残薬調整で薬代は安くなる?薬剤師による「重複投薬・相互作用等防止加算」のメリット

自宅に飲み残した薬がたまっていませんか。在宅診療を受けている方やそのご家族にとって、毎月の薬代は決して小さくない出費です。
薬剤師が残薬を確認し、処方医と連携して処方日数を調整すると、その分だけ薬代を抑えられます。
この仕組みを支えるのが「重複投薬・相互作用等防止加算」と呼ばれる調剤報酬の制度です。残薬調整で薬代がどのくらい安くなるのか、加算の仕組みや家族が準備すべきことまで、在宅診療の現場目線で丁寧に解説します。
残薬が自宅にたまる原因と在宅診療で薬代が膨らむ落とし穴
在宅で療養している方の自宅には、気づかないうちに大量の残薬がたまっているケースが珍しくありません。飲み忘れや診察日のずれなど、残薬が生まれる背景は複数あり、放置すると薬代が無駄にかさみ続けます。
飲み忘れや飲み残しが積み重なると薬はどんどん余る
1日3回の服用指示がある薬は、昼食時に飲み忘れやすい傾向があります。食前や食間に指定されている薬も、タイミングを逃しがちでしょう。1日あたり1回の飲み忘れでも、1カ月で30錠、半年で180錠もの残薬につながります。
錠剤が大きくて飲みにくい場合など、患者さん自身が服用をやめてしまうこともあります。医師は服用を前提に治療効果を判断するため、飲んでいないのに薬が追加されるという悪循環に陥りかねません。
複数の医療機関から同じ効果の薬が重複処方されていた
内科と整形外科など複数の医療機関を受診すると、同じ効能の薬が別の名前で処方されていることがあります。胃薬や痛み止めは診療科をまたいで処方されやすい代表的な薬です。
残薬が生まれやすい主な原因
| 原因 | 具体例 | 起こりやすい人 |
|---|---|---|
| 飲み忘れ | 昼食時や食前の薬を飲み忘れる | 1日3回服用の方 |
| 診察日のずれ | 予約が早まり薬が余る | 月1回通院の方 |
| 重複処方 | 別の病院で同効薬が出る | 複数科を受診する方 |
| 自己判断の中止 | 症状が良くなり服用をやめる | 慢性疾患の方 |
在宅の高齢者は残薬に気づきにくく放置されやすい
一人暮らしや認知機能が低下した高齢者は、自宅に残薬がたまっていても自覚しにくい傾向にあります。薬が引き出しの奥にしまわれたまま、同じ薬を新たに処方され続けるケースも少なくありません。
訪問薬剤師が介入して初めて、数週間分の薬がまとめて見つかるという状況は珍しくありません。残薬の存在に気づかなければ調整もできず、薬代はかかり続けます。
重複投薬・相互作用等防止加算とは|薬剤師の疑義照会で処方が変わる仕組み
重複投薬・相互作用等防止加算は、薬剤師が処方内容に疑問を感じた際、処方医に問い合わせ(疑義照会)を行い、処方が変更された場合に算定される調剤報酬上の加算です。残薬の調整だけでなく、薬の飲み合わせや重複の確認も対象になります。
薬剤師が処方医に問い合わせて処方内容を修正する制度
薬剤師はお薬手帳や患者さん・ご家族からの情報をもとに、薬の重複や飲み合わせの問題を確認します。問題が見つかった場合、処方医に連絡して内容を確認し、処方変更が行われれば、処方箋1回の受付につきこの加算を算定できます。
1994年に新設されて以来、算定対象は何度か見直されてきました。現在ではアレルギー歴や副作用歴に基づく処方変更、薬学的な観点からの薬剤の追加なども対象に含まれています。
「残薬調整に係るもの」と「それ以外」で加算の点数が異なる
この加算には2つの区分があります。残薬の確認と日数調整によって処方変更が行われた場合は「残薬調整に係るもの」として20点が算定されます。
一方、薬の重複や相互作用の防止、アレルギー歴に基づく変更などは「残薬調整に係るもの以外」として40点です。
1点は10円に換算されるため、20点なら200円、40点なら400円の医療費が発生します。ただし患者さんの自己負担は1~3割のため、窓口で支払う金額は数十円から百数十円程度にとどまるでしょう。
在宅患者向けには別の管理料が設けられている
在宅患者訪問薬剤管理指導料などを算定している患者さんの場合、通常の重複投薬・相互作用等防止加算ではなく「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」が適用されます。算定要件は重なる部分が多いものの、対象患者や評価の仕組みに違いがあります。
