特別訪問看護指示書が月2回出せる条件とは?対象疾患と期間の制限

特別訪問看護指示書が月2回出せる条件とは?対象疾患と期間の制限

特別訪問看護指示書は原則として月1回しか交付できませんが、「気管カニューレを使用している方」と「真皮を越える褥瘡がある方」に限り、月2回まで交付が認められています。

指示期間は1回につき14日間が上限で、月2回交付された場合は最大28日間の集中的な訪問看護を受けられます。在宅療養中に容体が急変したとき、この制度を正しく活用できるかどうかで、ご本人とご家族の安心感は大きく変わるでしょう。

この記事では、月2回交付の対象となる疾患や状態、交付の要件、指示期間の数え方など、知っておきたいポイントをわかりやすくお伝えします。

目次

特別訪問看護指示書とは?通常の訪問看護指示書との違いを押さえよう

特別訪問看護指示書とは、患者さんの病状が急に悪化したり、退院直後で体調が安定しなかったりするときに、主治医が交付する臨時的な指示書です。通常の訪問看護指示書よりも手厚いケアを短期間で集中して受けられる点が大きな違いといえます。

通常の訪問看護指示書は最長6か月・週3回まで

通常の訪問看護指示書は、主治医が交付し、指示期間は最長6か月に設定できます。訪問回数は原則として週3回まで、1回あたり30分以上90分未満が基本です。

慢性的な疾患を抱えている方が、安定した在宅療養を続けるために利用する制度といえるでしょう。長期にわたって定期的なケアが必要なケースに向いています。

特別訪問看護指示書は緊急時に短期集中のケアを届ける制度

一方、特別訪問看護指示書は、患者さんの状態が一時的に悪化して、通常の訪問頻度では対応しきれない場合に交付されます。

指示期間は最長14日間と短いものの、週4日以上の訪問や1日複数回の訪問が可能になるため、まさに「短期集中型」のケアといえます。

退院直後の不安定な時期や、感染症による急な体調変化など、在宅でのケアを一気に強化したい場面で力を発揮する制度です。

通常の訪問看護指示書と特別訪問看護指示書の比較

項目通常の指示書特別指示書
指示期間最長6か月最長14日間
訪問回数原則 週3回まで週4日以上も可
交付回数期間満了時に更新原則 月1回
交付の前提主治医の判断通常の指示書が必要

特別訪問看護指示書だけでは交付できない

注意しておきたいのが、特別訪問看護指示書は「単独で発行できない」という点です。あくまで通常の訪問看護指示書が交付されている患者さんに対し、追加で出される書類になります。

そのため、まだ訪問看護を利用していない段階では、先に通常の訪問看護指示書を主治医から交付してもらう必要があります。両方の指示書は同じ医師から交付される決まりになっていますので、かかりつけ医に相談しましょう。

特別訪問看護指示書が月2回出せるのは「気管カニューレ」と「真皮を越える褥瘡」だけ

特別訪問看護指示書は原則として月1回の交付ですが、厚生労働大臣が定める特定の状態に該当する患者さんに限り、月2回まで交付が認められています。

その条件はわずか2つだけで、「気管カニューレを使用している状態」と「真皮を越える褥瘡の状態」です。

気管カニューレを使用している患者さんが月2回交付の対象になる

気管カニューレとは、気管切開をした部分に挿入する管のことです。呼吸を確保するために使用されるもので、日常的な管理が欠かせません。

痰の吸引やカニューレ周囲の皮膚ケア、感染予防のための消毒など、高度な医療処置を頻回に行う必要があります。そのため、14日間の指示期間だけでは対応が難しいケースが多く、月2回の交付が認められています。

真皮を越える褥瘡(じょくそう)がある患者さんも月2回交付の対象になる

褥瘡とは、いわゆる「床ずれ」のことです。長時間同じ姿勢で寝ていることで、皮膚や皮下組織が圧迫されてできる傷を指します。

月2回交付の対象となるのは、損傷が皮膚の真皮層を越えて、皮下組織やそれより深い部分にまで達している重度の褥瘡です。具体的にはDESIGN-R 2020分類でD3・D4・D5、NPUAP分類でステージIIIまたはIVに該当する状態になります。

