在宅ターミナルケア診療料と看取り加算|最期の14日間に発生する費用ルール

在宅ターミナルケア診療料と看取り加算|最期の14日間に発生する費用ルール

大切な家族が自宅で最期のときを迎える――そのとき、医療費がどれくらいかかるのか気になる方は多いでしょう。

在宅ターミナルケア加算と看取り加算は、亡くなる前の14日間に受けた訪問診療や往診、そして看取りそのものを評価する診療報酬の仕組みです。

この記事では、それぞれの加算の点数や算定要件、医療機関の種類による違い、さらに2024年の診療報酬改定で変わった内容まで丁寧に解説します。制度を事前に知っておくと、経済的な不安が少しでも和らぐはずです。

目次

在宅ターミナルケア加算とは|最期の14日間を支える診療報酬の仕組み

在宅ターミナルケア加算は、患者さんが亡くなる前の14日間に医師が行った訪問診療や往診を評価するための加算です。自宅での看取りを支える費用の中心的な項目といえます。

そもそもターミナルケアとは何か

ターミナルケアとは、回復の見込みが難しいと診断された方に対して行われる終末期の医療やケアを指します。治癒を目指す治療とは異なり、苦痛を和らげ、穏やかな時間を過ごすことに重点を置いた医療です。

在宅でのターミナルケアでは、医師が定期的に患者さんのもとを訪れ、痛みの管理や身体状態の確認を行います。訪問看護師やケアマネジャーとも連携しながら、ご本人とご家族が望む過ごし方を支えていくのが在宅ターミナルケアの基本的な考え方です。

在宅ターミナルケア加算が生まれた背景

2006年の診療報酬改定で、在宅での看取りを推進する国の方針のもと、ターミナルケア加算が創設されました。当時は病院での看取りが8割を超えていた時代です。

住み慣れた自宅で最期を迎えたいという患者さんの希望に応えるため、在宅医療に携わる医師の負担を正当に評価しようという狙いがありました。

その後、2012年に現在の「在宅ターミナルケア加算」と「看取り加算」の2つに分離され、段階的に評価される形になっています。

在宅ターミナルケア加算の概要

項目内容
加算の名称在宅ターミナルケア加算
評価対象死亡日および死亡日前14日以内の訪問診療・往診
点数の範囲3,500点〜6,500点(医療機関の区分による)
算定の条件計15日間に2回以上の往診もしくは訪問診療の実施
対象患者在宅で死亡した患者さん(24時間以内に在宅以外で死亡した場合を含む)

算定の対象となる患者さんの条件

在宅ターミナルケア加算を算定するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。まず、死亡日とその前14日以内の合計15日間に、2回以上の往診または訪問診療が行われていなければなりません。

また、患者さんが在宅で亡くなった場合が対象です。往診や訪問診療を行った後、24時間以内に搬送先の病院で亡くなった場合も含まれます。厚生労働省が定める終末期の意思決定に関するガイドラインに沿った支援が行われているのも要件の一つです。

看取り加算は死亡日当日に発生する|在宅で最期を看取ったときの費用

看取り加算は、医師が死亡日に患者さんのもとを訪れ、自宅で看取りを行った場合に一律3,000点が算定される加算です。在宅ターミナルケア加算とセットで請求されることがほとんどでしょう。

看取り加算の算定要件と対象

看取り加算が算定されるには、事前に患者さんやご家族に対して十分な説明と同意が行われていることが前提です。療養上の不安を解消するための対話を経たうえで、死亡日に往診または訪問診療を行い、患家で看取った場合に限り算定できます。

つまり、死亡日に医師が患者さんの自宅を訪れていなければ、看取り加算は請求できません。

死亡確認のためだけに訪問したケースは「死亡診断加算(200点)」として別途評価されますが、看取り加算との同時算定はできない仕組みになっています。

看取り加算が算定されるタイミング

看取り加算は文字どおり「死亡日」に算定されます。在宅ターミナルケア加算が死亡日を含む15日間の診療全体を評価するのに対し、看取り加算はその最後の1日、つまり看取りの瞬間に焦点を当てた加算です。

なお、看取り加算を算定するには在宅ターミナルケア加算も併せて算定していることが条件です。どちらか一方だけを請求することはできないため、この2つは事実上セットの関係にあるといえます。

死亡診断加算との関係に注意

死亡診断加算は200点で、医師が死亡確認を行った際に算定されます。ただし、看取り加算を算定する場合には死亡診断加算は算定できません。両方を同時に請求することはルール上認められていないからです。