2024年度の改定では、処方箋が発行される前の処方提案が反映された場合も評価されるようになりました。薬剤師と医師がより密接に連携できる仕組みへと進化しています。
重複投薬・相互作用等防止加算と在宅患者向け管理料の比較
| 項目 | 防止加算(外来) | 管理料(在宅) |
|---|---|---|
| 残薬調整 | 20点 | 20点 |
| 残薬調整以外 | 40点 | 40点 |
| 処方箋交付前の提案 | 対象外 | 対象(管理料2) |
残薬調整で薬代はいくら安くなるのか|自己負担額の節約シミュレーション
残薬調整を行うと、余っている薬の分だけ処方日数が減り、その日数分の薬剤料が節約になります。加算の自己負担額を差し引いても薬代の総額が下がるため、金銭的なメリットは明らかです。
処方日数が減ると薬剤料がそのまま下がる
たとえば30日分の処方が出ているところ、10日分の残薬が確認されたとしましょう。薬剤師が処方医に連絡して日数を20日分に変更してもらえば、10日分の薬剤料をそのまま節約できます。
ある薬局の報告では、3種類の薬について15日分の残薬が見つかり、処方をなしに変更した結果、自己負担で約1,630円安くなった事例があります。複数の薬を服用している方ほど、残薬調整による節約効果は大きくなります。
年間約500億円にのぼる残薬が示す医療費のムダ
厚生労働省の推計によると、75歳以上の在宅高齢者だけでも残薬の総額は年間約475億円にのぼります。国民一人あたり約4,000円の医療費が残薬で無駄になっている計算です。
残薬調整による節約シミュレーション(3割負担の場合)
| 残薬日数 | 薬剤料の削減額 | 自己負担の削減額 |
|---|---|---|
| 7日分 | 約2,000~5,000円 | 約600~1,500円 |
| 14日分 | 約4,000~10,000円 | 約1,200~3,000円 |
| 30日分 | 約8,000~20,000円 | 約2,400~6,000円 |
加算の自己負担は数十円程度にとどまる
残薬調整の加算は20点(200円)のため、3割負担の方で約60円、1割負担の方で約20円です。数千円単位の薬剤料削減に対して、加算の自己負担はわずかな額にすぎません。
仮に加算の自己負担が60円増えても、薬剤料が1,000円以上安くなれば差し引きで大きなプラスです。薬代を少しでも抑えたい方にとって、残薬調整は見逃せない手段でしょう。
薬剤師が行う残薬調整の流れ|処方変更までの具体的な手順
残薬調整は、薬剤師が残薬を確認して処方医に連絡し、処方変更を行うまでの一連の作業です。患者さんやご家族が特別な手続きをする必要はありません。
お薬手帳と残薬の現物確認から始まる
訪問薬剤師はまず、自宅にある薬をすべて確認します。引き出しの中やテーブルの上、冷蔵庫(インスリンなど要冷蔵の薬がある場合)まで丁寧にチェックし、どの薬が何日分余っているのかを正確に把握します。
お薬手帳と照合しながら、現在処方されている薬と残薬の数量を突き合わせます。飲み忘れの頻度や服用時間帯なども併せて聞き取り、残薬が生まれた原因を分析する作業も行います。
疑義照会またはトレーシングレポートで医師へ連絡する
残薬の状況を把握したら、薬剤師は処方医に連絡します。緊急性が高い場合は電話で直接問い合わせ、緊急性が低い場合はトレーシングレポート(情報提供書)と呼ばれる書面を使って報告するのが一般的です。
医師の負担を減らすため、「A薬を30日分から22日分に」など、具体的な変更内容を提案する形で連絡する薬局も増えています。FAXなら医師も確認しやすく、処方変更がスムーズに進みます。
処方変更が確定したら調剤と服薬指導へ進む
医師の了承が得られると処方内容が変更され、薬剤師は変更後の処方に基づいて調剤を行います。調剤が済んだら、変更になった点を患者さんやご家族にわかりやすく説明する服薬指導へと進みます。
このとき、今後の飲み忘れを防ぐ工夫として一包化や服薬カレンダーの活用を提案することもあります。残薬調整は「薬を減らして終わり」ではなく、服薬管理の改善につなげることが大切です。
残薬調整の主な流れ
- 自宅の薬を種類ごとに数え、残薬の日数を算出する
- お薬手帳と照合して処方内容との差異を確認する
- 疑義照会またはトレーシングレポートで処方医に連絡する
- 処方変更後に調剤・服薬指導を行い、服薬管理の改善策を提案する
