死前喘鳴とは?どんな音がする?原因と在宅での対応・家族の心構え

死前喘鳴は、のどや気道にたまった唾液や分泌物が、呼吸のたびに震えて鳴る音です。日本緩和医療学会の診療ガイドラインは、死期が迫った患者さんに聞かれる呼吸に伴う不快な音と定義しています。
音は「ゴボゴボ」「ガラガラ」と表現され、そばで聞くご家族には息が詰まっているように響きます。本人が苦痛と感じているかどうかは、同じガイドラインでも明らかではないと書かれています。
在宅では、体の向きを変える、口の中を清潔に保つといった負担の軽い手当てから始めます。吸引をどこまで行うかは家族だけで抱えず、訪問診療や訪問看護と前もって取り決めておく事柄です。
死前喘鳴は呼吸のたびに鳴る不快な音
死前喘鳴は、のどの奥にたまった唾液や気道の分泌物が呼吸で震えて出る音であり、肺の奥が詰まって起こる音ではありません。日本緩和医療学会の診療ガイドラインは、これを死期が迫った患者さんに聞かれる呼吸に伴う不快な音と定めています。
死前喘鳴の定義は死期が迫った方に聞かれる呼吸音
日本緩和医療学会がまとめた進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドラインでは、死前喘鳴を「死期が迫った患者さんにおいて聞かれる、呼吸に伴う不快な音」と定義しています。
衰弱が進んで飲み込む働きと咳の反射が落ちてくると、飲み込んだり吐き出したりできなくなった唾液や気道の分泌物が、のどの奥に少しずつたまっていきます。
たまった分泌物が呼吸の空気に揺すられて震え、その振動が音になります。つまり空気の通り道が塞がって鳴っているのではなく、通り道に残った水分が鳴っているとご理解いただくと近いでしょう。
肺の奥の炎症で出る音とは成り立ちが違うため、原因を叩く治療で音が消えるとは限りません。音の出どころがのどの手前にあるという点が、対応を組み立てるうえでの出発点になります。
「ゴボゴボ」「ガラガラ」と表現される音の出方
ガイドラインは、この音を「ゴボゴボ」「ガラガラ」といった言葉で表しています。うがいをしているときの音、あるいはストローで飲み物の底をすするときの音に近い、と感じるご家族が少なくありません。
音は息を吸うときにも吐くときにも出るため、呼吸のリズムに合わせて絶え間なく続いて聞こえます。強さは一定ではなく、体の向きや分泌物のたまり具合で、数分のうちに強まったり弱まったりします。
本人がむせたり咳き込んだりせずに音だけが続くのは、痰を出そうとする力そのものが弱まっているためです。咳が出ないから軽い、咳が出ないから重い、というふうに読み取れるものではありません。
なお、看取りの場面で必ずこの音が現れるわけではありません。最後まで静かな呼吸のまま過ごされる方もいますから、音の有無で経過の良し悪しを測る材料にはしないでいただければと思います。
いびきや呻吟と死前喘鳴はどう違うのか?
