訪問診療2割・3割負担の月額費用目安|現役並み所得者の高額療養費と上限

訪問診療2割・3割負担の月額費用目安|現役並み所得者の高額療養費と上限

訪問診療を検討しているご家族にとって、毎月の費用がどれくらいかかるのかは切実な問題でしょう。2割負担の方で月額約12,000円〜14,000円、3割負担の方で約19,000円〜21,000円が一つの目安となります。

ただし、現役並み所得に該当する方は窓口負担が3割になるため、思ったより高額になるケースも珍しくありません。

そんなときに頼りになるのが高額療養費制度です。所得区分に応じた月額上限が定められており、医療費がどれだけかさんでも自己負担には天井があります。

この記事では、訪問診療における2割・3割負担の費用内訳から、現役並み所得者の高額療養費の上限額まで、具体的な数字を交えてわかりやすく解説します。

目次

訪問診療の2割負担・3割負担で毎月の費用はどれくらい変わるのか

月2回の定期訪問を受ける標準的なケースで比較すると、2割負担の方は月額約12,000円〜14,000円、3割負担の方は約19,000円〜21,000円が目安です。

負担割合が1割違うだけで、年間にすると約8万円〜10万円もの差が生じます。

訪問診療の基本診療費はどのように計算されるのか

訪問診療の費用は「基本診療費」と「追加加算される診療費」の合計に、医療費の負担割合を掛けて算出します。

基本診療費には、在宅患者訪問診療料(1回あたり888点、1点=10円で8,880円)と、在宅時医学総合管理料(月1回の包括的な管理料)が含まれます。

在宅時医学総合管理料は、自宅で1人だけ訪問を受ける場合と、施設で複数人を同時に診る場合で金額が異なる仕組みです。自宅で個別に診察を受けるケースが費用としては高くなります。

2割負担になる人と3割負担になる人の違い

医療費の負担割合は年齢と所得によって決まります。70歳以上75歳未満の方は原則2割負担ですが、課税所得が145万円以上ある方は「現役並み所得者」に分類され、3割負担となります。

70歳以上の負担割合と所得区分

区分負担割合所得の目安
現役並み所得者3割課税所得145万円以上
一般所得者2割課税所得28万円以上145万円未満
一般(低所得を除く)1割課税所得28万円未満

75歳以上の後期高齢者医療制度での負担割合

75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度では、原則1割負担です。ただし、年金収入とその他の合計所得金額が一定額以上(単身世帯で200万円以上)の場合は2割負担、現役並み所得に該当すれば3割負担になります。

2022年10月から2割負担の区分が新設されたことで、従来1割だった方の一部が2割に引き上げられました。

配慮措置として2025年9月末まで外来の負担増加額が月3,000円に抑えられていましたが、2025年10月以降はこの措置が終了しています。

訪問診療の月額費用を左右する診療報酬の内訳と加算項目

毎月の請求額は基本料だけでは決まりません。血液検査や処方箋の発行、緊急往診などの加算項目が加わることで、費用は大きく変動します。どんな場面で追加費用が発生するのかを把握しておくことが、家計管理の第一歩です。

在宅患者訪問診療料と在宅時医学総合管理料の仕組み

在宅患者訪問診療料は、医師が患者さんの自宅や施設を訪問して診療を行うたびに算定される費用です。月2回の訪問であれば、この料金が2回分計上されます。

在宅時医学総合管理料は、24時間の連絡体制の確保や緊急往診の対応体制など、包括的な在宅療養支援を評価するものです。月1回の算定で、自宅で1人だけ訪問する場合は3,700点(37,000円)前後になります。

検査・処置・緊急往診で追加される費用

定期的な血液検査や尿検査、心電図検査などが行われると、それぞれ数百点から数千点の加算がつきます。

また、夜間や休日に緊急で往診を依頼した場合は往診料(720点〜)に加えて時間外加算が発生するため、1回の往診だけで数千円〜1万円以上の追加になるときもあります。

酸素療法や中心静脈栄養、人工呼吸器の管理などの特殊な医療処置が必要な方は、別途管理料が毎月加算される点も覚えておきましょう。

処方箋料・薬剤費は訪問診療の請求に含まれるのか

処方箋の発行自体は訪問診療の費用に含まれますが、調剤薬局で受け取る薬代は別会計です。訪問診療の請求書に載る金額だけで安心していると、薬代を含めた実際の月額負担を見誤るかもしれません。

慢性疾患で複数の薬を服用している方は、薬代だけで毎月数千円〜1万円以上になることも珍しくないため、訪問診療費と合算して家計への影響を見積もることが大切です。

訪問診療の月額費用目安(月2回訪問・自宅で1人診察の場合)