実際の場面では、医師が患者さんの最期に立ち会った場合は看取り加算(3,000点)が優先され、後から死亡確認のみ行った場合は死亡診断加算(200点)が適用されます。どちらが算定されるかは、医師の訪問タイミングによって決まります。

看取り加算と死亡診断加算の比較

項目看取り加算死亡診断加算
点数3,000点200点
算定場面死亡日に患家で看取り死亡後に死亡確認
同時算定不可(いずれか一方のみ)

在宅ターミナルケア加算の点数は医療機関の種類で大きく変わる

在宅ターミナルケア加算は一律の金額ではなく、医療機関の区分によって3,500点から6,500点まで幅があります。かかりつけ医がどのタイプの診療所に該当するかで、費用に数万円の差が出ることもあるため、事前に把握しておくと安心です。

機能強化型在宅療養支援診療所の点数

機能強化型在宅療養支援診療所(在支診)や在宅療養支援病院(在支病)は、24時間体制で在宅医療を提供し、看取りの実績も豊富な医療機関です。在宅ターミナルケア加算の点数がもっとも高く設定されています。

病床を有する機能強化型在支診・在支病では6,500点、病床のない機能強化型在支診では5,500点です。1点あたり10円で計算するため、6,500点なら65,000円、5,500点なら55,000円に相当します。

一般の在宅療養支援診療所とそれ以外の点数

機能強化型ではない一般の在支診・在支病の場合は4,500点となります。在支診や在支病の届出を行っていない医療機関では3,500点です。

点数の差は、24時間対応の体制や看取りの実績など、医療機関に求められる基準の厳しさを反映しています。点数が高い医療機関ほど手厚い看取り体制が整っているともいえるでしょう。

在宅看取りに関連する追加加算

  • 在宅緩和ケア充実診療所・病院加算:1,000点
  • 在宅療養実績加算1:750点
  • 在宅療養実績加算2:500点
  • 酸素療法加算(がん患者に酸素療法を行っていた場合):2,000点

在宅緩和ケア充実診療所・病院加算も上乗せされる

在宅ターミナルケア加算に加え、緩和ケアや看取りに力を入れている医療機関では別途加算を上乗せできます。在宅緩和ケア充実診療所・病院加算として1,000点、在宅療養実績加算1は750点、在宅療養実績加算2は500点が加わります。

さらに、がん患者さんに対して酸素療法を実施していた場合は、酸素療法加算として2,000点がプラスされます。すべての加算が重なると、在宅ターミナルケア加算だけで数万円規模になることも珍しくありません。

14日間ルールはこう数える|算定を満たす訪問回数と条件

「死亡日前14日以内」という期間の数え方を正しく理解することが、在宅ターミナルケア加算の算定要件を満たすうえで大切です。起算日の考え方や訪問回数の数え方を整理します。

「死亡日前14日以内」の起算日と計算方法

在宅ターミナルケア加算の算定要件では、「死亡日および死亡日前14日以内」の合計15日間が対象期間です。たとえば3月20日に亡くなった場合、3月6日から3月20日までの15日間がカウントの対象になります。

この15日間のうちに、2回以上の往診もしくは訪問診療が行われていれば要件を満たします。訪問のタイミングは連続している必要はなく、期間内であれば間隔が空いていても問題ありません。

訪問診療と往診のどちらもカウントできる

訪問診療は計画に基づいて定期的に行う診療で、往診は患者さんやご家族の求めに応じて急きょ行う診療です。在宅ターミナルケア加算では、このどちらも「訪問」としてカウントされます。

たとえば、普段は月2回の訪問診療を受けている患者さんが急変し、往診を1回受けた場合でも、14日以内に合計2回の訪問があれば算定要件を満たせます。訪問診療と往診を組み合わせてカウントできることを覚えておくとよいでしょう。

24時間以内に在宅以外で亡くなった場合も含まれる

在宅で看取ることが前提の加算ですが、自宅で容態が急変し搬送された病院で亡くなった場合も、往診や訪問診療から24時間以内であれば算定対象に含まれます。

ご家族としては「急変して救急車を呼んだから対象外では」と心配されるかもしれませんが、24時間ルールがあるため一定の範囲で救済されます。

ただし、搬送から24時間を超えた場合は在宅での死亡とはみなされず、加算は算定できません。

14日間ルールの算定条件まとめ

条件内容
対象期間死亡日と死亡日前14日以内の合計15日間
必要な訪問回数往診または訪問診療が2回以上
訪問の種類訪問診療・往診のいずれもカウント可
在宅以外での死亡往診・訪問診療後24時間以内なら算定可
退院時共同指導実施済みであれば訪問1回でも算定可(2024年改定)

