訪問診療の算定をわかりやすく解説|初心者向けに基本の点数と請求の流れを整理

訪問診療の算定は複雑に見えますが、基本となる点数の構造を知れば全体像はシンプルです。在宅患者訪問診療料や在宅時医学総合管理料といった柱を押さえれば、毎月の医療費もおおよそ見当がつきます。
この記事では、初めて訪問診療にかかわる方やご家族に向けて、算定の基本的なしくみから請求の流れ、間違えやすいポイントまでを丁寧に整理します。
「点数って何のこと?」「請求書の金額がよくわからない」という疑問をお持ちの方こそ、ぜひ参考になさってください。
訪問診療の算定とは?診療報酬の基本のしくみを知れば怖くない
訪問診療の算定とは、医師がご自宅や施設へ定期的に訪問して行った診療に対して、国が定めた点数にもとづいて医療費を計算するしくみです。1点=10円で換算し、保険の自己負担割合に応じた金額を患者さんが支払います。
そもそも「算定」とは何を意味するのか
算定とは、医療行為ごとに決められた点数を積み上げて医療費を計算することを指します。たとえば「訪問診療料888点」であれば、8,880円が医療費として発生し、1割負担の方なら888円をお支払いいただく計算です。
外来診療でも同じしくみが使われていますが、訪問診療では「在宅」特有の管理料や加算が加わるため、やや複雑に感じるかもしれません。ただ、基本の考え方は外来と変わりません。
訪問診療の診療報酬は「出来高方式」で積み上がる
在宅医療の診療報酬は、行った医療行為を一つひとつ積み上げていく「出来高方式」を採用しています。訪問診療料、管理料、加算のそれぞれが独立した点数を持ち、該当するものを合計して1か月分の請求額が決まります。
入院のように1日あたりの包括点数で計算する方式とは異なるため、受けた医療内容によって月ごとの金額が変動することもあるでしょう。
訪問診療の算定を構成する主な項目
| 項目名 | 内容 | 算定頻度 |
|---|---|---|
| 在宅患者訪問診療料 | 訪問1回ごとの診療の対価 | 訪問のたびに |
| 在宅時医学総合管理料 | 月単位の包括的な管理の対価 | 月1回 |
| 往診料 | 急な体調変化で臨時に訪問した対価 | 往診のたびに |
| 各種加算 | 夜間対応・看取りなど状況に応じた上乗せ | 条件を満たしたとき |
訪問診療と外来診療で算定のしくみはどこが違うのか
外来診療では初診料や再診料が算定の起点になりますが、訪問診療ではこれらの代わりに「在宅患者訪問診療料」が基本点数となります。外来の初診料・再診料と訪問診療料は同時に算定できません。
加えて、訪問診療では患者さんの療養生活全体を管理する「在宅時医学総合管理料」が毎月算定されます。外来にはない管理料が加わる分、月額の医療費はやや高くなる傾向にあります。
点数のしくみがわかれば請求書の見方も変わる
請求書に記載された点数の意味がわかると、「この金額は妥当なのだろうか」という不安が大きく和らぎます。
訪問診療料と管理料、それぞれの加算がどう積み上がっているかを把握しておけば、医療機関への質問もしやすくなるでしょう。
在宅患者訪問診療料の点数と算定要件をやさしく整理する
在宅患者訪問診療料は、訪問診療のたびに算定される中心的な点数です。個人宅への訪問であれば1回888点(8,880円)が基本となり、1割負担の方なら1回あたり888円の自己負担となります。
在宅患者訪問診療料1と訪問診療料2の違い
訪問診療料は大きく2種類に分かれます。訪問診療料1は、主治医として定期的に訪問診療を行う場合に算定するもので、もっとも一般的な区分です。
一方、訪問診療料2は、主治医が所属する医療機関からの依頼を受けて、別の医療機関の医師が訪問する場合に算定します。
訪問診療料2は依頼があった月から6か月を限度として算定できるため、期間に制限がある点にご注意ください。
「同一建物居住者」かどうかで点数が大きく変わる
訪問診療料の点数は、患者さんが暮らしている場所によって変動します。個人宅に1人で訪問する場合は888点ですが、同じ日に同じ建物内で2人以上の患者さんを診察した場合は「同一建物居住者」に該当し、1人あたり213点に下がります。
高齢者施設やマンションで複数の患者さんを続けて診る場合がこれにあたります。ご家族だけが同一の住所に住んでいる場合は、同一世帯として別の取り扱いになるケースもあるため、医療機関に確認すると安心です。
訪問診療料の算定回数には上限がある
通常の訪問診療は、1日1回、週3回が算定の上限です。ただし、末期がんや急性増悪など厚生労働大臣が定める疾患に該当する場合は、週3回の制限が外れます。
急性増悪で一時的に頻繁な訪問が必要と判断された場合は、月1回に限り、14日間を上限として毎日の訪問診療を算定できる特例も設けられています。