負担割合基本診療費の目安検査等を含む場合
1割負担約6,000〜7,000円約7,000〜10,000円
2割負担約12,000〜14,000円約14,000〜20,000円
3割負担約19,000〜21,000円約21,000〜30,000円

現役並み所得者とは誰が該当するのか|訪問診療で3割負担になる基準

70歳以上であっても、一定以上の所得がある方は「現役並み所得者」として3割負担が適用されます。

課税所得145万円以上が基本的な判定基準ですが、収入額による例外規定もあるため、自分がどの区分に該当するかを正確に確認することが重要です。

課税所得145万円以上が現役並み所得者の原則ライン

現役並み所得者の判定は、住民税の課税所得(各種控除後の所得金額)が145万円以上かどうかで行います。会社員であれば標準報酬月額28万円以上に相当し、国民健康保険では課税所得145万円以上が目安となります。

年金を受給している方であっても、年金収入に不動産所得や事業所得が加わると課税所得が145万円を超え、現役並み所得者に分類される場合があります。

前年の確定申告や住民税の決定通知書を確認すると、自分の区分がわかります。

年収383万円未満なら3割から2割に戻せる「基準収入額適用申請」

課税所得が145万円以上であっても、実際の年収が一定額未満であれば、申請によって負担割合を2割に変更できる特例があります。単身世帯の場合は年収383万円未満、夫婦2人世帯の場合は合計年収520万円未満が対象です。

現役並み所得者の3区分と高額療養費の上限額

区分課税所得自己負担限度額(月額)
現役並みIII690万円以上252,600円+(医療費-842,000円)×1%
現役並みII380万円以上690万円未満167,400円+(医療費-558,000円)×1%
現役並みI145万円以上380万円未満80,100円+(医療費-267,000円)×1%

現役並み所得者でも3割負担を回避できる例外規定

先述の基準収入額適用申請のほかにも、同じ世帯の被保険者の収入合計が520万円未満であれば、負担割合が変更になるケースがあります。

配偶者が後期高齢者医療制度に移行した際などは判定がやり直されるため、変更届を忘れずに提出することが大切です。

負担割合の判定は毎年8月に見直されますが、所得の変動があった場合は随時申請が可能です。定年退職や年金生活への移行で収入が大幅に下がった年は、早めに市区町村窓口に相談してみてください。

高額療養費制度を使えば訪問診療の月額負担には天井がある

医療費が高額になっても、高額療養費制度を利用すれば自己負担は所得に応じた上限額で止まります。訪問診療の費用も対象に含まれるため、毎月の支払いが家計を圧迫しすぎない仕組みが整っています。

高額療養費制度は訪問診療にも適用される

高額療養費制度とは、ひと月(1日〜末日)の医療費自己負担額が所定の限度額を超えた場合に、超過分が公的医療保険から払い戻される仕組みです。

訪問診療も保険診療の一部なので、通院や入院と同様にこの制度の対象となります。

ただし、差額ベッド代や入院時の食事代、先進医療の技術料などは対象外です。訪問診療の場合は基本的にすべて保険診療なので、請求された金額のほぼ全額が高額療養費の計算に含まれると考えてよいでしょう。

70歳以上の方に設けられている外来限度額の特例

70歳以上の方には、外来のみの自己負担上限額が別途定められています。訪問診療は「外来」扱いとなるため、この外来限度額が直接関係してきます。

一般所得者(2割負担)の場合、外来の個人上限は月額18,000円です。つまり、訪問診療と通院の外来費用を合わせて月18,000円を超えた分は、申請すれば還付を受けられます。

年間の外来上限額は144,000円に設定されています。

69歳以下で3割負担の方が知っておくべき上限額

40代や50代で訪問診療を受ける方など、69歳以下で3割負担のケースも存在します。この年齢層では、高額療養費の所得区分が5段階に分かれています。

たとえば年収約370万円〜約770万円の区分(区分ウ)に該当する方の場合、月額上限は80,100円+(総医療費-267,000円)×1%で計算されます。

訪問診療の月額負担がこの計算式を超えることはあまり多くありませんが、他の医療費と合算すれば上限に達する可能性も十分あるでしょう。

70歳以上・高額療養費の自己負担限度額一覧

所得区分外来(個人)外来+入院(世帯)
現役並みIII252,600円+1%252,600円+1%
現役並みII167,400円+1%167,400円+1%
現役並みI80,100円+1%80,100円+1%
一般18,000円57,600円
住民税非課税II8,000円24,600円
住民税非課税I8,000円15,000円

