障害者の訪問診療料金はいくら?医療費助成制度と自己負担額の目安

障害者の訪問診療料金はいくら?医療費助成制度と自己負担額の目安

障害者が訪問診療を受ける場合、各種医療費助成制度を活用すれば自己負担額を大幅に軽減できます。障害者手帳の種類や等級、所得区分によって利用できる制度は異なりますが、制度同士を組み合わせることで窓口負担がゼロに近づくケースもあります。

この記事では、訪問診療にかかる基本料金の内訳から、自立支援医療制度重度心身障害者医療費助成制度高額療養費制度の活用法まで、自己負担額を減らすための方法を具体的にまとめました。

料金に含まれない交通費や文書料、訪問診療を始める前に確認しておきたい手続きや相談先についても取り上げていますので、ぜひ参考になさってください。

目次

障害者の訪問診療料金は月額いくらかかるのか

月2回の定期的な訪問診療を3割負担で受けた場合、自己負担額の目安はおおむね5,000〜7,000円程度です。ただし障害者向けの助成制度を使えば、この金額はさらに下がります。

訪問診療で発生する主な診療報酬の内訳

訪問診療を受けると、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)在宅時医学総合管理料といった診療報酬項目を医療機関が算定します。在宅患者訪問診療料は医師が自宅を訪問して診察を行う際の基本的な報酬で、1回あたり888点(1点=10円で約8,880円相当)です。

加えて、月に1回加算する在宅時医学総合管理料も発生します。単一建物で1人を診る場合は月額約3,000〜5,000点前後にのぼり、処方箋の発行や薬剤管理指導料なども別途上乗せになる仕組みです。

訪問診療の主な診療報酬項目

項目名点数の目安
在宅患者訪問診療料(Ⅰ)888点/回
在宅時医学総合管理料3,000〜5,000点/月
処方箋料68点/回

これらの合計額に自己負担割合を掛けた金額が、患者さんが実際に窓口で支払う料金になります。

障害者の医療費負担割合を左右する3つの要因

自己負担割合は年齢・所得・利用する助成制度の3つで決まります。一般的には医療費の1〜3割を窓口で支払いますが、障害者の場合は助成制度を活用することで1割負担やそれ以下に抑えられる場合があります。

たとえば70歳未満で現役並みの所得がある方は3割負担が原則ですが、自立支援医療制度の認定を受ければ1割まで軽減できます。さらに重度心身障害者医療費助成制度の適用を受けると、残りの1割も助成対象になることがあります。

月2回の訪問で自己負担額は5,000〜7,000円が目安

3割負担の場合、月2回の訪問診療にかかる自己負担額はおおむね5,000〜7,000円です。検査や処置の内容によって金額は上下するため、あくまで目安として捉えてください。

1割負担の適用を受けられれば月額2,000円前後まで下がることも珍しくありません。助成制度を組み合わせるとさらに負担が軽くなる仕組みについては、次の章以降で詳しく触れていきます。

障害者手帳があると訪問診療の自己負担額は大きく変わる

障害者手帳を所持していれば、自治体独自の医療費助成制度を利用でき、訪問診療の窓口負担を大幅に減らせます。手帳の種類ごとに活用できる制度をまとめました。

手帳の種類主な助成制度
身体障害者手帳(1〜2級)重度心身障害者医療費助成
精神障害者保健福祉手帳自立支援医療(精神通院)
療育手帳(A判定・重度)重度心身障害者医療費助成

身体障害者手帳で受けられる医療費助成の範囲

身体障害者手帳1〜2級を持つ方は、多くの自治体で重度心身障害者医療費助成制度の対象になります。対象と認定されれば、訪問診療の自己負担が無料になったり、月数百円程度の定額負担のみで済んだりするケースが多いでしょう。

3〜4級の方でも助成対象に含まれる自治体があります。手帳の等級だけで判断せず、お住まいの自治体の制度内容を確認してみてください。

精神障害者保健福祉手帳と訪問診療費の減額

精神障害者保健福祉手帳1級の所持者は、重度心身障害者医療費助成の対象となる自治体が増えてきました。2〜3級の場合でも、自立支援医療制度(精神通院医療)を併せて利用すれば自己負担を1割に抑えることが可能です。

精神疾患を抱えながら在宅療養を続ける方にとって、訪問診療の費用負担は長期にわたります。手帳と自立支援医療の両方を申請しておくと、月々の支払いを着実に減らせるでしょう。