「月2回」の交付によって最大28日間の集中ケアが受けられる

月2回の交付が認められれば、1回14日間×2回で、ひと月のうち最大28日間にわたって集中的な訪問看護を受けることが可能になります。

重度の褥瘡は毎日の処置が必要になることも珍しくないため、この制度は在宅療養を支えるうえで大きな助けとなるでしょう。

気管カニューレを使用している方も同様に、長期にわたる頻回な訪問看護が必要になりやすい状態です。月2回の交付制度は、こうした医療依存度の高い患者さんの在宅生活を守るための仕組みといえます。

月2回交付が認められる条件の一覧

対象となる状態具体的な判定基準
気管カニューレを使用中気管切開を行い、カニューレが挿入されている状態
真皮を越える褥瘡DESIGN-R 2020:D3・D4・D5/NPUAP:ステージIII・IV

特別訪問看護指示書の指示期間は14日間が上限|延長はできない

特別訪問看護指示書の指示期間は、1回の交付につき最長14日間と厳密に定められています。14日を超える期間が記載された指示書は無効になってしまうため、交付を受ける際には期間の記載を必ず確認しましょう。

14日間はあくまで「上限」であり主治医の判断で短くなることもある

指示期間の14日間は上限であって、必ず14日間になるわけではありません。主治医が「7日間で十分」と判断すれば、7日間の指示書が交付されるときもあります。

患者さんの状態に合わせて、必要な期間だけ集中的にケアを行うのがこの制度の趣旨です。回復が順調であれば、14日間を待たずに通常の訪問看護に切り替わるケースもあるでしょう。

指示期間が終了したあとは通常の訪問看護指示書に戻る

特別訪問看護指示書の指示期間が終了すると、再び通常の訪問看護指示書に基づいたケアに移行します。

もし指示期間終了後も頻回の訪問が必要な場合は、主治医の診療を経て、新たに特別訪問看護指示書を交付してもらうことが可能です。

指示期間に関する基本ルール

項目内容
1回の指示期間最長14日間(主治医の判断で短縮あり)
月1回交付の場合最大14日間の集中ケア
月2回交付の場合最大28日間の集中ケア
14日超の記載指示書が無効になる

指示書の「次の交付」までに決められた間隔はない

特別訪問看護指示書には、前回の指示期間終了から次の交付までに空けなければならない日数は定められていません。指示期間が終了した翌日から、新たな指示書を交付してもらうことも制度上は可能です。

ただし、新たな指示書の交付には主治医の診療が必要です。継続的に交付を受けている場合には、訪問看護療養費明細書にその旨を記載する必要があるため、訪問看護ステーションとの連携も大切になります。

特別訪問看護指示書が交付される3つの要件|どんな疾患でも対象になる

特別訪問看護指示書の交付に、特定の疾患による制限はありません。あくまで患者さんの「状態」に着目して交付が判断されます。

主治医が以下の3つの要件のいずれかに該当すると診断し、週4日以上の頻回な訪問看護が必要だと認めた場合に交付されます。

急性増悪で一時的にケアの強化が必要な場合

慢性疾患を抱えている方が急に症状を悪化させた場合、これを「急性増悪」と呼びます。たとえば、COPDの患者さんが呼吸困難を訴えたり、心不全の方に急激なむくみが生じたりした場合が当てはまります。

感染症にかかって高熱が続き、自力で水分補給や栄養摂取ができなくなった場合も該当します。在宅での生活が破綻するリスクがあるとき、特別訪問看護指示書による集中ケアが頼りになるでしょう。

末期の悪性腫瘍「以外」の終末期にある場合

終末期のケアが必要な患者さんのうち、がん以外の疾患で終末期を迎えている方が対象になります。神経難病や重度の心不全、慢性呼吸不全など、医療的なケアを手厚く行う必要がある方が当てはまるでしょう。

なお、末期の悪性腫瘍(がん末期)の患者さんは「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当するため、特別訪問看護指示書がなくても頻回の訪問看護が可能です。そのため、特別訪問看護指示書の対象からは除かれています。

退院直後で在宅療養への移行期にケアが集中して必要な場合

手術後や長期入院後に退院した直後は、体調が安定していないことが少なくありません。

新しい医療機器の操作に慣れていなかったり、ご家族が介護手技に不安を感じていたりする場合、看護師が毎日訪問してサポートすることで在宅療養へスムーズに移行できます。

退院直後の2週間を集中的に支えることで、ご本人もご家族も安心して自宅での生活を再開できるでしょう。

  • 急性感染症などによる急性増悪
  • 末期の悪性腫瘍等「以外」の終末期
  • 退院直後で週4日以上の訪問看護が必要な場合

特別訪問看護指示書が交付されると訪問看護の内容はこれだけ変わる

特別訪問看護指示書が交付されると、通常の訪問看護では対応できなかった頻度や体制でのケアが受けられるようになります。在宅にいながら入院に近いレベルの医療的サポートを受けることも可能です。

