下顎呼吸とは?見分け方・余命・家族ができる楽な姿勢の取り方

自宅の寝室で静かに呼吸を続ける高齢者のそばに家族が寄り添い、訪問診療と訪問看護が見守る在宅での看取りの医療イメージ

下顎呼吸は、顎を上下に動かしながら息を吸おうとする呼吸を指し、亡くなる前の時期に現れる体の変化のひとつです。初めて目にすると、多くのご家族が息をのみます。

見た目に驚いたとしても、ご家族が何かを間違えたわけではありません。厚生労働省の事業としてまとめられた看取り介護の指針は、家族が落ち着いて過ごせるよう、この変化をあらかじめ伝えておく大切さに触れています。

あと何時間、といった数字は一人ひとり違い、言い切れる目安にはなりません。顎の動きの見分け方、体が楽になりやすい姿勢の取り方、口の乾きへの手当てまで、そばにいる家族が取れる行動を順にたどります。

目次

下顎呼吸とは顎を上下に動かして息を取り込もうとする呼吸

下顎呼吸は、体に届く酸素が足りなくなったときに、少しでも多く息を取り込もうとして顎が上下に動く呼吸を指します。急に何かが悪化した合図というより、亡くなる前の時期に現れる体の変化として、看取りの現場では前もって家族へ伝えられています。

顎が上下に揺れるのは息を取り込もうとする動き

厚生労働省の老人保健健康増進等事業としてまとめられた特別養護老人ホームにおける看取り介護ガイドラインは、この呼吸を、体内の酸素が不足しているため、それに応えようと少しでも多く呼吸しようと顎を上下にゆらすようにする呼吸だと説明しています。

胸を広げるだけでは息を吸いきれなくなり、顎から首にかけての筋肉まで使って空気を取り込もうとするため、あえいでいるように映ります。動いているのは下の顎で、口が半分開いたままゆっくり上下します。

まぶたが半分開いたままになる方もおり、眠っているのとも起きているのとも違う、どちらともつかない表情に見えます。声をかけても以前のような反応は返らず、家族の側だけが取り残された心地になりがちです。

呼吸の間隔が長くなり、止まったと思うとまた動く

同じ指針は、この呼吸に疲れてくると呼吸の間隔が長くなり、止まったと思うとまた呼吸するような経過をたどると記しています。間があくたび、家族のほうが息をのんで待ちます。

数えるつもりがなくても時計を見てしまい、呼吸が戻った瞬間にほっとして力が抜ける方は少なくありません。待つ時間そのものが、そばにいる家族にとっていちばん重い時間になります。

間隔が延びていく変化は、体が静かに力を使い切っていく流れの一部です。慌てて体を揺すったり大きな声で呼び続けたりせずとも、そばに座っている形で十分に支えになります。

呼吸の回数や間隔を、家族が時計を見ながら測って記録する必要はありません。訪問看護師が来たときに、いつごろから間があくようになったかを大まかに伝えられれば、判断の材料としては足ります。

初めて目にした家族が驚くのは自然なこと

息づかいが荒く見えるため、家に連れて帰った自分の判断が間違っていたのではないかと責めるご家族がいます。呼吸の見た目と本人の感じ方が同じとは限らず、家族だけで判断するのは難しい話です。

抱え込まずに、訪問診療の医師や訪問看護師へそのまま尋ねてよい場面です。つらさをやわらげる手当てを足すかどうかは、実際に診た医療者が決めていきます。

東京都が施設向けにまとめた暮らしの場における看取り支援の手引きも、呼吸の変化を家族へ伝える際に、会わせたい人がいればすぐ連絡するよう促しています。伝えるべき相手を思い浮かべる時期にあたります。