多数回該当と世帯合算|訪問診療の長期利用で負担はさらに軽くなる

訪問診療は毎月継続して受けるものです。高額療養費の上限に3回以上到達すると、4回目以降は「多数回該当」として上限額がさらに引き下げられます。

家族の医療費を合算する仕組みも併用すれば、世帯全体の負担をぐっと抑えられます。

4か月目から上限が下がる「多数回該当」の条件

過去12か月以内に高額療養費の支給を3回以上受けた場合、4回目からは自己負担限度額がさらに低い金額に変わります。

たとえば現役並みI(課税所得145万円以上380万円未満)の方であれば、通常月の上限80,100円+1%が、多数回該当の月には44,400円に引き下げられます。

訪問診療を毎月受けている方は、数か月のうちに多数回該当の恩恵を受けられるケースが多いといえます。

同じ保険に加入する家族の医療費を合算できる「世帯合算」

同じ公的医療保険に加入している家族がいる場合、それぞれの自己負担額を合算して高額療養費の判定を受けられます。

70歳以上の方は金額の条件なく合算できますが、69歳以下の方は1つの医療機関で21,000円以上の自己負担がある分のみ合算対象となる点に注意が必要です。

多数回該当時の自己負担上限(現役並み所得者・70歳以上)

  • 現役並みIII:140,100円(通常月は252,600円+1%)
  • 現役並みII:93,000円(通常月は167,400円+1%)
  • 現役並みI:44,400円(通常月は80,100円+1%)

医療費と介護費の両方がかさむなら「高額介護合算療養費」も活用

訪問診療を受けている方は、同時に介護保険サービスを利用していることも少なくありません。

医療保険と介護保険の年間自己負担を合算して一定額を超えた場合、超過分が払い戻される「高額医療・高額介護合算療養費制度」も用意されています。

計算期間は毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間です。現役並みIの方であれば年間67万円が上限となり、一般所得者であれば年間56万円が限度額となります。

訪問診療と介護サービスを並行して利用するご家庭は、年間の合計額を意識しておくとよいでしょう。

限度額適用認定証とマイナ保険証で窓口負担を抑える方法

高額療養費は原則として「いったん全額を支払い、後から超過分を申請して払い戻す」制度です。

しかし、限度額適用認定証やマイナ保険証を活用すれば、最初から窓口での支払いを上限額までに抑えられます。

限度額適用認定証を事前に取得しておけば立て替え不要

加入している保険者(健康保険組合・協会けんぽ・市区町村など)に申請して「限度額適用認定証」を取得すると、訪問診療の請求時点で自己負担限度額までの支払いで済みます。

高額療養費の払い戻しを待つ数か月間の立て替え負担がなくなるため、家計のキャッシュフローが安定するでしょう。

70歳以上で一般区分の方は、高齢受給者証によって自動的に限度額が適用されるので認定証は不要です。

一方で、現役並みIまたは現役並みIIに該当する方は認定証の申請が必要になりますので注意してください。

マイナ保険証なら認定証がなくても上限額で止まる

マイナンバーカードを健康保険証として利用登録している場合、医療機関の窓口で「限度額情報の表示」に同意するだけで、自己負担限度額が自動的に適用されます。紙の限度額適用認定証を持ち歩く必要がなくなりました。

ただし、訪問診療を行うクリニックがオンライン資格確認に対応している必要があります。対応状況は事前に医療機関に確認しておくと安心です。

申請を忘れた場合でも2年以内なら払い戻しが可能

高額療養費の申請をせずに窓口で全額を支払ってしまっても、診療月の翌月から2年以内であれば遡って請求できます。

保険者によっては自動的に払い戻し通知が届く場合もありますが、届かないケースもあるため、自分から確認する姿勢が大切です。

  • 国民健康保険:市区町村の保険年金課に申請
  • 協会けんぽ:各都道府県支部に支給申請書を郵送
  • 健康保険組合:勤務先の担当部署または組合に申請
  • 後期高齢者医療制度:市区町村の後期高齢者医療担当窓口に申請

訪問診療費と介護保険の居宅療養管理指導費を混同しない

訪問診療の請求書を見ると、医療保険の費用とは別に「居宅療養管理指導費」が記載されている場合があります。

居宅療養管理指導費は介護保険の費用であり、高額療養費制度の計算には含まれません。両者の違いを正しく把握しておくことで、思わぬ出費に戸惑わずに済みます。

居宅療養管理指導費は介護保険で算定される

費用項目適用される保険月額目安(1割負担)
訪問診療料・管理料医療保険約6,000〜7,000円
居宅療養管理指導費介護保険約600〜1,200円
訪問看護費医療保険または介護保険内容により異なる

