指定難病の医療費助成とは? – 訪問診療や介護施設での活用方法を解説

指定難病の医療費助成とは? - 訪問診療や介護施設での活用方法を解説

在宅での医療を検討している方にとって、医療費負担をどう抑えるかは大きな課題です。特に、指定難病を抱える方の場合は通院そのものが難しく、自宅や介護施設でのケアが必要になるケースも多くあります。

こちらの記事では、指定難病医療費助成の基本から申請手続きや自己負担上限額などを踏まえたうえで、訪問診療や介護施設で実際に活用する方法までを詳しくまとめました。

在宅ケアを考える際の参考としてお役立てください。

目次

指定難病と医療費助成制度の基本知識

指定難病の医療費助成制度は、病気によっては長期療養や専門的な治療が必要になる場合があることを踏まえて、患者本人や家族の経済的負担を軽くするために設けられた仕組みです。

医療費助成を利用するためには、まず「難病」や「指定難病」の定義を理解することが大切です。また、どの疾患が対象になるかや、重症度によって助成内容が変わる点なども押さえておく必要があります。

難病と指定難病の違いとは

医療費助成が受けられるかどうかは、「難病」と「指定難病」の違いを把握しておくと理解しやすくなります。

難病と呼ばれる疾患は、患者数が少ないことや治療法が確立していないことなどから、公的なサポートが重要視されてきました。そのなかでも特に公費助成の対象になっている疾患群が「指定難病」です。

難病対策の法整備が進むにつれ、「指定難病」の要件として「患者数が一定規模より少ない」「客観的な診断基準が確立している」「長期療養を要する」などが定められました。

つまり、難病のなかでも国が法的に認定したものが指定難病という位置づけです。以下の一覧は、難病と指定難病の違いを整理したものです。

難病と指定難病の比較

項目難病指定難病
患者数の規模一般的に患者数が少ない疾患全般一定基準以下の患者数かつ診断基準が明確な疾患
法的な定義明確な法的定義は存在するが多岐にわたる難病のうち公費助成の対象として定められた疾患
主な公的支援制度各自治体ごとの独自支援などが中心国の定める医療費助成制度の適用が可能

難病すべてが医療費助成を受けられるわけではなく、「指定難病」として登録されていることが大きなポイントです。

指定難病医療費助成制度の概要と目的

指定難病医療費助成制度は、治療の長期化により医療費が高額になる患者や、その家族の負担を少しでも軽減するために作られました。主な特徴は以下のとおりです。

  • 長期継続的に医療を必要とする指定難病患者に対し、公的に医療費の一部を助成
  • 医学的知見の進展や社会情勢に合わせて対象疾患が見直しされる
  • 患者数が一定未満で、診断基準や重症度基準が設定されている疾患を対象にしている

この制度によって、経済的理由で治療を断念せざるを得ない状況を防ぎ、適切な治療機会を確保することがねらいとされています。

対象となる341疾患(2024年4月現在)

2024年4月現在、対象疾患は341に及びます。かつては130程度の疾患が指定難病として扱われていた時期がありましたが、医療の進歩や診断技術の向上などに伴い順次追加されています。

例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病、全身性エリテマトーデス(SLE)などが挙げられます。

次の一覧は、指定難病に含まれる主な疾患例の一部を例示したものです。

指定難病の一例

疾患名主な症状・特徴代表的な治療
筋萎縮性側索硬化症(ALS)全身の筋力が徐々に低下し、呼吸機能も損なわれる補助的呼吸管理やリハビリテーション
パーキンソン病振戦(手足の震え)、無動、歩行障害、姿勢保持障害など薬物療法、運動療法
全身性エリテマトーデス(SLE)皮膚症状や関節痛、臓器障害など多岐にわたる症状ステロイド療法、免疫抑制剤
多発性硬化症中枢神経系に病変を生じ、運動・感覚障害や視力障害などが発生免疫調整薬、リハビリテーション
重症筋無力症神経と筋肉間の伝達障害により筋力の低下や疲れやすさが顕著に表れる免疫グロブリン療法、胸腺摘出手術など