看取り加算とターミナルケア加算は別もの|混同しやすい2つの違い

名前が似ているために混同されがちですが、看取り加算と在宅ターミナルケア加算は評価する対象が異なります。それぞれの違いを明確にしておくと、費用の内訳を理解しやすくなるでしょう。

加算の趣旨が根本的に異なる

在宅ターミナルケア加算は、死亡前14日間にわたって提供された訪問診療や往診の「一連のケア」を評価します。いわば、最期の2週間を支え続けた医師の労力への対価です。

一方、看取り加算は死亡日に医師が患家で看取りを行ったという「その瞬間」を評価するものです。ターミナルケアという期間の評価と、看取りという一点の評価。この違いを押さえておくだけでも、費用明細が格段に読みやすくなります。

算定のタイミングが違う

在宅ターミナルケア加算は、14日間の要件を満たしていれば死亡月にまとめて算定されます。看取り加算は、あくまで死亡日当日に医師が看取りを行った場合にのみ算定される点が大きな違いです。

もし医師が死亡の瞬間には立ち会えず、後から死亡確認のみを行った場合には看取り加算ではなく死亡診断加算(200点)が適用されます。

立ち会いの有無で約28,000円もの差が生じるため、終末期には主治医との連絡体制を十分に確認しておきたいところです。

在宅ターミナルケア加算と看取り加算の違い

比較項目在宅ターミナルケア加算看取り加算
評価の対象14日間の訪問診療・往診死亡日の看取り行為
点数3,500〜6,500点3,000点(一律)
算定タイミング死亡月死亡日
医師の立ち会い期間内の訪問が要件死亡日の立ち会いが要件

両方を同時に算定できるケースとは

在宅ターミナルケア加算と看取り加算は、基本的にセットで算定されます。看取り加算は在宅ターミナルケア加算を算定していることが前提条件だからです。

つまり、14日間に2回以上の訪問診療・往診を実施し、かつ死亡日に医師が患家で看取りを行えば、両方の加算が同時に算定されます。

機能強化型在支診(病床あり)のケースでは、6,500点+3,000点で合計9,500点(95,000円)が上限額となります。

在宅看取りの自己負担額はいくらになるのか

加算の点数はあくまで医療機関が受け取る報酬であり、患者さんが実際に支払うのはその1割から3割です。自己負担割合別に、おおよその金額を確認しておきましょう。

1割負担・3割負担別のシミュレーション

たとえば、一般的な在支診(4,500点)で在宅ターミナルケア加算と看取り加算(3,000点)を合わせた場合、合計7,500点(75,000円)です。1割負担の方であれば7,500円、3割負担の方であれば22,500円が自己負担となります。

機能強化型在支診(病床あり)で各種追加加算が重なると合計点数が10,000点を超えることもあり、3割負担の場合は30,000円以上になるケースも考えられます。

ただし、これはあくまで加算部分だけの金額であり、通常の訪問診療料や薬剤費は含まれていません。

高額療養費制度で負担を軽くできる

月ごとの医療費が一定額を超えた場合、高額療養費制度を利用すれば超過分が払い戻されます。年齢や所得区分によって自己負担の上限額が異なりますが、70歳以上の一般的な所得の方であれば月額上限は57,600円程度です。

終末期は訪問診療の回数が増え、薬剤や医療材料の費用もかさみやすい時期です。高額療養費制度の「限度額適用認定証」を事前に取得しておけば、窓口での支払いが上限額にとどまるため、立て替えの負担も軽減できます。

訪問看護や薬剤費は別途かかる

在宅ターミナルケア加算と看取り加算はあくまで医師の診療に対する報酬です。訪問看護ステーションが提供する看護サービスや、処方された薬の費用は別途請求されます。

介護保険を利用している場合は、訪問看護のターミナルケア加算(2,500単位)が介護報酬として発生するときもあります。

医療保険と介護保険で同時にターミナルケア加算を算定することはできないため、最後に利用した保険制度のほうで請求される仕組みです。

在宅看取りで発生する主な費用

  • 在宅ターミナルケア加算(3,500〜6,500点)+看取り加算(3,000点)
  • 訪問診療料・往診料(診療ごとに発生)
  • 訪問看護費用(医療保険または介護保険で算定)
  • 処方薬・医療材料の費用
  • 居宅療養管理指導費(薬剤師や管理栄養士による指導を受けた場合)

2024年改定で在宅ターミナルケア加算・看取り加算はどう変わったか

2024年6月施行の診療報酬改定では、在宅での看取りをより柔軟に支援するための見直しが行われました。退院時共同指導を経た場合の算定範囲が拡大されたことが大きな変更点です。