紛らわしい音がいくつかあり、なかでも混同されやすいのが、いびきと呻吟です。呻吟は呼吸と一緒に意図しない発声がみられる状態で、ガイドラインの用語集も死前喘鳴とは異なるものだと明記しています。
| 聞こえる音 | 音が出ているところ | 見分けの手がかり |
|---|---|---|
| 死前喘鳴 | のどの奥にたまった唾液や分泌物 | 吸うときも吐くときも湿った音が続く |
| いびき | 眠っている間に狭くなった上気道の粘膜 | 眠りに入っているときだけ規則正しく続く |
| 呻吟 | 声帯を通る意図しない発声 | 湿った音ではなく声が混じって聞こえる |
とはいえ、ご家族が耳だけでこの三つを見分ける必要はありません。音の種類を言い当てるより、いつからどんなふうに聞こえ始めたかを覚えておき、訪問看護師や医師に伝えるほうが役に立ちます。
音の大きさは4段階の物差しでとらえる
医療の現場では、どれくらいの距離で聞こえるかによって音の強さを4段階に分ける物差しが使われています。数字が大きいほど遠くまで音が届いている状態です。
| 段階 | ガイドラインの記述 | 家の中での目安 |
|---|---|---|
| 0 | 音が聞こえない | 枕元にいても聞き取れない |
| 1 | 患者さんに近づくと聞こえる | 顔を寄せたときに気づく |
| 2 | 静かな部屋でベッドサイドに立つと聞こえる | 枕元に立つと分かる |
| 3 | 静かな部屋で約6メートル離れても聞こえる | 部屋のドアのあたりまで届く |
ご家族がこの段階を判定する必要はありませんが、目安を知っておくと伝え方が具体的になります。「今朝は枕元に立つと分かる程度でしたが、今は廊下まで聞こえます」と話せれば、状況が正確に伝わります。
ガイドラインは、音の強さと同時に、そばでケアしているご家族の苦痛も評価するよう求めています。つらさを口に出しても、大げさだと受け取られる心配はありません。
死前喘鳴が起こる原因は唾液と分泌物の行き場
原因ははっきりしています。飲み込む力と咳で押し出す力が同時に落ちて、いつもなら自然に処理されている唾液や分泌物が、のどや気道にとどまってしまうためです。
飲み込む力と咳の力が落ちると分泌物がのどに残る
健康なときの私たちは、唾液を無意識に飲み込み、気道に落ちかけたものは咳で押し返しています。この二つの働きは意識しないまま一日に何百回も繰り返されており、ふだんは気に留めることもありません。
終末期に入って全身の力が落ちてくると、まず飲み込む反射が鈍くなり、続いて咳で押し出す力も弱まります。唾液は出続けているのに行き場がなくなり、のどの奥にとどまるという状態が生まれます。
そのため死前喘鳴は、分泌物が急に増えたから起こるとは限りません。むしろ、いつもどおりに出ている唾液を処理する力のほうが先に落ちた結果として現れる音だと考えると、腑に落ちやすいでしょう。
1型と2型では成り立ちが違う
ガイドラインは、死前喘鳴を2つの型に分ける考えを紹介しています。1型は真性、2型は偽性とも呼ばれ、たまっているものも、そこに至るまでの時間の流れも異なります。
| 型 | たまっているもの | 経過の特徴 |
|---|---|---|
| 1型(真性) | 主に唾液が咽頭にたまる | 意識のレベルが下がり飲み込む反射が抑えられてから現れる |
| 2型(偽性) | 感染や腫瘍、体液の貯留、誤嚥などで生じた下気道からの分泌物 | 意識が保たれている場合も多く、数日かけて気道にたまる |
2型は意識がはっきりしている段階でも起こるため、音が出た=残された時間が短い、と単純には結びつきません。ガイドラインも、2型では喀出が難しくなってから亡くなるまでの期間が長い場合も多い、と記しています。
実際には1型と2型が混じっている方もいて、どちらかにきれいに分けられないと同ガイドラインは認めています。ご家族が型を見分ける必要はなく、判断は訪問診療の医師に任せていただいて構いません。
起こりやすさに関わるとされる要因
ガイドラインが引用している2014年の系統的レビューでは、終末期のがん患者さんの23〜92%、平均で35%に死前喘鳴が認められたと報告されています。割合に大きな開きはありますが、まれにしか起こらない現象ではないと読み取れます。