自身の疾患が指定難病に該当するかどうかは、各都道府県の難病相談窓口や医療機関で確認できます。

医療費助成を受けるための条件と重症度分類

医療費助成を受けるには、指定難病に該当していることに加え、各疾患ごとに定められた重症度分類を満たす必要があります。

重症度分類は疾患ごとに異なりますが、たとえば筋力テストや検査数値、症状の進行度など客観的な指標が用いられます。一定の重症度以上であれば医療費助成の対象になるものの、軽症と判定された場合は助成の範囲が変わる場合もあるので注意が必要です。

さらに、世帯の所得状況も影響します。医療費負担の上限額は所得区分により変わるため、重症度に加えて所得面での確認も重要です。

軽症者特例制度について

指定難病のなかには、医療技術が進歩していることや症状がコントロールしやすいこともあって、常に重症度が高いわけではないケースがあります。

軽症と診断された場合は医療費助成の対象外となることが一般的ですが、軽症者特例制度の要件を満たせば助成を受けられる可能性があります。

軽症者特例制度は、疾患による身体機能の低下や合併症などのリスクを考慮し、一定の条件を満たす場合に限り、軽症であっても医療費助成の対象とする仕組みです。

たとえば以下のような項目に該当する場合などをチェックすると、適用されることがあります。

  • 近い将来に高度な治療を必要とする恐れがある
  • 生活面での障害が顕著で、医療依存度が高い
  • 合併症により医療費が急増する可能性がある

制度の適用は各都道府県の判断や医師の診断書に基づくため、個別に相談することが大切です。

医療費助成の申請方法と必要書類

指定難病医療費助成を利用するには、診断から書類作成、提出までの手続きを整える必要があります。助成を受けるうえでの流れを把握するとスムーズに準備が進むでしょう。

申請時には多くの書類が必要になりますが、しっかりと要点を押さえれば後から追加書類を求められる手間も減らすことができます。

難病指定医による診断と臨床調査個人票の作成

まず重要なのは、指定難病を診断できる「難病指定医」にかかることです。難病指定医とは、厚生労働省の定める研修や認定を受けている医師を指し、通常の医師免許だけではなく所定の要件を満たしている点が特徴です。

この医師が、患者の症状や検査結果を総合して「臨床調査個人票」を作成します。

臨床調査個人票は以下のような項目を含みます。

  • 診断名、発症時期
  • 重症度の評価
  • 現在の治療方針
  • 合併症の有無
  • 日常生活の状況やADL(Activities of Daily Living)の評価

この臨床調査個人票が指定難病医療費助成の申請において最も重要な書類のひとつになります。

申請に必要な書類と準備するもの

申請にあたっては、臨床調査個人票のほかにも各種書類を揃えることになります。主に以下のような書類が必要となるケースが多いです。

  • 臨床調査個人票(難病指定医が作成)
  • 申請書(各自治体の所定フォーム)
  • 世帯収入を証明する書類(課税証明書や源泉徴収票など)
  • 健康保険証の写し
  • マイナンバー関連書類(通知カード、個人番号カードなど)
  • 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)

申請時期によっては書類の様式が変更されることもあるため、提出前に自治体の窓口や公式ホームページで最新版の様式を確認しておくことが大切です。

次の一覧で主な必要書類と、その取得先を簡単にまとめています。

主な書類と取得先

書類名取得先備考
臨床調査個人票難病指定医予約時に事前連絡しておくとスムーズ
申請書都道府県または市区町村窓口オンラインダウンロード対応のところもある
世帯の所得を証明する書類市区町村役所課税証明書や非課税証明書など、所得区分ごとに必要
健康保険証の写し自宅保管扶養家族の保険証などがあればその分も用意
マイナンバー関連書類自宅保管個人番号カードまたは通知カード+本人確認書類
本人確認書類(写真付き)自宅保管運転免許証やパスポートなど有効期限内のもの