目に映る様子体で起きていること家族が取れる行動
顎が上下に揺れる少しでも多く息を取り込もうとする動き驚いても揺すらず、そばで見守る
口が半分開いたままになる顎の力が抜けて口が閉じにくくなる口の中が乾かないように湿らせる
呼吸の間隔が長くなる呼吸を続ける力が少なくなっている数えずに、様子を看護師へ伝える
ゴロゴロという音が混じる唾液やたんが声帯の近くにとどまる顔の向きを変え、医療者へ相談する

すべてを覚えておかなくても、目にした様子をそのまま看護師へ伝えれば、必要な手当ては向こうから提案されます。変化を見つけた時点で、遠慮せずに電話をかけて構いません。

下顎呼吸の見分け方は胸ではなく顎と肩の動きにある

見分ける手がかりは、胸ではなく顎と肩が動いているかどうかにあります。亡くなる前の呼吸の変化にはいくつかの呼び名があり、重なって現れる場面も多いため、区別そのものに神経を使う必要はありません。

呼び名目や耳で分かる様子体で起きている変化
下顎呼吸顎と肩を上下に動かして息をする足りない酸素を取り込もうとする動き
チェーンストークス呼吸深い呼吸と浅い呼吸が波のように入れ替わる呼吸の指令にずれが生じている
死前喘鳴のどの奥でゴロゴロという音が混じる唾液やたんが声帯の近くにとどまる

呼び名を覚えるより、いつもと違う動きに気づいた時点で医療者へ伝えるほうが役に立ちます。名前がつかない中間の状態も珍しくありません。

いつもの呼吸との違いは動く場所に出る

ふだんの呼吸では胸やお腹がゆるやかに上下し、顎はほとんど動きません。下顎呼吸になると胸の動きが乏しくなる一方で顎と肩が大きく上下するため、離れた場所からでも様子の違いが分かります。

口を大きく開けて空気をつかみにいくように見え、吸っている時間より止まっている時間のほうが長く感じられます。呼吸の回数そのものは、しだいに減っていきます。

布団を胸のあたりまで掛けていると胸の動きが隠れてしまい、顎だけが動いているように映る場面もあるでしょう。掛け物を少し下げて肩まで見えるようにしておくと、変化を言葉にしやすくなります。

チェーンストークス呼吸とはどこが違うのか?

東京都の手引きは、チェーンストークス呼吸を、呼吸の指令にずれが生じて呼吸が増大と減少を繰り返す変化として挙げています。大きく深い呼吸と浅い呼吸が波のように入れ替わる点が目印です。

顎の上下が目立つ下顎呼吸に対し、こちらは呼吸の深さの波で見分けられます。どちらも亡くなる前の時期に現れ、順番に、あるいは重なって見られます。

見分けがついてもつかなくても、家族が取る行動は変わりません。気づいた時点の様子を言葉にして、決めておいた連絡先へ渡せば足ります。

ゴロゴロという音が混じるときの受け止め方

のどの奥でゴロゴロという音が混じる変化は死前喘鳴と呼ばれ、下顎呼吸と前後して現れます。厚生労働省の事業でまとめられた看取り介護の指針は、この音を、唾液やたんが声帯付近にとどまることで起きると説明しています。

たんを吸い取る器械を使えば必ず静かになるとは限らず、のどへの刺激がかえって本人の負担になる場合もあります。使うかどうかは、訪問看護師や医師が本人の様子を見たうえで判断します。

家族の手でできるのは、顔の向きを少し変え、口元にたまったものをやわらかい布でやさしく拭き取るところまでです。音が続くときは、そのまま看護師へ伝えて差し支えありません。

迷ったときに電話で伝える言葉

夜中に様子が変わると、何をどう伝えればよいか分からず受話器の前で固まりがちです。伝える順番を決めておけば、慌てていても抜け落ちが減ります。

  • いつから様子が変わったか
  • 顎や肩が動いているか
  • 呼吸が止まる間があるか
  • 声かけへの反応があるか
  • 顔色や手足の冷たさ
  • 言葉がまとまらなくても、看護師のほうから順に尋ねてくれます。うまく説明できないまま電話してよく、そのために夜間の窓口が置かれています。