週4日以上の訪問や1日複数回の訪問が可能になる

通常の訪問看護指示書では原則週3回までの訪問ですが、特別訪問看護指示書が交付されると週4日以上の訪問が認められます。病状に応じて毎日の訪問が可能になり、1日に2回以上の訪問を行うこともできます。

病状の変化が早い急性期や終末期には、午前と午後で状態が大きく異なることもあるため、複数回の訪問は患者さんの安全を守るうえで心強い制度です。

複数の訪問看護ステーションが同時に関わることもできる

通常であれば1か所の訪問看護ステーションからのケアが基本ですが、特別訪問看護指示書の期間中は2か所以上のステーションが連携してケアにあたることも認められています。

特別訪問看護指示書の交付で広がるケアの内容

ケアの種類通常時特別指示書交付時
訪問回数週3回まで週4日以上・毎日も可
1日の訪問回数1回複数回可能
ステーション数1か所2か所以上も可能
長時間訪問原則なし90分超も可(週1回)

長時間の訪問看護も週1回まで実施できる

特別訪問看護指示書が交付されている期間中は、90分を超える長時間の訪問看護を原則として週1回まで受けられます。重症度の高い処置が必要な患者さんにとって、十分な時間を確保してケアを受けられるのは大きな安心材料になるでしょう。

点滴の管理や人工呼吸器の調整、褥瘡の処置など、時間を要する医療行為にもしっかり対応できます。

指示期間中は医療保険による訪問看護に切り替わる

特別訪問看護指示書が交付されている期間中は、たとえ介護保険で訪問看護を受けていた方であっても、医療保険による訪問看護に自動的に切り替わります。指示期間が終了して状態が安定すれば、再び介護保険に戻る仕組みです。

切り替えの手続きは訪問看護ステーションと医療機関の間で行われますので、患者さんやご家族が自分で手続きをする必要はありません。

特別訪問看護指示書を月またぎで使うときに気をつけたい期間の数え方

特別訪問看護指示書の指示期間は月をまたいで設定することが可能です。ただし月をまたいだ場合でも14日間の上限は変わらないため、期間の数え方に注意が必要になります。

月をまたいでも14日間の上限はそのまま適用される

たとえば4月20日から5月3日までの14日間で特別訪問看護指示書が交付された場合、指示期間が2つの月にまたがります。しかし、14日間という上限自体は変わりません。

月をまたいだからといって期間が延長されるわけではない点を覚えておきましょう。

月をまたいだ場合、翌月にも新たな交付を受けられる

月をまたいで交付された場合、前月からの持ち越し期間に加えて、翌月に改めて新しい特別訪問看護指示書を交付してもらうことが可能です。

先ほどの例でいえば、4月20日から5月3日まで交付を受けた後、5月4日から新たに14日間の指示書を出してもらえます。

この仕組みによって、必要に応じた連続的なケアが実現できるのです。

レセプト請求は月ごとに分ける必要がある

月をまたいで特別訪問看護指示書が交付された場合、レセプト(診療報酬の請求書)は月ごとに分けて請求しなければなりません。訪問看護ステーションと医療機関がしっかり連携して、請求漏れや算定誤りを防ぐことが大切です。

患者さん側で手続きが発生するわけではありませんが、月またぎの指示書が出た場合には、ステーションの管理者にその旨を確認しておくと安心でしょう。

月またぎの特別訪問看護指示書の取り扱い

場面対応
指示期間が月をまたぐ14日間の上限は変わらない
翌月の新規交付前月の持ち越し分に加えて交付可能
レセプト請求月ごとに分けて請求が必要

特別訪問看護指示書を主治医に依頼するときに家族ができること

特別訪問看護指示書の交付は主治医の医学的判断に基づいて行われますが、患者さんのご家族が日ごろからできる備えもあります。いざというときに慌てず対応するために、普段から準備しておきたいポイントをお伝えします。

日ごろから訪問看護ステーションとの信頼関係を築いておく

特別訪問看護指示書が必要になるような急変時には、訪問看護ステーションの看護師が患者さんの状態を主治医に報告し、指示書の交付を依頼するケースが多いです。普段から看護師との連絡を密にしておくと、緊急時の対応がスムーズになります。