申請窓口と手続きの流れ

申請窓口は、主に都道府県の担当部署や市区町村の保健所などが担っています。各自治体によって呼称が異なる場合がありますが、「難病相談支援センター」や「指定難病担当課」などが窓口になることが多いです。

手続きの流れはおおむね以下のとおりです。

  1. 難病指定医を受診し、臨床調査個人票を作成
  2. 自治体の窓口で必要書類を確認、収集
  3. 書類を揃えて申請を行う
  4. 審査結果の通知を待つ
  5. 受給者証が交付されたら医療機関などに提示

余裕を持って準備しておくと、治療やケアプランの立案を円滑に進めやすくなります。

受給者証の交付までの期間と有効期間

申請から受給者証の交付までには1か月から2か月程度を要することが一般的です。審査件数が多い時期や追加書類の提出が必要な場合は、さらに時間がかかる可能性があります。

受給者証が手元に届いてはじめて医療費助成を利用できるため、早めの申請が望ましいです。

受給者証の有効期間は通常1年となり、次回の更新時には再度臨床調査個人票を含む必要書類を提出する必要があります。症状の変化や世帯所得の変動によっては次年度の自己負担上限額が変更されることもあるため、更新時も十分に注意してください。

医療費助成の内容と自己負担額

指定難病医療費助成制度を利用すると、医療機関での外来・入院診療や医療処置に要する費用の一部が公的に補助されるため、自己負担が軽くなります。

ただし、助成の具体的な内容や自己負担額には所得区分や重症度区分が反映されます。どれほど負担軽減が見込めるのかを把握することが大切です。

自己負担上限月額の区分と計算方法

医療費助成制度では、所得や重症度によって自己負担上限月額が設定されます。これは、1か月あたりの医療費負担が一定の金額を超えないようにするための仕組みです。

たとえば次のような区分で上限額が変動することがあります(あくまでも例であり、実際には細かい所得区分が設定されています)。

自己負担上限月額(例)

所得区分重症患者軽症患者備考
低所得(住民税非課税)0円~2,500円2,500円~5,000円生活保護受給者などはさらに減免措置あり
中所得15,000円~1万円1万円~2万円世帯収入により詳細区分が存在
中所得22万円~3万円3万円~5万円家族構成や扶養状況で細分化
高所得3万円以上5万円以上重症でも一定程度の自己負担が継続

各自治体の規定に従い、課税証明書などを基に具体的な金額が決まります。医療機関の窓口で支払う金額が上限を超えた場合は、事後的に高額療養費制度と合わせて調整されることがあります。

高額かつ長期特例制度の活用法

重症疾患で治療が長期にわたる場合、医療費が大きな負担になることがあります。そのような場合には高額かつ長期特例制度が利用できる場合があります。

月ごとの医療費が連続で高額になる場合、上限額がさらに抑えられる可能性があります。

利用には一定の条件がありますが、主治医や担当窓口と相談しながら手続きを進めるとより大きな経済的負担の軽減が期待できます。

人工呼吸器等装着者の特例

慢性的に人工呼吸器や気管切開などの医療機器を必要とするケースでは、医療費助成制度のなかでも特別な扱いを受けることがあります。

たとえば在宅酸素療法を行う場合や、気管切開チューブの交換が定期的に必要な場合などが該当しやすいです。

この特例を受けることで、通常の自己負担上限額よりも低い上限額が設定される場合があり、在宅での療養を継続しやすくなります。

助成対象となる医療サービスの範囲

指定難病医療費助成制度の対象となる医療サービスの範囲は幅広く、外来診療・入院診療だけでなく、特定のリハビリテーションや検査費用なども含まれます。具体的には以下のようなものが対象になるケースがあります。

