夫婦で訪問診療を利用する場合の費用減額|同一建物・同一日診療のルール

夫婦で訪問診療を利用する場合の費用減額|同一建物・同一日診療のルール

夫婦そろって訪問診療を受けると、診療費はどうなるのか気になっている方は多いでしょう。

同じ家に住むご夫婦が同一日に訪問診療を受ける場合、1人目は通常の訪問診療料(888点)を算定し、2人目は再診料のみで済むため、2人分の合計費用は個別に受けるよりも抑えられます。

ただし、マンションや施設で別室に住んでいるケースでは「同一建物居住者」の扱いとなり、1人あたりの訪問診療料が213点に減額されるものの、2人ともこの点数が適用されるため費用構造が変わってきます。

この記事では、同一患家と同一建物居住者のルールの違い、在宅時医学総合管理料への影響、そして夫婦で訪問診療を賢く活用するための具体的なポイントをわかりやすく解説します。

目次

夫婦で訪問診療を受けると費用はどれくらい安くなる?

夫婦が同じ自宅で同一日に訪問診療を受けた場合、2人目の診療費は大幅に抑えられます。

1人目には通常の在宅患者訪問診療料1(888点)が算定され、2人目は「同一患家」の扱いとなり、再診料(75点)と外来管理加算(52点)程度で済むためです。

「同一患家」とは夫婦やご家族の同居を指すルール

同一患家とは、1つの住まいに暮らすご家族(夫婦・親子など)を同一日に診察する場合に適用される考え方です。一軒家で暮らすご夫婦が典型的な例にあたります。

この場合、医師の移動は1回で済むため、1人目は「同一建物居住者以外」の訪問診療料(888点)を算定し、2人目以降は訪問診療料そのものを算定せず、初診料または再診料のみを計上します。

結果として、2人目のご家族は費用が大きく軽減されるのです。

具体的な金額差はどのくらい生まれるのか

1点は10円で換算するため、1人目の訪問診療料は8,880円相当となります。一方、2人目は再診料75点(750円)に外来管理加算52点(520円)を加えた1,270円程度が基本費用の目安です。

夫婦それぞれが別の日に訪問診療を受けた場合と同一日に受けた場合の比較

診療パターン1人目2人目
別々の日に受診888点(8,880円)888点(8,880円)
同一日に受診(同一患家)888点(8,880円)再診料等 約127点(1,270円)

自己負担額への影響をイメージしてみる

上記はあくまで保険点数上の数字です。実際の窓口負担は、1割負担の方であれば約10分の1、3割負担の方は約10分の3になります。たとえば1割負担の場合、2人目の窓口負担は100円台で収まるケースもあるでしょう。

ただし、検査や処置が加われば追加費用が発生するため、上記はあくまで訪問診療料部分の目安としてお考えください。

「同一建物居住者」の判定で訪問診療料が変わる仕組み

訪問診療の点数を大きく左右するのが「同一建物居住者かどうか」の判定です。

同じマンションや高齢者施設に住む複数の患者さんを同一日に診察すると、全員が「同一建物居住者」に該当し、1人あたりの訪問診療料が888点から213点に引き下げられます。

同一建物居住者に該当する住まいの条件

同一建物とは、1つの屋根の下にある建物を指します。マンション、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホーム、グループホームなどの施設が代表的な例です。

一方、渡り廊下でつながっている別棟や、同一敷地内でも棟が異なるマンションは別の建物として扱われます。この判定は建物の構造に基づいているため、お住まいの形態によって適用が分かれるのです。

夫婦だけが同一建物で訪問診療を受けた場合の例外

マンションや施設内であっても、同じ部屋に住むご夫婦だけを同一日に診察する場合は少し事情が異なります。同室のご夫婦は「同一患家」として扱われ、1人目は888点、2人目は再診料等のみとなるケースがあります。

しかし注意が必要なのは、同じ建物内に他にも訪問診療の対象患者がいる場合です。

たとえば夫婦以外にもう1人別室の患者さんを同一日に診察すると、全員が「同一建物居住者」扱いとなり、1人あたり213点になります。

「同一建物居住者以外」に戻れる3つの除外条件

同一建物でも、以下の条件に該当する患者さんは「同一建物居住者」のカウントから除外できます。

1つ目は往診を受けた患者さん、2つ目は末期の悪性腫瘍と診断されて訪問診療を開始してから60日以内の患者さん、3つ目は死亡日からさかのぼって30日以内の患者さんです。

これらの除外条件に該当する方がいれば、残りの患者数が1人だけになる場合、その方は888点の「同一建物居住者以外」として算定できる可能性があります。ご家族の状況に合わせて医療機関に確認してみてください。