療育手帳による医療費軽減の仕組み

知的障害のある方が取得する療育手帳でも、重度(A判定)であれば重度心身障害者医療費助成制度の対象になるのが一般的です。中度以下の場合は自治体ごとに対応が異なるため、お住まいの市区町村窓口で個別に確認してみましょう。

療育手帳と身体障害者手帳を重複して所持している方は、より有利な助成制度を選んで適用を受けられます。どの組み合わせが自己負担を最小にできるか、担当の相談支援専門員やケースワーカーに相談してみてください。

自立支援医療制度を使えば訪問診療の自己負担を1割に抑えられる

「自立支援医療は通院だけが対象」と思っている方もいるかもしれませんが、訪問診療にも適用を受けられるケースがあります。精神通院医療の認定を受ければ、自己負担割合を3割から1割に引き下げることが可能です。

精神通院医療の対象疾患と申請の手順

自立支援医療(精神通院医療)は、統合失調症やうつ病、てんかん、認知症などの精神疾患で継続的な通院や訪問診療が必要な方を対象としています。申請先はお住まいの市区町村の障害福祉課で、主治医の診断書・健康保険証・障害者手帳(お持ちの場合)などを提出します。

審査を経て認定を受けると受給者証が届き、指定医療機関での自己負担を1割まで抑えられます。有効期間は原則1年のため、更新手続きを忘れないようにしましょう。

更生医療・育成医療との違い

自立支援医療には精神通院医療のほかに、更生医療と育成医療の2つがあります。更生医療は18歳以上の身体障害者手帳を持つ方を対象に、障害の軽減・機能回復が見込まれる手術や治療で利用できる制度。育成医療は18歳未満の身体に障害のある児童が対象です。

訪問診療では精神通院医療が利用される場面が多いものの、更生医療の対象となる治療を在宅で継続的に受ける場合にも適用が認められることがあります。どの区分に該当するかは主治医に確認するのが確実でしょう。

所得区分ごとの月額上限額を把握しておく

自立支援医療では所得に応じた月額自己負担上限額が設定されています。月の医療費がどれだけかかっても、上限額を超えた分は支払わなくてよい点が大きな特徴です。

自立支援医療の所得区分と月額上限額

所得区分月額上限
生活保護世帯0円
非課税世帯(本人収入80万円以下)2,500円
非課税世帯(本人収入80万円超)5,000円
課税世帯(所得税額が一定以下)5,000〜10,000円
課税世帯(所得税額が一定超)20,000円

生活保護世帯であれば自己負担はゼロになります。非課税世帯でも2,500〜5,000円の範囲で上限が定められているため、月々の訪問診療費を見通しやすくなるでしょう。

重度心身障害者医療費助成制度なら訪問診療の窓口負担がさらに軽くなる

「助成制度を使っても月々の医療費がつらい」と感じている方は、重度心身障害者医療費助成制度をぜひ確認してみてください。都道府県と市区町村が共同で運営するこの制度を利用すれば、訪問診療の窓口負担をいっそう抑えられます。

助成の対象となる障害等級と申請条件

重度心身障害者医療費助成制度の対象となる主な障害等級は自治体により差がありますが、おおむね以下のとおりです。

  • 身体障害者手帳1〜2級
  • 療育手帳A(重度)判定
  • 精神障害者保健福祉手帳1級
  • 特別児童扶養手当1級に該当する方

加えて一定の所得制限を設けている自治体も多いため、申請の前に障害者手帳と健康保険証を持参のうえ市区町村の福祉窓口で条件を確認してください。

自治体によって異なる助成内容と手続きの流れ

この制度は国の一律基準ではなく、各自治体が独自の基準で運営しています。東京都や大阪府では対象等級が比較的広く3級まで助成する自治体もある一方で、所得制限の基準額や自己負担の有無は地域ごとに異なります。

手続きとしては、まず市区町村の福祉窓口で申請書を受け取り、障害者手帳の写しや所得証明書類とともに提出します。審査が通れば受給者証が交付され、以降の訪問診療費は助成後の金額だけを窓口で支払えばよくなるでしょう。

償還払いと現物給付のどちらになるか

助成の方式には2つの種類があります。窓口でいったん通常の自己負担額を支払い後日差額が口座に振り込まれる「償還払い」と、窓口で助成後の金額だけを支払う「現物給付」です。