在宅診療で残薬調整を受けるとき家族が準備しておきたいこと
残薬調整は薬剤師が主導しますが、ご家族がちょっとした準備をしておくだけで調整がスムーズに進み、節約効果を引き出せます。日頃からできる簡単な工夫ばかりです。
残っている薬は種類ごとに数えてメモに残しておく
薬剤師が訪問する前に、自宅にある残薬を種類ごとに分け、大まかな数量をメモしておくと確認作業がぐっと早まります。正確な数でなくても構いません。「血圧の白い錠剤が10日分くらいある」といった大まかな情報でも十分役に立ちます。
薬が家のあちこちに散らばっている場合は、ひとつの箱や袋にまとめておくだけで助かります。訪問薬剤師が来た際にすぐ確認できるよう、見える場所に置いておくとよいでしょう。
お薬手帳はすべての医療機関分を1冊にまとめておく
お薬手帳が医療機関ごとに分かれていると、薬の重複チェックが難しくなります。内科・整形外科・皮膚科など、どの診療科の処方であっても1冊のお薬手帳に記録を集約しておくことが大切です。
家族が準備しておくと役立つ情報
| 準備するもの | ポイント |
|---|---|
| 残薬メモ | 薬の名前と大まかな残数を記録する |
| お薬手帳 | すべての医療機関分を1冊にまとめておく |
| 困りごとメモ | 飲みにくさや副作用の症状を書いておく |
飲みにくさや副作用の気になる点は遠慮せず伝える
「錠剤が大きくて飲み込めない」「薬を飲んだあとに胃がむかつく」といった困りごとがあれば、薬剤師に率直に伝えてください。粉薬への変更や、胃に優しい薬への切り替えなど、服用しやすい形への処方変更を医師に提案してもらえます。
患者さんやご家族が遠慮してしまうと、飲みにくい薬が処方され続け、飲み残しが増えてしまいます。薬の悩みは小さなことでも共有しておくのが、残薬を減らす近道です。
重複投薬・相互作用等防止加算の点数と2024年度改定による変更点
2024年度(令和6年度)の診療報酬改定により、残薬調整に係る加算の点数が30点から20点へ引き下げられました。薬学的な判断に基づく介入がより高く評価される方向へ制度が動いています。
残薬調整に係る加算は30点から20点に引き下げられた
改定前は残薬調整に係るものも30点でしたが、2024年度以降は20点に見直されました。残薬調整のための疑義照会は薬局業務としてすでに広く定着しており、業務の実態に合わせた評価の見直しと位置づけられています。
患者さんの自己負担に換算すると、3割負担で約30円の差です。残薬調整による薬剤料の削減額に比べれば、加算の点数変更が家計に与える影響はごくわずかでしょう。
残薬調整以外の疑義照会はこれまでどおり40点を維持
重複投薬や相互作用の防止、アレルギー歴に基づく処方変更、薬学的観点からの薬剤の追加や投与期間の延長といった介入は、引き続き40点で算定されます。残薬調整以上に高度な薬学的判断を伴うため、より高い評価が維持された形です。
たとえば、内科の血圧の薬と整形外科の痛み止めに飲み合わせの問題があった場合、薬剤師が疑義照会を行い処方が変更されれば40点の算定となります。患者さんの安全を守るうえで欠かせない介入です。
処方箋交付前の処方提案も評価対象に加わった
2024年度改定では、在宅患者向けの管理料において大きな変更がありました。医師の往診に薬剤師が同行した際や、事前に情報提供を行った際など、処方箋が発行される前の処方提案が処方に反映された場合も評価の対象となったのです。
従来は処方箋が交付されたあとの疑義照会だけが評価対象でした。この変更により、薬剤師が処方内容により積極的に関与し、患者さんにとってより良い薬物療法を実現しやすくなっています。
2024年度改定で変わった主な点
- 残薬調整に係る加算が30点から20点に引き下げ
- 残薬調整以外の加算(40点)は据え置き
- 在宅管理料で処方箋交付前の処方提案も評価対象に追加
残薬調整だけじゃない|薬剤師が守る飲み合わせと副作用の安全対策
重複投薬・相互作用等防止加算の対象は残薬調整だけにとどまりません。飲み合わせチェックやアレルギー歴の確認、服薬方法の改善提案など、薬剤師による多角的な安全対策が評価されています。
複数の診療科の薬を一元管理して重複を防ぐ
かかりつけ薬局を1カ所に決めておくと、すべての処方情報を薬剤師が一元的に管理できます。異なる医療機関で同じ効能の薬が処方されていた場合、薬剤師が気づいて処方医に確認を取り、重複を解消できます。