    電話のそばに、伝える項目と夜間の連絡先を書いた紙を貼っておくと、暗がりで探し回らずに済みます。同居していない家族にも同じ内容を渡しておけば、留守を頼むときにも役立つでしょう。

    下顎呼吸が出てからの余命を時間で言い切れない理由

    下顎呼吸が現れてからの時間を、数字で言い切れる目安として示すのは難しい話です。同じ変化が出ていても、その後の経過は病気の種類や体力によって開きが大きく、医療者も幅を持たせた言い方をします。

    数字が独り歩きしやすい理由

    検索すると、下顎呼吸が出てから何時間、といった数字がいくつも並びます。出どころをたどると、施設や病棟で見聞きした経験をまとめた記述が多く、裏づけの強さはそろっていません。

    数字を目にした家族は、その時間を軸に予定を組んでしまい、枕元で時計をたびたび見ながら過ごす形になりがちです。予想より早くても遅くても、あとから自分を責める材料になってしまいます。

    時間の目安をあえて示していないのは、確かな裏づけが公的な資料に見当たらないためです。数字の代わりに、そばで何ができるかへ目を向けたほうが、残る時間の使い方は穏やかになります。

    同じ徴候が出ても経過は一人ひとり違う

    がんの終末期と老衰とでは、体力の落ち方も、呼吸が変わってからその後たどる流れも、同じにはなりません。持病の重さ、年齢、それまでの食事量によっても差が出ます。

    呼吸が弱まってから静かに時間が過ぎる方もいれば、間隔があいたあとに落ち着いて見える時間が挟まる方もいます。医療者が幅を持たせた説明をするのは、この開きを知っているためです。

    はっきりしない答えを聞くと、かえって不安が増すかもしれません。断定より、変化があったときすぐ連絡が取れる状態のほうが、家族の支えになります。

    家族が知りたいこと数字で答えにくい理由代わりに確かめられること
    あとどのくらいか病気や体力で経過の幅が大きい今どの段階と見ているかを主治医に尋ねる
    今夜が峠なのか呼吸の変化から時間は決まらない夜間の連絡先と到着までのおおよその時間
    遠方の家族を呼ぶか到着までの時間が家庭ごとに違う会わせたい人がいればすぐ連絡する
    間に合わなかったら誰にも見通せない立ち会えないときの伝え方を相談する

    答えの出ない問いを抱えたままにせず、確かめられる形に置き換えて医療者へ渡すと、返ってくる言葉も具体的になります。

    主治医や訪問看護師へ確かめたい問い

    あと何時間かを尋ねても、返るのは幅のある答えです。同じ時間を使うなら、これから起こりうる変化と、そのときの連絡先を聞いておくほうが役に立ちます。

    • 今どの段階にあると見ているか
    • つらさをやわらげる手当てで足せるものはあるか
    • 夜間や休日に連絡する先はどこか
    • 遠方の家族へ知らせる時期
    • 会わせたい人を呼んでよいか
    • 聞きにくいと感じる問いほど、先に口にしておくとあとが楽になります。訪問診療の医師も訪問看護師も、こうした問いを日常的に受け取っています。

      厚生労働省が示す、人生の最終段階の医療とケアの決め方についての指針は、本人の意思が変化しうる前提に立ち、家族等も含めた話し合いを繰り返すよう求めています。一度聞いて終わりにせず、変化のたびに確かめ直してよい場面です。

      会わせたい人へ連絡する合図として受け取る

      東京都の手引きは、呼吸の変化を家族へ伝える場面で、会わせたい人がいればすぐ連絡するよう促しています。時間を数えるためではなく、人を呼ぶための合図として受け取ると動きやすくなります。