  • 訪問看護師の連絡先を家族全員で共有しておく
  • 緊急時の連絡手順を事前に確認しておく
  • 主治医の診療日や連絡方法を把握しておく

患者さんの体調変化を記録して伝えられるようにしておく

主治医が特別訪問看護指示書の交付を判断するには、患者さんの状態を正確に把握する必要があります。

ご家族がバイタルサイン(体温・血圧・脈拍など)や食事量、排泄の状況などを日ごろから記録しておくと、主治医への報告がより具体的になるでしょう。

「いつもと違う」と感じた変化をメモしておくだけでも、医師の判断材料として役立ちます。

特別訪問看護指示書の交付は主治医にしかできない

訪問看護師がどれだけ必要性を感じていても、指示書の交付権限は主治医にしかありません。別の病院を受診した際にそちらの医師から交付してもらうこともできないため、あくまで普段の主治医に依頼する必要があります。

ただし同じ医療機関内で、同一診療科に所属する複数の医師が共同で診療を行っている場合には、いずれかの医師が指示書を交付できるケースもあります。主治医が不在のときの対応について、あらかじめ確認しておくと安心です。

よくある質問

特別訪問看護指示書の月2回交付に該当する「真皮を越える褥瘡」とは、具体的にどの程度の深さを指しますか?

真皮を越える褥瘡とは、皮膚の損傷が表皮と真皮の層を越えて、皮下組織やそれより深い部分にまで達している状態を指します。

日本褥瘡学会のDESIGN-R 2020分類ではD3(皮下組織までの損傷)、D4(皮下組織を超える損傷)、D5(関節腔・体腔に至る損傷)が該当します。

NPUAP分類ではステージIII(全層皮膚欠損)またはステージIV(全層組織欠損)に相当します。訪問看護指示書にこの深さの褥瘡があることが記載されていれば、月2回の交付対象になります。

特別訪問看護指示書の交付に特定の疾患名の制限はありますか?

特別訪問看護指示書の交付に、特定の疾患名による制限はありません。交付の判断基準となるのは疾患名ではなく、患者さんの「状態」です。

急性増悪により一時的に頻回な訪問看護が必要である、末期の悪性腫瘍等以外の終末期である、退院直後で週4日以上の訪問看護が必要である、といった3つのいずれかに該当すれば、どのような疾患であっても主治医の判断で交付が可能です。

特別訪問看護指示書の指示期間が終了したら、翌日からすぐに新しい指示書を交付してもらえますか?

制度上、特別訪問看護指示書の指示期間が終了した翌日から、新たな指示書を交付してもらうことは可能です。前の指示書と次の指示書の間に、必ず空けなければならない日数の規定はありません。

ただし、新たに交付を受けるためには主治医による診療が改めて必要です。連続して交付されている場合は、訪問看護療養費明細書にその旨を記載しなければならないため、訪問看護ステーションとの情報共有が大切になります。

特別訪問看護指示書の期間中に介護保険の訪問看護と併用することはできますか?

特別訪問看護指示書が交付されている期間中は、医療保険による訪問看護に切り替わるため、介護保険の訪問看護と併用することはできません。

普段は介護保険で訪問看護を受けている方であっても、特別指示書の期間中は自動的に医療保険の扱いになります。

指示期間が終了して状態が安定すれば、再び介護保険による訪問看護に戻ります。切り替えは訪問看護ステーションと医療機関の間で処理されるため、患者さんやご家族が自分で手続きをする必要はありません。

特別訪問看護指示書は訪問看護師から主治医に交付を依頼することができますか?

訪問看護師が患者さんの状態変化を察知して、主治医に特別訪問看護指示書の交付を依頼すること自体は可能です。むしろ、日常的に患者さんのそばでケアを行っている訪問看護師が変化に気づき、主治医に報告・相談するケースは実際に多くみられます。

ただし、指示書の交付はあくまで主治医の医学的判断に基づいて行われます。看護師が単独で交付を決定したり、訪問回数を増やしたりすることはできません。

日ごろから主治医と訪問看護ステーションが密に連携していることが、迅速な対応につながります。

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この記事を書いた人

新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

医師
医療法人社団あしたば会 理事長
富士在宅診療所 院長
順天堂大学医学部卒業(2001)
スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
USMLE/ECFMG取得(2005)
富士在宅診療所開業(2016)

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