同じレビューからは、起こりやすさに関わる要因も抜き出されています。
これらはあくまで統計上の傾向であり、当てはまるから必ず起こる、当てはまらないから起こらない、という性質のものではありません。当てはまる項目を数えて身構える材料にはしないでいただければと思います。
死前喘鳴で本人が苦痛を感じているかは分かっていない
本人が苦しんでいると決めつける必要はありませんが、まったく苦しくないと言い切れるわけでもありません。ガイドラインは、この時期の意識の状態を踏まえ、本人が苦痛と感じているかは明らかではないと記しています。
ガイドラインは「苦痛と感じているか明らかではない」と記す
進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドラインは、死前喘鳴が現れる時期には患者さんの意識のレベルが下がっている場合が多く、本人が苦痛と感じているかは明らかではない、と述べています。
同じガイドラインには、多くの場合は本人にとって苦痛ではないと考えられている、という記述もあります。どちらも推し量った書き方であって、苦しくないと確かめられたわけではないという点は変わりません。
確かめきれない理由ははっきりしています。音が強く出る時期には本人から言葉で聞き取れず、痛みや息苦しさのように本人の申告をよりどころにする方法が取れないためです。
だからこそ、音の大きさだけを見て苦しみの強さを判断するのには無理があります。実際にどう診ているのかは、そのとき往診している医師や訪問看護師に率直に尋ねるのが確実でしょう。
家族の側が強い苦痛を感じやすい
国内で行われた全国的な遺族調査では、46%の遺族が死前喘鳴を経験し、そのうち66%が喘鳴を苦痛と感じていたと報告されています。ガイドラインはこの結果を引きながら、家族や介護者への配慮を求めています。
同じ調査からは、遺族が苦痛を大きく感じた背景も抜き出されました。
ガイドラインは、本人が苦痛を感じていないと推測される場合、ケアの主な対象は付き添う家族や介護者になると位置づけています。音に耐える側の負担が軽く扱われるわけではありません。
見た目の激しさと本人の感覚は必ずしも重ならない
そばで聞いていると窒息しているように響きますが、気道に分泌物がたまり空気が通るたびに音が出ているだけであり、窒息するようなものではありません。
音の激しさと本人が感じている苦しさがそのまま重なるとは限らず、むしろ眉間や口元に力が入っていないか、体をよじるそぶりがないかといった表情や動きのほうが、そばにいる人の手がかりになります。
気になるときは我慢して見守らず、そのまま医療者に言葉にしていただくほうが早く楽になります。苦しそうに見えます、という一言だけでも、次の訪問での確認につながる大切な情報です。
在宅で死前喘鳴に気づいたらまず負担の軽い手当てから
介入するのであれば、まず侵襲の少ない手当てを行い、改善が乏しければ薬による手当てを足す、という順序を踏みましょう。在宅で家族が担えるのは、この前半にあたる部分です。
侵襲の少ない手当てから順に試す
薬を使わない手当てとして挙げられるのは、体の向きを変える、吸引する、輸液の量を調整する、家族や介護者をケアする、の4つです。ただし効き目の確かさは、それぞれで大きく異なります。
| 手当て | どう働くと考えられているか | ガイドラインでの扱い |
|---|---|---|
| 体の向きを変える | 仰向けから横向きや半分起こした姿勢へ移すと症状が和らぐとされる | 効き目を確かめる比較試験は行われていない |
| 輸液の量を調整する | 過剰な輸液は危険因子とされ、減らすと予防や治療につながると考えられている | 輸液量と発症の関連は多くの研究で示されていない |
| 吸引 | たまった分泌物を吸い取る | 行うべきではないとされてきたが根拠は示されていない |
| 家族や介護者へのケア | 説明と保証によって付き添う側の負担を減らす | 重要だと位置づけられている |