      遠方の家族には、着くまでにかかる時間を確かめたうえで早めに声をかけておきます。到着が間に合うかどうかは、誰にも読めません。

      立ち会えなかった家族が悔いを残しやすい点も、医療者はよく知っています。電話越しに声を届ける、あとで手紙を読み上げるといった形でも、伝えたい気持ちは渡せます。

      下顎呼吸のときに家族ができる楽な姿勢の取り方

      姿勢は、上体を少し起こす、体を横向きにする、枕の高さを整えるといった小さな工夫で楽になる場合があります。決まった正解はなく、本人の表情がやわらぐ向きを探すところが、家族にできる手当てです。

      上体を少し起こすと息が入りやすくなる

      東京都の手引きは、息苦しさへの手当てとして体位の工夫を挙げ、身体を起こすと楽になる場合があると記しています。介護用ベッドなら、背上げの機能で少しずつ角度をつけられます。

      一気に起こさず、様子を見ながら少しずつ上げていくと体への負担が減ります。角度を変えたあと、表情や呼吸がどう動くかをしばらく見てから次を決めましょう。

      ベッドがない場合は、座布団やクッションを背中から肩の下へ入れて支えます。頭だけを高くすると顎が胸につき、かえって空気の通り道が狭まるため、肩ごと支える形が目安です。

      横向きと枕の高さの整え方

      口の中にたまった唾液が気になるときは、体をやや横向きにすると自然に流れ出て、口元を拭き取りやすくなります。背中にクッションを差し込めば、その向きを保てます。

      枕が高すぎると顎が引けて空気の通り道が狭くなり、低すぎると首が反ります。首から後頭部までがゆるやかな線を描く高さが、ひとつの目安になるでしょう。

      タオルを折って高さを微調整すると、少しずつ試せます。ちょうどよい高さは日によって変わるので、決め打ちせずそのつど合わせていきます。

      気になる様子試せる姿勢の工夫気をつける点
      息が浅く感じる肩ごと支えて上体を少し起こす頭だけを高くすると顎が胸につく
      口に唾液がたまる体をやや横向きにする背中を支えて向きを保つ
      同じ向きが続いている時間を決めて向きを変える痛がる様子があれば途中でやめる
      手足が冷たい掛け物を足して保温する温めすぎて汗をかかせない

      向きを変えたあとに表情がゆるむか、眉が寄るかを見ておくと、次に取る姿勢の手がかりになります。判断に迷う場面は、訪問看護師の来訪時に一緒に確かめるとよいでしょう。

      体の向きはどのくらいの間隔で変えるのか?

      床ずれを防ぐ目的では定期的な体位変換がよく勧められますが、亡くなる前の時期には、動かす負担のほうが上回る場面も出てきます。間隔をどうするかは、訪問看護師と相談しながら決めます。

      厚生労働省の事業でまとめられた看取り介護の指針も、この時期のケアとして安楽な体位の工夫と体位交換を挙げています。ねらいは床ずれの予防だけでなく、本人が楽でいられる形を探すところにあります。

      体をさする、手を握るといった触れ方も、同じ指針が挙げている手当てです。向きを変えるついでに手足をさすると、家族の側の手持ちぶさたもやわらぐでしょう。

      動かさないほうがよい場面

      体を動かした直後に呼吸が乱れたり、顔をしかめたりするときは、いったん手を止めます。無理に整えるより、そのままの姿勢で見守るほうが本人の負担は軽く済みます。

      点滴の管や酸素のチューブが入っている場合は、引っぱってしまわないよう、まず位置を確かめてから体を動かします。抜けたり折れたりしたときは、自分で戻さず、そのまま看護師へ連絡してください。

      一人で体を動かすのが難しければ、二人がかりで支えるほうが安全です。手が足りないときは、次の訪問まで待つ判断も間違いではありません。

      迷ったまま手を出すより、そのままの形にして次の訪問を待つほうが、結果として本人の負担が軽く済む場面もあります。判断に自信が持てないときこそ、その場で電話をして確かめて構いません。