  • 難病に関連する診察料
  • 処方薬の費用
  • 検査料(血液検査、画像検査など)
  • リハビリテーション(心身機能維持や改善が目的の場合)
  • 医療処置料(注射、人工呼吸器管理など)

ただし、対象範囲かどうかは各病院や医療機関の窓口で確認をとるとより正確です。

助成対象外となる費用

医療費助成制度は便利ですが、すべての費用がカバーされるわけではありません。助成が適用されない項目も存在します。例えば、以下のようなものは対象外になることが多いです。

  • 保険外診療(自由診療)
  • 入院時の差額ベッド代
  • 交通費(タクシー代や公共交通機関の運賃など)
  • 食事療養費の自己負担分
  • 日常生活用具の購入費用(福祉制度で別途対応する場合がある)

指定難病医療費助成の範囲外の出費も見越して、家計管理や制度の併用を考えることが大切になります。

訪問診療における指定難病医療費助成の活用

訪問診療(在宅診療とも呼ばれます)は、医療機関への通院が困難な方にとって大切な選択肢になります。指定難病医療費助成制度と組み合わせることで、在宅での治療やケアが経済的にも取り入れやすくなります。

訪問診療のメリットと助成制度をうまく合わせて、より適切な療養環境を整えることを検討してみてください。

訪問診療で受けられる指定難病の医療と助成

指定難病患者が訪問診療を利用する場合、以下のようなメリットがあります。

  • 病院に出向く負担を軽減できる
  • 患者一人ひとりの生活状況を踏まえたケアを提供しやすい
  • 在宅酸素療法や人工呼吸器の管理などを自宅で実施できる
  • 家族や介護者との連携が密になりやすい

また、訪問診療の費用についても指定難病医療費助成制度の対象に含まれます。医師の往診費用や投薬費用などは原則保険診療として扱われますので、自己負担上限額を超えた分については助成が適用される仕組みです。

次の一覧は訪問診療時に必要となる費用の主な例をまとめたものです。

訪問診療に関連する費用例

費用項目内容助成対象の可能性
往診料医師が自宅に訪問する費用保険診療なので助成対象
診察料・検査料血液検査、注射、バイタルチェックなど保険診療なので助成対象
処方薬費在宅で使う薬の費用保険診療かつ指定難病関連なら助成対象
在宅酸素療法酸素濃縮器やボンベなどの使用費用保険診療かつ特例規定あり
交通費医療者が往診のためにかかった交通費保険診療外で実費負担

訪問診療の費用は保険診療の範囲内であれば助成を受けやすいですが、交通費など一部は別扱いになることに注意が必要です。

指定医療機関と非指定医療機関の違い

指定難病医療費助成制度を受けるためには、指定医療機関を利用する必要があります。指定医療機関とは、厚生労働省や都道府県が「難病医療費助成の実施に適した体制を持つ」と認めた医療機関のことを指します。

指定を受けていない医療機関で治療を受ける場合、助成の対象にならない可能性が高いので注意してください。

ただし、地域によっては指定医療機関が少ない、あるいは移動が難しいなどの理由で選択肢が限られることがあります。そのような場合は担当の保健所や難病相談支援センターに問い合わせて、状況に応じた対応策を尋ねるとよいでしょう。

在宅での難病患者の医療費負担軽減策

在宅で難病患者をケアする際には医療費だけでなく、生活支援サービスや福祉サービスを組み合わせることがポイントになります。

医療費助成制度以外にも、障害者総合支援法によるヘルパー派遣や福祉用具の貸与などを利用することで、身体的・経済的負担を軽減できます。住環境の改修費などは別の制度でカバーできることもあるので、包括的に情報収集を行うことが重要です。

在宅ケアにおいては、主治医や医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどと相談しながら進めると多角的な支援策を組み合わせやすくなります。