同一建物居住者の判定が変わる主なケースまとめ

状況判定区分訪問診療料
同室夫婦のみ(他に患者なし)同一患家1人目888点 / 2人目は再診料等
同室夫婦+別室の患者さんも同日診察同一建物居住者全員213点
マンション別室の夫婦を同日診察同一建物居住者全員213点
一軒家の夫婦を同日診察同一患家1人目888点 / 2人目は再診料等

在宅時医学総合管理料(在医総管)は夫婦でも個別に算定できる

訪問診療の費用には、訪問診療料に加えて「在宅時医学総合管理料(在医総管)」が大きな割合を占めています

ご夫婦が同一患家であれば、この管理料はそれぞれが「単一建物診療患者数1人」の区分で算定できるため、1人あたりの管理料は減額されません。

在宅時医学総合管理料とは毎月かかる医学管理の費用

在医総管は、訪問診療を計画的に行う医師が患者さんの総合的な医学管理を担うことに対して、月1回算定する報酬です。診察のたびに発生する訪問診療料とは異なり、月額で計算される管理料となっています。

この管理料は、単一建物内で医学管理を行う患者数によって「1人の場合」「2〜9人の場合」「10人以上の場合」の3段階に分かれており、人数が多いほど1人あたりの点数は低くなります。

同一患家の夫婦はそれぞれ「1人扱い」で算定される

一軒家に住むご夫婦のように同一患家に該当するケースでは、在医総管の算定において、それぞれの患者さんを「単一建物診療患者数1人の場合」として扱えます。

つまり、2人であっても「2〜9人の場合」の低い点数にはならないのです。

住まい別の在宅時医学総合管理料の算定区分

住まいの形態単一建物診療患者数適用される区分
一軒家の夫婦各1人と算定「1人の場合」の点数
施設で同室の夫婦のみ各1人と算定「1人の場合」の点数
施設で他の患者さんもいる場合建物全体でカウント人数に応じた区分

在医総管は月2回訪問の場合で数千点にのぼり、訪問診療料と合わせて在宅医療費の中核を占めます。この点数が「1人の場合」のまま算定できることは、医療機関にとっても患者さんにとっても費用設計に影響する大切なポイントです。

ご夫婦でかかりつけの訪問診療医をお探しの際は、在医総管がどの区分で算定されるか事前に確認しておくと安心でしょう。

一軒家に住むご夫婦と施設に入居する夫婦で費用が異なる理由

同じ「夫婦で訪問診療を受ける」場合でも、一軒家にお住まいのご夫婦と施設に入居されているご夫婦では適用される診療報酬の区分が異なります。住まいの形態によって「同一患家」なのか「同一建物居住者」なのかが分かれるためです。

一軒家のご夫婦は同一患家の適用で費用が抑えやすい

一軒家に暮らすご夫婦を同じ日に診察した場合、同一患家のルールが適用されます。1人目は訪問診療料888点、2人目は再診料75点などの基本的な費用だけで済むため、2人合計の費用は比較的低く抑えられます。

在医総管もそれぞれが「単一建物診療患者数1人」で算定できるので、管理料の面でも不利になることはありません。一軒家暮らしのご夫婦にとっては経済的なメリットが大きい仕組みといえます。

有料老人ホームやサ高住に入居する夫婦の費用は状況次第で変わる

施設に入居されているご夫婦の場合、同じ部屋にお二人だけで暮らし、かつその日に他の入居者への訪問診療がなければ、同一患家として扱われる余地があります。

一方、同一日に別の入居者にも診察が行われると、全員が「同一建物居住者」扱いになります。

施設では通常、複数の入居者を同一日にまとめて診察するケースが多いため、実際には「同一建物居住者」の213点が適用されることがほとんどです。

マンションなどの集合住宅に住む夫婦も注意が必要

マンションやアパートに住むご夫婦の場合、同じ部屋に暮らしていれば一軒家と同様の同一患家扱いとなります。

ただし、同じマンション内の別の部屋にも訪問診療を受けている患者さんがいて、同一日に診察が重なると「同一建物居住者」に該当してしまいます。

訪問日の調整を医療機関と相談することで、同一建物居住者の適用を避けられるケースもあるでしょう。

  • 一軒家のご夫婦は同一患家のルールで1人目888点・2人目は再診料等
  • 施設では他の入居者との診察日が重なると全員213点に変わる
  • マンションでも同じ部屋の夫婦だけなら同一患家が適用される
  • 訪問日の調整で費用区分が変わる場合がある

同一日に訪問診療と往診が重なった場合の費用はどうなる?