現物給付のほうが手間は少ないのですが、すべての自治体や医療機関が対応しているわけではありません。訪問診療を依頼する医療機関が現物給付に対応しているかどうか、事前に確認しておくと安心です。

高額療養費制度と障害者向け医療費助成を併用して負担を抑える

高額療養費制度は障害の有無に関係なく、すべての方が利用できる公的な医療費軽減の仕組みです。障害者向けの助成制度と組み合わせれば、自己負担をさらに引き下げられます。

高額療養費制度の自己負担限度額はいくらか

高額療養費制度では、1か月の医療費が自己負担限度額を超えた場合に、超過分を健康保険から払い戻してもらえます。限度額は被保険者の年齢と所得に応じて区分が設けられています。

70歳未満の自己負担限度額の目安

所得区分自己負担限度額(月額)
年収約1,160万円超約252,600円+α
年収約770〜1,160万円約167,400円+α
年収約370〜770万円約80,100円+α
年収約370万円以下57,600円
住民税非課税世帯35,400円

所得が少ない方ほど自己負担の天井が低くなるため、住民税非課税世帯であれば月額35,400円を超える支払いは発生しません。

医療費助成との併用で自己負担がゼロに近づくケース

障害者向けの医療費助成制度を使うと、窓口で支払う金額はすでに軽減を受けた状態です。高額療養費制度はその軽減後の自己負担額にも適用できるため、結果として実質的な自己負担がほぼゼロになる方も珍しくありません。

たとえば重度心身障害者医療費助成制度で窓口負担が月額500円の定額に抑えられている場合、高額療養費の限度額を超えることはまずないでしょう。一方、助成が一部負担にとどまるケースでは、高額療養費制度の恩恵を受けられます。

限度額適用認定証を事前に取得しておくメリット

高額療養費制度は原則として事後払い戻し方式ですが、あらかじめ「限度額適用認定証」を取得しておけば、医療機関の窓口で限度額以上を支払わずに済みます。

申請先は加入している健康保険の保険者(協会けんぽ・健保組合・国保であれば市区町村)です。継続的に訪問診療を受ける方は早めに手続きしておくと、月ごとの立て替え負担を避けられるでしょう。

訪問診療の料金に含まれない交通費・文書料・自費診療に要注意

助成制度を活用して診療報酬の自己負担を抑えたとしても、助成の対象外となる費用が発生する場合があります。代表的なものは交通費や文書料で、全額自己負担になるのが原則です。

費用の種類負担の目安
交通費(医師の移動実費)医療機関ごとに異なる
診断書・意見書の文書料1通3,000〜5,000円程度
衛生材料費月数百〜数千円程度

交通費と往診料は別物と覚えておく

往診料は患者さんからの求めに応じて医師が急きょ自宅を訪れた場合に算定する診療報酬の一つであり、通常の訪問診療料に上乗せになります。一方、交通費は医師やスタッフの移動に要した実費を指し、保険診療の枠外です。

交通費の請求方法は医療機関ごとに異なり、一律で徴収するところもあれば一定距離以内は無料とするところもあります。契約前に書面で確認しておくと、想定外の出費を防げるでしょう。

診断書や意見書などの文書料は全額自己負担になる

障害者手帳の更新や助成制度の申請に必要な診断書・意見書は、保険診療の対象外のため全額自己負担になります。1通あたり3,000〜5,000円程度が相場ですが、内容が複雑な場合はさらに高額になることもあるでしょう。

文書の発行は依頼から受け取りまで1〜2週間かかるのが一般的です。助成制度の申請時期を逆算して早めに依頼しておけば、制度の空白期間を短くできます。

衛生材料費や医療機器レンタル料が上乗せになる場合

在宅で使用するガーゼや消毒液などの衛生材料費、酸素濃縮装置や吸引器といった医療機器のレンタル料も、訪問診療の基本料金には含まれないことがあります。一部は保険算定の範囲に収まりますが、自己負担が発生するケースもあるため注意が必要です。

医療機関と契約する際には、こうした付随費用の内訳を見積書に明記してもらうようにしましょう。料金の全体像を把握したうえで訪問診療を始めることが、家計管理の面でも安心につながります。