この表から読み取っていただきたいのは、どれも決定打ではないという事実です。ガイドライン自身が、患者さん本人にはあえて介入せず経過を見守るのも選択肢になる、と書いています。
見守るという選択は消極的に映るかもしれません。ただ、副作用の心配がある薬や体への負担が大きい処置を重ねてかえって苦痛を増やすのは合理的といえない、という見方も同ガイドラインに併記されています。
体の向きを変えると音が和らぐことがある
仰向けから横向き、あるいは半分起こした姿勢へ移すというのも行いたい体位の工夫です。のどにたまった分泌物の位置がずれ、空気の通り道から外れると、音が小さくなります。
在宅で介護用ベッドを使っているなら、頭側を少し起こしてから、体全体をどちらかに傾けるやり方が現実的でしょう。背中と膝の下にクッションを差し込むと、傾けた姿勢が崩れにくくなります。
ただし、体を動かすこと自体が負担になる時期でもあります。何度も向きを変えて音を消そうとするより、一度変えたら数分待ち、それでも変わらなければそのままにしておく、という構えが穏やかです。
口の中を清潔に保ち、部屋の空気を整える
日本緩和医療学会が2016年にまとめた前の版のガイドラインでは、考えられる原因への手当てとして、輸液量の調整とあわせて口腔ケアが挙げられていました。家族が続けやすい部分でもあります。
やり方は難しくありません。スポンジブラシや口腔ケア用のウェットティッシュを水で湿らせ、頬の内側と舌の上を軽くぬぐい、乾いた唇には保湿剤を薄く塗って仕上げます。
飲み込む力が落ちている方の口へ水分を入れすぎると、かえってむせを招きます。湿らせる程度にとどめる加減については、訪問看護師に一度実演してもらうと迷いが減るはずです。
口の中がうるおうと、乾いて張りついた分泌物ははがれやすくなります。ぬぐったあとに綿棒で唇の縁までなぞっておけば、表情もやわらいで見え、そばで見守る側の気持ちが少し落ち着きます。
部屋の乾燥が強いと分泌物が固くなりやすいため、加湿と換気にも気を配ります。医療の手当てではありませんが、ご家族が今日から手をつけられる工夫といえます。
死前喘鳴への吸引は在宅の家族だけで決めない
吸引は、しないほうがよいとも、したほうがよいとも言い切れない手当てです。だからこそ、その場の思いつきで判断せず、どうするかを在宅チームと前もって取り決めておく必要があります。
ガイドラインは吸引をどう扱っているか
ガイドラインは、近年の指針では吸引を行うべきではないとされているものの、その根拠は示されていない、と踏み込んで書いています。効き目を確かめた比較試験が存在しないため、判断の材料が乏しいのです。
そのうえで、吸引はたとえ行うとしても注意深く愛護的に行うべきである、と結んでいます。禁止でも推奨でもなく、行うなら慎重に、という中間の立場だと受け止めるのが正確です。
吸引器が家に置かれていると、音がするたびに使うべきだという気持ちに傾きがちです。置いてあるかどうかと、今この瞬間に使うかどうかは、切り離して考えていただきたいところです。
退院して自宅へ戻るとき、必要になりうる物品がひととおりそろえられ、その中に吸引器が含まれる場合もあります。備えとして置かれただけなのか、使う前提で渡されたのかは、退院前に確かめておくと安心でしょう。
観察研究が報告した吸引の負担
後ろ向きの観察研究では、死前喘鳴がみられた236名の臨死期の患者さんのうち197名、割合にして81%に吸引が行われていました。多くの現場で実際に選ばれてきた手当てです。
その一方で、62名にあたる31%に有害な出来事が起き、内訳は出血が24%、呼吸状態の悪化が6%、嘔吐が5%でした。98名にあたる50%には痛みの徴候がみられたと報告されています。
この研究には、吸引でどれだけ音が減ったかについての記載がありませんでした。負担のほうだけが数字で残っている状況であり、良かれと思って繰り返すほど本人の負担が積み上がる恐れがあります。
誰がどこまで行うかを前もって決めておく
やらないと決め打ちするのでもなく、家族の判断でその都度やるのでもなく、あらかじめ線を引いておくやり方が現実的です。