| 区分 | 同一建物居住者以外 | 同一建物居住者 |
|---|---|---|
| 訪問診療料1 | 888点 | 213点 |
| 訪問診療料2 | 884点 | 187点 |
往診料と訪問診療料を混同していませんか?2つの違いを明確にしましょう
往診と訪問診療は似ているようで、算定のルールがまったく異なります。訪問診療は計画にもとづく定期訪問であり、往診は患者さんの求めに応じた臨時の訪問です。
往診料は720点が基本で、時間帯による加算が大きい
往診料の基本点数は720点(7,200円)です。ただし、緊急の往診や深夜の対応には高額な加算がつきます。深夜往診の場合、加算だけで1,300点以上になることもあり、1回の往診で合計2,000点を超えるケースも珍しくありません。
普段の訪問診療で月5,000〜7,000円程度に収まっていた方が、深夜の往診が重なった月だけ一時的に請求額が跳ね上がることがあるのは、こうした加算が原因です。
往診と訪問診療は同時に算定できない場合がある
往診を行った翌日までに訪問診療を実施した場合、在宅療養支援診療所(在支診)以外の医療機関では訪問診療料を算定できないルールがあります。在支診であればこの制限は適用されません。
在支診かどうかは、かかりつけの医療機関に直接たずねてみてください。多くの訪問診療クリニックは在支診の届出を行っています。
往診料の時間帯別加算
| 区分 | 時間帯 | 加算点数の目安 |
|---|---|---|
| 緊急往診 | 標榜時間内 | 325〜850点 |
| 夜間・休日往診 | 18時〜22時 | 405〜1,700点 |
| 深夜往診 | 22時〜翌6時 | 485〜2,700点 |
訪問診療の同意書は必須だが往診には不要
訪問診療を開始するには、患者さんまたはご家族から書面による同意を得なければなりません。同意書がなければ訪問診療料を保険請求できないため、医療機関は必ず署名をお願いしています。
一方、往診は患者さんの要請に応じた臨時対応であるため、事前の同意書は求められません。様式に決まりはないので、医療機関ごとにフォーマットが異なります。
計画的な治療なら訪問診療、急な変化には往診を選ぶ
「毎週火曜日の午前中に医師が来てくれる」といった定期的な診療が訪問診療であり、「夜中に急に熱が出たので来てほしい」というのが往診です。どちらも在宅医療の大切な柱ですが、費用面では往診のほうが加算により高くなりがちです。
ふだんは訪問診療を軸にしつつ、急変時には往診で対応してもらうという使い分けが、費用を抑えるうえでも合理的といえるでしょう。
在宅時医学総合管理料(在医総管)は毎月の算定に直結する柱になる
在宅時医学総合管理料(在医総管)は、訪問診療を受けている患者さん1人につき月1回算定される管理料です。訪問診療料と並んで在宅医療の費用の柱となるため、しくみを知っておくと月々の負担がぐっと見通しやすくなります。
在医総管の点数は医療機関の届出区分で変わる
在医総管の点数は、医療機関が「在宅療養支援診療所(在支診)」の届出をしているかどうかで大きく異なります。さらに、在支診のなかでも機能強化型か否か、病床の有無によって細かく区分されています。
たとえば機能強化型在支診(病床あり)で月2回訪問し、重症患者を診ている場合は5,385点にもなります。一方、在支診以外の一般診療所であれば2,750点前後が目安です。
在医総管に含まれている費用を見落とさない
在医総管を算定している月は、特定疾患療養管理料や処方箋料など多くの点数が管理料の中に包括されます。つまり、これらの項目を別途算定することはできません。
たとえば投薬にかかる処方箋料は在医総管に含まれているため、「処方箋料がないのはなぜ?」と疑問に感じる方もいらっしゃいますが、管理料のなかにすでに組み込まれているためです。
施設入居時等医学総合管理料との使い分けに注意する
有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などの施設に入居している患者さんの場合は、在医総管ではなく「施設入居時等医学総合管理料(施設総管)」を算定します。個人宅と施設で管理料の名前が変わるため、請求書の表記が異なることがあります。
ただし、点数の構造や加算のしくみは在医総管とほぼ同様です。
- 在医総管に含まれる主な費用:特定疾患療養管理料、処方箋料、創傷処置、喀痰吸引など
- 在医総管では別途算定できない代表的な項目:投薬費用、皮膚科軟膏処置、留置カテーテル設置
- 別途算定が可能な項目:在宅酸素療法指導管理料などの在宅療養指導管理料
訪問診療で加算される代表的な点数はいくつもある