利用可能な支援制度を整理しながら、必要とするサービスを的確に選択すると安心感も増します。

訪問看護と訪問リハビリテーションの助成

訪問診療とともに利用が増えているのが、訪問看護や訪問リハビリテーションです。看護師やリハビリ専門職(理学療法士、作業療法士など)が自宅へ伺い、以下のようなサービスを提供します。

  • 症状観察や緊急時の対応
  • 投薬管理や医療機器の操作サポート
  • 生活動作の訓練や身体機能の維持・向上を目指すプログラム
  • 家族に対する介護技術の指導

訪問看護や訪問リハビリテーションも基本的に保険診療として扱われるため、指定難病医療費助成制度の対象に含まれます。

ただし、サービス内容によっては介護保険の対象となる場合もあるため、利用する制度の重複や優先順位を整理したうえで手続きを進めるとスムーズです。

介護施設での指定難病医療費助成の利用方法

難病患者が介護施設を利用するケースでは、介護保険と医療費助成制度をうまく併用することが大切になります。

特に日常生活の大半を施設で送る方は、施設サービスの費用と医療費の両方に注意を払いながら支援制度を組み合わせる必要があります。

介護保険と指定難病医療費助成の併用

指定難病のある方でも、要介護認定を受けていれば介護保険のサービスが利用できます。ただし、介護保険でカバーされる部分と、指定難病医療費助成制度でカバーされる部分は重ならないように線引きされています。

医療的なケアに関する費用は医療保険や難病助成制度で、日常生活上の介助や施設サービス費用は介護保険で賄うという形が多いです。

以下の例は、介護保険と医療費助成制度の対象範囲を分けて示したものです。

介護保険と医療費助成制度の対象範囲の一例

サービス・費用介護保険でのカバー例指定難病医療費助成制度でのカバー例
日常的な介助入浴・排泄・食事などの支援医学的管理が必要な場合は助成対象になりうる
施設入所時の介護サービス費施設サービス費用の自己負担分を介護保険で一部負担施設での専門的医療処置は医療費助成の対象
リハビリテーション介護保険リハビリ(心身機能訓練など)難病に特化した医療的リハビリは助成対象
投薬や医療器具の管理介護保険の枠外指定難病が原因の投薬や医療処置は助成対象
施設での生活関連費(食費など)介護保険の対象外、自己負担医療保険外の費用となるため助成対象外

施設入所中に利用できる医療費助成サービス

介護施設は医療機関ではないため、通常の治療行為は行われません。しかし、在宅と同様に訪問診療や訪問看護を施設内で受けることが可能な場合があります。

施設入所中であっても、指定難病医療費助成制度の認定を受けたうえで、以下のような医療サービスを受けるときには助成が適用されることがあります。

  • 診察・検査・投薬
  • 専門的な医療処置(人工呼吸器管理、腹膜透析など)
  • 施設への往診費用

施設と医療機関の連携体制を確認し、どの部分が介護保険の範囲で、どの部分が医療費助成の範囲なのかを明確にしておくと金銭面での混乱を回避しやすくなります。

介護職員が知っておくべき医療費助成の知識

介護施設で働く職員にとって、指定難病医療費助成制度を理解しておくことは重要です。入所者やその家族から助成制度について質問を受けることもありますし、医療的ケアが必要な方と接する機会も増えています。

以下のようなポイントを知っておくとよいでしょう。

  • 対象疾患や重症度によって助成内容が変わること
  • 介護保険と医療保険・公費助成がどのように区分されるか
  • 受給者証の有効期限や更新手続きのタイミング
  • 施設への訪問診療や訪問看護をどう受けるか

疑問点や不明点がある場合は、施設管理者や医療ソーシャルワーカーを通じて専門機関に問い合わせることが一般的です。

家族や介護者向けの支援制度

難病のある方を介護する家族や介護者にとっても、経済的・精神的なサポートは欠かせません。

家族が仕事と介護を両立するための休暇制度、介護休業給付などの雇用保険制度の利用、あるいは障害福祉サービスや難病相談支援センターでの情報提供など、多面的な支援策があります。