      下顎呼吸で口が乾くときの手当てと部屋の整え方

      口が半分開いたままになると中が乾き、それだけで不快さが増します。乾きへの手当てと、空気や光の整え方は、医療の知識がなくても、そばにいる家族の手で続けられる部分です。

      口が開いたままになると短い時間で乾く

      顎の力が抜けて口が閉じにくくなるうえ、呼吸のたびに空気が出入りするため、唇も口の中も短い時間で乾きます。乾いた粘膜は切れやすく、痛みの元にもなります。

      水を飲ませようとしても、飲み込む力が落ちている段階ではむせてしまいます。飲ませるのではなく湿らせる手当てへ切り替えるのが、この時期の目安です。

      唇には保湿剤を薄く塗り、乾きが強ければ回数を増やします。厚く塗ると口元が汚れやすくなるので、薄く重ねるくらいで足ります。

      氷片や好きな飲み物で口をうるおす

      東京都の手引きは、飲食が難しくなった時期に、氷片や好きな飲み物を使った口腔ケアが喜ばれる場合があると記しています。飲ませる量ではなく、口の中を湿らせる目的で使います。

      • やわらかいスポンジブラシか綿棒
      • 小さく砕いた氷
      • 本人が好きだった飲み物
      • 唇に塗る保湿剤
      • 水で濡らしたガーゼ
      • スポンジブラシに含ませた水は、垂れない程度に絞ってから口の中へ運びます。むせる様子があれば途中でやめ、次の訪問のときに看護師へ伝えましょう。

        好きだった飲み物の香りが口元に広がるだけでも、表情がゆるむ場面があります。量を競わず、味や香りを届ける手当てとして続けられます。

        空気の流れと明かりを整える

        東京都の手引きは、息苦しさへの手当てとして環境の整え方にも触れ、窓を開けて換気する、顔に風が当たるようにする、風通しをよくするといった工夫を挙げています。うちわで軽くあおぐだけでも空気は動きます。

        風を送るときは、体が冷えないよう掛け物で調整してください。エアコンの風が体に当たり続ける形は避け、部屋全体の空気がゆるやかに入れ替わる程度にとどめます。

        明かりはまぶしすぎない程度に落とし、朝と夜の区別がつくくらいには残します。テレビの音や話し声も、いつもの暮らしの音として残しておける範囲で構いません。

        下顎呼吸のあいだに家族ができるのはそばにいること

        この時期に家族が担う中心は、処置ではなく、そばにいる時間です。厚生労働省の事業でまとめられた看取り介護の指針は、対応の要点として「することの大切さ」以上に「そばにいることの大切さ」を挙げています。

        場面家族が担う部分医療者が担う部分
        呼吸が変わったとき様子を見て言葉で伝える診たうえで手当てを決める
        姿勢を整えるとき楽そうな向きを一緒に探す動かしてよい範囲を助言する
        口が乾いたときスポンジや氷で湿らせる口の中の状態を確かめる
        気持ちが揺れたとき素直に不安を口にする家族の疲れまで見て支える

        線引きを頭に入れておくと、抱え込みすぎずに済みます。担う部分が小さく思えても、家族にしか置けない時間がそこにあります。

        何かをする以上にそばにいる時間が支えになる

        同じ指針は、この時期の対応として、こまめに訪室する、声をかける、手足や体をさするといった触れ方を挙げ、本人を一人にしないよう促しています。手つきの巧みさより、人がそばにいる状態そのものが支えになります。