退院時共同指導を経た往診でも算定できるようになった

2024年改定以前は、14日間に2回以上の訪問診療や往診がなければ在宅ターミナルケア加算を算定できませんでした。改定後は、退院時共同指導料1を算定したうえで訪問診療または往診を1回でも実施していれば、算定が認められるようになっています。

入院中の患者さんが自宅での看取りを希望して退院し、初回の訪問診療を待たずに亡くなるケースは珍しくありません。

従来はこうしたケースで加算が算定できなかったため、在宅医療を提供した医師の評価が不十分だという指摘がありました。今回の改定でその問題が一定程度解消されたといえます。

2024年改定による在宅ターミナルケア加算の主な変更点

項目改定前改定後
算定の条件15日間に2回以上の往診・訪問診療左記に加え、退院時共同指導+1回の訪問でも可
往診料での算定不可退院時共同指導を経た往診で算定可
看取り加算(往診料)在宅患者訪問診療料の加算のみ往診料にも新設

往診料にも在宅ターミナルケア加算・看取り加算が新設された

これまで在宅ターミナルケア加算と看取り加算は「在宅患者訪問診療料」の加算として位置づけられていました。2024年改定では、往診料に対しても同様の加算が新設されています。

退院後に訪問診療の計画を立てる前に往診のみで対応していた期間に看取りとなった場合でも、退院時共同指導を行っていれば算定が可能です。在宅医療の現場で起こりうるさまざまな状況に対応するための見直しといえるでしょう。

改定のポイントを踏まえて主治医に確認しておきたいこと

今回の改定によって算定要件が広がったとはいえ、すべてのケースで自動的に加算されるわけではありません。退院時共同指導料が算定済みかどうか、主治医が在支診の届出を行っているかなど、条件を満たしているか確認しておくと安心です。

特に、入院中から在宅医療への移行を検討している段階であれば、退院前カンファレンスに在宅医が参加するよう病院側に依頼しておくことが大切です。

退院時共同指導を行うかどうかで、万が一のときに算定できる加算の範囲が変わってきます。

よくある質問

在宅ターミナルケア加算は訪問診療を受けていないと算定されないのですか?

原則として、死亡日と死亡日前14日以内の合計15日間に2回以上の往診もしくは訪問診療が必要です。ただし、2024年の改定により退院時共同指導料1を算定したうえで訪問診療または往診を1回行っていれば算定できるようになりました。

訪問診療を1度も受けていない場合は原則として算定の対象外ですが、退院時共同指導の有無によって状況が変わるため、主治医に確認されることをお勧めします。

看取り加算は医師が死亡の瞬間に立ち会わなくても算定できますか?

看取り加算は、死亡日に医師が患家を訪れ、看取りを行った場合に算定されます。死亡の瞬間そのものに立ち会う必要はありませんが、死亡日に往診または訪問診療を行い、患家で看取ったと評価できる状況が求められます。

もし医師が死亡後に訪問し死亡確認のみを行った場合は、看取り加算ではなく死亡診断加算(200点)の算定になります。

在宅ターミナルケア加算の点数が医療機関によって異なるのはなぜですか?

在宅ターミナルケア加算の点数は、医療機関が満たしている施設基準によって段階的に設定されています。

機能強化型の在宅療養支援診療所や在宅療養支援病院は、24時間対応体制や年間の看取り実績など厳しい要件をクリアしているため、高い点数が認められています。

一般の在支診は4,500点、在支診以外の医療機関は3,500点です。手厚い在宅医療体制を整えている医療機関ほど高く評価される仕組みになっています。

在宅ターミナルケア加算と訪問看護のターミナルケア加算は同時に算定できますか?

在宅ターミナルケア加算は医師による訪問診療・往診を評価する医療保険上の加算であり、訪問看護のターミナルケア加算は看護師によるケアを評価する加算です。両者は評価の対象が異なるため、同時に算定されるケースがあります。

ただし、訪問看護側のターミナルケア加算は、医療保険と介護保険のどちらか一方でしか算定できません。両方の保険でそれぞれ1日ずつケアを実施した場合は、最後に実施した保険制度で請求される決まりです。

在宅ターミナルケア加算は有料老人ホームに入居している場合も算定されますか?

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などに入居している患者さんも、在宅ターミナルケア加算の算定対象です。施設入居者向けの点数区分が設けられており、自宅で過ごす患者さんと同じ点数が適用される場合と、やや低い点数が適用される場合があります。

具体的な点数は、入居している施設の種類と医療機関の区分の組み合わせで決まります。入居先の施設と主治医の連携体制を事前に確認しておくとよいでしょう。

訪問診療・在宅医療の診療報酬・料金体系に戻る

訪問診療の費用・保険制度TOP

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

目次