマン壊死組織の除去訪問診療で実施可能
陰圧閉鎖療法傷に陰圧をかけ治癒を促進在宅導入も増えている
皮弁術皮膚・筋肉の移植手術入院が必要

在宅で継続するか入院するかの判断基準

ステージ4であっても、患者さんの希望や全身状態によっては在宅での療養を継続できる場合があります。

感染が制御できていること、訪問診療による処置が定期的に受けられること、ご家族の介護力が十分であることなどが在宅継続の条件となります。

一方、全身状態の悪化や広範な手術が必要な場合は入院治療が望ましいケースもあります。どちらが良いかは患者さんとご家族の生活や意向を踏まえて、担当医と一緒に判断するとよいでしょう。

在宅で褥瘡のステージを正しく見分けるための観察術

褥瘡のステージを在宅で見分けるには、特別な医療器具は必要ありません。日々の皮膚観察と記録の積み重ねが、早期発見と的確な報告につながります。

皮膚の色・温度・硬さは毎日の観察で変化を捉えられる

褥瘡の兆候を見つけるために、おむつ交換や入浴のたびに皮膚の状態をチェックする習慣をつけてください。確認するポイントは3つ、皮膚の色の変化、触ったときの温度、そして硬さです。

正常な皮膚と比較して赤みが強い、触ると熱を持っている、周囲より硬く感じるといった変化があれば、褥瘡の初期サインかもしれません。とくに仙骨部やかかとなど骨が出っ張っている部位を重点的に見てください。

写真記録を残しておくと医師への報告がスムーズになる

気になる部位を見つけたら、スマートフォンで写真を撮っておくのがおすすめです。日付入りの写真があれば、訪問診療の医師に「いつから」「どのように変化したか」を正確に伝えることができます。

写真を撮るときは、定規やメジャーを傷の隣に置いてサイズがわかるようにすると、医師がステージを判定する際の参考になります。毎回同じ角度・距離から撮影すると変化の比較もしやすくなるでしょう。

「判定困難な褥瘡」は無理に分類せず専門家に任せる

壊死組織が傷の表面を厚く覆っていて底が見えない場合、正確なステージ判定ができないことがあります。これをNPUAP分類では「判定不能(Unstageable)」と呼びます。

ご家族が無理にステージを判断する必要はありません。「黒い硬いかさぶたのようなものがある」「傷の底が見えない」といった見た目の情報を医師や看護師に伝えれば、専門家が適切に評価してくれます。

観察時に確認したいポイント

  • 発赤の有無と指で押したときの色の変化
  • 水ぶくれや皮膚のめくれがないか
  • 傷の深さと底の色(赤、黄、黒など)
  • 浸出液の有無とにおい
  • 傷の周囲の腫れや熱感

在宅での褥瘡予防と日常ケアで家族が今日から始められる習慣

褥瘡は発生してから治すよりも、そもそも作らないのが一番です。日常生活のなかで実践できる予防策は多く、ご家族の小さな工夫が大きな効果を生みます。

体位変換は2時間ごとが目安だが個人差もある

長時間同じ姿勢でいると圧迫が続くため、定期的に体の向きを変える「体位変換」が褥瘡予防の基本となります。

一般的には2時間おきが推奨されていますが、使用しているマットレスの種類や患者さんの体格、皮膚の状態によって適切な間隔は変わります。

夜間に2時間ごとの体位変換を行うのは介護者の大きな負担になるため、体圧分散マットレスを導入して間隔を延ばせるか、訪問看護師に相談してみるとよいでしょう。

体位変換の間隔と条件の目安

条件推奨間隔補足
通常のマットレス2時間ごと基本の目安
体圧分散マットレス使用4時間程度まで延長可医師の指示に従う
皮膚に発赤がある場合1〜2時間ごと発赤部位を避ける

体圧分散マットレスやクッションで圧迫を減らす

体圧分散マットレスは、体にかかる圧力を広い面積に分散させて局所的な圧迫を軽減する効果があります。エアマットレスやウレタンフォーム製など種類はさまざまで、患者さんの状態に合ったものを選ぶことが大切です。

車いすを使う方の場合は、座面にかかる圧力を分散するクッションを使うと仙骨部や坐骨部の褥瘡予防になります。

円座(ドーナツ型クッション)は一見よさそうに見えますが、周囲の皮膚に圧力が集中するため、専門家は推奨していません。

栄養管理とスキンケアで皮膚のバリア機能を守る

褥瘡予防には、皮膚を健やかに保つための栄養管理も欠かせません。とくにタンパク質、ビタミンC、亜鉛は皮膚の修復や再生に関わる栄養素であり、食事やサプリメントを通じて積極的に摂取するのが望ましいです。

スキンケアの面では、皮膚の乾燥を防ぐ保湿と、おむつ内の蒸れを防ぐ清潔保持の2つが柱になります。入浴後やおむつ交換のあとに保湿剤を塗り、皮膚の乾燥やひび割れを防いであげてください。

よくある質問

褥瘡のステージ1とステージ2はどのように見分ければよいですか?

最も大きな違いは「皮膚の表面が破れているかどうか」です。ステージ1は皮膚が破れておらず、押しても消えない赤みだけが見られます。

一方、ステージ2になると水ぶくれやびらん、浅い潰瘍など、目に見える傷が皮膚の表面に現れます。赤みだけなのか、それとも皮膚が破れているのかを確認することで、ご家族でもおおよその判断が可能です。

褥瘡のステージが進行した場合でも在宅で治療を続けられますか?

ステージ3やステージ4であっても、条件が整えば在宅で治療を継続できる場合があります。感染が制御されていること、訪問診療や訪問看護を定期的に受けられること、ご家族の介護体制が整っていることが主な条件です。

ただし、全身状態が悪化している場合や大規模な手術が必要なケースでは入院が望ましいこともあります。担当の医師と十分に話し合ったうえで方針を決めてください。

褥瘡のステージ判定はどのくらいの頻度で行えばよいですか?

褥瘡が発生している場合は、少なくとも毎日1回は傷の状態を観察し、変化がないか確認することをおすすめします。急激に傷が深くなったり、浸出液の量やにおいが変わったりした場合は、ステージが進行している可能性があります。

訪問看護師や医師の定期的な訪問時にも評価を受けると、適切なタイミングでケアの方針を見直すことができます。

褥瘡の予防に使う体圧分散マットレスはどのような種類を選べばよいですか?

体圧分散マットレスには、エアマットレス、ウレタンフォーム、ハイブリッド型などさまざまな種類があります。患者さんの体重、自力で寝返りが打てるかどうか、褥瘡の発生リスクの高さなどを考慮して選ぶ必要があります。

一般的には、自力での寝返りが難しくリスクが高い方にはエアマットレスが適しており、ある程度体を動かせる方にはウレタンフォーム製で十分な場合もあります。訪問診療の医師や看護師に相談すると、状態に合った製品を提案してもらえるでしょう。

褥瘡が黒いかさぶたに覆われている場合のステージはどう判定しますか?

傷の表面が黒く硬いかさぶた(エスカー)で覆われている場合、傷の底が確認できないため正確なステージ判定ができません。NPUAP分類では、これを「判定不能(Unstageable)」として扱います。

ご家族が無理に判断する必要はなく、「黒いかさぶたで覆われていて底が見えない」と医師や看護師に伝えてください。壊死組織を除去して傷の底が見えるようになった時点で、正式なステージが確定します。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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