要支援・要介護の認定を受けている方が訪問診療を利用すると、ケアマネジャーへの情報提供や療養上の指導にかかる費用が介護保険の「居宅療養管理指導費」として請求されます。

医師による居宅療養管理指導は月2回まで算定され、1割負担の方で1回あたり約300円〜600円です。

医療保険と介護保険の自己負担を合算する制度も使える

前述の高額医療・高額介護合算療養費制度を活用すれば、医療保険と介護保険の年間自己負担を合計して上限を超えた分が払い戻されます。

訪問診療の医療費だけでなく、ヘルパーの利用料やデイサービスの費用なども合算の対象に含まれるため、複数のサービスを利用している方にとっては見逃せない制度でしょう。

医療費控除で所得税・住民税の負担を減らす手段も忘れない

1年間(1月〜12月)に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合、または総所得金額の5%を超えた場合は、確定申告で医療費控除を受けられます。高額療養費で払い戻された金額を差し引いた後の自己負担額が対象です。

訪問診療の費用だけでなく、通院にかかった交通費や薬代、介護保険の一部サービス費用も対象に含まれます。

家族全員分を合算できるため、世帯として医療費が多いご家庭は毎年忘れずに申告することで、税金の還付を受けられるかもしれません。

よくある質問

訪問診療の2割負担と3割負担では月額費用にどれくらいの差があるのか?

月2回の定期訪問を受ける標準的なケースでは、2割負担の方は月額約12,000円〜14,000円、3割負担の方は約19,000円〜21,000円が基本診療費の目安です。

検査や処置が追加されると、2割負担で約14,000円〜20,000円、3割負担で約21,000円〜30,000円まで上がることもあります。

年間に換算すると約8万円〜10万円ほどの差になりますが、高額療養費制度を活用すれば所得に応じた上限額で負担が止まるため、実質的な差はもう少し小さくなる場合もあるでしょう。

訪問診療を受けている現役並み所得者の高額療養費の上限額はいくらになるのか?

現役並み所得者は3つの区分に分かれており、それぞれ月額の自己負担上限が異なります。

現役並みI(課税所得145万円以上380万円未満)は80,100円+(医療費-267,000円)×1%、現役並みII(380万円以上690万円未満)は167,400円+1%、現役並みIII(690万円以上)は252,600円+1%です。

訪問診療の費用だけでこれらの上限に達することは多くありませんが、入院や他の通院費を合算すれば上限を超える場合もあります。過去12か月で3回以上上限に達した方は「多数回該当」となり、4回目以降はさらに低い金額に引き下げられます。

訪問診療の費用に対して限度額適用認定証は使えるのか?

訪問診療の費用にも限度額適用認定証は使えます。事前に保険者へ申請して認定証を取得し、訪問診療を行う医療機関に提示すれば、毎月の請求が自己負担限度額までに抑えられます。

70歳以上で一般区分に該当する方は、高齢受給者証で自動的に限度額が適用されるため認定証は不要です。

現役並みIや現役並みIIに該当する方は、認定証を取得していないと窓口で全額を支払うことになり、あとから払い戻し申請をする手間が生じます。

訪問診療の費用と介護サービスの費用は合算して高額療養費の対象になるのか?

毎月の高額療養費制度は医療保険の自己負担額のみが対象であり、介護保険のサービス費用は含まれません。

ただし、年間の合計で見ると「高額医療・高額介護合算療養費制度」を利用すると、医療費と介護費の合算額が上限を超えた分が払い戻されます。

計算期間は毎年8月から翌年7月までの1年間です。訪問診療と介護サービスの両方を利用している世帯は、この制度を活用することで実質的な負担を軽減できる場合があります。加入している保険者に申請が必要ですので、忘れずに手続きしてください。

訪問診療の費用は医療費控除の対象に含まれるのか?

訪問診療で支払った費用は医療費控除の対象に含まれます。高額療養費で払い戻された金額を差し引いた後の自己負担額が、1年間で10万円(または総所得金額の5%)を超えた場合に、確定申告を行うと所得税や住民税の負担を減らせます。

対象になるのは訪問診療の自己負担額だけではありません。薬局で支払った薬代や通院の交通費、介護保険の一部サービス費用なども合算可能です。

家族全員の医療費を合わせて申告できるため、世帯として年間の医療費が多いご家庭は積極的に活用しましょう。

今回の内容が皆様のお役に立ちますように。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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