薬剤師が確認する主な安全チェック項目
| チェック項目 | 具体的な確認内容 |
|---|---|
| 重複投薬 | 同じ効能の薬が複数処方されていないか |
| 相互作用 | 薬同士の飲み合わせに問題がないか |
| アレルギー歴 | 過去に副作用が出た薬が含まれていないか |
| 用量の妥当性 | 年齢や腎機能に対して投与量が適切か |
アレルギーや副作用の履歴をもとに処方変更を提案する
過去に特定の薬で発疹が出た、胃が荒れたといった副作用歴がお薬手帳に記録されていれば、薬剤師はその情報を確認したうえで処方医に注意喚起を行います。同じ成分を含む別の薬が処方されていれば、代替薬への変更を提案することも可能です。
こうしたアレルギーや副作用に基づく処方変更は「残薬調整に係るもの以外」に分類され、40点の加算が算定されます。副作用による通院回数の増加や治療の長期化を防ぐことにもつながります。
一包化や服薬カレンダーで飲み忘れそのものを減らす
残薬が生まれる根本原因のひとつが飲み忘れです。薬剤師は、朝・昼・夕・寝る前など服用タイミングごとに薬を1袋にまとめる「一包化」を医師に提案できます。どの薬をいつ飲むか迷わなくなり、飲み忘れが大幅に減るケースは多いでしょう。
服薬カレンダーやお薬ケースの活用も、飲み忘れ対策として効果的です。壁掛けタイプのカレンダーに1回分ずつ薬をセットしておけば、飲んだかどうかがひと目でわかります。


よくある質問
- 重複投薬・相互作用等防止加算は患者の自己負担額にどのくらい影響しますか?
-
重複投薬・相互作用等防止加算の患者負担は、残薬調整の場合で20点(200円)が医療費として発生します。3割負担の方であれば約60円、1割負担の方であれば約20円の上乗せです。
一方で、残薬調整によって処方日数が減った分の薬剤料は丸ごと節約になります。7日分の残薬があれば数百円から数千円の薬剤料が浮くため、加算による負担増を差し引いても大幅なプラスです。
- 残薬調整を薬剤師にお願いするにはどうすればよいですか?
-
特別な申請や手続きは必要ありません。薬局に処方箋を持参する際、または訪問薬剤師が自宅に来た際に「薬が余っている」と伝えるだけで大丈夫です。
余っている薬を薬局に持参するか、残っている薬の名前と数をメモして見せると、薬剤師がスムーズに確認できます。お薬手帳を一緒に渡すと、処方内容との照合も早く進むでしょう。
- 重複投薬・相互作用等防止加算は在宅診療の患者にも適用されますか?
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在宅患者訪問薬剤管理指導料などを算定している患者さんには、通常の重複投薬・相互作用等防止加算ではなく「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」が適用されます。加算の区分や点数はほぼ同様で、残薬調整は20点、それ以外は40点です。
2024年度の改定からは、処方箋交付前に薬剤師が行った処方提案が反映された場合も算定できるようになりました。在宅の方も薬剤師の介入による恩恵を受けられる仕組みが整っています。
- 残薬調整を行っても治療に支障は出ませんか?
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残薬調整は、すでに手元にある薬を活用して処方日数を合わせる作業です。薬の種類や用法・用量が変わるわけではないため、治療内容そのものには影響しません。
次の診察日までに薬が足りなくならないよう、薬剤師は数日分の余裕をもたせて日数を計算するのが一般的です。安心して薬剤師にご相談ください。
- 重複投薬・相互作用等防止加算の「残薬調整以外」にはどのような事例がありますか?
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代表的な事例としては、複数の医療機関で同じ効能の薬が重複して処方されていた場合や、併用すると副作用のリスクが高まる薬の組み合わせを薬剤師が発見した場合があげられます。
ほかにも、過去にアレルギー反応が出た薬と同じ成分を含む薬が処方されていたケースや、年齢・腎機能を踏まえて投与量の変更が必要と判断されたケースも対象です。剤形変更に伴う疑義照会で処方が変わった場合も算定できます。