ご夫婦の一方が定期的な訪問診療を受け、もう一方が急な体調変化で往診を要請するケースも少なくありません。

この場合、往診を受けた患者さんは「同一建物居住者」のカウントから除外されるため、訪問診療を受けた側は888点の「同一建物居住者以外」で算定できる可能性があります。

往診と訪問診療が同一日に発生する典型的なケース

たとえば、夫の定期的な訪問診療の日に、妻が急に発熱して往診を依頼したとします。この場合、夫は訪問診療料888点を算定し、妻は往診料720点と再診料75点を算定するのが基本です。

往診を受けた妻は「同一建物居住者」のカウントに含めないため、たとえ施設などの同一建物であっても、夫側の訪問診療料が213点に引き下げられることはありません。

往診を受ける側の費用の内訳

往診料は基本720点で、緊急往診加算(平日の場合750点)、夜間・休日往診加算、深夜往診加算などが状況に応じて上乗せされます。往診はあくまで患者さんやご家族の求めに応じた臨時の診察であり、計画的な訪問診療とは別の報酬体系です。

訪問診療と往診が同一日に重なった場合の費用イメージ

対象者診療種別主な算定点数
夫(定期訪問)訪問診療888点
妻(急な体調変化)往診720点+再診料75点

この仕組みを知っておくだけで安心感が違う

ご夫婦で訪問診療を受けている方のなかには、片方が急変した際に「費用がどうなるかわからず往診をためらう」というケースもあります。

しかし、往診は同一建物居住者のカウントに影響しないため、もう一方の訪問診療料が不利に変わることは基本的にありません。

緊急時には遠慮なく往診を依頼し、日常的な体調管理は訪問診療で継続するという使い分けを意識しておくとよいでしょう。

夫婦で訪問診療を始めるときに確認しておきたい手続きと費用の目安

ご夫婦で訪問診療を検討するにあたっては、契約前にいくつか確認すべきポイントがあります。

同一患家になるのか同一建物居住者になるのか、管理料の区分はどうなるのかといった点を事前に把握しておけば、月々の費用を見通しやすくなります。

訪問診療を始めるための基本的な流れ

まずは、かかりつけ医やケアマネジャーに訪問診療の希望を伝えるところから始まります。その後、訪問診療を行う医療機関と面談し、患者さんご本人の同意書に署名をして契約が成立します。

ご夫婦で同じ医療機関を利用する場合は、2人分の同意書をそれぞれ作成する必要があります。同意書の様式は医療機関ごとに異なりますが、訪問計画や緊急時の対応方針などが記載されたものが一般的です。

月々の費用を左右する3つの要素

訪問診療の月額費用は、訪問診療料、在宅時医学総合管理料、そして追加の検査・処置費用の3つで構成されています。夫婦でまとめて同一日に受診すれば訪問診療料を抑えられますが、管理料はそれぞれに発生します。

1割負担の方で月2回の訪問診療を受けた場合、1人あたり月額6,000〜7,000円程度が一般的な目安です。2人目が同一患家の扱いになれば、2人合計で月額8,000〜10,000円前後に収まることもあるでしょう。

高額療養費制度を活用すれば自己負担に上限がある

訪問診療の費用が高額になった場合でも、高額療養費制度を利用すれば月ごとの自己負担に上限が設けられます。70歳以上で一般的な所得の方であれば、外来の自己負担上限は月18,000円(年間上限あり)です。

ご夫婦それぞれに上限が適用されるため、2人合計の自己負担が予想を大きく超えるケースは少ないといえます。制度の詳細はお住まいの自治体や加入している健康保険組合に確認してみてください。

確認項目内容
同一患家か同一建物か住まいの形態と診察日の組み合わせで判定される
在医総管の算定区分同一患家なら各「1人の場合」で算定可能
高額療養費制度月ごとの自己負担に上限がある

訪問診療の回数制限と夫婦での利用スケジュールの立て方

訪問診療には回数制限があり、原則として1人の患者さんに対して1日1回、週3回までと定められています。ご夫婦で効率よく訪問診療を活用するには、このルールを踏まえたスケジュール設計が大切です。

訪問診療の回数制限はどこまで柔軟に対応できるのか

通常の訪問診療は月2回(2週間に1回)のペースで行われることが多く、特定の疾患を持つ方や状態が不安定な方は週3回まで増やせます。たとえば末期がんの患者さんや人工呼吸器を使用している方は、医学的必要性に応じてより頻繁な訪問が可能です。