障害者が訪問診療を始めるとき押さえたい相談先と手続き

訪問診療を開始する前に各種助成制度の申請を済ませておくと、初回から軽減した自己負担額で受診できます。準備の第一歩は、かかりつけ医やケアマネジャーへの相談です。

かかりつけ医やケアマネジャーにまず声をかける

訪問診療を始めるきっかけは、通院が体力的に難しくなった・外出そのものが困難になったなど日常生活の変化がほとんどです。そうしたときに最初に相談すべきなのは、ふだん通っているかかりつけ医や担当のケアマネジャーでしょう。

かかりつけ医がそのまま訪問診療に対応してくれる場合もあれば、地域の訪問診療に対応した医療機関を紹介してくれる場合もあります。ケアマネジャーは介護サービスとの連携も視野に入れたプランを提案してくれるため、まず声をかけてみてください。

各種助成制度の申請は訪問診療の開始前が理想

重度心身障害者医療費助成制度や自立支援医療制度は、申請から受給者証の交付まで数週間から1か月ほどかかる場合があります。訪問診療の開始後に申請すると交付までの期間は通常の自己負担額を一時的に支払う場面が出てくるため、早めの手続きが理想です。

申請時にあらかじめ用意しておきたい書類は以下のとおりです。

  • 障害者手帳の写し
  • 健康保険証
  • 主治医の診断書(指定様式)
  • マイナンバーが確認できる書類
  • 印鑑(自治体による)

書類がそろったら、市区町村の障害福祉課や国民健康保険課へ提出してください。

料金の見積もりは複数の医療機関で比較する

訪問診療の料金体系は医療機関によって異なる部分があり、とくに交通費や自費診療の取り扱いに差が出やすいです。可能であれば複数の医療機関から見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。

見積もりを依頼するときは、診療の頻度・想定される処置の内容・助成制度の適用後の金額という3つのポイントを確認しておくと判断しやすくなります。費用面の不安を解消したうえで訪問診療を始めることが、長く安心して在宅療養を続ける土台になるでしょう。

よくある質問

訪問診療の料金は障害の種類や等級によって変わりますか?

訪問診療の診療報酬(基本料金)自体は、障害の種類や等級によって変わるものではありません。ただし障害者手帳の種類と等級によって利用できる医療費助成制度が異なるため、実際に窓口で支払う自己負担額には差が出ます。

たとえば身体障害者手帳1級の方と3級の方では、利用できる助成制度の範囲や軽減幅が変わる可能性があります。お住まいの市区町村の福祉窓口で、ご自身が対象となる制度を確認するのが確実です。

障害者手帳を持っていなくても訪問診療の医療費助成を受けられますか?

障害者手帳がなくても利用できる制度はあります。たとえば高額療養費制度は障害の有無にかかわらず全員が利用できる仕組みで、月の自己負担額が一定額を超えると超過分の払い戻しを受けられます。

また自立支援医療(精神通院医療)は、手帳を持っていなくても精神疾患で継続的な通院や訪問診療が必要な方であれば申請が可能です。まずは主治医やお住まいの市区町村窓口に相談してみてください。

訪問診療の自己負担額が0円になることはありますか?

重度心身障害者医療費助成制度と自立支援医療制度を併用すると、自己負担が実質0円になるケースも実際にあります。ただし自治体によって助成の範囲や所得制限が異なるため、すべての方が0円になるわけではありません。

具体的な金額はお住まいの自治体の制度内容と、利用する医療機関の料金体系によって決まります。福祉窓口で事前にシミュレーションを依頼するとよいでしょう。

自立支援医療制度の申請にはどのくらいの期間がかかりますか?

市区町村の窓口に申請書と必要書類を提出してから、受給者証が届くまでおおむね2週間〜1か月程度が目安です。自治体や審査状況によってはそれ以上かかることもあるため、訪問診療の開始が決まった段階でなるべく早く申請手続きを始めてください。

申請には主治医の診断書のほかに健康保険証やマイナンバー確認書類が必要になります。診断書の作成にも数日から数週間かかるため、余裕を持ったスケジュールで準備を進めましょう。

訪問診療の料金について相談できる窓口はどこですか?

まずはかかりつけ医や担当のケアマネジャーに相談すると、具体的な医療費の見積もりや利用できる助成制度の案内を受けられます。それ以外にも、お住まいの市区町村の障害福祉課や地域の基幹相談支援センター、都道府県の医療相談窓口なども活用できます。

電話やオンラインで相談を受け付けている自治体も増えていますので、外出が難しい場合でも気軽に問い合わせてみてください。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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