家族が支援制度をうまく活用することで、難病患者本人だけでなく、周囲の人々の生活を守ることにもつながります。

介護に追われるあまり、制度を知らずに過剰な負担を抱えてしまうこともあるため、定期的に情報収集する姿勢が大切です。

よくある質問と注意点

指定難病医療費助成制度は、患者の症状や生活スタイルに合わせた負担軽減を図るうえで重要な仕組みですが、申請や更新、手続き上での細かな疑問や落とし穴もあります。

きちんと理解しておかないと「思っていた助成が受けられない」「期限が切れてしまった」という事態に陥ることもあります。

受給者証の更新手続きについて

多くのケースで受給者証の有効期間は1年です。更新時には再度、臨床調査個人票を含む必要書類を提出し、診断や所得状況を再確認する流れになります。

この手続きを行わないと、有効期限が切れたあとに医療費助成を受けられなくなる恐れがあります。

更新時期が近づいたら、自治体から通知が届く場合が多いですが、通知がなくても自分で早めに動くほうが安心です。特に診察の予約が取りにくい病院や専門医のもとに通っている場合は、時間に余裕を持って行動すると良いでしょう。

転居時や医療機関変更時の手続き

医療費助成の申請は居住地の自治体で行うため、転居によって管轄が変わると手続きが必要になります。住所変更後は新しい居住地での申請や、保険証の変更手続きも欠かせません。

また、通院先を変更する場合も「指定医療機関」に該当しているかを確認する必要があります。

転居や医療機関変更時の手続きを怠ると、医療費助成が適用されなくなる可能性があるため、転居が決まった段階で早めに手続きを検討することが大切です。

他の公費助成制度との併用について

指定難病医療費助成制度以外にも、公費による医療費支援制度は複数存在します。小児慢性特定疾患や障害者医療費助成など、それぞれ対象となる疾患や年齢層が異なる場合があります。

併用によって自己負担額をさらに抑えられる可能性がある一方で、手続きの重複や混在が生じやすい点も考慮しましょう。複数の制度を利用する場合は、主治医や自治体の担当窓口としっかり相談し、どの制度でどの範囲をカバーできるか整理しておくとスムーズです。

次の一覧は、よく利用される公費助成制度を簡単に比較したものです。

主な公費助成制度比較

制度名対象者主な助成範囲手続き先
小児慢性特定疾患18歳未満(一定条件で20歳未満)難病に類する小児慢性疾患都道府県または市区町村
重度障害者医療費助成身体障害者手帳などを有する人医療費自己負担の助成都道府県または市区町村
自立支援医療(精神通院)精神疾患で通院治療が必要な人医療保険自己負担の減額保健所や福祉事務所

医療費助成制度の情報の入手方法

助成制度の運用は厚生労働省が中心となって行っていますが、窓口業務は都道府県や市区町村など各自治体で細分化されています。最新の情報や手続きの詳細を得るには、以下のような方法で問い合わせるとよいでしょう。

  • 自治体の担当課(難病支援担当など)
  • 難病相談支援センター
  • 厚生労働省の公式ホームページ
  • 患者会や支援団体の情報提供

頻繁に見直される制度なので、自分で調べるだけでなく、専門家や医療機関との連携を密にすることが重要です。

申請が却下された場合の対応策

重症度判定や所得基準などの要件を満たさず、申請が却下された場合でも、再審査や別の公的支援制度の利用を検討する余地があります。

医師の診断書内容や所得証明の時期など、見直しによって要件をクリアする場合もあるため、諦めずに担当窓口や支援団体に相談してください。

また、症状が進行して重症度が変わった場合や、世帯の経済状況に変化があった場合には再度申請できるケースもあります。不要と思ってもこまめに情報更新をしておくことで、将来的に助成を受けられる可能性を高められます。

今回の内容が皆様のお役に立ちますように。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 所長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 所長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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