訪問診療の標準的な頻度

  • 月2回(標準):状態が安定しているが通院困難な方が対象
  • 月4回(週1回):慢性疾患の管理が複雑な方に対応
  • 週2〜3回:医学的に頻回な管理が求められる方向け

夫婦の訪問日をそろえると費用面で有利になる

ご夫婦がそれぞれ月2回の訪問診療を受ける場合、同一日にまとめて診察を受ければ2人目の訪問診療料を抑えられます。訪問日を別々にしてしまうと、それぞれに888点がかかってしまうため、合計費用に差が出るのです。

医療機関によっては、ご夫婦の診察をセットで組み込んでくれるところも多いでしょう。契約時に「夫婦同一日での診察は可能か」を確認しておくことをおすすめします。

訪問スケジュールに無理が出たときの対処法

お二人の体調や通所介護(デイサービス)の日程と訪問診療日が重なってしまうこともあります。そのような場合は、ケアマネジャーと訪問診療の医療機関に相談して、訪問日を調整してもらいましょう。

訪問診療は患者さんの生活リズムに合わせて柔軟に対応できる仕組みです。無理にスケジュールを固定せず、お二人の状態やご家族の都合に応じてこまめに見直すことが、長く安心して在宅療養を続けるコツといえます。

よくある質問

訪問診療の同一患家ルールは夫婦以外の同居家族にも適用される?

同一患家のルールは夫婦に限らず、親子や兄弟姉妹など同じ住居に暮らすご家族にも適用されます。

1つの家に複数の患者さんが同居しており、同一日に診察を受ける場合は、1人目に訪問診療料888点を算定し、2人目以降は再診料等のみの算定となります。

たとえば、ご高齢の親御さんとその配偶者、さらに同居するお子さんが訪問診療を受けるケースでも、2人目・3人目は再診料等で済みます。ただし、家族であっても別の住所に住んでいる場合は同一患家には該当しませんのでご注意ください。

訪問診療の同一建物居住者と同一患家はどちらが費用負担を抑えられる?

費用負担の面では、同一患家のほうが有利になるケースが多いです。同一患家の場合、1人目は訪問診療料888点をそのまま算定し、2人目は再診料等のみとなります。2人合計の訪問診療料は約960点(888点+再診料等約75点)前後です。

一方、同一建物居住者の場合は全員が213点ずつ算定されるため、2人合計で426点になります。

数字だけを見ると同一建物居住者のほうが合計は低く見えますが、在宅時医学総合管理料の算定区分も加味すると、トータルでは同一患家のほうが有利になることが少なくありません。

お住まいの形態や他の入居者の有無によって変わるため、具体的な費用は医療機関にご確認いただくのが確実です。

訪問診療で夫婦の一方だけが末期がんと診断された場合、費用の計算はどう変わる?

末期の悪性腫瘍と診断された患者さんは、訪問診療を開始してから60日以内であれば「同一建物居住者」のカウントから除外されます。

たとえば施設にお住まいのご夫婦で、妻が末期がんと診断されて訪問診療を始めた場合、妻はカウント対象外となり、夫だけが同一建物内の患者さんとして扱われます。

夫が建物内で唯一の訪問診療対象者となれば、「同一建物居住者以外」の888点が算定される可能性があります。

また、末期がんの患者さんには在宅がん医療総合診療料などの包括的な報酬体系が適用されることもあるため、担当医に費用面も含めてご相談ください。

訪問診療を夫婦で受ける場合、別々の医療機関に依頼しても問題ない?

別々の医療機関に訪問診療を依頼すること自体は制度上可能です。ただし、その場合は「同一患家」のルールが適用されないため、それぞれに888点の訪問診療料が算定される可能性が高くなります。

同一患家の減額ルールは「同じ医療機関の医師が同一日に同一世帯の複数患者を診察した場合」に適用されるものです。

費用を抑えたい場合は、ご夫婦で同じ医療機関の訪問診療を利用し、同じ日にまとめて診察を受けるのが経済的といえるでしょう。

訪問診療の同一建物居住者ルールはオンライン診療にも適用される?

オンライン診療と訪問診療は別の報酬体系で算定されるため、同一建物居住者のルールがそのまま適用されることはありません。オンライン診療では「オンライン在宅管理料」や「情報通信機器を用いた診療」の点数が別途設定されています。

ご夫婦の一方がオンライン診療に切り替え、もう一方は従来の訪問診療を続けるといった使い分けも、医療機関によっては対応可能です。

費用面やご本人の状態を考慮しつつ、担当医やケアマネジャーと相談しながら柔軟に検討してみてください。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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