訪問診療では、基本の訪問診療料や管理料に加えて、患者さんの状態や医療機関の体制に応じたさまざまな加算が用意されています。加算の有無で月々の医療費が大きく変わるため、代表的なものを知っておきましょう。
乳幼児加算と患家診療時間加算は条件がシンプル
6歳未満の乳幼児に訪問診療を行った場合は、1回につき400点の乳幼児加算が上乗せされます。小児在宅医療を受けているお子さんのご家庭では、この加算が毎回発生するため把握しておくとよいでしょう。
また、1回の訪問で診療時間が1時間を超えた場合には、30分ごとに100点の患家診療時間加算がつきます。ただし、通常の訪問診療では1時間を超えるケースはそれほど多くありません。
在宅ターミナルケア加算と看取り加算は終末期の評価
在宅で終末期を迎える患者さんに対しては、手厚い加算が設けられています。死亡日前14日以内に2回以上の訪問診療や往診を行った場合、在宅ターミナルケア加算として3,500〜6,500点が算定されます。
看取りにかかわる主な加算
| 加算名 | 点数 | 算定の条件 |
|---|---|---|
| 在宅ターミナルケア加算 | 3,500〜6,500点 | 死亡日前14日以内に2回以上訪問 |
| 看取り加算 | 3,000点 | 在宅で患者さんを看取った場合 |
| 死亡診断加算 | 200点 | 死亡診断を行った場合 |
在宅移行早期加算と継続診療加算も見逃さない
退院後に在宅医療へ移行した患者さんには、在宅移行早期加算として月1回100点が加算されます。算定できる期間は在医総管を算定した月から3か月以内で、在宅移行後1年を経過すると対象外です。
継続診療加算は、在支診以外の診療所が算定できる月1回216点の加算です。外来を4回以上受診した後に訪問診療へ移行した患者さんが対象となります。
24時間の往診体制を患者さんごとに構築していることが要件に含まれるため、医療機関の体制によっては算定できない場合もあります。
加算は医療機関の届出状況で点数が変わる
在宅緩和ケア充実診療所加算(400点)や在宅療養実績加算(500〜750点)など、医療機関が地方厚生局へ届け出ている施設基準によって加算できる項目が変わります。どの加算が算定されているかは、請求書の明細でご確認ください。
届出状況は医療機関に直接たずねれば教えてもらえますので、気になる方は遠慮なく質問してみてください。
訪問診療の請求の流れと医療費の計算方法
訪問診療の医療費は、月ごとにまとめて請求されるのが一般的です。「訪問診療料 × 訪問回数 + 管理料 + 加算」の合計点数に10円を掛け、自己負担割合を乗じた金額が患者さんの支払額になります。
レセプト(診療報酬明細書)で算定内容がすべて記録される
医療機関は毎月、審査支払機関に対してレセプト(診療報酬明細書)を提出します。レセプトには、その月に行った訪問診療の回数、算定した点数、加算の内訳がすべて記載されています。
審査支払機関がレセプトの内容を確認し、問題がなければ保険者(国保や社保など)から医療機関へ医療費が支払われます。患者さんが窓口で支払うのは自己負担分のみです。
1か月の自己負担額には上限がある
高額療養費制度により、1か月の医療費自己負担額には所得に応じた上限が設けられています。70歳以上で一般所得の方であれば、外来の上限は月額18,000円です。
限度額適用認定証をあらかじめ取得しておけば、窓口での支払い自体が上限額に抑えられます。訪問診療の費用が高くなりそうな月は、事前に加入している保険者へ申請しておくと安心です。
具体的な月額費用の計算例を見てみよう
たとえば、在支診(病床なし)で月2回の訪問診療を受けている1割負担の方を想定してみましょう。訪問診療料は888点×2回で1,776点、在医総管が4,600点とすると、合計6,376点です。
6,376点×10円=63,760円が医療費の総額となり、1割負担であれば約6,376円が1か月の自己負担額になります。往診や加算が加わればこの金額は増えますが、高額療養費制度の上限を超えることはありません。
| 項目 | 点数 | 1割負担時の金額 |
|---|---|---|
| 訪問診療料(888点×2回) | 1,776点 | 約1,776円 |
| 在医総管(在支診・病床なし) | 4,600点 | 約4,600円 |
| 合計 | 6,376点 | 約6,376円 |
訪問診療の算定で間違えやすいポイントと対処法
訪問診療の算定は細かなルールが多く、医療機関側でもミスが起こりうる領域です。患者さんやご家族の立場でもチェックできるポイントを知っておくと、過剰請求や算定漏れに早く気づけます。
同一建物居住者の判定を誤ると点数が大きくずれる
- 同じ日に同じ建物で2人以上を診察→同一建物居住者(213点)
- 同じ建物でも別の日に1人ずつ訪問→同一建物居住者以外(888点)