国内の遺族調査でも、吸引について医療者と十分に相談できなかった点が、対応の改善が必要だと感じた要因として挙がっていました。
| 決めておく事柄 | 確かめておく内容 | 残し方 |
|---|---|---|
| 行うかどうか | 本人が以前どう望んでいたか、今どこまで負担になりうるか | 話し合った日付とともに書きとめる |
| 誰が行うか | 家族が担うのか、訪問看護師の到着を待つのか | 連絡先と並べて紙で見えるところに置く |
| 夜間の扱い | 音だけで呼ぶのか、朝の訪問まで待つのか | 在宅チーム全員が同じ内容を共有する |
吸引の手技そのものは、訪問看護師から直接指導を受けたうえで行う医療的な手当てです。文章を読んだだけの見よう見まねで始めるものではなく、必ず実演を伴う説明を受けてから扱います。
線を引いておくと、深夜に音が強まった場面でも「決めたとおりにする」と踏みとどまれます。判断そのものを前もって医療者と分け合っておく段取りが、その場の迷いを減らしてくれます。
死前喘鳴の音が変わったとき家族はどう動くか
深夜に音が強まると、何かしなければと気持ちが急きます。まず表情と体の向きを確かめ、それから決めてある連絡先に頼るという順番を持っておくと、動きが落ち着きます。
音が変わったときにまず確かめる点
見るべきなのは音そのものより、本人の表情と体の力み具合です。ガイドラインが家族への説明で強調しているのも、音の激しさが必ずしも苦しさの強さを表すわけではないという点でした。
| 気づいた変化 | 先に確かめる点 | 次の動き |
|---|---|---|
| 音が急に強まった | 体の向き、眉間や口元の力み | 向きを変えて数分待ってみる |
| 顔色や唇の色が変わった | 呼吸の間隔、呼びかけへの反応 | 決めてある連絡先へ電話する |
| 音は続くが表情は穏やか | 体の力みやよじる動きの有無 | 時刻とともに記録し次の訪問で伝える |
記録は詳しく書く必要がありません。時刻と、どこまで音が届いたか、表情が穏やかだったかどうかという3点を書き残すだけでも、次の往診での判断はぐんと精度が上がります。
夜間や休日に連絡してよいか迷ったら
迷ったときは連絡してよい、というのが在宅医療の側の基本的な構えです。訪問診療を行う診療所の多くは24時間の連絡体制を組んでおり、夜間の電話は想定の範囲に入っています。
電話口では、いつから音が始まったか、どこまで届く音か、顔色や表情に変化があるかを順に伝えます。前もって決めた吸引の扱いについても、その場で確かめ直して構いません。
電話をかけた結果、朝まで様子を見ましょうという返事になる場合もあります。それは無駄な連絡だったのではなく、看護師と一緒に判断したという記録が残ったということです。
連絡先が複数ある家庭では、どこへかけるかで迷いが生じがちです。夜間の一次窓口を一つに絞り、冷蔵庫の扉のように誰の目にも入る場所へ貼っておけば、その晩に付き添う人が誰であっても動けます。
付き添う家族自身の休息も削らない
音が続くあいだ、そばを離れてはいけないと思い詰めるご家族は少なくありません。しかし付き添いが長引くほど眠れず、判断も鈍っていきます。
隣の部屋で横になる、家族で数時間ずつ交代する、日中にヘルパーへ入ってもらうといった手立てで、休む時間を意識して確保します。介護保険のサービスを組み替えられる場合もあるため、ケアマネジャーへ相談する価値があります。
ガイドラインが家族や介護者へのケアを手当ての一つに数えているのは、付き添う側の消耗が看取り全体の質に響くからです。ご自身を休ませる時間は、後ろめたさを感じる対象ではありません。
交代を頼める相手が身近にいない場合は、短期入所の利用や訪問の回数を増やす調整も検討できます。夜をどう乗り切るかは在宅チームへ持ち込んでよい相談であり、家族が一人で背負う前提ではありません。
死前喘鳴の対応は在宅チームと前もって話し合っておく
厚生労働省は、人生の最終段階の医療とケアについて、本人と家族等、医療・ケアチームが繰り返し話し合う姿勢を指針として示しています。死前喘鳴の扱いも、その話題の一つに含めておけます。
繰り返し話し合う姿勢を国の指針が求めている