        好きだった音楽を小さくかける、庭の花を枕元に置く、昔の写真を並べるといった時間も、家族だからこそ持ち込めます。医療の側からは差し出せない部分でしょう。

        何を話せばよいか分からなければ、黙って手を握っているだけでも構いません。言葉を探すうちに時間が過ぎてしまうより、そのまま座っている形のほうが自然です。

        交代でそばにいる組み方

        一人の家族が眠らずに見守り続けると、数日で限界が来ます。時間帯を決めて交代し、眠る人と起きている人を分けておけば、長く続けられます。

        離れて暮らす家族には、到着後に交代してもらう時間をあらかじめ割り振っておきます。役目があるほうが、遠方の家族も「自分にできることがある」と思え、気持ちが落ち着きやすいです。

        食事や入浴のために席を外すのは、手を抜く行為ではありません。介護する側が倒れてしまえば、そばにいる時間そのものが失われます。

        息が止まったと感じたら何をすればよいのか?

        その場で急いで何かをする必要はありません。決めておいた診療所か訪問看護の窓口へ電話し、医師や看護師が着くまでそばで過ごす流れになります。

        体を揺すったり胸を押したりせずに待って構いません。慌てて119番へかけると救命を前提とした対応が始まり、自宅で見送りたいという希望とは向きが変わってしまいます。

        到着までの時間は、家族だけで過ごせる時間でもあります。名前を呼び、手を握り、伝えそびれた言葉を口にする時間として使って差し支えありません。

        よくある質問

        下顎呼吸が始まったら、家族全員をすぐに呼んだほうがよいですか?

        会わせたい人がいるなら、早めに連絡するほうが動きやすくなります。東京都がまとめた看取り支援の手引きも、呼吸の変化を家族へ伝える場面で、会わせたい人へすぐ連絡するよう促しています。

        ただし到着が間に合うかどうかは、誰にも見通せません。間に合わなかったときの伝え方まで訪問看護師や医師へ相談しておくと、気持ちの置き場が作れます。

        下顎呼吸をしている本人は苦しいのでしょうか?

        見た目が荒く映っても、本人の感じ方が同じとは限りません。苦しいかどうかを言い切れる裏づけは公的な資料に見当たらず、家族だけで判断するのは難しい話です。

        つらそうに見えるときは、その様子をそのまま訪問診療の医師や訪問看護師へ伝えて差し支えありません。息苦しさをやわらげる手当てを足せるかどうかは、実際に診たうえで判断します。

        下顎呼吸のときに口から水を飲ませてもよいですか?

        飲み込む力が落ちている段階では、水を口に運ぶとむせてしまいます。飲ませるのではなく、口の中を湿らせる手当てへ切り替えるほうが安全です。

        東京都の手引きは、飲食が難しくなった時期に氷片や好きな飲み物を使った口腔ケアが喜ばれる場合があると記しています。量ではなく、乾きをやわらげる目的で使います。

        下顎呼吸をしているとき、体の向きを変えても差し支えありませんか?

        声をかけてからゆっくり動かすなら、向きを変えて差し支えありません。厚生労働省の事業でまとめられた看取り介護の指針も、この時期のケアとして安楽な体位の工夫と体位交換を挙げています。

        動かした直後に呼吸が乱れたり顔をしかめたりするときは、いったん手を止めます。間隔や動かし方は、訪問看護師と相談しながら決めていきます。

        下顎呼吸が出たら救急車を呼んだほうがよいですか?

        自宅で見送る方針を決めているなら、まず診療所か訪問看護の夜間窓口へ電話します。119番へかけると救命を前提とした対応が始まり、希望とは向きが変わってしまいます。

        気持ちが揺れて呼んでしまっても、責められる話ではありません。揺れる前提で、迷ったときにかける番号を紙に大きく書き、電話のそばに貼っておくと支えになります。

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        この記事を書いた人

        新井 隆康のアバター 新井 隆康 富士在宅診療所 院長

        医師
        医療法人社団あしたば会 理事長
        富士在宅診療所 院長
        順天堂大学医学部卒業(2001)
        スタンフォード大学ポストドクトラルフェロー
        USMLE/ECFMG取得(2005)
        富士在宅診療所開業(2016)

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