- 同居の夫婦を同日に診察→1人目は888点、2人目は213点(同一世帯の例外)
在医総管と包括される項目を二重に算定していないか確認する
在医総管を算定している月に、特定疾患療養管理料や創傷処置などの包括項目が別途請求されている場合は二重算定にあたります。レセプトの審査で返戻(差し戻し)になるケースが多い項目でもあります。
患者さん側でこうした重複に気づくのは難しいかもしれませんが、請求書の明細を見て「管理料のほかに処方箋料が記載されている」といった違和感があれば、医療機関に確認してみましょう。
訪問診療料と往診料の同時算定にも制限がある
同じ日に訪問診療と往診を行った場合、訪問診療料と往診料を両方算定することは原則としてできません。また、在支診以外の医療機関では、往診を行った翌日までに実施した訪問診療の費用も算定不可です。
こうしたルールを知らないまま請求が行われているケースはまれですが、明細に両方の点数が載っていた場合は確認をおすすめします。
16km超の訪問は特殊な取り扱いになる
医療機関の所在地から患者さんの自宅までの距離が16kmを超える場合や、海路で訪問する場合は、厚生労働大臣が別途定めた方法で算定します。都市部ではほとんど該当しませんが、離島や山間部では関係してくる規定です。
距離の制限は訪問診療料・往診料の両方に共通するルールで、16km以内であることが原則となっています。
よくある質問
- 訪問診療の算定で使われる「点数」とは具体的に何を指しますか?
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訪問診療の算定における「点数」とは、厚生労働省が定めた診療報酬点数表にもとづく医療行為ごとの単価です。1点あたり10円で計算され、たとえば訪問診療料888点であれば医療費は8,880円になります。
患者さんが実際に支払う金額は、この医療費に自己負担割合(1割・2割・3割)を掛けた額です。70歳以上で1割負担の方なら、888点の訪問診療1回につき約888円をお支払いいただくことになります。
- 訪問診療の算定で月にかかる費用の目安はどのくらいですか?
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在宅療養支援診療所で月2回の訪問診療を受けた場合、1割負担の方でおおむね6,000〜8,000円程度が目安です。訪問診療料(888点×2回)と在宅時医学総合管理料(4,000〜5,000点台)を合計し、自己負担割合を掛けた金額になります。
ただし、往診や各種加算が加わると金額は上がります。高額療養費制度を活用すれば、1か月の自己負担には上限が設けられるため、想定を大きく超える請求が続くことはありません。
- 訪問診療の算定における「同一建物居住者」とはどのような場合に該当しますか?
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同一建物居住者とは、同じ日に同じ建物のなかで医療機関が2人以上の患者さんに訪問診療を行った場合の、その患者さん全員を指します。高齢者施設やマンションなどで複数の患者さんを続けて診察するケースが典型例です。
同一建物居住者に該当すると、訪問診療料は888点から213点に下がります。ただし、同居している同一世帯の場合は例外的な扱いがあり、1人目は888点、2人目以降が213点として算定される場合もあります。
- 訪問診療の算定と往診の算定はどのように区別されますか?
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訪問診療の算定は、患者さんの同意のもと計画的かつ定期的に医師が自宅を訪問した場合に行います。一方、往診の算定は、患者さんやご家族の要請に応じて臨時に訪問した場合に行います。
訪問診療料は1回888点、往診料は720点が基本ですが、往診には緊急・夜間・深夜の加算があるため、1回あたりの総額は往診のほうが高くなることが多いです。両者を同じ日に算定することは原則としてできません。
- 訪問診療の算定に関する請求内容に疑問を感じた場合はどうすればよいですか?
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まずは医療機関の窓口や事務担当者に、請求書の明細について質問してみてください。算定された点数の内訳や加算の根拠を説明してもらえます。医療機関には患者さんからの問い合わせに応じる義務があります。
それでも納得がいかない場合は、加入している健康保険の保険者(国保の場合は市区町村の窓口、社保の場合は協会けんぽや健康保険組合)に相談する方法もあります。レセプトの開示請求を行えば、算定内容を詳しく確認できます。