厚生労働省の指針は、本人の意思は変化しうるものであると踏まえたうえで、本人が自らの意思をその都度示せるよう支え、話し合いを繰り返し行うのが重要だと述べています。
さらに、本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等の信頼できる者も含めて話し合いを重ねるよう促しています。死前喘鳴が出る時期は、まさにその状態にあたります。
一度決めた内容を後から変えても構いません。指針そのものが、時間の経過や心身の状態の変化に応じて意思は変わりうると認めているからです。
意思を推定する人を前もって定めておく
同じ指針は、話し合いに先立って、本人が特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めておくのも重要だとしています。役目がはっきりしていると、いざというときの迷いが減ります。
本人の意思が確認できない場面では、家族等が推定できるならその推定意思を尊重し、本人にとって最善の方針をとるのが基本だとも書かれています。推し量る役目を担う人を決めておく意味は、そこにあります。
役目を負う方が一人で抱え込む必要はありません。指針は医療・ケアチームとの十分な話し合いを前提に置いており、判断を家族だけに委ねる立て付けにはなっていません。
話し合った内容は書きとめて共有する
厚生労働省の指針は、話し合った内容をその都度文書にまとめておくものとする、と明記しています。口約束のままだと、担当する看護師が交代したときに引き継がれない恐れがあるためです。
在宅では、連絡ノートや自宅に置いてある記録ファイルが共有の場になります。吸引をどうするか、夜間はどこへ連絡するか、本人が以前どう話していたかを書き足しておくと、関わる全員が同じ前提で動けます。
書き残す先は、整った様式でなくてかまいません。日付と、誰と何を話したか、どういう結論になったかの三行が並んでいれば、次に訪れた看護師はその続きから話を始められます。
音が出てから慌てて話し合うのは、誰にとっても酷な段取りです。まだ会話ができるうち、あるいは体調が落ち着いているうちに、一度でも言葉を交わしておけると心強いでしょう。
よくある質問
日本緩和医療学会の診療ガイドラインは、この時期は意識のレベルが下がっている場合が多く、本人が苦痛と感じているかは明らかではない、と記しています。苦しんでいるとも、苦しくないとも断じられていません。
音の大きさだけで判断せず、表情や体の力み具合をあわせて見ます。気になるときは訪問看護師や医師に率直に尋ねてください。
吸引で音がどれだけ減るかを確かめた比較試験は行われておらず、同ガイドラインも効果の根拠は示されていないと書いています。おさまると約束できる手当てではありません。
一方で、たとえ行うとしても注意深く愛護的に行うべきだとも記されています。家族の判断だけで繰り返さず、行うかどうかを在宅チームと前もって取り決めておく形がよいでしょう。
耳だけで確実に見分けるのは難しく、ご家族が言い当てる必要もありません。死前喘鳴は吸うときも吐くときも湿った音が続く点が特徴で、いびきは眠っている間に限られます。
大切なのは、いつからどんな音が始まったかを覚えておき、そのまま医療者に伝える段取りです。音の種類の判定は、往診の場で医師が担います。
体の向きを仰向けから横向きや半分起こした姿勢へ変えると音が和らぐ場合があります。口の中を湿らせて清潔に保つ手当ても、家で続けやすい支えになります。
何度も動かして音を消そうとするより、一度整えたら数分待つ構えのほうが穏やかです。手を握って声をかける時間そのものにも意味があります。
迷ったときは連絡して差し支えありません。訪問診療を行う診療所の多くは24時間の連絡体制を組んでおり、夜間の相談も想定の範囲に入っています。
電話では、音がいつから始まったか、どこまで届くか、顔色や表情に変化があるかを順に伝えます。朝まで様子を見ましょうという返事になっても、看護師と一緒に判断した事実が残ります。



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